ネコの手も狩りたい【完結】   作:puc119

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名も知らぬモンスターへ。

名も知らぬハンターより。





第終話~それでも俺はハンマーが好き~

 

 

 4度目となったモンハンの世界は見知らぬマップの見知らぬエリアからスタート。

 身につけている防具はゴアS。安心感すら覚えるようになった背中に感じる重みは、俺がハンマーを担いでいるっていう証拠。

 

 そして、そんな俺の目の前にいるのは――

 

「誰なんだろうな。お前」

 

 見たこともないモンスター。

 

 音すらも置き去りにする速さで着弾したソイツは、銀色に輝く鱗で覆われていた。4本の脚に爪のような翼。戦ってみないと分からないが、骨格は多分ゴアやシャガルと同じ、マガラ骨格。

 

 この世界へ来る前、あのネコはクリアする必要はなく、無視してくれても良いと言っていた。

 相手の強さは全く分からず、初見モンスターは本当に苦手だ。それは俺がハンマーという武器を担いでいるってこともあるが、そもそも俺が……

 

 とはいえ、確かにあのネコは頑張れと言ってくれたんだ。これが最後の贈り物だっていうのなら――

 

「頑張んないと、だよな」

 

 きっと、そういうこと。

 

 

 背中へ担いでいたハンマーを両手でしっかりと掴む。そして、アイツと目が合った。

 

「っしゃ! 行くかっ!」

 

 大きな声を出してみた。あの臆病な自分が少しでも前へ進んでくれるよう、大きな声を。

 クエスト、スタート。

 

 ハンマーを手に取り、目が合ってから直ぐ、アイツの咆哮が響いた。俺の身につけている防具がゴアSなら回避性能が発動しているはず。別に狙っていたわけではないし、もっと良い武具なんていくらでもあっただろう。それでも、今回ばかりは有り難い。

 相手の咆哮は短く、初見だというのに咆哮のフレーム回避は成功。回避性能ってホント素敵。

 

 ま、問題なのは此処からなんだろうけどさ。

 

 咆哮を回避して直ぐに、ハンマーを右腰へ構えて溜めからのカチ上げ。

 溜め速度とローリングは普通。溜め2攻撃もカチ上げ。つまり、今の俺はギルドスタイル。良いスタイルを引けたようで何よりです。

 

 初見モンスターってことで、相手の攻撃方法が全く分からない。だから、最初はとにかく相手の動きをしっかりと見て、攻撃パターンを覚えたいところなんだが……バカみたいに出の早い引っかき攻撃が直撃した。引っかき攻撃で吹き飛ばされたおかげで喰らわなかったが、その攻撃の後直ぐに、翼脚の叩きつけ。

 

 えっとぉ……なにこれ。攻撃が速すぎるんですが……

 

 ゴグマはアレとして、シャガルやゴアのようなマガラ骨格とハンマーの相性はかなり良い。頭は常に狙える位置にあり、予備動作から次の行動を予測しやすく、振り向きもしっかりしてくれている。そして、コイツもそのマガラ骨格。

 とはいえ、これはちょっとなぁ……

 

 翼脚での叩きつけ後、ちょっとやめてほしい速さのサイドステップ。そこから、今度は翼脚を槍のように形状変化させてからの突き刺し攻撃。横へローリングで回避。そこへ逆の翼脚でまた突き刺し攻撃。直撃。やってられん。

 ……幸いなことにダメージ量は多くなく、俺のアイテムポーチには調合分までぎっしりと回復アイテムが詰まっている。まぁ、それでも足りない可能性も出てきているわけですが。

 

 俺を吹き飛ばしてから、相手は素早くバックステップ。そして、俺に向かって走り出したかと思えば、翼から龍属性っぽい光を出しながら有り得ん速さの滑空攻撃。

 ソレをどうにかローリングで回避。んで、俺を通り過ぎていったアイツはまた直ぐに、もう一度滑空攻撃をしてきやがった。

 

 その滑空攻撃が直撃し、また転がされる。あと何回転がされることやら……

 

