パシャ。パシャ。
「……では、
「ありがとうプリンツ・オイゲン」
プリンツ・オイゲン。金髪碧眼で耳辺りで「はーいそこは自然に自然に『パシャ』」髪を錨型の髪飾りでまとめたおさげ、黒と灰の長袖で肩口から胸部辺りにかけて灰色の迷彩模様の前留式のシャツと変わった服、肩「あ、ここはこっち向いてくださいね『パシャ』」には
そして、そのプリンツ・オイゲンと執務をしているのだが、いつもなら仕事の合間合間に手料理を持ってきたり、日本について聞いてい来たりしているのに、今日に限っては手料理「あ、でもその表情はもらい『パシャ。パシャ』」もなく、話しかけ来ることもない。
それどころか、どこか居心地の悪そうにしてい『パシャ』る。
「…………」
尤も、その理由は明白なのだか……
パシャ。パシャ。パシャ。パシャ。
『パシャ』『パシャ』とカメラで写真を撮る手を止めることなく、その艦娘はカメラのレンズをこちらに向け迫ってくる。フラッシュが眩しく目を瞑ってしましそうになるのを堪え、悪気の無いこの娘に少し真面目な顔になって声を出す。
「……なあ青葉」
「なんですか司令官?『パシャ』あ、私のことは無いもののように扱ってください。それともなにかコメントでも、今メモ帳出すんでちょっと待ってください」
二袋スカートのポケットこらメモ帳とペンを出し、準備万端、いつでもどうぞとキラキラともギラギラとつかない不思議な目でこちらを見つめてくる艦隊。
桃色の髪と青色の瞳の艦娘。
青葉型重巡1番艦青葉。
襟と袖が青いセーラー服、胸には黄色のスカーフを締めている。
ただ、なぜか、ここが戦場でもないのに青葉の背中に艤装のようなものを背負っているのが気になる。が、今は置いといて口を開く。
「あのだな青葉」
「あー司令官ちょっと待ってください」
言うなり青葉が背中の艤装らしきものを展開する。一瞬身構えそうになったがよく見ると展開されたのは
ほんの一瞬、本当に一瞬、流石に顔が引きつったのを悟られないようにするのは少々辛い。
――たぶんこの撮影セットを作ったのは明石、もしくは夕張か? それとも両方という線も……
「さーどうぞ司令官!」
艤装に着いているマイクと録音機をこちらに向けたままキラキラとした瞳でスタンバイしている。
――ここはなにか気の聞いたことを言うべきか? いや、まずは、
「なあ、青葉。コメントの前に聞きたいことが今出来たんだが。その艤装はなんだ?」
――まずは、その改造艤装のことを聞かねば。
詰問するようにならないように、なるべく世間話をする風に問う。青葉は知的好奇心がとても大きく固まりと言っても過言ではない。
――と言ってもその好奇心を満たすためになんでもやっていいわけではないので、言うことだけは言わなければならない。
そう。あまりにふざけた理由なら即刻廃棄は行き過ぎにしても、没収くらいはするつもりだ。
「これですかぁ。これは夕張さんと明石さんに作ってもらった撮影セットなんですぅ。反射板も望遠レンズと夜間用。他にも赤外線カメラや音波探知に全部ですよ。特に頑張ってもらったのがこの
「……なるほどな」
青葉が力説する
「なあ。青葉。その万能潜入セットと言うのは…………ダンボールじゃないか?」
「何を言うんですか司令官! この万能潜入セットはかの有名な蛇の名を持つエージェントが使っていた物を完全再現した一品って夕張さんが言っていました!
これさえあれば例えどんな高度なセキュリティがある統帥部であろうとも、歴戦の工作員が相手だろうともいとも容易く潜り抜けることができる伝説の一品のレプリカって明石さんが言っていたのですぅ!」
「そ、そうか……それは、凄いな…………でもそんなのが必要なのか?」
「当たりなの前です! いいですか司令官。カメラマンとは風林火山陰雷の如くなのですぅ!
