焔SIDE
「イッセー君! お願い目を覚まして!」
飛鳥は死んだイッセーの体を何度も揺すっている。
……そんなことをしても無駄なのに。一閃は死んだんだ。
「……すまない、一閃。今まで、大変だっただろ? ゆっくり休んでくれ。絶対に、勝つ。勝ってみんなで帰ろう」
私はイッセーに着ていた服の橋切れをかけておいた。
「フフフフ、イッセンハシンダカ。カイイヌノクセニカイヌシニハムカウカラダ。ムダニイノチトチラシタナ。イヌジニトハマサニコノコトカ」
「っ!」
今、何て言った? 一閃の死が無駄? 犬死に? ふざけるな。ふざけるなふざけるなふざけるなふざけるな!
「ふざけるな!!」
一閃の死が無駄だと!? 仲間のために命をはって、仲間のために戦ったあいつの死を無駄と言ったな!
「許さない! 道元、貴様だけは絶対に許さない! 一閃を、私の仲間を、大事な人を殺した貴様を絶対に許さないぞ!」
憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い!!
今までにない、憎悪が私の体を過巡った。
超秘伝忍法書、私に力を貸してくれ! 大事な、憧れの存在であった一閃を殺したこいつを殺す力を私に!!
私はそう強く超秘伝忍法書に願った。だけど、超秘伝忍法書は何も答えてくれなかった。
「なっ!?」
「スキアリダ!」
動揺した隙に、私は道元に捕まり、飛鳥も捕まってしまう。
「くっ!」
「きゃあっ!?」
私たちは何も出来なくなった。くっ、万事休すか……。
春花SIDE
私たちは絶望している。一閃が死んで、焔ちゃんと飛鳥ちゃんも捕まってしまった。状況は最悪、詰んでいる。
「イッセー……」
「そんな……」
「う、嘘だ……」
柳生ちゃん達、半蔵メンバーも地面に崩れ落ち、絶望的な表情をしている。
日影ちゃんも、ナイフを落として虚ろな目になってる。伊吹達も、白音たち、閃鬼隊のメンバーも絶望な顔になってる。
「もう、終わりですわ……」
「教官がいなければ、私たちでは……」
みんな、諦めていた。だけど、
「何してるのよ! 立ってよ一閃!!」
「っ!」
未来だけ、諦めていなかった。死んだ一閃に向けて叫んでいた。
「何言ってるの未来! 一閃は死んだのよ! 現実を見なさい!」
「一閃は死んでないよ! だって、約束したもん! 絶対に生きて戻ってくるって! 一閃は絶対に約束を守ってくれる! なのに、何でみんな諦めちゃうの!」
「っ……」
確かにそうだ。彼は一度、約束したことは必ず守る。なら、私たちは彼を信じよう。
「そう、だったわね……」
「今、ワシらが一閃にできることは……」
「私たちの思いを一閃さんに届ける!」
私たちは、目を閉じ、一閃の事を強く願い、私たちの力を込めた。
「「イッセー!!」」
「「イッセーさん!!」」
「「「「一閃!!」」」」
「一閃さん!!」
「一閃兄様!!」
「「一閃様!!」」
「師匠!!」
「「「一閃教官!!」」」
私たちが叫ぶと、体が光り出し……。
紫SIDE
「嘘……」
「そんなバカな……」
私とお姉ちゃんは隠しカメラで見ていた映像に絶望した。一閃君が死ぬなんて……嘘だと思いたかった。
「お姉ちゃん、一閃君、死んじゃったの?」
「……出来たら嘘であって欲しい」
……やっぱり、一閃君は死んじゃったんだ。
私は絶望と悲しみで涙を流した。もうダメだ。もう、終わりなんだ。
諦めかけたその時、
『何してるのよ! 立ってよ一閃!!』
「っ!」
未来ちゃんの叫びが耳に入った。
『何言ってるの未来! 一閃は死んだのよ! 現実を見なさい!』
『一閃は死んでないよ! だって、約束したもん! 絶対に生きて戻ってくるって! 一閃は絶対に約束を守ってくれる! なのに、何でみんな諦めちゃうの!』
「っ……」
そうだよね。一閃君、私たちとの約束は必ず守ってくれるよね。
「お姉ちゃん」
「ああ……」
私とお姉ちゃんは頷き合い、目を閉じて強く願った。
「一閃君……」
「一閃……」
「……一閃……」
私とお姉ちゃんがそう言うと、眠っている雅緋さんも一閃君の名前を呟いた。
私たちの体は光りだし、そして……。
一閃SiDE
気が付くと、俺はどこだかわからない場所でふわふわと浮いていた。
「俺は確か、飛鳥達を庇って……死んだんだよな」
そうだ。俺は死んだんだ。っていうことはここは、天国か? いや、俺は罪を犯してきた。俺が天国に行ける分けない。ってここは地獄か。
まあ、地獄でもいいか。仲間を守れたんだから。
『残念だな一閃。まだ、お前は地獄にも天国にも行かないぞ』
「青龍」
すると、俺の秘伝忍法の青龍が俺に話しかけてきた。ってことは、俺は死んでいないのか?
