ネタ切れ気味。
アインズが村長宅で話をする間に私たちは死体の片づけを手伝うことにした。向こうにはシリウスを置いてきているから話の内容はそのまま聞き取れる。
こちらから口を出すつもりはあまりない。
アインズが全てうまくやってくれるだろう。そうでなければフォローすればいいだけの話だ。そのあたりの塩梅はシリウスに任せた。
シリウスが独断で先行した理由は訊かずともわかっている。
妹キャラが死にそうな時に、ただじっと見ているだけなんてできないのだと。そういうキャラクターであれとされているから。ゲームの時に自分に設定したフレーバーテキストの影響が出ているのだろう。
ロリコンではない。だがシスコンには近い。
ありえない、と言いたい所だがなにがどうなるかわからないので仮定の話をしておく。
ギルド『アインズ・ウール・ゴウン』と『エゴイスティック・エコロジスト・あらいあんす』が全面戦争をした場合、どうなるか。
――結論から述べると、あまり戦闘にならない。と思われる。
いや仮定の話をするにしてもねぇ。地下大墳墓と空中城砦じゃあねぇ……互いに攻めづらいもの。
ギルドホームは防衛側が圧倒的に有利で話にもならない。
そもそも世界級アイテムによる転移妨害を施したタュピラに攻め込ませるつもりはないし、またこちらもナザリックを攻め落とせるだけの戦力を用意できない。キマイラ研究所を解放して運が良ければ第6層までいけるかどうか。それ以上は現時点では情報不足で判断がつかない。
基本的な情報……階層守護者や各階層の構造とかは結構集めていたのだが、後から追加された物や個人が勝手に作っていったところなんかは訊いたって本人以外誰も答えられない。
というか世界級アイテムが11個もあるってどういうことだ。
うちだって公式には3つしか所有していないということにしていたが。多くのヘイトを集めた悪名高いギルドは流石に桁が違う。
ちなみにうちが公開していた世界級アイテムは永久機関『コズミックキューブ』、神の雷『インドラの槍』、終点『玉座の間』である。
うむ。見事なまでにタュピラ関係しかないな。
生産ギルドが3つも世界級アイテムを持っているという時点でかなりアレだが。
ちなみに
本来であればサービス終了間際に手に入れたいくつかの激レアアイテムの中に世界級アイテムもあって、買い物に出していた身体がタュピラに戻ってこられていたらナザリックとの戦力差がひっくり返っていたかもしれないのだが、繋がりが消えてしまったのだから仕方がない。無い物強請りはしない主義だ。
アインズが村長から情報を引き出し続けて結構な時が流れた。
村人達の供養も粗方終わり、このカルネ村周辺に待機させているプリニーたちは暇を持て余して切り株やレジャーシートの上で野外カードゲームに興じている。警戒の仕事さえしてるのなら他でなにしてようが構わないけどもう少し真面目に働いて欲しい。
そんな時に周辺の偵察に出していたプリニー将軍から一つの知らせが届いた。
『カルネ村ニ接近スル騎馬隊アリ』――と。
野盗の類では無さそうだが。敵か味方か。
ちなみにその後ろから先行偵察隊のローグプリニー隊が息を切らせながら追いかけているそうなので襲撃された後の村を回っていた集団だと思われる。
アインズと村長の話も大体終わったようで、シリウスから受け取る情報を整理しつつ判断を仰ぐ。
……まずは様子見、か。
当然、というか妥当なところだ。
戦闘になる可能性を考慮してアインズ、アルベド、シリウス、エトナ、そして私が村長と一緒にご対面することになった。フロンには他の村人達の守護を任せてある。
緊急時には周辺に潜ませているプリニー隊と待機中の本隊を寄越す手筈になっている。
アインズの手札だってたくさんあるだろうし、なにも恐れることは無いはずだ。
騎馬の一団が村の広場前に来る。
武装はバラバラ。しかしどれも一人前の戦士の顔をしているためあまり見苦しくは無い。ちょっとむさ苦しいけど、けれどもそれがまた男らしくてかっこいい。
整列の仕方もちゃんとしている。繰り返し訓練をしないとこうはできないだろう。
その中から一騎、前へ出る者がいた。
「私は、リ・エスティーゼ王国、王国戦士長ガゼフ。この近隣を荒らしまわっている帝国の騎士達を退治するために王の御命を受け、村々を回っているものである」
男らしい、低く重々しい声。
村長は”王国戦士長”の噂くらいは知っているようで、アインズになにやら伝えているようだ。
てかシリウスはその距離からでも聞き取れるはずなのだが。なんで会話をこっちに教えてくれないのかね。めんどくさいのか?
「村長――その横にいる者たちは何者なのか教えてもらいたい」
「はじめまして王国戦士長殿。私はアインズ・ウール・ゴウン。この村が騎士に襲われておりましたので助けに来た魔法使いです」
「それと――その大切な仲間とただの友人です」
主にアルベドへ向けて「大切な」と「ただの」を強調して言っておく。
嫉妬で殺されるのは御免だ。
――譲らんがな。今は退いてやる。
物置になった村長は知らん。
「村を救っていただき、感謝の言葉も無い」
「いえいえ。困っている人を助けるのは当然の事ですから」
礼を述べて頭を下げる王国戦士長。
その真っ直ぐな姿勢には、好感が持てる。
ただの勘でしかないが、彼はきっと実直で良い人間というものなのだろう。
私と同じ印象を抱いたのか、アインズから滲み出ていた警戒と緊張が少しだけ解れたような気がした。始めから自然体だったからそもそもなにも感じていなかったかもしれないが。
――そして私は弾き出された。
シリウスがいればそれでいいからって、そんな邪険にしなくても良いと思うんだけど。
泣くよ? 泣き喚くよ?
モモンガさん……じゃなくてアインズの近くにいたいのは私の方なのに。
それを知っていて、シリウスは私を遠ざけるんだよね。
なにかしらの理由があったとしても、私はそれを許さない。
わたしは別に構わないとかお気楽な思考をしているだろうが。
私は構うのだ。
構いたいのだ。
アルベドがいるうちはあんまり接触できそうに無いけど。ヤンデレの気配を受け続けたらストレスで死ねる。
ガゼフと名乗った男とアインズとシリウスが村長宅で再び話をするらしい。
……アルベドは?
外で待機?
……。
私、行っても良かったんじゃん。
というか入れさせてほしいのだけれど。
エトナがいるからってアルベドと一緒に待つなんてできるとお思いか? あの二人は悪魔だからそこまで険悪な雰囲気にはならないと思……いたいけど。ちゃんと大人しくしておくように言い含めておかないと危険な気がする。
といった思念をシリウスにぶつけてみる。
……。
案件が通された。
ちゃんと出過ぎず引っ込み過ぎず話をしてこいと言われはしたが。
ともかく。
大勝利だ。
ふっふっふ。
二人きりでないところはマイナスだが、また近くにいられる。
大切な時間だ。貴重な時間だ。幸福な時間だ。
くふふふふ……。