 減った体力を秘薬で回復。

 翼脚による突き刺し攻撃。ガッツポーズ中に直撃。さらに俺が気絶。俺の方を向く翼脚。そこから多分、龍属性を纏った赤いエネルギー弾。直撃。ダメージはそこまでない。

 バックステップからバカみたいに速い低空飛行の突進攻撃。回復薬で体力を回復。翼脚による突き刺し攻撃。直撃。気絶。

 バックステップ。低空飛行突進攻撃。それを緊急回避。

 

 緊急回避をした俺を過ぎて行ったアイツは俺の方じゃなく、何故か上を向いた。

 そして、翼から赤いエネルギーを噴射し、爆音を響かせながら離陸。

 

 普通に考えればエリアチェンジ。けれども、アイツが離陸した後もロケットエンジンのような音は鳴り続けている。

 つまり、アイツはまだこのエリアにいるはず。

 頭の中に浮かんだのはレウスのするワールドツアー。

 

「ってことは……」

 

 上を向いた。

 見えたのは赤い点。

 耳鳴りのような高い音。近づく赤い点。

 

 そして、爆音が響いたのとほぼ同時に俺は吹き飛ばされた。

 

 何が起きたのかも分からない。

 多分、今の攻撃がアイツの持つ一番の大技なのだろう。しっかしねぇ、あんな攻撃どうしたものか。

 

 ハンマーのカチ上げや大剣の斬り上げを喰らった時と同じように、上空へ吹き飛ばされ、背中から地面へ着地。

 仰向けのまま見上げた空はいつもよりもずっとずっと近く見えた。

 

 このクエストが始まり、既に5分ほどの時間が過ぎてしまっていることだろう。そうだというのに、俺にできた攻撃は最初にぶち込んだカチ上げだけ。

 一方、俺はサンドバッグのように相手の攻撃を喰らい続けている。いくら調合分まであるとはいえ、これじゃあ回復薬が足りない。

 

「……まいったね、こりゃあ」

 

 溢れる独り言。昔っから独り言は多い方なんです。

 

 スタンを取るどころか、そもそも攻撃ができない。

 相手の攻撃はどれも速く、範囲もなかなか。近距離は引っかき攻撃と、翼脚の叩きつけ。遠距離は低空飛行突進に赤いエネルギー弾。

 そして、今しがた喰らったワールドツアー(仮)。

 

 回避するのに手一杯ですらない。そもそも回避できていないのだから。それに、どうせコイツの攻撃はもっと種類があるのだろう。怒り状態になったらどうなるかなんて考えたくもない。

 これだから、初見モンスターは苦手なんだ。コイツに勝てる未来が全く想像できない。

 

 はぁ……ここまでボコボコにされたのはいつ以来だろうか。ゲーム中では嫌になるほどそんな体験をしてきた。でも、この世界に来てここまでされたのは初めてかもしれない。手も足も出ない。こんな状況は。

 どうやら今までは何かを忘れ、ぬるま湯に浸かりすぎていたらしい。

 

 この惨状に目を閉じたくなる。諦めても良いんじゃないかって思えた。

 これだけ攻撃を喰らったにも関わらず、相手の行動パターンは不明のまま。攻撃スピードが速すぎる。ハンマーじゃ追いつける気がしない。何より今は、頼りになる仲間のいないソロプレイ。

 

「ああ、困ったな……」

 

 どうすれば良いのかが分からない。勝てる気が、しない。

 まさに絶望的。

 

 そんな状況が――

 

 

「俺、負けたくないや」

 

 

 何よりも面白いって思えた。

 

 目を閉じてから、仰向けに倒れていた身体をゆっくりと起こす。

 起き上がってから長く息を吐きだし、ゆっくりと吸い込む。うーん、勝てっかな? 勝てないよなぁ……でもさ、やるだけやってみたいんだ。

 

 相手が初見モンスターだからだろうか。今回は少しばかり時間がかかってしまった。情けないものです。

 

 それでも、カチリ――と自分の中にある何かが噛み合った。

 

 音が消えた。

 目を開ける。見えたのは白黒の世界。

 相手が相手だ。反撃にすらなるかも分からないけれど……頑張ってみるとしよう。

 

 大技後のためか、威嚇中のアイツを見ながら、いにしえの秘薬を飲み込み体力の完全回復。ちょいと時間はかかったけれど……おっし、準備完了です。悪いな、待たせちゃってさ。

