20『ゴースト』vs『ナイトメア』
sideキンジ
…今度白雪に俺がこの後どんな人生送るか徹底的に占わせよう。
『狼と、鬼と、光と、幽霊に会う。』
コーカサスハクギンオオカミと、吸血鬼・ブラドと、『閃光』アスナ。
そして今、目の前にいる人物。なるほど、確かに『幽霊』だ。
解体途中の飛行機をよじ登り、風車の羽に座っていたのは─
「…今までどこにいたんだ、カナ」
カナだった。理子や、他の誰かの変装ではなく、本人の。
「キンジ─」
だからこそ、次にその口から言われた言葉を、理解できなかった。
「─今夜、一緒にアリアを殺しましょう」
「なっ─」
意味が分からない。
アリアを、殺す?
なんで?
なんのために?
「なんで…どういうことだよ、カナ!」
飛行機の翼から風車の羽まで飛び移る。
「出エジプト記32章27─汝ら各々、劔を帯びて門より門と営の中を彼処此処に行き巡り、その兄弟を殺し、愛しき者を殺し、隣人を殺すべし…あの少女は、巨凶の因由。巨悪を討つのは初めて義に生きる遠山家の天命─」
─マズイ─
どうやらカナは、本気らしい。
「あんた、半年も失踪しといて─いきなり何だよそれ!今日まで俺たちがどんな思いでいたか分かるか!?それを急に─アリアを殺すだって!?何なんだよそれは!」
「…そう。あなたも、修羅場を幾つか越えたのね」
「なんだよ…それ」
「目を見れば分かるわ。─イー・ウーは外でも人を育ててる」
「…カナは、イー・ウーにいたのか?」
超人な無法者が集まる、そこに。
「…」
返答は、沈黙だった。
「俺は─俺は誰よりも正しく、優しく、強いあんたを、信じてた!それが、なんで…」
「…おいで、キンジ。仕事は一晩で済むから。キンジが私の言うことを聞かなかったことは…なかったよね?」
「─!」
とっさにーベレッタを抜いていた。狙いは、カナ。
「…軽々しく武器を見せるのはよくないわ。見せてしまえば、装弾数、射程距離、長所や短所まで…全て、見抜かれてしまう。覚えておきなさい」
─パァンッ!
銃声─!
だけど見えたのは、手元のマズイフラッシュだけ。
弾は、右耳のそばを通り過ぎ─
とっさに引っ掛けたワイヤー1本で、プロペラからぶら下がるハメになった。
あの銃撃。
『不可視の銃弾』<インヴィジビレ>だろう。多分。
いつ銃を抜いたか、いつ狙われたか、いつ撃たれたのかさえ分からない、人には反応すらできない攻撃。
パァンッ!
(2撃目─!)
ピシッ、ピシッ─
(なっ!)
ワイヤーを、掠めたのか!?
「…予想もしなかった。キンジが私に銃を向けるなんて…私とキンジの戦力差は大人と子供…それ以上ある。なのに、どうして?」
マズイ、ワイヤーが、切れる─!
「キンジとアリアは仲良しなの?」
「はぁ!?」
「─好きなの?」
「な、んで、そうなるっ!」
頭に血が上るのが分かる。
「…私には分からない。キンジの心のどこに、そんな力があるの?」
ざぁっ─!
プツンッ
強風で、ワイヤーが、切れ─
『及第点、かな?ちょっと変わるよ』
(あんたは、誰だー?)
『くすくす。─私は、キンジの記憶だよ』
(あんたといいカナといい、意味、わ、かんね─)
意思が、とんだ。
sideカナ
…危なかった。
落っこちると同時に意識を失うなんて。ワイヤーを準備しておいて良かったわ。
それでもキンジの気持ちは、おそらくッ─!
(殺気─!)
全方向を警戒する。
けれど、何もない。
(いったんキンジを引き上げ、え?)
軽い。
軽すぎる。
見ると、誰も、居ない。
「おっにさん、おっにさん、手っのなぁっるほっうへ♪」
(背後を取られた!?)