『いや、主は死にましたよ』
『情けねえな。他人を庇って死ぬ何てよ』
「玄武」
今度は玄武が俺に話しかけきた。玄武は古風な亀の部分と、若者の風な蛇の部分の二人の人格がある。あれ? 死んだんなら、ここはどこだ?
『しかし、そこが主らしい』
『だな。流石、我々のお仕えする主だ』
「朱雀、白虎」
朱雀、白虎も現れてこれで、俺の秘伝忍法である四獣達が全て揃った。
「悪かったな。俺の勝手にお前らも巻き込んで」
主である俺が死んだら、たぶん、こいつらも消えてします。
『いえ、それは別に良いのですが、主はこのまま、死んでもいいのですか?』
「……ああ、仲間を守れたしな」
『何が仲間を守れただよ。これを見て見ろ』
玄武の蛇が言うと、目の前に映像が現れる。そこには泣いてるかつ姉たちが映っていた。
『主は自分が命を捨ててでも仲間を守ればいいと思っていたかもしれません。ですが、それは間違いです。主が死に、主の仲間達は悲しんでいます。それに、今の彼女達ではオロチには勝てません』
朱雀がそういうと、オロチにとらわれている飛鳥と焔が映る。
「飛鳥! 焔!!」
『あのオロチを倒せるとしたら主、あなたしかいません』
「だけど、どうしようも出来ないだろ! 俺は死んでるんだぞ! 死んだ俺に飛鳥達を助けられると思うのかよ!」
『なら、諦めるのかよ。あの子達が死ぬのをここで見て、笑顔で迎えるのか?』
っ! そんなこと、出来る分けないじゃないか!
「そんなことをはない! 俺は飛鳥と焔を助けたい! そして、生きたい! 生きて、仲間と共に歩み、忍びの道を究めたい!!」
俺は心の底から叫んだ。俺は生きたい! まだ、死にたくない!
『それがお前の願いか……』
『その願い、我らが叶えよう』
聞いたことのない声が聞こえたと思った瞬間、灼熱の炎と、眩い光が現れ、炎と光りが止むと、赤い龍と金色の龍が現れた。
「な、なんだお前らは!」
『我が名はドライグ! お前の中に潜む神器、赤龍帝の籠手に眠る赤き龍、ウェルシュドラゴンだ!!』
『我が名は黄龍。あなたの隠された力の一部です』
「ドライグ? ウェルシュドラゴン? 黄龍?」
ウェルシュドラゴン、確か、ケルトの伝承に出てくるドラゴンか。
黄龍は四神を統べる中心的な存在だったよな。
『その通りだ。兵藤一誠。お前が生きたいと願うなら我らが叶えよう』
『しかし、我らと供に向かう道は修羅の道。あなたは、修羅の道を進む覚悟がありますか?』
「ああ! 俺はどんな道でも進める! 大事な仲間たちと一緒に入れるなら、俺はどんな運命も受け入れる!」
俺がそういうと、二体のドラゴンは笑っていた。
『そうか。分かった』
『なら、あなたに我らの力を授けます』
そう言うと、二体のドラゴンの体は光だし、光の球体になり、俺の体に入って来た。すると、俺の左腕に赤い籠手のようなものが現れた。
『これが俺の神器の姿。赤龍帝の籠手だ』
神器? よくわからんがかっこいいな。
『わが主、耳をすませてください』
「えっ?」
黄龍に言われた通り、耳を澄ませてみると……。
「「イッセー!!」」
「「イッセーさん!!」」
「「「「一閃!!」」」」
「一閃さん!!」
「一閃兄様!!」
「「一閃様!!」」
「師匠!!」
「「「一閃教官!!」」」
「一閃君……」
「一閃……」
「……一閃……」
……聞こえる。かつ姉、柳生ちゃん、斑鳩さん、雲雀ちゃん、未来、春花さん、日影さん、黒歌、詠、白音、皐月、水無月、総司、伊吹、千歳、芭蕉、芦屋、紫、忌夢さん、雅緋さんの俺のことを呼ぶ声が聞こえる!