 

 威嚇が終わって直ぐ、翼脚を使った突き刺し攻撃。ソレを相手に向かってローリングしながら無理やりフレーム回避。

 コイツに距離を取られると一方的に攻撃され続ける。だから、とにかく前へ。

 

「はぁ……別にな。知らなかったー、とか気づいてなかったーってわけじゃないんだ」

 

 回避後、直ぐにハンマーを右腰へ構え、もう片方の翼脚の突き刺し攻撃を軸避けしてからの溜め1、振り上げをアイツの頭へ。

 

「ただ……ずっと目を逸らし続けていたのは確かだよ。それに、きっと認めたくなかったんだろうなぁ」

 

 振り上げ後、相手のサイドステップへついていくように横ロリ。

 引っかき攻撃をもう一度ローリングでフレーム回避。そこへ、翼脚を使った叩きつけ攻撃。けれども、被弾は無し。安置は頭の下。

 

 俺の方を向いていた翼から赤い光が溢れ始めた。……近距離でもエネルギー弾を飛ばしてくるのか。

 

 左右、無理。

 後ろ、多分無理。

 

 ――もし迷ってしまった時、前へ進んでみるのもボクはいいと思うニャ。

 

 誰かの言葉を思い出す。だったら――前へ。

 

「……俺さ」

 

 相手の翼から出たエネルギー弾はローリングで前へ突っ込んだ俺の直ぐ後ろで爆発。さらに、相手はバックステップをしながら続けてエネルギー弾を発射。

 ローリングを終えて直ぐ、相手の頭へ縦1。弾けるスタンエフェクト。確かに感じるヒットストップ。

 エネルギー弾を2連で発射後のアイツは威嚇。確定の可能性大。

 そんなアイツの頭へもう一度ハンマーを振り下ろす。

 

 そして、ぐるりと一度周り、その反動を利用して――ホームラン。

 

 

「モンハンが下手なんだ」

 

 

 ホームランが当たったところで、怯んだアイツ。有り難いことにどうやらダメージはそこそこ入っているらしい。これなら……コイツを倒すことだってできる。

 

「上級者を気取っておきながら、謙遜のように中級者とか言っておきながら……実際のところはそんな腕なんてない」

 

 怯み後、直ぐに引っかき攻撃。ソレをフレーム回避しつつ頭の下へ移動し、ハンマーを右腰へ。翼による叩きつけを安置でやり過ごしてから、頭へカチ上げ。

 その攻撃が当たったところで、相手の後頭部と翼脚の先端から、赤色のエネルギーが吹き出した。やっと怒り状態、か。

 

「他の皆が簡単にクリアしてしまうような相手でも、俺は何度も何度も練習してやっと倒すことができる。初見モンスターなんてホント無理。勝てる気がしない」

 

 怒り時の咆哮をフレーム回避。そして、頭へカチ上げ。そこで、一回目のスタンを奪った。

 スタンをした相手へ、縦1からのホームランを2セット。

 

 さてさて、怒り状態のコイツはどんなものなのやら……

 

「必死に知識を溜め込んで、何度も何度も練習して、何度も何度も乙ってやっとできるのが並の……他の奴らにとっては当たり前のプレイング。俺にはその程度の実力しかない」

 

 スタンから起き上がり、相手は右前脚を引いた。鬱陶しいことに非怒り時よりも動作はかなり速い。それは、翼脚による突き刺し攻撃の前動作。それを見てから、ハンマーを右腰へ構えつつ左前脚へ移動。続く右翼脚による突き刺し攻撃を避けてから、頭へカチ上げをしつつ、逆側の翼脚による突き刺し攻撃を軸避け。

 

 出の早い引っかき攻撃をフレーム回避。続くはずの叩きつけを避けるため、頭の下へ移動。

 しかし、相手がやってきたのは叩きつけの時と違い少し間を置いてから、翼脚を地面へ突き刺すような攻撃。初モーション。直撃。クソが。

 

「これでもさ、プレイ時間はかなり長い方だと思うんだ。そうだってのに、ネットで動画を上げているような奴らの動きなんて全くできない。ホント、嫌になっちゃうよなぁ」

 

 怒り状態でもダメージ量はそこまでではない。回復はせず、絶対回避【臨戦】を使って離された距離を埋める。

 叩きつけと、今喰らった地面への突き刺し攻撃。その前動作である引っかき攻撃は同じように見えた。そうなると……怒り、非怒り時の差? それとも択ゲー?

