とある場所に存在する忍びの養成学校、死塾月閃女学館。そこは黒影の孫、雪泉を筆頭にした選抜メンバーが一人前の忍びになるため日夜修行をしている・・・・・・のだが、今日は修行は休みで雪泉はある人物が来るのを待っていた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
雪泉はそわそわとしていた。何度も時計を見てある人物を来る時間を確認する。
「ゆみちん、落ち着きなよ。何度時計を見てもゆみちんの待ち人が来る時間は変わらないよ?」
「・・・・・・そうだ落ち着け」
落ち着きがない雪泉を仲間の四季と叢がたしなめる。
「そ、そうですね・・・・・・」
雪泉はそう言われて落ち着こうとするが、すぐに時計を見てしまう。
それを見た他の仲間はため息をつく。
「重症じゃな」
「ここまで雪泉ちゃんを夢中にさせる相手ってどんな人なんだろう」
「確かに気になるわね~」
「ねえねえ、今日来る人、どんな人かな? 両奈ちゃんをいっぱいいじめてくれるかな~」
夜桜はあきれて、美野里と両備は雪泉の相手に興味を持っていた。両奈は・・・・・・相変わらずドMだ。
「あんたは犬らしく地面に這いつくばってなさい!」
「きゃうううん!もっと罵って!」
両備はそんな両奈を罵り、両奈は嬉しそうにする。
「・・・・・・この二人はいつも通りじゃな」
夜桜はあきれて頭を抱える。
そして、待つこと数分後、雪泉の待ち人が来る十分前ぐらいになると、待ち合わせ場所に近づいてくる一人の男子・・・・・・半蔵学園の制服を着た人だ。
雪泉はその男子を見つけると顔をキラキラとさせる。
「一閃さ~ん!」
雪泉は今まで夜桜達が見たことのない笑顔で相手に手を振る。
「雪泉さん!」
男子も笑顔で手を振る。そして、目にもとまらない速さで近づいてきた
叢達はその速さに驚くが、雪泉は気にしない。
「雪泉さん、今日はお招きありがとうございます。これは浅草名物の和菓子です。よかったら皆さんで食べてください」
男子は礼儀よく挨拶をしてお土産を渡す気の利いた人だ。
「ありがとうございます。一閃さん」
雪泉は嬉しそうにお土産を受け取る。
「ええと、ところで雪泉さん、後ろの方々は・・・・・・」
男子、一閃は叢達を見て困惑する。知らない人がいて驚いているみたいだ。
「はいは~い、あたしの名前は四季、雪泉ちんと同じ選抜メンバーだよ! ちなみに一つ年下だよ。よろしく!」
「・・・・・・叢だ。雪泉とは同級生で選抜メンバーだ」
「夜桜じゃ」
「美野里だよ。甘いものと楽しいことが大好き!」
「私とこの四人を合わせた五人が選抜メンバーです」
「そうなんだ。俺は一閃。本当の名前は兵藤一誠って言う。みんなにはイッセーとか一閃のどっちかで呼ばれてる。よろしく」
それぞれが自己紹介をして、一閃は笑顔で四人に握手していく。
「こちらの二人は選抜メンバーではないのですが、私達のよき友人です」
「両奈ちゃんだよ! 痛いこと、罵られることが大好き! だから踏んで! 蹴って罵って!」
「・・・・・・両備よ。一応、このバカ犬とは姉妹で双子なの」
雪泉は両奈と両備を紹介するが、二人のキャラは強烈で一線も引くと思ったが・・・・・・
「両奈・・・・・・両備・・・・・・妹・・・・・・双子・・・・・・オッドアイ・・・・・・正反対の性癖・・・・・・もしかして・・・・・・・」
一閃は何かぶつぶつとつぶやき、何かを思いついたらしい。
「一閃さん? どうしたのですか?」
「い、いや、何でもない。ちょっとキャラが濃くて驚いていただけだから。とにかくよろしく」
心配そうにする雪泉に対して一閃は苦笑いをする。
「では校内を案内しますね一閃さん」
雪泉は一閃の手を引いて校内を案内しようとする。
「雪泉ちん、ちょっとたんま」
だが、そんな雪泉を四季が止める。
