忍になりしイッセー   作:汰灘 勇一

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ついに今回は雪泉さんが登場します!

あと、この時期はまだ、両名と両備は月閃女学院の生徒です


第三十三話「私と彼の出会い」

「くっ・・・・・・」

 

『グルルルルルルッ!』 

 

 とある雪山で二体の化け物と少女が向かい合っている。

 

 少女は一言で言うと、美しい。まるで雪山で舞う、雪の結晶。昔話に出てくる雪女のようだ。

 

 彼女の名は雪泉、死塾月閃女学院の生徒だ。任務を終えた後、帰還しようとしたらこの化け物に襲われたのだ。

 

「こんなところで・・・・・・負けるわけには! おじいさまの理想を叶えるまで倒れるわけに!」

 

『ゴオオオッ!』

 

「くっ!」

 

 雪泉は化け物に殴られ、壁にぶち当たり、意識を失いかける。

 

「っ・・・・・・嫌です。こんなところで死ぬなんて・・・・・・誰か・・・・・・」

 

 雪泉が誰かに助けを呼んだその時、黒い影が目にもとまらぬ速さで彼女を救い出した。

 

「やれやれ・・・・・・まさかこんなところで妖魔と出会うなんてよ」

 

 それは黒いロングコートを羽織った少年だ。

 

『・・・・・・キサマ、ナニモノダ?』

 

「おっ? 話せるのか? 俺はだな・・・・・・風が哭き、龍が叫ぶ。人も知らず、世も知らず、影となり邪を討つ! 善忍、一閃!! あっ、参上~!」

 

 少年、一閃は歌舞伎のポーズをとる。

 

「・・・・・・う~ん、やっぱり、ハリケンジジャーよりゴウライジャーの名乗りの方が俺に合うかな?」

 

 一閃は悩んでいる。まあ、一閃以外にはどうでも良さそうな内容だが。

 

「まあ、いい。取りあえずあの妖魔をどうにかするか。だから、君はそこで待っていてくれ」

 

 一閃は雪泉を壁に寄りかかせ、刀を抜いて構える。

 

 

 

「一閃、忍びの道を究めるために、舞い踊る!」

 

 俺は瞬時に妖魔に近づき、拳をたたき込む。

 

 今、放った技は忍掌。俺が編み出した忍体術の究極奥義の一つで、客観的に見ると掌底を放ってるようにしか見えない。だけど、掌の全体に一つ一つ、気を何層にも練りこんで、敵を吹き飛ばす。簡単に説明すると、高速で向かってきた巨大鉄球を全身で受けて、吹き飛ぶ感じだな。

 

 そして吹き飛んだ妖魔の腕を切り落とす。

 

『グウウウッ! クソ、ニンゲンフゼイガ!』

 

『コロス! ブチコロス!!』

 

 妖魔は俺に傷つけられたことにキレる。悪いが、お前らが俺を殺すことはあり得ない。

 

「悪いが、お前らは俺に倒される。黄龍閃刃!」

 

 俺は刀に黄龍のオーラを付与し、妖魔を切り裂く。ちなみにこれは秘伝忍法ではない。

 

「せい、バイバイ!」

 

『ぐあああ~!』

 

 妖魔は倒れ、爆発する。

 

「さて、どうしようかこの子・・・・・・」

 

 俺は気絶した女の子をちらりと見て悩んだ。冬山だし、置いていくのはな・・・・・・取りあえず、俺の隠れ家にでも連れて行くか。

 

 

 

 

「っ・・・・・・ここは?」

 

 私は気がつくとどこだか分からない場所で寝かされていた。

 

 辺りを見渡すと、どこかのロッジの一室のように思えた。私は暖かいベッドで寝かされていた。

 

「あっ、目が覚めた?」

 

 すると、優しそうな男の人が部屋に入ってきた。

 

「あ、あのあなたが私を助けてくれたのですか?」

 

「うん、そうだよ。俺の名は一閃。本名は兵藤一誠。よろしく」

 

 彼は私に人懐っこい笑顔を見せてくれた。私はその笑顔に少し、どきりとしてしまった。

 

 

「はい、温かいココアだよ。これを飲めば暖まるよ」

 

「あ、ありがとうございます・・・・・・」

 

 私は一閃さんからココアを受け取り飲む。・・・・・・おいしい。

 

「ええと、飲んでる最中で悪いけど、君は死塾月閃女学院の生徒で良いんだよね?」

 

