ネコの手も狩りたい【完結】   作:puc119

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第77話~険しい道のりだからこそ~

 

 

「えー! 白ネコさん帰っちゃったの?」

 

 あの彼女が人間の姿に戻り、また大老殿へ戻ることになってしまった次の日のこと。予想通りの反応をご主人がしてくれた。

 いや、俺だって一応もう少しくらいのんびりしていきなって言ったんだよ? ただまぁ、結局のところそれはあの彼女がどうしたいのかってことですし、あれ以上引き止めるのは無理です。

 

「うニャ。ご主人によろしくって言っていたニャ」

「あぅ……いきなりすぎるよ。それに結局まだサインだって……」

 

 いきなりなことは確かですね。とはいえ、あの彼女は動き出したら止まらないからなぁ。真っ直ぐな性格というか頑固というか……

 そして、サインは別にいいでしょうが。それまでどれだけの時間を一緒に過ごした相手だと思っているんだ。

 

「サインならボクが書いてあげるにゃ」

「いいよ、ネコさんのは」

 

 ……だから、どうして俺のだけそんな扱いをされるのですか? ちょっとだけ傷つく。いや、まぁ、他の3人と比べたら俺に花がないことくらいはよくよく分かっていますが。

 

「うーん……じゃあ、これからはまたネコさんとふたりで頑張らなきゃいけないってことでいいのかな?」

「うニャ。白ネコもできたら戻ってくるとは言っていたけれど、それも大変だろうからまたボクとご主人だけニャ」

 

 相棒の様子を聞く限り、あの彼女も大老殿に帰ったら忙しくなるだろう。そりゃあ俺としてもやっぱりあの彼女が隣にいてくれれば嬉しいけれど、彼女は彼女で俺は俺でやらなきゃいけないことがある。役割分担。今回はそんなことなんだ。

 だから、これからは最初の頃みたくご主人と俺だけで頑張らなきゃです。とはいえ、このご主人の実力があれば大丈夫だろう。獰猛化モンスターの連続クエストとかになれば厳しいけれど、オストガロアまでは問題ないはず。

 

「白ネコさんも大変なんだね……でも、ネコさんは本当に私なんかと一緒にいていいの?」

「うニャ。例えボクが大老殿に戻っても戦力にはならないニャ。だから、ボクはこれからもご主人のオトモとして頑張るニャ」

 

 大老殿のことは彼女たちに任せます。例え黒龍なんかが現れたとしても、あの相棒がいるだけで十分だろう。ただ、メンタル面はやっぱり心配。けれども、あの彼女が大老殿にいてくれるのならそれも安心だ。

 あの彼女が抜けたことで、此方の戦力は大幅に低下してしまった。それでも、良い感じに別れることはできているんじゃないかな。

 

「うーん、ネコさんはもっと自分の好きなようにやっていいと思うけど……」

 

 いや、今でも十分すぎるくらい好き勝手やっているよ。そのせいでどれほどの迷惑をかけてしまっているんでしょうね? だから、これ以上の我が儘は流石にマズいだろう。

 

「まぁ、でもそれはネコさんたちが決めたことだもんね。よっし、私たちも頑張っていこっか!」

「うニャ!」

 

 それがいいと思う。

 他人のことを気にする前にまずは自分のことを頑張らなきゃいけない。それにあの彼女が人間の姿に戻ることができたってことは、俺もそうなる可能性があるってこと。

 やっぱりネコの姿よりも人間の姿でハンマーを使いたいんです。大丈夫、俺の未来はきっと明るいはずだ。

 

 ただ、ご主人に言われた言葉が何故かやたらと心に残った。

 自分のために、か。

 とはいえ、この姿じゃなぁ……

 

「それじゃ、私はどんなクエストがあるか聞いてくるね」

「了解ニャ。ボクは昨日頼んでおいた防具を受け取りに行ってくるニャ」

 

