ネコの手も狩りたい【完結】   作:puc119

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それじゃ、のんびり続きを書いてみるとしましょうか
エピローグが終わってから直ぐのお話となります





後日談
後日談~その1~


 

 

 この世界へ戻ってきてから、2日の時間が過ぎた。バルファルク討伐の報告も終えたらしいし、とりあえずは一段落といったところだろうか。

 バルファルクの報告を終えたことで、この龍織船の功績も認められたらしく、これからは各地でモンスターの研究と対策にあたるそうだ。んで、俺が今所属している集会酒場もその龍織船にくっついているわけですから、これからは色々な場所へ飛び回る生活が続くんじゃないのかな。

 

 ……4度目となる今回、俺が元の世界へ戻ることはきっともうないんだと思う。ま、そんな実感なんて湧かないんだけどさ。

 それに今回はゲームをプレイしていないこともあって今までみたいに、知識を活用することが難しい。これから担ぐことになるだろうG級武器の期待値や、防具のスキル。テンプレ装備や新しい戦い方。そして、どんなモンスターたちが待っているかすら今の俺には分からなかった。つまるところ、攻略情報無し縛りって感じ。難易度高いなぁ……

 

 それは楽しみであるのと同時に、やっぱり不安に思ってしまう。

 初見モンスターを含め、自分の知識にないことへの対処が本当に苦手なんです。そんな俺がどの程度頑張れるのやら。

 

 そんな愚痴のようなことを、隣へ座っているあの彼女に溢してみた。

 

「……別に焦る必要はないと思う。ゆっくり楽しも」

 

 それもそうだね。

 これから先、何が起きるのかなんて分からないけれど、今回ばかりはゆっくり楽しむことができそうだ。せっかく自分の好きな世界へ、自分が望んだよう来ることができたんだ。そうだというのなら、精一杯楽しんでみましょうか。

 

「ん、了解。とはいえ、君の方が俺よりも半年早く楽しんでいたわけだし、色々と教えてくれると――」

「楽しくなかった」

 

 俺の言葉を遮るように、あの彼女が言葉を落とした。その表情は見えない。

 

「……楽しくはなかったよ」

 

 俺が消えていた半年間。彼女たちがどんな生活を送っていたのか。その詳しい話は聞いていない。

 それでも、この彼女がどんな想いを持っていたのかは理解できた。

 

「ごめん。遅くなって」

「……探した。本当に探した」

 

 これ以上、早く戻ることなんてできなかった。だから、別に俺が悪いわけではないのかもしれない。けれども、彼女を待たせてしまったのが事実であるのなら、やっぱり謝らなくちゃいけないんだろう。心から。気持ちを乗せて。

 

 

「別にネコの姿でも良い。どんな世界でも構わない。でも――これからはずっと私の傍に居て」

 

 

 誰よりも自由で、誰よりも強い彼女が落とした言葉。

 そんな言葉が俺の胸を締め付けながらも、ストン――と心の中へ落ちてくれた。

 

「うん、約束するよ」

 

 その約束を守れるかどうかはやっぱり分からない。それでも、自分にできる限りのことはやるつもりです。

 自分の好きな相手なんだ。それくらいはやりたい。やらなくちゃいけない。

 自分のためにはあまり頑張れないような人間だけど、この彼女のためならこんな俺でも頑張れる。そう思います。

 

 

 そんなあの彼女にしては珍しい一面を見てから暫く、今日も今日とて元気な様子の相棒さんがとことこと俺たちの方へ走ってきた。

 

「おおー、ふたりともいる。これなら丁度良いね!」

 

 はて、何の話だろうか。今はちょいとだけセンチメンタルだから、できれば明るい話題だと嬉しいです。そういう気分だって大切にしなきゃいけないのだろうけど、やっぱり明るい方が俺は好きかな。

 

「どったの?」

「んとね、さっき酒場のマスターからやっとクエストの依頼をされたよ! それで、ソレをクリアしたらG級のクエストを受けられるんだって」

 

 あら、それはまた嬉しいお知らせじゃないですか。

 ってか、あれ? このふたりはまだG級のクエストを受けていなかったんだ。てっきりもうバリバリにG級のモンスターたちを倒しているのかと思っていた。

 ん~……じゃあ、龍織船の方がゲームでいう村クエ的な扱いだったってことだろうか。んで、集会酒場が集会所的な。

 

 ま、クエストへ行くことができるのならもうなんだって良いんだけどさ。

 

 ポケモンでカントー地方へ行けると分かった時。ドラクエで船を入手できた時。

 世界が一気に広がるあの感覚は嫌いじゃない。この先にある未来を考えると、ワクワクが止まりません。

 

「……クエストの内容は?」

「上位のディアブロスだって。場所は砂漠だから初めてのエリアだよ!」

 

 おおー、今回はディアがいるのか。ハンマーで戦うにはちょっとアレだけど、それもまた嬉しい情報です。これで亜種もいるようならアーティを作ることができそうだ。

 そして場所は砂漠、と。旧砂漠ではないってことで良いんだよね? ディアと一緒に復活したといったところだろうか。旧砂漠エリア2のような変化が起きていないことを願います。段差はまだ良いとしても、坂は本当にやめてほしい。

