とある鎮守府の日常   作:ジンネマン

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地文は基本的に提督でいきます。


とある鎮守府の日常

 その夜、日出国(いずるくに)のとある鎮守府に魔の手が忍び寄ってきた。

 

 

 

 草木も眠る丑三つ時(深夜午前2時~2時30分)ここに二人の艦娘がいる。二人とも白地に紺の襟と袖とスカートのセーラー服、襟の中央には錨の刺繍、袖とスカートの(ふち)には白い線が二本と同じ様相をしているが細部が異なる。

 

「ふわ~~。うぅ。眠いのです~~」

 

 あくびをして目元を両手でこすりながらよろよろと足元が若干覚束ない足取りの艦娘。ローマ数字の《Ⅲ》の紀章をセーラーの裾に付け、長い髪を後ろでバレッタで留めた艦娘が暁型艦駆逐艦4番艦の末妹(いなづま)

 

「もう電、もうすぐ寮に着くから……ふわ~~…………」

 

 そんな電に注意しつつ時折倒れそうな電を支えつつ自分も欠伸をし、懸命に真っすぐひたすら自分たちの寮に向かうの艦娘。ローマ数字の《Ⅲ》の紀章をセーラーの襟に付け、長い髪を後ろてピンで留めたのは暁型駆逐艦3番艦(いかずち)

 そもそもいつも一緒の暁型駆逐艦1番艦(あかつき)と二番艦(ひびき)がいないのは理由がある。今現在この鎮守府の提督は大本営で開かれている今後の全体の作戦指針を決する会議に出席していて、暁と響は今後の経験のためと秘書艦の瑞鶴(ずいかく)(こちらも後学のための一時的なもの)と一緒に提督に同行していった。そうなると雷と電は手持ち無沙汰になり、ただ突然できた休日を謳歌するのも暁と響に悪いと思い普段できない夜戦の自主練をすることにした。そしてその自主練に熱が入りすぎて予定していた時間を大いに過ぎてしまい今現在に至る。

 そんなフラフラな彼女たちだが、その顔は疲労困憊だが、晴れやかな、清々しいまでに心地よい疲労に浸った顔をしていた。それほどまでに充実した、実感の持てる内容だったのだろう。

 

 しかし、そんな彼女たちの背後に、すぐ後ろに、闇より這いよる魔の手が迫っていた。否、その手は彼女たちの自主練前から傍にいたのだ。その闇より出でる者は――

 

「それにしても本日は本当にありがとうございました。”川内(せんだい)さん”」

 

 雷と電後ろに振り返りお礼を言ったのは川内、茶髪のセミロングをツーサイドアップにし、柿色のセーラー服と黒のスカート、両腕には黒い長手袋と黒い鉄鋼を付けた艦娘。5500t級軽巡洋艦川内型1番艦川内。

 

「いいっていいって、私も今回の出撃で野戦が出来なくって欲求不満だったから丁度よかったよ(・・・・・・・)

 

 川内は二人に微笑む。ああ、その笑みは優しいきれいな(・・・・)笑顔だ。端から見れば後輩たちを優しく見守る優しい先輩の構図だが、だがしかし、雷と電は気付かない。その笑みは、その口角は普段の川内には見られない物だった。

 

「――でも、二人ともこのまま寝てしまってはいけないよ」

 

「「ふぇ?」」

 

 川内は二人に近寄り、二人の肩を抱き、耳元で囁く。

 

「ほら、朝には提督たちが帰ってくるし、そんな時に汚れた姿じゃみっともないでしょ。

 だから、私が綺麗に洗ってあげる。隅 々 ま で ね」

 

 川内の提案(唆す)、このまま寮で寝たら恥ずかしい思いをすると、そうならないためにもお風呂(狩場)に行かないかと。

 

「でも、川内さんには夜戦のやり方とか教えてもらったばかりですしぃ……」

 

 遠慮がちに電が断ろうとする。だが、ここで逃がしては当分の機会を失う。そんな失態を川内はしない。それは夜の支配者たる川内には有るまじきことだ。そんな者は川内に非ず。故に、

 