「イッセー君……会いたいよ」
「一閃……」
飛鳥と焔の俺の呼ぶ声も聞こえる!
「飛鳥、焔、みんな、今行くぞ!!」
俺がそう叫ぶと、俺の体は光だし……。
飛鳥SIDE
私は道元に捕まって身動きが出来なくなってしまった。
だけど、どうでもいいよ。イッセー君は死んだんだから。
「イッセー……君……」
「くっ!」
もう、私は死ぬんだろうな。だけど、もう一度、もう一度会いたい、イッセー君に会いたい。イッセー君に会いたいよ。
「イッセー君……会いたいよ……」
「一閃……」
私と焔ちゃんはそう言うと、涙を流している。あと一度だけ、会えたらな。
そう思いながら流した涙が超秘伝忍法書に触れたその時、超秘伝忍法書が光り出した。
二つの超秘伝忍法書が光り出したと思ったら、一筋の光りになり、陽の超秘伝忍法書からの光りと陰の超秘伝忍法書の光りが一つになった。すると、金色に輝く一本の巻物が現れた。
その、巻物は死んだイッセー君の体に入り込んだ。
すると、イッセー君の体は金色に光り出し、そして……。
ザシュッ!
「グオオオオッ!」
オロチを切り裂いて私と焔ちゃんを解放した何か。その人は私と焔ちゃんを優しく抱きしめてくれた。
「大丈夫か、飛鳥、焔」
「う、嘘……」
私たちを抱きしめて、優しい笑顔を見せてくれたのは……。
「イッセー……君?」
死んだはずのイッセー君だった。
霧夜SIDE
俺達は蛇女学園から少し離れた場所から、突然現れた光りを見ていた。あれはもしかして……。
「半蔵様」
「うぬ、陽と陰、両方の忍びの道を究め、二つの超秘伝忍法書に認められた忍がたどり着く究極の境地、閃乱」
「そして、妖魔を倒す実力を持つ忍びに贈られる称号、カグラ」
「過去に一人だけ、その二つの境地にたどり着いた忍びがいた。一呼んで閃乱カグラ。最強の忍びに与えられる称号」
閃乱カグラ……彼はその境地にたどり着いたというのか。
一閃SIDE
飛鳥と焔は俺を見て驚いていた。ははっそうだよな。俺は死んだと思われていたからな。
「イッセー君、本当にイッセー君なの?」
「ああ、正真正銘、飛鳥の幼なじみ、兵藤一誠だよ」
「一閃! 生き返ったのか!」
「そうだよ。飛鳥、焔、それにかつ姉たちの俺を呼ぶ声を聞いて俺は戻ってきたんだ」
俺はそう言って飛鳥と焔の頭を撫でた。まだ、二人は驚いている。どうしたんだ?
「一閃、その姿は何だ?」
「えっ?」
焔に指摘されて俺は自分の姿を確認した。両足には白いトラの様な模様の脚甲、右腕に青い龍の籠手、肩と胴体と腰を覆う鎧に、背中に生える紅い翼のような弓。左腕にはさっき、現れた赤龍帝の籠手と亀の甲羅のような盾が装備されている。何なんだこれ?
『これは四獣聖具。主が超秘伝忍法書の力で手にした新たな力です』
『脚甲の名は白虎の爪、青龍の籠手は青龍の牙、朱雀の弓は朱雀の翼、玄武の盾は玄武の甲羅という名前です』
超秘伝忍法書? 超秘伝忍法書は飛鳥と焔が持っている二つだけのはず……うん?
俺は懐に手を突っ込むと、何かが手に触れる。
取り出してみるとそれは金色の巻物だった。
『それは陽と陰の超秘伝忍法書が認めたことによって誕生した究極の超秘伝忍法書、閃です』
「究極の超秘伝忍法書……」
……俺がこんな力を受け継いでいいのか?