振り向けば─
長い黒髪の、東京武偵校のセーラー服を着た少女がいた。
これだけなら気にしない。
問題は─
「どうして、あなたが…?」
この気配。間違えなくヒステリアモード。
「どうしても何も、私も遠山だよ?」
まさか。いやでも、
「…キンジ?」
「半分正解、半分不正確。今の私は『遠山 カナウ』。『キンジ』のままじゃどーにもならない時げんてーのツッコミ兼切り札だよー」
「…つまり?」
「肉体的には『キンジ』でも、ココロは『カナウ』なんだよ。今回はキンジのピンチじゃなくて、私の個人的な理由で出てきたんだけどね♪」
─二重人格、ね。
「私が言いたいこと第3っつ!まず1つ目!キンジの女に手ぇ出すな!」
「?あなたは、キンジの気持ちを…」
「基本寝てるけど、時々起きた時はキンジ視点で見てるけど、ね〜。ま〜見事なまでの鈍感&フラグ建築士だね」
「そう。ならまだ『第2の可能性』があるわ。アリアは、殺さない」
「あ、実力見るくらいならいいよん♪」
「…調子狂うわね」
「2ちゅ…2つ目っ!」
噛んだ。可愛い。
「─『キンジ』はもう、あんたに勝てる!」
─え?
「キンジが、私に?」
「今回はキンジ、ピンチじゃないもん。私が戦闘面で本気出す時は、最初っから全力本気のフルパワーだよっ」
ぱちんっ。ウインクした。(失敗して両目つぶってたけど。)
「3つ目ぇー!これ重要今1番重要!」
正直、舐めていた。この存在を。
「─私と、戦って?手加減、するからさぁ…」
─ゾクッ!
(何、この異常な殺気!?)
「お姉ちゃんは、キンジを、傷つけた。やられたら、『殺り返す』。武偵なラ、当然ダよねェ…!」
(『インヴィジビレ』─!)
パァン!
けれど、必殺の銃弾は、
「遅い、遅すギるヨ」
ナイフで、斬り落とされた。
「嘘…どうして…どうやって放たれるまで1/36秒しかない銃撃を見きったの!?」
「うン、お姉ちゃんノ銃撃はハ、確かに疾イよ。腕、ほとんどブレにシか見えないもン。でェぇ、モぉォォぉ」
まるで、彼女は、─
「放たれた後ノ銃弾のスピードは、変わラないヨネえぇェ」
『悪夢』を体現したような存在だった。
「ほらホぉラ。どうシたのカなぁ♪」
銃をホルスターにしまい、突然、殴りかかってきた。
「いきなりなにをしてくるかと思えばがっ!」
スコルピオは、出せなかった。
出した瞬間、壊されるのが分かってしまったから。
「逃っゲろ逃げロぉぉおぉ!『秋水』&『桜花』コンボっ!」
「がっ─!」
1発で対象を殴り殺せるんじゃないかと思うほどの殴打。
たったその1撃だけで、─
「アハッ、あはハハは、は?…あれ?手加減したつもりだったんですけど、もしかしなくてもやりすぎちゃった?」
─い、意識が、─
「─ナ!カナ!」
「うっ─…パトラ?」
ここは、風車の、根元…?
「ふう…。顔色が悪いようじゃが、大丈夫か?」
「えぇ、大丈夫─!」
ゾクッ!
嫌でも思い出してしまう、あの『悪夢』を。
あの片言の発音を、可憐な顔に隠された異常な殺気を、あの僅かながら円錐水蒸気をまとった華奢な拳を。
ただそれだけで、呼吸が浅く早いものになり、嫌な汗が止まらなくなる。
(思い出しただけでこの状態…しかも自分の弟に対してなんて、ね。私もまだまだかしら?)
それでも。いや、だからこそ。
(第2の可能性…キンジなら、きっと─)
希望が、持てた。
『カナウ被害者の会』
CVR生s「ボコボコにされた」
理子「カナウ怖いカナウ怖い」ガクガクブルブル
小夜鳴「出番(説明シーン)盗られました」
某あの人「ひさしぶりに散歩に出かけたら何故か襲いかかられたんだが…撃退しようとしたらやられてしまった。僕のコグニスがまたしても外れるなんて…」
カナ「殴られたお腹がまだちょっぴり痛むかな」
カナウ、どこまで強くしようかな…?
やり過ぎるとキンジの出番無くなるしな…
もうやり過ぎ?知ってる。反省も後悔もしてないけど。