「どうしたのですか四季さん?」
「イッセーちんって今は半蔵学院の生徒だけど、元は悪忍だよね。そんな人、信用して良いのかな?」
四季は少し敵意を込めた目で一閃を見る。気づけば夜桜と叢もそんな目で一閃を見る。美野里はそんな目で見ていないが何か迷っているようだ。
「四季さん! 一閃さんは私の命を救ってくれました! 信頼できるいい人です!」
「それでも実力とか見ときたいしね」
疑うような四季に雪泉はキレる。
「成る程、俺の強さを証明したらいいのか。俺は、良いぜ」
「一閃さん!」
「イッセーちん、ノリ良いね。じゃあ、誰かと戦って貰おうか」
「俺は誰だって良いぜ。ここにいる選抜メンバーと両奈ちゃん、両備ちゃんの七人を全員同時に相手を出来るけど」
一閃は四季達選抜メンバーを挑発するかのような発言をする。実際に四季達はむっとした顔になる。
そして、そんな選抜メンバーの中から一人の少女、鬼の仮面をかぶった少女、叢が出てきた。
「・・・・・・我が相手をしよう。一対一の勝負だ」
「分かった。受けて立つ」
「・・・・・・場所を変えよう。・・・・・・付いてこい」
叢は背を向けて歩き出す。一閃はそれについて行く。
叢が向かった場所は死塾月閃女学館の校庭だった。
『ねえ、叢さんが校庭で誰かと戦うらしいですわ』
『戦う相手は・・・・・・あら? あの方は雑誌に出てくる一閃さんでは?』
『わあ、私、大ファンなのよ! あとでサイン貰おうかしら』
遠巻きに叢達を見ていた生徒達は一閃がいることに驚いている。
叢はそんなことを気にせず、武器である大きな包丁と槍を構える。一閃も刀を構える。
叢は忍び転身をしているが、一閃は忍び転身はせずに学生服のままだ。
「さて、始めようか」
「・・・・・・貴様、忍び転身はしないのか?」
「ああ、忍び転身しなくてもそこそこ戦えるだろうし」
一閃は余裕、という感じだが、それに対して叢はいらついている。
「・・・・・・負けても後悔するなよ」
「ああ、まあ、負けることはないと思うけど」
「ええと、勝負の内容は怪我をしない程度で膝のどちらかでも地面に付けたら負けでよろしいですか?」
「・・・・・・かまわない」
「はい」
にらみ合う二人。そんな二人に雪泉は冷静に尋ねる。
二人は了承する。
「・・・・・・では、試合開始!」
雪泉のかけ声で二人は走り出す。
まずは叢が槍を突く。だが、一閃はそれを避ける。
「・・・・・・それなりにやるらしいな。なら、これはどうだ!」
今度は叢は目にもとまらぬ速さで槍を突くが、一閃も全く同じ速さで避ける。
「なっ!?」
「おいおい、これで終わりか? 俺はまだまだいけますよ」
驚く叢に対して一閃は余裕という表情をする。
「なめるな!」
叢は包丁を振り下ろす。一閃は避けようともしなかった。
「一閃さん避けてください!」
雪泉は叫ぶが、一閃は避けない。
一閃が切られると思った他の生徒達は目をつむった。・・・・・・が一閃の悲鳴は聞こえない。
おそるおそる目を開けると、一閃は切られておらず、叢の包丁の平らの部分に乗って立っていた。
『っ!?』
「やれやれ、顔は仮面で隠しているのに心は隠しきれていないようですね。それじゃあ、俺には勝てませんよ」
雪泉達は驚いた。雪泉達は一閃が避けた瞬間が見えなかったのだ。雪泉達もそれなりに強く、ある程度の速さなら目で追えるが、一閃の速さは目で追えなかった。しかも、叢は包丁に乗られているのに重く感じていなかった。
「さて、終わりにしますか!」
一閃は高く飛び、空中で一回転して、鞘に入った刀を振り下ろす。刀は叢の頭に当たりそうになる。
「っ!」
叢は頭をそらして避けた。だが、付けていたお面に当たり、お面は割れてしまった。
「っ! ご、ごめんなさい! 当てるつもりはなかったんですけど、大丈夫ですか!? 怪我してませんか!?」