「はい・・・・・・自己紹介がまだでしたね。私の名は雪泉。高等部一年生で、死塾月閃女学院筆頭にして黒影の孫です」

 

「そうか・・・・・・黒影様のお孫さんね・・・・・・」

 

 一閃さんはお祖父様のことを知ってるようだ。

 

「お祖父様のことをご存じなのですか?」

 

「ええ、名前だけですが、半蔵様から色々と話を聞いています。何でも、大事な親友だと」

 

「そうですか・・・・・・」

 

「月閃女学院の生徒って事は俺のことを恨んでるのか? 元悪忍なのに善忍になった俺のことを」

 

 一閃さんは私に聞いてくる。確かに、そうですね。

 

 最近、一閃さんは忍び専門雑誌によく載っている。私達選抜メンバーの何人かは彼のこと悪忍のくせに善忍になった許されない存在だと思っていた。だけど、一般生徒達は彼の虜になっていた。かっこいい、やさしそう。こんな人に守られたい。そう言っている。

 

 私は馬鹿馬鹿しい。彼はわざと優しそうにしたりかっこつけようとしているのだ。悪忍だったときの印象を軽減しようと。

 

 だけど、彼は彼を忌々しく思っている私を助けた。

 

「・・・・・・何で、私を助けたんですか?」

 

「えっ?」

 

 一閃さんは私がこう聞いたのを何で、聞いたのか分からないという顔をしている。

 

「助けるのに理由が必要なんですか?」

 

「い、いえ、でも私達はあなたのことをよく思ってないんですよ? それを何故助けるのですか?」

 

「う~ん、助けたいから助けるそれだけなんだよね。俺のことをどう思っていても関係ない。目の前に助けられる人がいたら助ける。それが俺の生き方かな?」

 

 一閃さんはどこか遠くを見ながら言っている。何故、彼はそんなに真っ直ぐな信念を貫けるのでしょうか?

 

「・・・・・・雪泉さんは何で俺たちのことを憎んでいるの?」

 

 一閃さんはぽつりと聞いてきた。・・・・・・確かに気になるでしょうね。私が悪忍を憎んでいる理由が。

 

「・・・・・・私の両親は悪忍に殺されました。それから、私はお祖父様に育てられました。お祖父様は善のみの世界を作ることを夢に見ています。私はお祖父様の夢を叶えようと思いました。私のような人を作らないために・・・・・・」

 

「・・・・・・成る程。それで?」

 

「ええと、どういうことですか?」

 

「そんな世界を作った後どうするんですか? 復讐して満足なんですか? 他に何かやりたいことはないんですか?」

 

 他にやりたいこと・・・・・・特に今のところはないですね。

 

「特に、ないです。それ以外にしたいこともありませんから」

 

「・・・・・・そうですか。ちょっと、俺の話を聞いて貰って良いですか?」

 

「え、ええ・・・・・・」

 

 どんな話か私は気になりながら肯定する。

 

 一閃さんは遠い目をしながら話を始める。

 

「俺が悪忍になった理由は二つ。一つは・・・・・・復讐のためだ」

 

「えっ?」

 

 私は驚いた。一閃さんが悪忍になったのは復讐のため? どういうことでしょうか?

 

「俺の母親は誰かに殺害され、俺は親の敵を討つために悪忍になった。だけど、犯人は俺を悪忍にした人だった。それだけじゃない。そいつは、俺の仲間達を生け贄に化け物を作ろうとした。俺はそれが許せなくて、そいつを殺した」

 

 ・・・・・・話を聞いただけだと、簡単に思えるけど、そこには長い物語があるんでしょうね。

 

「皮肉な話だろ? 犯人を殺すために悪忍になったのに、そいつの手の上で踊らされているなんて知らずにな。それで、復讐したのは良いけど、その後、どうしたらいいか少し、分からなくなった。復讐を目的にしてたから、それからどうすれば思いつかなかったんだ。だけど、俺はもう一つの悪忍になった理由を思い出したんだ」

 

「もう一つの理由?」

 

「ああ、俺のもう一つの理由は忍びになりたかったからなんだよね」

 

「え?」

 

 忍になりたかった? どういう事でしょうか?