「――そんなの気にすることないよ。だって、君たちは私のしごきに見事に耐え抜いてた。それは称賛に値するし、何らかの褒美があってしかすべきだよ。つまり、私に君たちを労わせてくれ。これは当然のことだし、普段から遠征でこの鎮守府を支えているのは君たちだ。つまりね、私たちはいつも君たちを頼り(・・)にしているし、これからもそうだから今日のことはほんの、(ささ)やかなお礼だよ。だからね。そんな頼りになる(・・・・・)君たちに対する私からのお礼を受け取ってほしい」

 

「――頼りに、なる――」

 

 そんな川内の言葉に反応したのは雷だった。

 

「ふふん。そうね。私たち司令官やみんなから頼りになるものね」

 

 そう、普段からいろんな人に、鎮守府のみんなに頼りにされたがっている雷が反応した。

 

「ええ。頼りになる人、される人は当然、相手の行為も快く受け取るものよ」

 

 ここに追い打ちかける川内、だが、未だに電は遠慮(抵抗)する。

 

「でも雷ちゃん、お風呂に入るのはいいとして、流石に川内さんに洗ってもらうのはちょっと――」

 

「いいのよ電ちゃん。私がやりたいんだから。ほら、ここは私のためを思ってね」

 

「そうよ電。わざわざ川内さんがお願いしてきたのよ、それを無下に断るのは失礼よ。頼れる私たちがそんなんじゃいけないわよ。だからここは素直に好意を受け取りましょ」

 

「ええ。お願いするわ」

 

 電が困った顔をする。たしかに他の人たちからここまで真っ正面から『頼りにしている』と言われたことはなく、それどころかお礼までしたいなんて言われたことはない。それ故に反応に困る電。しかし、恭しいと言ってもいいほど腰の低い仙台と、頼りにされていると言われて有頂天させられた雷の説明(攻撃)に電はついに折れた。

 

「――じゃあ、お願い――します」

 

 たどたどしくだが、しっかりと川内の提案を了承(悪魔と契約)した。

 

「ええ。任せて、二人の隅から隅まできれいにしてあげ――」

 

 

「隅から隅までなんだ?」

 

「――へ?」

 

 川内の背後に誰か立っていた。

 その男は175cmほどの背丈、軍服の上から黒い外套を羽織り、目深く帽子被った偉丈夫が川内を睥睨していた。

 

「提督……なんで…ここに?」

 

「思ったよりも早く会議が終わってな。急ぎ足で帰ってきたわけだが――川内」

 

「はい!」

 

「なにやら元気が有り余っているようだな、どうだ、これから私と訓練しないか? 丁度大本営から配備されたとある新兵器の実験データほしいからからそれに付き合ってくれ」

 

「え? いや、私これから雷ちゃんと電ちゃんの体を」

 

 川内は必死にこの場を脱走と思案する、それは夜戦時を遥かに上回る速度で。今、川内の本能が最大限の警報を鳴らしている。この場にいたらタダでは済まないと。だが、そんな彼女の努力は無駄になる。

 

「心配無用だ。瑞鶴、暁、響。お前たちも入浴してくると良い。明日はお前たちには大して予定も入っていないし、その予定も午後からだからゆっくりすると良い。雷と電も暁と響の予定に合わせてあるからゆっくりすると良い」

 

 それを聞きはしゃぐ四人、しかし、一人の艦娘が提督の袖を引く。

 

「――雷」

 

「――あの、その、司令官も一緒に入りませんか?」

 

 そうすると提督は空いている手を雷の頭を優しく撫でる。

 

「ああ、いずれ、機会があったらな。さて川内行くか」

 

「いや、ほら、私も疲れてい「欲求不満だったんだろ?」――ハイ」

 

 提督は川内を首根っこを掴み引き連れていく。

 

「なに心配するな。那珂も一緒だ。最近あいつは歌の練習ばかりで鍛錬を怠っていたらしいからな。

 だが、それが終わったらちゃんと労ってやる――」

 

 その言葉を聞いた川内は即座に姿勢を正し、提督の横に並び歩く。その顔はさっきまでと全く違った楽しそうな顔で、本当に楽しみで仕方ない顔で、

――少しうらやましいな。

 そして、二人は夜の闇に消えていった。




あと、一つ弁明。自分はロリコンではありません。自分は雷と電が好きですが、それは艦これの雷と電を知る前から好きだったのです。むしろ工藤艦長補正ですね。
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