 地面への突き刺し攻撃は叩きつけと違って、少しの間がある。だから、引っかき攻撃を回避後、ローリングで相手の股下や、引っかき攻撃をしてきた脚の方へ回避する時間だってあるはず。ただ、それじゃあ叩きつけ後にも攻撃ができない。安置の分かった叩きつけ後はできるだけ攻撃を入れたい。

 そのふたつの攻撃に予備動作の違いがあれば良いんだが……

 

「それでもって、俺がメインに使っている武器はハンマーだってよ。ただでさえ下手だってのに、どうしてそんな武器を使っているんだって話」

 

 離された距離を詰めると、また直ぐに引っかき攻撃。叩きつけと突き刺し攻撃の見極めができないため、相手の股下へローリングで回避。そして、相手がしてきたのは叩きつけだった。

 残念ながら怒り、非怒りは関係無し。勘弁してもらいたい。

 

「もっと強くて使いやすい武器なんていくらでもある。そんな武器を使えば、この下手クソだってもう少しはマシなプレイングができることも分かっている」

 

 ……別にさ。無理して頭を狙う必要なんてないんだ。

 

 そりゃあ、頭が弱点の相手は多いし、その弱点を叩くのがどれだけ大切なことかは分かっている。でも、今俺がやっているのはTAなんかじゃない。どれだけ時間がかかろうが、比較的安全な相手の後脚だけを攻撃し続けて倒したって良い。

 

 

「でも――それじゃあ面白くない」

 

 

 だから、どれだけ難しいだろうが、俺はお前の頭だけを狙い続けるよ。

 俺が担ぐと決めたコレはそんな不器用な武器なんだ。そして、そんな武器だからこそ、俺が担ぎたいって思ったんじゃないかな。

 

 叩きつけを回避後、相手はサイドステップ。

 さらに俺の方を向いている翼脚が赤く、光った。

 

 バックステップをしながらエネルギー弾を飛ばす相手を追いかけるように、前へローリング。後で爆発音。頭の位置を確認してから、その頭へ縦1。

 相手は続けて2発目のエネルギー弾を発射。そこへ縦2。発射後、威嚇。威嚇時の頭の動きに合わせ、少しだけディレイをかけてから、ホームラン。

 とりあえず、この攻撃だけは安定して攻撃を入れられそうだ。そんな攻撃を増やしていきたいところだが……難しいものです。

 

「俺はそんな人間だよ。面倒くさく、矛盾だらけ。普通の人よりも少しだけ多くモンハンをプレイして……普通の人よりも少しだけモンハンが下手」

 

 ホームランを叩き込むと、俺の方を向いていた翼脚はアイツの背中を向くように変化。そこから直ぐに、右前脚を引いてからの翼脚による突き刺し攻撃。

 左前脚の方へハンマーを右腰へ構えながら移動し、突き刺し攻撃後にカチ上げ。

 そういえば、その前の突き刺し攻撃と、地面への突き刺し攻撃の時も、あの翼は俺を向いていなかった気が……

 

 翼の向き、か。

 

 悩んでいる時間はない。間違いでも良い。とにかく全部試せば良いんだ。相手の動き全体を見ていた状態から、少しだけ相手の翼へ意識を向けてみる。

 

「きっと傍から見たら俺はおかしなことをしているんだろう。どう考えても自分には合っていないゲームを、どうしてそんなに続けているんだって思ってしまう」

 

 カチ上げ後、相手のサイドステップ。翼の向きは先ほどと違い俺の方を向いている。

 引っかき攻撃。フレーム回避から頭の下へ移動し、ハンマーを右腰へ。相手が次にしてくる行動を予測した立ち回り。きっとそれはハンマーを使うハンターにとって何よりも大切な行動。

 

 合っているかなんて分からない。それでも良い。この下手クソはそれくらいしなければ勝てないのだから。

 