 現在のHRは6。できれば緊急クエストが来て欲しいところだけど、どうだろう? それはちょっと早いかな。

 まぁ、止まっているわけじゃいないんだ。できることをひとつずつやっていけばいい。それに今回から俺もゴア装備になるわけですし、気分は悪くない。

 色々と状況は変わってしまったけれど心機一転、頑張っていきましょうか。

 

 

 

 

 

 ご主人がクエストカウンターへ行っている間に、注文しておいた防具を受け取り早速装備。

 決して強い防具ではないけれど、ネコのゴア防具は一番好きなんです。例え、ネコだろうと防御力が大切なことも分かっている。でも、やっぱり自分の好きな装備にしたいよね。

 

 そして、せっかく新しい装備になったのだし、鏡でもないかなとフラフラしているところでご主人が戻ってきた。はてさて、再びふたりになって最初のクエストはなんでしょうね。

 

「えっとですね、ネコさん」

「うニャ」

「私たち宛に緊急クエストが届きました」

 

 なるほど、来ちゃいましたか。

 いや、悪いことではないですよ? むしろ嬉しいことです。

 

「それで、クエストの内容はどんなものニャ?」

 

 ゲーム通りならHR7になるための緊急クエストはセルレだったはず。セルレならご主人も戦ったことがあるのだし、なかなかに美味しい相手。とはいえ、ゲーム通りじゃないことも多かったし、どんなクエストが来たのかは分からない。

 

「……テオ・テスカトルです」

 

 うん? テオ?

 あ、あら? でも、テオって確かHRを解放した後じゃないと戦えなかったはずじゃ。村クエでもテオのクエストはあったけれど、そっちだって受注できるのはHR解放後。そうだというのに……いや、この段階でテオはちょっときついぞ。白ネコがいてくれればまだなんとかなった気もするけど。

 

 ただ、じゃあ他のクエストでって頼むことはできないし、俺たちが前に進むには倒すしか道がない。これはまた険しい道のりになりそうだ。

 でも、そんな状況が嬉しかったりする自分がいた。

 

「了解ニャ。それで、ご主人はテオと戦ったことはあるのかニャ?」

 

 一回でクリアできる気はしない。実際に戦ってみないと分からないけど、今まで戦ってきた相手と比べて火力は段違いなはず。

 これでご主人が初見となれば、クエストクリアはまさに絶望的だ。

 

「んとね、ナグリ村ってところで一度依頼されたから、戦ったことはあるよ」

 

 ああ、そう言えば、MH4の時、掘り当てたとかいってテオのクエストを受けることがあったっけかな。なるほど、MH4からテオのモーションも得には変わってなかったし、これなら……いや、それでも厳しいか。

 

「分かったニャ。今回は撃退でも大丈夫かニャ?」

 

 討伐はかなりキツい。ただ、撃退でも良いとなれば気持ち的にもかなり楽になる。最悪、ご主人にSBをやってもらえば撃退分のダメージくらいは稼げるんじゃないだろうか。

 

「最終的に倒さないとHR7にはなっちゃダメって言われました……」

 

 マジかぁ。そうなるとSBでも厳しそうだ。

 ん~……最終的に討伐すればいいのだし、2回に分ければいけるか? いやでも、本当にそれでいいのだろうか。SBだって立派な戦術だ。ただ、それをしてしまってご主人がどう思うか……ご主人はハンマーで頑張りたいと言っていた。その気持ちは大切なことだし、できる限り尊重してあげたい。

 

「ねぇ、ネコさん」

「うニャ?」

「たぶん、私は片手剣を使った方が今回のクエストをクリアできる確率は高いと思う」

 

 うん、俺もそう思っていました。

 でも、ご主人がこんな言葉を落とすってことは――

 

 

「それでも私はハンマーで頑張ってみたいんだ。クリアできないかもしれない。また今回もネコさんの足を引っ張ちゃうと思う。それでも……ハンマーを使っていいですか?」

 

 