被写体を探し求めては風の如く。。被写体を待つこと林の如く。被写体をを追い詰めること火の如く。被写体と向き合うこと山の如く。被写体に張り付くこと陰の如く。被写体のシッターチャンスを逃さぬこと雷霆の如く。
そう。カメラマンとは孤独な者なのですぅ。ある時は被写体を追い求めて匍匐前進で移動すること三日。雪原では被写体に気配を悟られぬように口に雪を詰め込む過酷な存在――
それがカメラマンという者なのですぅ!」
「…………いや、お前は艦娘だろうが、まあ、それは今は置いておこう。青葉、その万能潜入セット以前の
「…………」
それまで饒舌だった青葉が急に口を
「なあ青葉」
私は笑顔で青葉に問う。
「そー言えば司令官コメントをどーぞ!」
「青葉」
私は再度笑顔で青葉に問う。
「…………」
「…………」
互いに沈黙。
互いに笑顔。
互いに無言。
しかし、青葉は笑顔は固く、引き攣ってる。他にも見るからに青葉の顔から冷や汗が滴り、心なしどころか露骨に顔色も悪くなっている。
そばにいるプリンツ・オイゲンは自分達の空気に当てられたのかオロオロ……とは違うがなにやら挙動不審だ。
そんな中私は青葉に問う。
「青葉」
「えーと……」
遂には笑顔が崩れて視線があちこちに泳いでいる。もはや自分と目どころか顔すら合わせず明後日の方向を向いている。
最後通告。そのつもりで声を低く、威圧するように意識して、
「青「あの
突如。プリンツ・オイゲンが言葉を被せてきた。それも大きな声で、そして、衝撃の一言を発した。
「提督さん。提督さんにはビスマルク姉さまは渡しません!」
「………………ん?」
「………………え?」
自分の反応が予想外なのか、プリンツ・オイゲンもまた首をかしげた。
三人の、正確には自分とプリンツ・オイゲンの間の認識の齟齬と、冷や汗をかいて事情を理解した青葉の歪な三角関係とも言うべき微妙な空気。
「さて、私は次の現場があるのですぅ。ですからこれにて!」
「まて青葉。たまには私にもやらさせてくれないか? そう。たまにはされる側の気持ちを知ることも必要だとおも」
「んな!? 提督さんはビスマルク姉さまに何をさせる気ですか!?」
それをいち早く察した男が部屋を出ようとした青葉を捕獲、その真正面に移動する。移動して青葉は視線を逸らそうとするが自分はその顔を両手で固定する。
した瞬間にプリンツ・オイゲンの
――なにか、ものすごく嫌な予感がする。
「………青葉。なにか隠してないか?」
「え~とですね……………それは…………隙あり!」
まっすぐ、青葉の顔を直視していた。少し焦っていたのかもしれい。するとり二人の隙間にカメラが差し込まれ、たかれたフラッシュを至近で見てしまう。フラッシュの目眩ましと同時に煙幕とカン高い奇怪音によってわずかに残っていた視界はすべて防がれ、あまつさえ青葉から手を離してしまった。
一瞬の目眩に追い討ちの煙幕と奇怪音、これで青葉はここから逃走しようとした。まさに隙をついて煙に撒こうしたのだ。いや、確かにそれは成功した。わずかではあるが青葉から手を離してしまったのは事実だか、自分は瞬時に、動く気配のする方へ飛びかかり押し倒した。
未だに抵抗を続ける青葉がなにか言っているようだが、そんなものは無視して押さえ込む。
片手で青葉の両手を拘束して、もう片方の手で青葉が持っているであろうメモ帳没収するために半ズボンよポケットに手を入れようと下半身の方に手を伸ばす。
「さあ、観念しろあお………」
そして、次第に失われた感覚が回復してゆき、目の前にいるのは――
「――あ、あの、提督さ、ん。わ、わ私にも、心の準備が、支度って、ですね………あの、つまり、せめて、夜に提督のへ、へ、部屋にですね、呼んでもらえるの、でればですね。私も………その、だから、今ここでで、はなく、えっと、ですね、嫌っという訳、ではな、いのですよ。むしろ、その
嬉しい、です/////」
――目の前には頬を赤らめているプリンツ・オイゲンがいる。いや、それはいい。いや、よくない。そうだ良くはない。仮にこの場を誰かに見られ『パシャ』『パシャ』………