一閃は当たったと勘違いして慌てて叢に近づき、謝りに行く。
だが、そこで一閃は言葉を失う。
仮面が割れて見えた叢の顔はとてもかわいらしく、隠しているのがもったいないほどだった。
「ええと・・・・・・」
一閃は何か言おうとするが、言葉が出ない。
「み、見ないでください! わ、我の汚い顔なんて見ても何も得がありません! すみません!!」
すると、叢は崩れ落ちて顔を隠して早口で喋り自分をけなす。
「ええと、どういうことだ?」
「あ、イッセーちん、むらっちは顔を隠すものがないとすごいネガティブになるんだよね。早口で喋って自分をけなすの」
「何か顔を隠すものがあれば落ち着くのですが・・・・・・」
少し、混乱している一閃に四季と雪泉が説明する。
「顔を隠すもの? あっ、そうだ・・・・・・」
何かを思い出した一閃は、ごそごそと鞄の中を探す。
「あったあった。はい、叢さん」
目当てのものを見つけて、それを叢に渡す一閃。
それは鬼の仮面だった。
叢はそれを受け取ると慌てて顔に付ける。
「・・・・・・すまない、助かった」
「いえ、元はお面を壊した俺が悪いんですから」
お面を付けた叢は落ち着く。一閃は普通に会話をする。
「・・・・・・ねえ、イッセーちん。何で鬼のお面を持っていたの?」
「ああ、俺、悪忍の時、鬼の仮面を付けてたんだ。今でも何かの時のために持ってるんだ」
「へ、へえ~」
「ちなみに、あれは未使用のだから。叢さん、それあげるよ」
「・・・・・・良いのか?」
「はい、だって・・・・・・他にも持っているんで」
そう言って懐から口の部分が隠れていない鬼の仮面を出す一閃。
『他にもあったの!?』
「いや~最初は顔を隠して正体がばれないようにするためだったんだけど、なんだかんだ気に入っちゃったんだよ」
「・・・・・・何となく分かる」
叢以外の月閃の生徒が一閃に突っ込む。叢は一閃の言ってることに同意する。
「それでいくつかコレクションがある」
「いっ、イッセーちん、その話は置いといて・・・・・・勝負はどうするの?」
「あっ・・・・・・」
お面のコレクションについて話しそうになった一閃の話を四季がそらす。
「ええと、中断したから続きを・・・・・・」
「・・・・・・いや、我の負けでいい」
一閃はやり直そうかと言おうとしたが、叢は自分の負けを認めた。
「我は膝を付いた。ルール上、我の負けだ」
「でも、あれはお面が割れたから・・・・・・」
「それは我がお前の剣を避けきれなかったから。それを含めて我の実力だ・・・・・・」
「そ、そうかな・・・・・・」
「では、一閃さんの勝ちでいいですね」
一閃はまだ納得していないが、雪泉が締めくくる。他の選抜メンバーは納得して頷いた。
「いや~すごかったね。イッセーちん、速すぎて目で追えなかったよ」
「うん、格好良かったよお兄ちゃん!」
「あ、ありがとう四季ちゃん、美野里ちゃん・・・・・・ってお兄ちゃん?」
四季と美野里は一閃に近づいて褒める。一閃は美少女二人に褒められて照れるが、美野里にお兄ちゃんと言われて戸惑っている。
「うん、美野里、お兄ちゃんのこと気に入っちゃった! だから、お兄ちゃんって呼んでいい?」
「まあ、俺は別にいいけど・・・・・・」
一閃は断る理由もないから了承する。
「やったー!」
美野里ちゃんは嬉しそうに飛び跳ねる。元気な子だ。
「ねえねえ、イッセーさん」
すると今度は両奈が一閃に近づく。
「どうしたんだい両奈ちゃん」
「イッセーさん、両奈ちゃんのことをけなして!」
「はい?」
予想外すぎることを言われて一瞬、思考が停止する一閃。
「ええと、けなすってどうすればいいのかな?」
「見下した目で両奈ちゃんを雌豚って言ってゴミ扱いしてくれたらいいの!」
困惑する一閃に対して、両奈は興奮しながら近づく。