 このご主人が我らの団を離れ、こうしてここでハンターをしているのは自分の実力を確かめ、より上を目指したかったから。

 つまりはそういうこと。そして、そんなご主人を俺は全力でサポートするだけだ。だから、このご主人の言葉に返すものなんて決まりきっている。

 

「もちろんニャ。ちょっと大変だと思うけど、ボクも精一杯頑張るニャ」

 

 やっぱり自分の好きなように戦いたいもんな。例え効率が悪くても、例え回り道だとしても自分の好きなように歩んでいきたい。オトモである俺はそんなご主人を全力で応援します。

 

「……うん、ありがと。よーし、それじゃ頑張って倒そっか!」

 

 此処に来て今までで一番きっついクエストが来てしまったことは確か。

 相手は古龍テオ・テスカトル。そんな奴を倒せる確率は残念ながら高くない。けれども、そんなクエストを俺は――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぅ、き、緊張してきた……」

 

 テオのクエストのマップは火山。

 BCからテオの待つ初期エリアまでは遠いけれど、あの段差や坂のせいで戦い難い地底火山じゃなかったのは幸い。

 

「今回、ご主人は無理に頭を狙わない方が良いと思うニャ。基本は後ろ脚を攻撃で、頭は大きな隙ができた時にだけ攻撃するのが良いニャ」

 

 ご主人のスタイルはブシドーをお願いした。ジャスト回避からじゃないとカチ上げを使えないから、ブシドーハンマーでテオと戦うのはあまりオススメできない。そうではあるけれど、とにかく生存率を上げたいんです。

 それに後ろ脚を攻撃しているだけならブシドーでもそこそこの火力にはなると思う。回避性能に細菌研究家、そして耳栓もつけばギルドスタイルで快適な狩りを行える。ただ、今のご主人の装備にそこまでのスキルを盛るのは無理です。だからブシドーで行くのが一番良い選択だと思うんだ。

 

「了解です!」

 

 あと、俺の装備だけど、できたばかりのゴア防具にナルガ武器にしました。麻痺武器を担ごうかかなり悩みもしたけれど、とにかく火力を出すことに。ふたりパーティーで2回くらいしか取れない麻痺武器は美味しくないと思う。

 

「うニャ。今回はとにかくダウンしないように気をつけるニャ。あと、ご主人、スーパーノヴァって分かるかニャ?」

 

 頭を諦めるってことはノヴァを諦めるってこと。MH4Gからモーション値は落ちているものの、このご主人の防具じゃノヴァを喰らえば乙るだろう。だから、それだけは気を付けないと。

 

「えっと、あのすごい爆発するやつのこと?」

「うニャ、すごい爆発するやつニャ。怒ってから100秒くらいであの技をやるから、とにかく気をつけるニャ」

「いや、そんな100秒とか言われても……」

 

 うん、自分で言っておいてアレだけど、無理ですよね。

 まぁ、例えノヴァを喰らう範囲にいても絶対回避を使えばなんとかなるし、ジャスト回避でもいいんじゃないだろうか? 起き攻めをされたら知らん。そればっかりはどう仕様も無いです。

 

 他に何か言っておくことは……ん~、これくらいなのかな。

 テオは戦い慣れた相手だけど、やっぱり戦ってみないと分からないことが多い。今回だけでクリアできるとは思っていないんだ。今回は様子見って気持ちで行くくらいが丁度良いのかもしれない。

 

 

 ……テオ・テスカトル。

 きっと苦手にしているハンターは多いだろう。でも、アイツほどハンマーで戦うのが面白い相手はいないと思っている。そんなこともあって、心の底からハンマーでテオと戦いたいって思うんですよ。

 自分の好きな武器で、自分の好きな相手と戦えるってことがどれだけ良いことだったのか。この小さな身体となってしまってから、そんなことをよく考えてしまいます。

 ま、できないことを求めても仕方無いんだ。今できることを全力でやるとしよう。

 

 

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