「はーいそのまま。そのままよろしくですぅ。
………あれ? 司令官もう少しプリンツ・オイゲンさんと一緒にいてもらえませんか?」
程よく煙が晴れた所に青葉のカメラのフラッシュが自分とプリンツ・オイゲンを照らす。
そのフラッシュがたかれる度にあれだけ混乱していた思考が急速にクリアになっていく。そう、冷静に、沈着に、澄みわたるほど平静となっていく。
その後も何度か発せられる青葉の言葉を無視しプリンツ・オイゲンから離れ、部屋に飾ってあった日本刀を取る。
「――今宵の虎鉄は血に飢えている」
「………え?」
静かに、厳かに、抜刀する。
「………てけ」
「は?」
「その首にかけているカメラを………」
「ん?」
「《BIG》置いていけーー!!《BIG》」
「司令官ちょっとま」
「チェストーーー!」
青葉が飛び退き刀が空を切る。青葉本人には当てるつもりはなくカメラを狙った。刃引きされた刀だから怪我をさせるつもりもない。だがあの背後の艤装は破壊して青葉には説教をする。もちろん青葉と共謀した二人も同罪で説教をする。
が、思ったよりも苛立っていたのか、力加減を間違えて避けた青葉の背後にあった扉を壊してしまった。ほんの一瞬『やってしまった』っと後悔していたら、またも青原に隙を突かれて壊れた扉の隙間から逃亡。煙幕のおまけ付きで先程のやき回しとなった。
「おのれ逃がさんぞ青葉!」
残った扉の残骸を蹴破って青原を追いかける。その後は右へ左への捕物帖。
だが、ついに青葉を追い詰めた。
「ハァハァ。追い詰めたぞ、青葉。
さあ、お前が大事に守ってきたものを、貰おうか――」
「あ、あぅ」
青葉を壁際に追い詰めた。左手は青葉の顔の横に、右足は股の間に挟み身動きがとれないようにした。
だが、ここに来て違和感を覚える。
青葉が心なし息が荒れて顔が紅い。それは逃走劇で息が切れているせいだろうか、いやそれとは違う。
――というかこんな顔の青葉は初めて見た。
そこにいるは女の子だった。
普段おちゃらけている青葉ではない。
いつも最前線で『敵はまだこっちに気付いてないよ』とか言って敵の弾幕に突っ込む豪胆というか無謀というか胃に悪い彼女ではない。
衣笠と戯れいるときの弱り目な青葉でもなければ、バレンタインやホワイトデーでイベントよりも写真撮影を優先させる青葉でもない。
――ここにいるのは、自分が今まで知ることのなかった艦娘、青葉だ。
そんな、今まで知ることのなかった青葉に、どうしたらいいのか硬直して喉を鳴ら《パシャ》………ん?
《パシャ》《パシャ》突然のシャッター音に一瞬困惑するも、その音源に視線を向けようとして――
「あ、司令官。視線はそのまま私に向いていてもらえませんか?」
そんな、青葉の言葉を無視して部屋が暗くってわかりづらいが目を凝らすとカメラらしきものを確認して、再度青葉に視線を向ける。
「はい。そのままそのまま。もうちょっと近くで見下ろす感じで」
「青葉!」
即座、青葉のカメラを取ろうとした。が、密着し過ぎて逆に自らの動きを制限してしまい。青葉はその隙を軽業師のような動きで拘束を抜けて設置してあったカメラを回収した。
「待ちなさい青葉!」
「ちょっと待ってくださいね司令官。これを現像したら取材を再開しますので」
「待ちなさい!」
再三の制止を呼び掛けても応えず、またも青葉との捕物帖が始まった。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
司令官が追いかけてくる。
私は普段はあんまり司令官と一緒にいられないから少し嬉しい。
これからはもっと司令官を取材する機会を、名目を増やそうかな? うん。いい考えだ。
そしたら、もっと一緒にいられる。
もっとも、他に特ダネがあったらそっちに行ってしまうかもしれない。
でも、司令官ともっと、もっと一緒にいたいのは本当だ。
それにね、司令官には
だって、これは私と司令官だけの、取って置きの
そう。バレンタインの時も、ホワイトデーの時も、私と司令官だけの特ダネ。誰にも見せない秘密の