一閃は何とか望み通りにしてあげたいと考え、自分の知り合いの中での一番のSである春花をイメージすることにした。
「・・・・・・黙れ、この雌豚」
一閃は叢との戦闘では見せなかった殺気をだし、見下した目でドスのきいた声を放つ。ちなみに殺気は黒いオーラとして見えてる。
ドスのきいた声、さらに殺気を浴びて美野里は泣きそうになり、四季、夜桜、叢は身構える。雪泉は驚き、両備は少しだけ頬を赤くする。
「っ!? ご、ごめん! 怖がらせるつもりはなかったんだ!」
一閃は美野里が泣き出しそうになったのを見て直ぐに元通りに戻り、あやす。
そして両奈・・・・・・
「きゃうんきゃうん! すごく良い! もっと! もっと罵って!」
大・大・大興奮している
「決めました! イッセーさんが両奈ちゃんのご主人様になる人! 両奈ちゃん、ご主人様専用の奴隷になる!」
「はああっ!?」
予想外すぎることに一閃は驚いて、頭がショートしてしまった。
「何いってんのよこのバカ犬! あんたは両備の奴隷でしょ!」
「きゃうん! ごめんね、両備ちゃん! もうご主人様でしか満足できないの!」
「もう、こっちに来なさい!」
両奈は両備に連れて行かれる。そこで一閃も落ち着く。
「・・・・・・何だったんだ?」
「すいません、あの二人はいつもあんな感じなので放っておいてください」
「は、はあ・・・・・・」
「では校内の案内を・・・・・・」
両備達がいなくなり、今度こそ一閃を案内しようとする雪泉。だが、また邪魔するものがいた。
「お兄ちゃん、美野里と遊ぼう!」
「美野里さん! これから一閃さんは私と校内を・・・・・・」
「レッツゴー!」
「うそおおおおん!?」
今度は美野里が一閃を掴んでどこかに連れ去ってしまう。
「一閃さん!」
雪泉は一閃に手を伸ばそうとしたけど無意味だった。
「・・・・・・どうしてこうなった」
俺は休みを利用して死塾月閃女学館を尋ねにきた。飛鳥達は今度の無人島の合宿に参加するときに着る水着を買いに行ってる。
そして、死塾月閃女学館に着くと直ぐに戦うことになるし、美野里ちゃんからお兄ちゃんと呼ばれ、両奈ちゃんに頼まれてけなしたら何故かご主人様と呼ばれるし、美野里ちゃんに拉致されるし予想外のことばかり起こるよ。
何故か、両奈ちゃんをけなしたとき、どきどきしたけど、何でだろう。
「ねえ、お兄ちゃん何して遊ぶ?」
美野里ちゃんはキラキラした目で俺のことを見てくる。
・・・・・・この子は俺のことが怖くないのか? 憎くないのか? 月閃の選抜メンバーは悪忍を恨んでいると聞いたんだけど。
「う~ん、別に何でも良いんだけどさ、雪泉さんを残していってよかったのかな・・・・・・」
「良いの良いの! 学校案内なんてつまんないしあとで良いよ! 遊んでる方が楽しいよ?」
美野里ちゃんは笑顔で言ってる。
「・・・・・・仕方ないな。じゃあ、少し遊んだらみんなの所戻ろうか」
「うん! じゃあ、鬼ごっこやろうよ。お兄ちゃん鬼ね!」
「ちょっ!」
「よーいどん!」
美野里ちゃんは走り出す。・・・・・・仕方ないな。まあ、俺は元気いっぱいの子は嫌いじゃないし。最後まで付き合うか。
「十数えたら追いかけるからな! い~ち、に~、さ~ん・・・・・・」
俺はゆっくり十数えて、追いかける。
追いかけると直ぐに美野里ちゃんを見つける。
「はい、捕まえた」
美野里ちゃんの背後に回り、タッチする。
「むう~早いよ!」
「はは、ごめんごめん。今度は美野里ちゃんが俺を捕まえる番かな」
「うん! 直ぐ捕まえるからね!」
今度は美野里ちゃんが十数えて追いかけてきた。
「待て待て~!」
美野里ちゃんは俺を追いかける。俺はあえて捕まりそうな速度で逃げる。
美野里ちゃんがタッチするほんのちょっと前にひらりと避ける。
「むう~なかなか捕まらない!」