 

「了解。そんじゃ、とりあえずサクっと倒してG級に進むとしよう」

「うん、そだね!」

「……久しぶりに笛を担げるから楽しみ」

 

 そういえば再会したとき、この彼女はライトボウガンを担いでいたもんね。せっかくだし俺も今回は色々な武器を使ってみようかな。

 それでも、やっぱり最初はハンマーを担ぐんだけどさ。

 

 その後、なんだかんだ初めての訪れとなる集会酒場へ移動。

 その集会酒場だけど、まだできて直ぐってこともあってか俺たち以外にハンターは誰もいなかった。そんな集会酒場にはダンディーなおじさんとお姉さんの姿。最初は、ダンディーな方が酒場のマスターだと思っていたけれど、どうやらマスターは女性の方らしい。なかなかに雰囲気のある二人組で、どうやら昔はハンターをしていたんだって。ただ、ちょっと怖そうだから怒られることはしないよう気を付けよう。

 因みに、この集会酒場は『ホーンズ』という名前で、マスターが私財で作ったとも。

 その他には、道具屋と武器防具屋。そして、なんだかよく分からないちっこい女の子がひとり。そのちっこいのは『わぉ! わぉ!』叫んでいるだけで、何をしているのかは分からなかった。なんなんだコイツ。いや、可愛らしいとは思うけどさ……

 

 龍歴院も決してハンターの数は多くなかったけれど、今回はそれ以上。てか、俺たちしかいない。いかにも、これから物語が始まりそうな雰囲気がして何とも良い感じだ。

 今後、ハンターの数も増えていくのかね。そうだというのなら、頑張らないとだ。気張っていきましょう。

 

 本当に久しぶりとなるこのメンバーで行くクエスト。そんなことに、色々と思うところがあったりなかったりします。

 良い仲間と出会えました。今、言えるのはそれくらい。

 

 さて、そんじゃま、まずは最初のクエストってことで、ひと狩りいくか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 あの彼がこの世界へ戻ってきてくれてから、もう2週間もの時間が過ぎました。早いものですねぇ。

 

 

 ……オストガロアを倒したあの時、彼はまた消えてしまった。

 

 オストガロアを討伐できたことを喜ぶ槌ちゃん。まるで、何かを掴もうと右手を伸ばしたまま、地面へ膝をついた笛ちゃん。そんなふたりの間にいた私。

 けれども、そこにあの彼はいなかった。

 

 ああ、また……またダメだったんだ。

 何が起きたのか理解した私は、それくらいのことしか考えられなかった。

 

 唇を噛み締め、俯く彼女に何て声をかければ良いのかは分からなかったし、たぶんどんな言葉を送ろうがあの時は届かなかったと思う。

 

 彼がこの世界の人間じゃないことは知っていた。そして、いつの日か、また別れが来てしまうことも。

 これで彼が消えてしまったのは3度目。でも、そのことに慣れることはなく、ただただ悲しくなるだけだった。

 そんな彼と同じ世界の人間である彼女。きっと誰よりも彼が消えてしまったことを悲しんでいるはずの人。

 

 そうだというのに、笛ちゃんの行動は本当に早かった。

 オストガロア討伐によってお祭り状態となった龍歴院のことや、式典のことは全て無視。龍歴院へ戻り、最初に笛ちゃんのした行動はギルドマネージャーへ、この地方でG級クエストを受けることのできる場所や、新しい拠点を聞くことだった。そこで、今私たちのいる龍織船のことを聞くことができ、今度はその龍織船への配属を目指すよう行動。

 どうしてそんな行動をしたのか、その理由は彼女から聞いていない。けれども、それがあの彼のためなのは確かなことだった。

 

 一見、やたらと行動的になっただけで、普段通りの笛ちゃんにも。

 けれども私だって、笛ちゃんとは長い付き合いなんだもん。彼女が普段通りじゃないことはよく分かった。微かに感じる怯えや不安。それらの感情を彼女が口に出すことはなかった。でも、分かってしまうんです。

 そんな彼女の力に少しでもなれるよう私も頑張ってみた。力になれたかは分からない。でも、それは私にしかできないことだったんです。

 大好きな人が消え、ひとりになってしまった気持ちが分かる私にしか。

 

 それから、元々所属していたキャラバンに戻る槌ちゃんや、バルバレで活動を続けている弓ちゃんにも彼に関する情報を集めてもらうようお願いしたり、龍織船のため色々なクエストを受けたりと忙しい日々が続きました。

 半年。6ヶ月。それは決して長い時間ではないはず。そうだというのに、本当に長く感じた。自分たちのしている行動が正しいのかなんて分からないし、そもそもあの彼が戻ってきてくれる確証がない。

 

 そんな辛い日々の中でもあの彼女が弱さを見せることはなかった。

 

 本当に、強い人だと思う。

 ……だって、私にはそれができなかったから。あの時の私にはただただ待っていることしかできなかったから。

 そんなこと、考えたって仕方の無いことだけど、私もこの彼女のように強ければ――

 