 

「でもさ、仕様が無いじゃん。それくらいモンハンが好きになってしまったんだから」

 

 

 頭の前へ移動して直ぐ、相手がしてきた行動は叩きつけだった。そこへ、ハンマーでカチ上げ。

 

 まだ……まだ分からない。たまたま相手が俺の予想通りの動きをしてくれただけなのかもしれないのだから。そうではあるけれど、やっと未来が見えて来た。

 

 カチ上げを受け、怯んだアイツの翼の向きを確認。その向きは俺じゃなく、アイツの背中を向いていた。

 怯み後、直ぐに右前脚による引っかき攻撃。ソレをフレーム回避しつつ、祈るような気持ちで頭の前ではなく右前脚の方へ。

 引っかき攻撃後、叩きつけは引っかき攻撃と同じ側の脚で。地面への突き刺し攻撃は逆側の脚で行ってくるはず。だから、同じ引っかき攻撃でも次にしてくる行動のため、違う動きが要求される。

 

 引っかき攻撃から少しの間。そして、次の攻撃は地面への突き刺し攻撃だった。予想が、当たった。

 

 バラバラだった何かがひとつずつ噛み合っていく。

 パターンも決めずに戦えるほど俺は上手くない。パターンを決めたところで、できるプレイングなんて大したものじゃない。

 

 それでも、まぁ……きっとお前を倒すことができるくらいのプレイングはできるんじゃないかな。

 

「……多分、俺がそこまでモンハンを好きになってしまったのは、ここまで下手だったからだと思うんだ」

 

 地面への突き刺し攻撃をやり過ごしたところで、相手の頭へカチ上げ。それで2回目のスタン。

 

 頭の奥の方がチリチリと痛む。気がつけば呼吸はバカみたいに荒くなっているし、心臓の鼓動だってかなり早くなっている。

 頼むから、まだ切れないでくれよ。もう少し……もう少しだけ耐えてください。

 

 スタンをした相手へ、縦1からのホームランを2セット。

 スタンから起き上がった相手は怒り状態が解けたのか、後頭部と翼の先端から溢れていた赤色の光は消えていた。

 

「下手だったから、長い時間楽しみながらプレイすることができた。下手だったから、クリアできた時や上手くできた時の喜びが大きかった。……そういうことだと思う」

 

 少々見辛くなってしまったが、翼の先端の向きはアイツの背中の方。

 そして、2回目のスタン後の最初の行動は、後ずさってからのゴアやシャガルと同じような2連小突進。それが直撃。

 突進の向きは固定なはずだから、反時計周りするだけで簡単に避けられる。ただまぁ、ソレをいきなりやられたらそりゃあ無理です。

 

 突進直撃後、流石に体力が心配だったため、調合して直ぐに秘薬を飲み込みガッツポーズ。そこへ、翼脚を使った突き刺し攻撃が当たり、さらに吹き飛ばされた。今更そんなことを嘆いても仕方無いが、小タル爆弾を持ってくれば良かった。

 

 相手の状態を確認。翼は背中向き。バックステップ。そして、あのバカみたいな速さの低空飛行突進。

 多分、もう一度でも攻撃を喰らえば、此方は気絶する。気のせいかもしれないが、コイツの攻撃の気絶値は高い。ここで気絶をすると、やっと作り始めることのできた良い流れがぶっ壊される。それだけはマズいんだ。

 

 滑空攻撃を緊急回避。起き上がってから直ぐに、通り過ぎて行った相手を確認。小走りからの滑空攻撃。ソレを絶対回避【臨戦】で相手を追いかけるように回避。

 とにかく今は相手に距離を取られないにようするのが大切。

 

 滑空攻撃後の翼の向きは俺の方。

 新モーションさえなければ、次は引っかき攻撃か、エネルギー弾の発射なはず。

 

 翼の先端が赤く光った。全力で相手へ向かってローリング。

 エネルギー弾を躱してから、決めたパターン通り相手の頭へ縦1からのホームラン。ソレを当てたところで、相手は怒り状態へ。

 できれば、もう少しくらい怒らないでほしかったんだけどなぁ……怒り状態のコイツの攻撃速度はちょっとヤバいんだ。

 

