詠SIDE
「詠お姉ちゃん、遊んで~」
「はーい、今行きますよ」
私はいま、ある孤児院で一閃さん……いえ、イッセーさんとボランティアをしています。
元々はイッセーさんが一人でボランティアをしていたのですが、私も参加するようになりました。
私が参加するようになった切っ掛けはというと……。
これは私が蛇女子学園に入って間もない頃のお話です。いつものように貧民街でのボランティアを終えて帰宅しようとしていた私は……。
グウ~。
「お、お腹がすきましたわ……」
空腹で身動きが取れなくなりました。
「い、今の私の全財産は10円……これではうまい棒一本しか買えません。ということは……30円のもやしが買えません!」
仕事で得たお金をほとんど寄付していた私は、最近何も食べていませんでした。ああ……目まいが…。
私は気を失いました。
「う、う~ん……ここは?」
私が目を覚ますと、見知らぬところで寝かされていた。私は一体どうしたのでしょうか?
「あっ、イッセーお兄ちゃん。お姉ちゃんが起きたよ」
「おーそうか。大丈夫か、詠さん?」
起き上がってみると、そこにはクラスメイトの一閃さんがいた……あれ?
「何で一閃さんがここに……ムグッ!」
「ははっ、もうあとは俺に任せて君は遊んできな!」
「はーい!」
突然、私は一閃さんに口をふさがれ、一閃さんはそばにいた男の子を部屋から追い出した。
「……悪い。ここでは俺は兵藤一誠って名乗ってるからイッセーって呼んでくれ」
「わ、わかりましたわ。それで、ここはどこなんですか? 何でイッセーさんはここにいるんですか?」
「ここか? ここは孤児院で、俺はここでボランティアをしてるんだよ」
「そ、そうなのですか……」
まるで私みたいですね。
「それで、詠さんはどうしてあんなところで倒れていたんだ」
「ええと、私も貧民街でボランティアをしていましてそれで……」
グーッ
「っ!」
私が説明していると、お腹が鳴ってしまい顔を真っ赤にした。は、恥ずかしい!
「ええと、ちょっと待っててくれ」
そういうと、イッセーさんは部屋を出ていき、数分後、大盛りのカレーが入った皿を持ってきた。
「これ、孤児院のみんなに作ったカレーなんだけど余っちゃって……よかったら食べてくれ」
「い、いいのですか?」
「ああっ」
「い、いただきます」
私はスプーンを手にとって一口食べてみた。辛さが控えめの味だがとてもおいしかった。
忙しくスプーンを動かしてあっという間にカレーはなくなった。
「ごちそうさまでした」
「……すごくお腹がすいていたんだな」
「ええ……ところで、イッセーさんは何でここでボランティアをしていたんですか?」
私はイッセーさんがボランティアをしている理由が気になった。
「う~ん、ここに初めて来たときなんか子供たちが自分と重なって見えたからかな」
「それはどういう意味で?」
「ここは親を亡くした子がくる孤児院なんだけど、俺も親を殺されているんだ」
「えっ……」
私は言葉を失った。蛇女に来ている人は何かしら影があると思ってたけど、親を……。
「すいません、そんなことを知らずに……」
「いいんだよ。おれが勝手に話しただけだから」
「……では、イッセーさんは復讐のために蛇女に入ったのですか?」
私と似ているところがあるから、もしかして、イッセーさんも復讐を考えているのでは?
「いや、違うよ」
「えっ?」
「……最初は復讐しようと思ったけど、今は違う。俺が復讐をしたら誰かが悲しむ。そして悲しみの連鎖が生まれる。俺は俺のようなやつが生まれてほしくないんだ。俺はその連鎖を断ち切るための力をつけたいんだ」
……すごいです。そんなことを考えるなんて私とは……。
「ええと、詠さんは復讐しようとしてるのかい?」
「はい……」
私は私の過去を簡単に話した。親が私のために命を切り売りしていたこと。とある財閥がとても憎くお金持ちを滅ぼそうとしていること……。
「それが私の目的です」
「……そんなのでいいのか?」
「はい?」
「詠さんの親は詠さんに幸せに生きてほしいから、自分を犠牲にしていたんだ。そんな詠さんが復讐なんてしたら、両親は悲しむよ。詠みさんは笑って幸せにならないと……詠さんの両親は浮かばれないと思うよ」
「っ!」
確かにそうだ。だけど……。
「人の生き方を文句を言う権利は俺にはない。だけど、俺は詠さんには幸せになってほしいんだ」
「イッセーさん……」
思わず涙が出てきた。この人は私のことをここまで……。
「イッセーお兄ちゃん! 遊ぼう!」
「おう! じゃあ、詠さん、あと一時間ぐらいにしたら俺も帰るから、一緒に帰ろうぜ」
「は、はい。……あの、私のことはさん付けで呼ばなくて結構です」
「ああ、分かった」
そう言って子供たちとともに外へ行くイッセーさん。す、少し顔が熱いような気がします。
「あの、すいません」
「はい?」
すると、一人の女性が入ってきた。この人は?
「あ、私はここの院長をしています。あなたはイッセーくんお知り合いですか?」
「はい、同じ学校の同級生です」
私はとりあえず蛇女のことは隠しておいた。
「そうですか。いやあ、本当にイッセーくんには感謝しているんです。子供達もイッセーくんに懐いているし、立ち退きを要求された時は解決していただきました」
「そうなんですか……」
私は少し驚きながら聞いた。……余談ですが、立ち退きを要求したのは暴力団でイッセーさんはそれを壊滅させたそうです。
「本当にイッセーくんが来てからここは明るくなりました」
「あ、あの今度から私もボランティアをしてもよろしいでしょうか?」
私は思い切ってここでもボランティアをしてみようと思った。ここにいれば、みんなの知らないイッセーさんが見れるかもしれません。
こうして私はここでボランティアをし始めることになりました。
「あのさあ、詠。ここでボランティアをしてるのはみんなに内緒な」
「ええ、心得ています」
これは私と彼だけのヒ・ミ・ツ!
今回は詠さんのフラグ話でした!