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sideキリト
バスジャックの翌日
アリアの怪我は、デコに弾が2発かすってできたものだった
念のためMRI等の精密検査もしたようだが軽い脳震盪で済んだようだ
─額に決して消えない跡を残して
あの現場では、周囲の、つまり今回ならルノーへの迎撃をやらなければならなかった
「─ト」
だからあの傷は実質オレが─
「キリト‼︎」
「ん、ああ悪い、気づかなかった‥どうしたキンジ、顔色悪いみたいだが」
「なんでもない」
「‥そうか、分かった」
アリアとなんかあったなこれ
病室前
何と言うか、改めてアリアは貴族なんだなと思ってしまう
「武偵病院で個室ってボッタクられるぞ」
「!その声はカズトね!」
「ああ、入るz「ちょっと待って!」‥」
少しの間、布で何かを拭うような音が聞こえた
‥キンジは何やったんだ
「ん、いいわよ」
と言われたので入ると、『レキより』と書かれた袋があった‥かなり意外だ
「それで、何しに来たのよ」
「お見舞いだよ」
ちなみに今持ってきたももまんはコンビニで買ったものだ。下の売店は売り切れてた
「…」
「…(気まずい)」
何か話をしないと
「そ、そう言えばキンジはどうしたんだ?」
「…私の探してた人は、あいつじゃなかった」
「…そうか」
帰ったら何やらかしたか洗いざらいOHANASIだな
「ねぇカズト‥あいつには、キンジには何があったの?」
「…オレが喋ったって言うなよ」
そしてあの話を、アンベリール号事件についての話をした。もっとも、オレやキンジの体質については言うつもりはないから「キンジの兄さんが半年前の海難事件で殉職した」と、言葉にする分にはこれだけで済んでしまうことを悔やみながら
「そんなことが…どうしよう私、キンジに『あんたが武偵を辞める理由なんて大したことない』って」
「それは、‥まあキレるな」
だからあんな不機嫌だったのか
「ねぇカズト、あんたはこれからどうするの?」
「アリアのパーティーに入るよ」
「え、何で「ただし条件がある」‥なによ」
「何でアリアがそんなに急いでいるのか、それを教えてくれ、後キンジもパーティーに入れてくれ」
「分かったわ‥その」
「?」
「ありがと」
「‥早く退院しろよ」
オレ今顔赤いだろうな
翌日
その日の内に、『事情を説明する』のひと言と共に時間と場所が送られてきた
というわけでオレは今、新宿駅西口前にいるのだが─
今自分がどんな格好をしているのかを思い知らされることになった
下はよくあるズボンに運動靴、上はシャツに薄手の上着をはおっているのだがいかんせん顔と髪がぱっと見女であるGGOのときのものだからさっきっから
「ねえ君今暇?」
「こっちにきて遊ぼうよ」
とナンパの嵐である
‥ちょっと早く来すぎたか?(←指定時間30分前に来た人)
帽子をかぶってくるべきだったと後悔している間に時間は過ぎ、約束の時間10分前にアリアが来た
…尾行しているつもりであろうキンジを連れて
「‥アリア」
「気がついてるわよ。ただあいつにも説明しようと思って」
「それでか」
それっきり黙りこくってしまう
場所は変わって新宿警察署
「‥下っ手な尾行。シッポがにょろにょろ見えてるわよ」
後ろを見れば、バレてたか、みたいな顔をしたキンジが見えた
「あ‥その。お前、昔言ったろ。『質問せず、武偵なら自分で調べなさい』って。ていうか、気づいてたんならなんでそう言わなかったんだよ」
「‥あんたにも教えるべきだと思って」
「?」
こっち見んなキンジ
sideキンジ
警察署の留置人面会室で2人の管理官に見張られながら、出てきた美人がいた
柔らかな曲線を描く長い髪。オニキスのような瞳。アリアと同じ、白磁のような肌─
「まあ…アリア。この方たち、お友達さんに彼氏さん?」
「ちっ、違うわよママ」
この女性は…アリアの、母親なのだろう
(若っ!)