「ま、しゃーないか」

 

 そういうものなんだろう。

 

 此処まで戦ってやっとコイツの攻撃パターンが分かってきた。

 コイツの戦闘スタイルはふたつ。ひとつは翼脚を使った突き刺し攻撃や、滑空や普通の突進攻撃をしてくるスタイル。もうひとつが、翼脚からエネルギー弾を飛ばしてくるスタイル。

 そして、その見分け方は翼脚が前方を向いているか、後方を向いているか。

 

「……いや、初見じゃそんなもの分からんって」

 

 それでも、俺が気づけたのは……きっと俺が今担いでいる武器のおかげなんだろう。不器用に、真っ直ぐに、どんなに攻撃がキツかろうが相手の頭だけを叩きつけることしかできないこの武器のおかげ。

 

「攻撃範囲は狭いくせに、出の早い攻撃なんてない。やっとの思いでコンボを繋げて出せる最大威力の攻撃さえ、決して褒められるほどのものじゃない」

 

 そんな武器を担いでいるせいで、俺は上手くなれないのかもしれない。この武器じゃなければ、もっと簡単にお前を倒すことだってできるかもしれない。

 でも、そんな武器を担いでいたおかげで、俺は此処まで来ることができたんだ。だから、この武器だけは手放せやしないんだろう。

 

「それでも俺はハンマーが好きだよ」

 

 使ってみれば分かる。

 本当に面白いんだ、この武器は。

 

 怒り状態となった相手の翼の向きは前方。

 引っかき攻撃。頭の下へ移動し、叩きつけ攻撃後の相手へカチ上げ。

 カチ上げ後、逆脚での引っかき攻撃。同じように頭の下へ移動してから、叩きつけ後にもう一度、カチ上げ。怯みはなし。翼の向きは後方のまま。

 

 

「もし、俺がもう少しだけ上手かったら。もし、お前がもう少しだけ弱かったら。もし……俺がこの武器を担いでいなかったらきっと――」

 

 

 別に狙っていたわけじゃない。俺にそんな実力なんてないし、そもそも見てから間に合うようなものじゃないのだから。

 ホント、もっと上手くなりたいんだけどなぁ。

 

 カチ上げ後、当たればラッキーくらいの気持ちで横振り。けれども、相手は大きくバックステップしたため、空振り。

 

 その次の俺の行動は頭で何かを考える前に――身体が勝手に動いた。

 

 バックステップで距離を取った相手を追いかけることはせず、横振りから空中へ縦2。相手は勢いを付けるように半歩後退。

 縦2を振り下ろしてから直ぐに、ぐるりと周る。もう考えたって仕様が無い。当たればラッキー。それくらいの気持ち。

 ただ……何故か外れる気はしなかった。

 

 そして、アイツがしてきたのはあのバカみたいな速度の低空飛行突進。

 

 そこへ、ハンマー最大威力である、ホームランを叩き込んだ。

 

 

「この勝負はお前が勝っていたんだろうな」

 

 

 たまたま相手が滑空攻撃をしてきて、たまたまホームランが当たり、たまたま怯み値が噛み合ってくれた。俺じゃあそんなものは狙えない。

 

 だから、これはただの偶然ってわけなんだが……ま、モンハンじゃよくあることだ。

 

 ホームランを叩き込んだところで、相手は空中から落下しダウン。

 

「ありがとう」

 

 ダウンした相手の頭へ縦1。

 

「もう4回目にもなるこの世界で最初に戦えたのがお前で良かった」

 

 さらに縦2。

 

「次はさ、俺ももっと上手くなってくる。だから、その時まで――」

 

 そしてぐるりと周り、その反動を活かしてから……ホームラン。

 

 

「さようなら。名も知らないモンスター」

 

 

 弾けるスタンエフェクト。腕へかかる重みとなって感じたヒットストップ。

 音が戻ってきた世界で最初に聞いたのは……相手の悲鳴だった。

 

「はぁ……疲れた」

 

 でも、楽しかったんじゃないかな。

 

 お疲れ様。ありがとう。できることなら、またもう一度、お前と戦えることを願っているよ。

 

 






次話のエピローグを書いたところで、この作品の本編は完結となります

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