『いいんですよ。主だからこそ、ふさわしいんです』
『だからよ、この力でさっさとあのおっさんを倒すぞ』
「ああっ!」
玄武にそう言われて俺は刀を抜く。
「飛鳥、焔、ちょっと待っていてくれ。すぐあいつを片づけてくるから」
「う、うん……」
……二人とも、少し不安そうだな。
「大丈夫だよ。俺はもう死なない。みんなを悲しませたくないから。だから、安心してくれ」
「イッセー君……」
「一閃……」
「一閃、忍びの道を究めるために舞い踊る!!」
俺は刀を抜き、一気に駆け出す。今までより、早く動ける。これが四獣聖具の力?
『そう、この脚甲には私の力を凝縮しているのです』
そうなのか?
俺は道元に一気に近づき、刀を振り下ろす。
「グウウッ!」
道元は刺さった刀を引き抜き、俺に闇のエネルギーを放つ。
「玄武!」
『はい!』
俺は玄武の盾を展開して、道元の攻撃を防いだ。
……こっちも防御力が上がっている。すげえな。
次に俺は朱雀の翼を弓の部分を分離して構える。
「……紅炎朱雀の舞」
弓を放つと、弓は紅蓮の炎を纏って道元を襲う。
「グギャアアアッ!」
道元は痛みでのたうち回りまた、闇のエネルギーを放とうとしている。俺は、また玄武の盾で防ごうとした。その時、何かがどこからか、何かが飛来してきて道元を貫いた。
『……やっと来たか』
黄龍が何か呟いている。やっと来た?
道元を貫いた何かを見てみると、それは刀だった。
「刀?」
何で刀が飛んできたんだ? それに、この刀、すごい力を感じる。取りあえず、刀を引き抜いた。
『この刀は
えっ? あの有名な? 本物?
『本物だ。ある戦いの時に折れたのだが、修復されたんだ』
「そ、そうか。その天叢雲剣が何で俺の所に?」
『それは天叢雲剣がお前のことを主として認めたのさ』
「えっ? そうなのか?」
俺は天叢雲剣に確認を取るように話しかける。すると、俺に答えるかのように、淡く光った。
えっ? この剣って意志があるのか?
「取りあえず、よろしくな」
俺はそう言って、鞘から天叢雲剣を抜いて道元へ構える。
「いくぜ、道元!」
俺は迫り来る触手を天叢雲剣で切り裂いていく。
「ギャアアアアッ!」
斬られた場所は煙を出している。道元も苦しそうにしている。どういうことだ?
『天叢雲剣はオロチを殺した剣だ。その影響でオロチ、蛇やドラゴンを殺す武器、竜殺しになっているんだ』
う~ん、よくわからんな。
取りあえず、倒すか。
『天叢雲剣、これがあると我の超秘伝忍法が使えるのだ』
超秘伝忍法?
面白い。行くぜ!
「超秘伝忍法! 黄龍一閃!!」
俺がそう叫んで、天叢雲剣を振るうと刀から金色の龍、黄龍が飛び出てきた。
黄龍は触手を破壊して、消える。道元は丸裸の状態だ。行ける!
「うおおおっ!」
「ナメルナアアアアッ!」
道元は巨大な腕で俺を弾いた。ダメージは無いが、天叢雲剣と刀が吹っんでしまった。
「ぐっ!」
「イッセー君!」
「一閃!」
「「これを!」」
すると、飛鳥と焔が自分の刀を投げてきた。焔は七本目の刀だ。すると、秘伝忍法書に新たな文字が記される。
これは新たな超秘伝忍法?
飛鳥の刀からは緑色のエネルギーが、焔の刀からは紅蓮の炎が流れる。
「超秘伝忍法奥義! 紅蓮の舞乱れ咲き!!」
俺は二人の刀で道元を切り裂いた。
「ぐああああっ!」
道元は悲鳴を上げ、爆発した。それと同時に忍び結界は解除された。
「ぐっ!」
「イッセー君」
「一閃!」
倒れそうになったのを飛鳥と焔が支えてくれた。
「悪い、飛鳥、焔」
「まったく、お前はいつも無茶をするな」
「イッセー!」
「一閃!」
焔が苦笑いをしていると、かつ姉たちが駆け寄ってきた。だけど、オレの体力も限界……。
俺は静かに気を失った。
前回、死んだイッセーは新たな超秘伝忍法書の力で復活しました。そして、天叢雲剣と四獣聖具を手に入れました。
なお、天叢雲剣と四獣聖具は和泉 俊さんの意見を使わせていただきました。ありがとうございました。
次回は、蛇女編のエピローグです。