「ははは、美野里ちゃんこっちだよ!」
「待て待て~!」
「待たない待たない」
俺たちはこんな調子で一時間ぐらい鬼ごっこをした。
一時間も経つと、美野里ちゃんはへばって地面に寝転がる。
「もうギブアップかい? 美野里ちゃん」
「うん・・・・・・もう疲れた」
「そっか。じゃあ、鬼ごっこは終わりにしようか。・・・・・・楽しかったかな美野里ちゃん」
「うん! 楽しかったよ! あんなに誰かと遊んで貰ったこと久しぶりだよ。黒影おじいちゃんとしばらく遊んで貰ってないから・・・・・・」
さっきまで笑顔だった美野里ちゃんは悲しそうな顔をする。
黒影おじいちゃん、雪泉さんのおじいちゃんで、悪忍によって親を殺された美野里ちゃん達を引き取った心優しい人。
雪泉さんに話は聞いていたが、最近は病気で寝たきりらしい。
「・・・・・・なあ、美野里ちゃんは俺が憎いか?」
「えっ?」
俺はずっと気になっていたことを聞いた。雪泉さんたち選抜メンバーは悪忍に親を殺されて悪忍を恨んでいる。だから、元悪忍の俺だって憎いはずだ。
「・・・・・・憎くないって言ったら嘘になるけど復讐したいっては思わないよ」
「えっ?」
予想外の答えに俺は驚いた。
「だって美野里が復讐したら美野里みたいに大切な人を失って悲しむ人が増えるだけだもん。そんなことしても黒影おじいちゃんは喜ばないよ」
・・・・・・優しいな。
俺は美野里ちゃんに対してそう思った。甘すぎるほど優しい。こんなに優しいなら忍びとしてやっていけない。俺が言えた事じゃないけど、この子が戦いに生き残れるとは思えない。
だけど、今の忍びにはこんな純粋な優しさを持つ忍びが必要なのかもしれない。
「・・・・・・美野里ちゃんは優しいな」
俺は優しく美野里ちゃんの頭を撫でる。
「えへへへ・・・・・・」
美野里ちゃんは嬉しそうにする。
それと同時にキュルルと美野里ちゃんのお腹が鳴る。
「えへへへ・・・・・・お腹すいちゃった。お菓子取ってくるね!」
笑顔で美野里ちゃんは校舎の方に向かって走り出す。
「あ、待って美野里ちゃん・・・・・・行っちゃったよ」
俺の話を聞かずに行ってしまったことにちょっと困ったけど、まあ、いいか。それより、あの二人と話をした方が良いかな。
「さて、出てきなよ。俺たちのあとを付いてきたんだろう? 両奈ちゃんに両備ちゃん」
俺は木の陰に隠れている二人を呼んだ。美野里ちゃんと遊んでいるときから二人の視線を感じていた。
「きゃう~ん! すごい! 見抜いてたんだ! 流石、ご主人様!」
「・・・・・・流石、閃乱カグラね」
二人は素直に俺の前に現れる。
「まあね、そうそう、君たちに聞きたいことがあったんだ」
「聞きたいこと?」
「・・・・・・何よ」
「君たちは・・・・・・両姫さんの妹かい?」
「「っ!」」
俺の問いに、二人の表情は変わった。さっきまで目がとろんとしていた両奈ちゃんがまじめな顔になる。
「・・・・・・何でお姉ちゃんのことを知っているの?」
「ああ、前に仕事で何回か会ったことがあって話をするようになったら気が合っちゃってね。それで仲良くなったんだ・・・・・・」
「ふ~ん・・・・・・」
俺がまだ悪忍の時、飛鳥と再会するずいぶん前に俺はある仕事で両姫さんと出会った。善人と悪人の違いはあったけど、大切な人を守りたい。その考えは一緒で気が合い、時々あって話をするようになった。
両姫さんの話す内容は大抵二人の妹のことだった。
俺は正直言うと両姫さんが羨ましかった。家族と楽しく暮らせていることが親を失った俺にとっては羨ましかった。
「ねえ、あんた、姉さんを殺した雅緋って忍びは知ってる? あんたがいた学校にいたんでしょう。だったら知ってるはずよ」
・・・・・・二人は雅緋さんが両姫さんを殺したと思っている? いや、そう聞かされていたのか?