(キリト声出てる)
「じゃあ、大切なお友達さんかしら?へぇー。アリアもボーイフレンドを作るお年頃になったのねぇ。お友達を作るのさえヘタだったアリアが、ねぇ。ふふ。うふふ…」
「違うの。こっちの根暗が遠山キンジで、こっちの女顔が桐ヶ谷カズト、これでも一応男よ。2人とも武偵高の生徒で─そういうのじゃないわ。絶対に」
途中でこの女性が驚いた顔をしていたのは‥うんスルーしよう。涙目になってる人が約1名いるし
「…キンジさん、カズトさん、初めまして。私、アリアの母で、神崎かなえと申します。娘がお世話になってるみたいですね」
「あ、いえ‥」
柄にもなくどぎまぎしてしまった
「ママ。面会時間が3分しかないから、手短に話すけど‥この2人は『武偵殺し』の3人目4人目の被害者なのよ。先週、武偵高で自転車に爆弾を仕掛けられたの」
「…まぁ…」
「さらにもう一件、一昨日はバスジャックが起きてる。ヤツの活動は、急激に活発になってきてる。ってことは、もうすぐシッポも出すハズだわ。だからあたし、まず『武偵殺し』を捕まえる。ヤツの件だけでも無実を証明すれば、ママの懲役864年が一気に742年まで減刑されるわ。最高裁までの間に他の4人も絶対、なんとかしてみせるから」
なっ、864年!?事実上の終身刑じゃねーかそれ…
「それで、ママをスケープゴートにしたイー・ウーの連中を全員ここにぶち込んでやるわ」
「アリア。気持ちは嬉しいけど、イー・ウーに挑むのはまだ早いわ─『パートナー』は見つかったの?」
「それは‥候補ならいるけど、見つからないの。誰も、あたしには、ついてこれなくて…」
「ダメよアリア。あなたの才能は、遺伝性のもの。でも、あなたには一族の良くない一面─プライドが高くて子供っぽい、その性格も遺伝してしまっているのよ。そのままでは、あなたは自分の能力を半分も発揮できないわ。あなたには、あなたを理解し、世間と繋ぐ橋渡しになれるようなパートナーが必要なの。適切なパートナーは、あなたの能力を何倍にも引き伸ばしてくれるー曾お爺様にも、お祖母さまにも、優秀なパートナーがいらっしゃったでしょう?」
「‥それは、ロンドンで耳にタコができるぐらい聞かされたわよ。いつまでもパートナーを作れないから、欠陥品とまで言われて‥でも…」
「人生はゆっくり歩みなさい。早く走る子は、転ぶものよ」
…だから、アリアは…
「神崎。時間だ」
管理官が時計を見ながら告げた
「ママ、待ってて。必ず公判までに真犯人を全部捕まえるから」
「焦ってはダメよアリア。私の最高裁は、弁護士先生が一生懸命引き延してくれるわ。だからあなたは落ち着いて、まずはパートナーを見つけ出しなさい。その額の傷は、あなたがもう自分1人では対応しきれない危険に踏み込んでいる証拠よ」
「やだやだやだ!」
「アリア…!」
「時間だ!」
管理官が羽交い締めにするような形で引っ張り出した
「やめろッ!ママに乱暴するな!」
アクリル板に飛びかかるも全く歪まず、俺たちは何もできないまま奥の扉が閉ざされた
「訴えてやる。あんな扱い、していいワケがない。絶対‥訴えてやるッ」
「…」
新宿駅へ戻るアリアに俺は、声をかけられなかった。ただその後ろをついていく
ぽた‥ぽたた
何粒かの水滴が、アリアの涙が落ちて弾けた
「アリア…」
「泣いてなんかない」
「おい、アリア…」
「な…泣いてなんか…」
そして
「ない…わぁ…うぁあああぁぁああ!」
泣き始めた
「うあぁあぁあ…ママぁー…ママぁあぁああ…!」
俺たち2人は、
また、ただ立っていることだけしかできなかった
次は(やっと)ハイジャック編です
…長かった