 

「はははっ、俺は一般人の家庭で生まれたんだ。忍のことは半蔵様から聞いてたから、憧れたんだ。それで、忍になりたい。そう思っていたんだ。それで、何で憧れたのか思い出したんだ。忍みたいに強くなって大事な人を守りたいんだって。だから、俺は大事な人を、みんなを守れるくらいに強くなろう。そして、俺みたいな人間が生まれないようにしよう。善と悪、この両方が共存できるような世界を作ろうって。まあ、雪泉さんと似たようなことだけどね」

 

 一閃さんはいったん、ココアを飲み、話を再開する。

 

「それに、雪泉さん達がもし悪忍を滅ぼしたら、今度はその家族が雪泉さんたちを憎む。復讐するって負の連鎖が続く。だから、そんな鎖は誰かが断ち切らないと駄目なんだ。復讐なんてバカなことをするのは俺なんかで十分なんだよ」

 

 一閃さんは苦笑いを浮かべてる。・・・・・・強い。どうしたら、こんなに強くなれるのでしょうか?

 

「偉そうなことを言ってるけど、俺は雪泉さん達の生き方を変えろ何て言ってるわけじゃない。生き方を決めるのは雪泉さん達だから。俺が口出す権利はないんだ。ただ、他に生きる目標を見つけて欲しいんだ。雪泉さん達にしかできない何かをね」

 

「・・・・・・私達にしかできない何か・・・・・・」

 

「そう、今すぐじゃなくて良いからいつか、雪泉さんが胸を張って言える目標を見つけて欲しい。自分のもう一つの夢をね・・・・・・」

 

 そう言って一閃さんは私の頭を撫でてくれた。とても恥ずかしいけど、気持ちいい・・・・・・

 

 私はそのまま撫でられた。

 

 

 

 そして、それから一時間ぐらいたった頃。

 

「さてと、そろそろ俺は半蔵学院に帰るよ」

 

 一閃さんはすでに帰る用意をしていた。もう少し、一緒にいたい・・・・・・。

 

「あ、あの! よろしかったら携帯の番号とアドレスを交換しませんか?」

 

 私は勇気を出して、携帯を取り出す。あまり、私は番号は交換しないのですが、これからも会いたいですし・・・・・・。

 

「いいですね。交換しましょう」

 

 一閃さんは了承してくれた。私は一閃さんと番号を交換した。

 

「じゃあ、またいつか会いましょう」

 

「あっ・・・・・・」

 

 一閃さんはそう言い残し、颯爽と帰って行った。

 

 

 一閃さんと出会って数日後

 

「雪泉ち~ん、なにそわそわしてケータイ見てるの~?」

 

「し、四季さん!? 覗かないでください!」

 

 一閃さんに送ったメールの返信を雑誌を見ながら待っていると、四季さんが私のケータイを覗いてきた。

 

「でも、雪泉ちゃんがそんなにケータイを気にしてるの珍しいよね?」

 

「・・・・・・殆ど使わない」

 

「何があったんですか雪泉さん?」

 

 すると、美野里さん、叢さん、夜桜さんも心配してきた。

 

「もしかして男でも出来たの雪泉ちん~」

 

「ぶっ!? そ、そんなじゃ!」

 

 四季さんに反論しようとしたその時、メールが来た。

 

「っ!」

 

 私は急いでそのメールを見た。すると、その内容に私は頬を染める。

 

「・・・・・・本当にどうしたの雪泉ちん」

 

「何でもありませんよ~♪」

 

『いい加減にしなさい! このバカ犬!』

 

『きゃう~ん! 両備ちゃん、もっと激しく~!!』

 

 ・・・・・・どこからかある姉妹のやりとりが聞こえる。

 

「・・・・・・何をやってるんだろうあの二人は」

 

「では、止めに行きましょう~♪」

 

 私は機嫌良く、二人を止めに行く。

 

 

 

『ええと、春休みなら、月閃女学院に行けそうです。その時になったらこちらから連絡を入れます。また、会いましょう 一閃 PS 何かお土産に持って行くので楽しみにしていてください』

 

 

 二人を止めるとき、機嫌がよすぎて手加減が出来ず、校舎の半分が凍りずけになった。その後、お祖父様に怒られました・・・・・・

 




やっとこの話が書けました! どう雪泉さんのフラグを立てるか苦労しました。

なお、この話に出てきた忍掌はカサブタさんのアイディアです。ありがとうございます。

あと、私事ですが、なんとやっと! シノビバーサス 少女達の証明を手に入れました!

次回は最後の半蔵の生徒誕生の話を書きます。

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