「雅緋さんのことは知っているけど、雅緋さんは両姫さんを殺した犯人じゃない」
「えっ? 嘘! 両備達は雅緋が姉さんを殺したって・・・・・・」
「・・・・・・そりゃあ、君たちが知ってはいけないことだからだよ」
「知ってはいけないこと?」
「ああ、君たちのお姉さんを殺したのは結構危険な奴らでね。そいつらの事を知ることが出来るのは忍び学校を卒業するか、忍び学生にしてカグラにならないと教えてくれないからね」
俺が雅緋さんが昏睡状態になった事件の真相を聞かされたのもカグラになったからだ。両姫さんもあいつらに・・・・・・。
「どういうことよ・・・・・・何で忍び学校を卒業するまで教えてくれないのよ!」
「そりゃあ、君たちが弱いからだよ」
「はあっ!?」
「えっ?」
「あいつらは手強くてね、並の忍者じゃ勝てない。最低でも学校を卒業しないと相手にすることは出来ないだろうね」
俺もカグラになったから特例として教えて貰っているけど、普通は卒業しないと教えて貰えないだろう。
「だったらあんたから無理矢理・・・・・・!」
両備ちゃんは俺に向けてライフルを向ける。俺はひるまず、そのライフルを掴む。
「っ!」
「無理矢理聞き出すか。だけど、君には無理だね。さっきの戦いの速さを目に追えなかった君じゃあ俺を屈服させることは出来ないよ」
「・・・・・・じゃあ、どうすればいいのよ」
「強くなるしかないね。強くなって忍び学校を卒業するしか。大丈夫だよ。君たちなら強くなるよ」
俺は両備ちゃんを優しく撫でる。だが、両備ちゃんはその手を払う。
「やめてよ! 何で両備に優しくするの!? 優しくしてくれてもどうせいなくなっちゃうんでしょ!」
そう言う両備ちゃんは泣いていた。・・・・・・お姉さんを亡くしたから自分に親しくしてくれる人がいなくなるのがイヤなんだな。
俺は払われた手でまた頭を撫で、抱きしめる。
「ちょっ! 何をすんのよ!」
「大丈夫だって俺は死なない。絶対に死なない。忍びの道を究めるまでは」
「ふえっ・・・・・・」
「それに俺、閃乱カグラだし」
「ぷっ、そんなの関係ないでしょ」
両備ちゃんは少しだけ笑った。
・・・・・・やっと笑ってくれたな。
「むう、いいな両備ちゃん・・・・・・」
両奈ちゃんは少しだけ羨ましそうにする。
『きゃああっ!』
「っ!」
どこからか美野里ちゃんの悲鳴が・・・・・・それに妖魔の気配が!
「ここにあいつらが!」
俺は刀を背負い、気配を感じた場所に急ぐ。・・・・・・間に合えよ!