 

「強いね、笛ちゃんは」

 

 

 今は、遺群嶺でイャンクックの討伐を終え龍織船へ戻ってきたところ。

 武器と防具を見てくる、といって加工屋さんの所へ彼が行ってしまったところで、あの彼女に話しかけてみた。

 

「……うん。やっぱり笛は面白い」

 

 ズレてしまった言葉と言葉。それが何処か面白くて、クスリと笑ってみる。

 

 ……結局のところ、私はこの彼女についていくことしかできなかった。私だって、あの彼とまた会いたかった。それは嘘偽りない本当の気持ち。

 けれども、この彼女を見ていると、そんな私の気持ちも色褪せて見えてしまう。そんなせいで、なんともいえない気持ちになってしまう。

 

 

「えと……ありがと。貴女がいてくれて良かった」

 

 

 そして、突然のお礼の言葉。

 

「……私、何もできなかったよ?」

 

 どんなことを思い、彼女がいきなりこんな言の葉を落としてくれたのかは分からない。でも、この彼女がどんなことに対して、この言葉を送ってくれているのかは分かった。

 

「そんなことない。私ひとりじゃダメだった。貴女がいてくれたから」

「……そうなの?」

「そうなの」

 

 そっか。

 それなら良かった。

 

 本当の気持ちは分からないけれど、こうして言葉にしてくれただけで私は救われる。

 あの彼のことは好きです。大好きです。でも、それと同じくらい、この彼女のことも大好きなんです。そんなふたりがいるだけで、今は……今くらいは満足できそうだ。

 

 きっと、傍から見ているだけじゃよく分からない会話だったと思う。

 それでも、私と彼女の間ではしっかりとした意味を持つ会話。そんなことが嬉しくて、やっぱり私はクスリと笑ってみた。

 

 そんな時だった。

 ドン――と、大きな音が響き、飛行船が大きく揺れたのは。

 

「……なんだろ?」

「うーん、なんだろね」

 

 揺れは直ぐに収まってくれたけど、何が起きたのかは分からない。寝ぼけていた飛竜種が飛行船とぶつかったとかかなぁ。

 それくらいのことであってほしいところ。

 

「今、めっちゃ揺れたけど何があった!」

 

 そして、バタバタと慌ただしく私たちのところへ来た彼。

 

「私たちも分かんない。とりあえず、上に出て様子を確認しよ」

 

 何がなんだか分からないまま、飛行船の甲板へ。

 その甲板では、先の衝撃もあってからやたらとざわついていた。

 

 

「す、すみませんッ! ちょっと操縦をミスっちゃったみたいでっ!」

 

 

 そして、ペコペコと龍織船の人たちに謝るひとりの女性の姿。

 

「あっ、ご主人」

「……イサナ船だ」

 

 どうやら、そういうことらしいです。

 さっきの衝撃は、槌ちゃんが所属しているキャラバンの飛行船がぶつかったからってことみたい。危険な状況ではないみたいで、一安心です。

 

 槌ちゃんにも、彼が戻ってきたことを手紙で伝えておいたし、今回は会いに来たってことなのかな? あの彼も人気者ですなぁ。

 

 そんな槌ちゃんのところへ、あの彼は走っていった。

 姿は変わって……というより、戻ってしまったけれど、槌ちゃんと彼も長い間、一緒にクエストへ行った仲間。きっと積もる話もあると思う。

 

「笛ちゃんは行かなくて良いの?」

「私が行くとご主人さん、緊張して上手く喋れなくなるから」

 

 ……まだ、そんな状態なんだ。笛ちゃんだって、それなりの時間一緒にいたはずなのにね。

 

 じゃあ、あの彼が相手でも槌ちゃんは緊張しちゃうんじゃ。

 なんてことを思ったけれど、遠くから見ている限りは普通に話をしていた。あの彼の手を掴み楽しそうに笑う槌ちゃんと、同じく楽しそうに何かを話す彼。

 

「えっと……あのふたり、仲良いんだね」

 

 どんな会話をしているのかは分からなかったけれど、ふたりの仲が良いことはよく分かった。

 いや、まぁ、うん……そ、そういうものなのかな?

 

「……そうみたい」

 

 そして、そんなふたりの様子を少しだけムスっとした表情で、あの彼女は眺めていた。

 妬いているんだろうなぁ。妬いていますなぁ。こういう時の彼女は本当に分かりやすい。

 

 ……でも、あの彼なら大丈夫だよ。

 一番近くで見ていた私がいうのだから間違いない。あの彼は本当に笛ちゃん一筋なんです。

 

「ホント、嫌になっちゃうくらい……」

 

「うん? なに?」

「ううん、なんでも。それじゃ、私たちも槌ちゃんのとこ行こ。せっかく来てくれたんだもん。やっぱりお酒も飲みたいよね!」

 

 私の大好きなふたりがいる今。

 100点満点! ……とはやっぱりいかないけれど、それなりに満足できています。だから、そんな今を楽しみたいなって私は思うんだ。

 

 

 

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