「くっ、何じゃこいつら!」
「マジ気持ち悪い!」
「だが強い・・・・・・!」
「こ、怖いよ・・・・・・!」
美野里が一閃と遊んだ後に、お菓子を取りに行く途中、夜桜、四季、叢と合流して校舎に向かっていたのだが途中、謎の化け物に襲われたのだ。
その化け物は人型の化け物が十体ぐらい、大型の化け物が三体。四人は攻撃するが、化け物はその攻撃にびくともしない。
「夜桜ちゃん・・・・・・もうダメだよ・・・・・・」
「諦めちゃダメじゃ! 希望を持て!」
「しかしこれは・・・・・・」
「ちょっとね・・・・・・」
四人はすでにボロボロになっていた。体力もすでに限界なのだ。
「どうする? 最後に一発秘伝忍法で殲滅する?」
「・・・・・・やるしかないか」
四人が構えたその時、一つの影が空から降りて来た。
「影に向かいて影を斬り、光に向かいて光を斬る! 閃乱カグラ一閃、見参!」
そこには武器を構えた一閃がいた。
「悪い、遅れた」
「イッセーちん!」
「イッセー!」
「・・・・・・一閃!」
「お兄ちゃん!」
急いで戻ってきて何とか間に合った。みんなボロボロだけど、一応無事らしいな。
「・・・・・・みんな、ここは俺に任せてくれ」
「イッセーちん、でもあいつらすごく強いんだよ?」
「んなの知ってる。だけど、あいつらを倒すのが俺の仕事だからな・・・・・・」
俺は刀を抜き、妖魔へ向けて走り出す。
「妖魔、お前達は俺が総て倒す! 超忍法、舞獅子!」
俺はハリケンイエローの使う忍法、舞獅子で分身し、人型妖魔にに斬りかかる。
刀に色々な属性を付与させて斬りかかる。そして、分身で翻弄する。
「これで終わりだ! 迅雷流剣技、雷撃斬!」
刀の先端に雷を纏わせ、何度も妖魔を切り裂く。
「これで決める! 超忍法! 影の舞!」
俺は体の重さで身動きが遅い三体の妖魔を障子状のフィールドに閉じ込め、超高速で連続で攻撃する。
何度も斬りつけると妖魔は倒れ込み、爆発する。
「セイ、バイバイ!」
俺は刀を鞘にしまう。今回は見た目ほど強くなかったな。
「すごいよイッセーちん! 化け物を簡単に倒すなんて」
「うん! すごいかっこいい!」
「・・・・・・強い」
「これがカグラの実力何じゃな」
四季ちゃんと美野里ちゃんは目をキラキラさせている。叢さんと夜桜さんは俺の強さに驚いているようだ。
「みなさん! 遅れて申し訳ありません!」
すると、雪泉さんが先生を連れて来た。化け物が暴れていること知り、応援に来たらしい。
事後処理は月閃の先生がして俺は他の先生に事情聴取された。
事情聴取が終わる頃には辺りは真っ暗になり、夜になっていた。
「もう夜か・・・・・・もう帰らないとな・・・・・・」
俺は頭をかきながら、雪泉さんを探しに行こうとした。
「あっ、一閃さん!」
雪泉さんが見つかった。
「ああ、雪泉さん実はそろそろ帰ろうと・・・・・・」
「そのことなのですが、今夜は泊まっていきませんか?」
「えっ? 良いんですか? 俺、男何で年頃の女の子とか嫌がりそうな気が・・・・・・」
「はい、みなさん、賛成してくれましたし大丈夫です」
雪泉さんは他の選抜メンバーと両備ちゃんと両奈ちゃんに同意を求めるかのように顔を向ける。
みんな、顔を頷かせる。両備ちゃんは仕方ないな・・・・・・という感じだけど。
みんなが良いって言うなら良いかな?
「ええと、じゃあ、お言葉に甘えて今夜はお世話になります」
俺はみんなに向けて頭を下げる。
・・・・・・飛鳥達には今日は一泊するって電話しないといけないな。
久しぶりの更新です・・・・・・
すいません、三月四月はウルトラ十勇士を見たり、スーパーヒーロー大戦GPをみたり、コンプリートセレクションのディケイドドライバーで遊んだり閃乱カグラEvをやっていてなかなか更新が出来ませんでした。
あと、ニンニンジャーでハリケンレッドが出たときは燃えました。
・・・・・・そろそろ一閃のプロフィールを書いた方が良いですか?
さて、次回予告です
死塾月閃女学館に泊まることになった一閃。だけど、色々とトラブルに巻き込まれる?
夜桜「・・・・・・所詮、無理な夢じゃろうか?」
夜桜と一緒に料理をしていて相談される一閃。
叢「・・・・・・一閃、キスの場面を書きたいから協力してくれ」
叢に漫画の手伝いを頼まれるがイヤな予感しかない。
そして、朝起きると布団の中が大変なことに・・・・・・