(´・ω・`)
ガゼフとの話し合いはスムーズに進んだ。
私たちは訳あって旅をしている遠い遠い国の者である、という設定を即興で作り出して語るアインズは流石としか言いようが無い。
アインズは魔法詠唱者、私は錬金術師、アルベドとシリウスは騎士、エトナは魔法戦士でフロンは神官ということにした。適当に言ったことだけど結構バランスの良いパーティーだと思う。チームワークは別として。
捕らえた騎士共の処分はガゼフに預けることになった。事は複数の国が絡んでいるので私たちが出る幕ではない。権力者に目を付けられると面倒なので手柄ごとあげることにした。
これらはアインズと
日が暮れる前に概ね話はついた。
王都に行くことがあれば是非とも家に招きたいと語るガゼフは実に良い人間だと思う。
実直で、愚かと称することもできるが、やはりそれは人間として善く評価されるべきものだ。賢しく汚い人間よりは愚かで綺麗な人間の味方をしたい私だからな。
――敵襲。
「アインズ」
「……あぁ、わかっている」
向こうも独自の監視網を築いているからすぐに気付いたようだ。
いったい一日にどれだけの来訪者を迎える羽目になっているのか。このカルネ村は。
訪れた者は、最初は村を蹂躙する敵で、次はそれを駆逐する救世主、そして国の味方がやってきて。
では、お次は?
偵察隊からの報告を聞くと村を包囲しようと動いており、別動隊も見られるそうだ。
アインズと相談し、ダブルブッキングして同士討ちしないように処理するエリアを振り分けていく。合図をすれば全ての敵を一掃できるように。
「――戦士長!」
「どうした!」
やや遅れて戦士達が騒ぎ出した。
多少放置していても特に問題無さそうなので静観していると、どうやら今度の来訪者はガゼフを狙った連中らしい。心当たりがある様子だった。
モテモテだな、ガゼフ。
羨ましくはないが。
ガゼフはアインズに助力を求めるが、アインズがそれに応えてやる義理は無い。内心葛藤はしているみたいだけど、その程度だとまだ動かない。
だから、私が動こう。
「ガゼフさん。もしよかったら私がお手伝いしましょうか」
「アルカ殿……いやしかし」
「
「は、はぁ」
ガゼフと一緒にアインズからも困惑する様子が伝わってくるが、こればかりは譲れない。
混同されるのは好きじゃないんだ。
私は私で、わたしはわたしなのだから。
まぁ。他人にそれを求めるのは難しいから、仕方がない。
昔みたいに一人のプレイヤーとして存在していられればそれでもよかったんだがね。ひとつのキャラクターとしてはまた別の存在になっちゃうから。たとえそれが同じ意識であったものだとしてもね。
うん。我ながらわけわからん。
「アル――ディアさん本気ですか? いくら相手が格下だからって生産職が戦うのは危険すぎますよ」
「私が出ずに誰が出るっていうんですか。この面子のカルマを考えましょうよ」
「危険です、やめてください。なにもディアさんである必要はないでしょう。善人ならフロン……さんもいますし」
「フロンを戦線に立たせろと?」
「私が責任を持って守りますから」
「じゃあ私を守って下さいよ」
アインズ。
貴方がナザリックの支配者として、悪として正しくあろうとするならば、私は貴方を人として繋ぎとめよう。
異形種となってから精神構造が変わることは本体がその身をもって実感実証した。私には詳しいことまでは回ってきていないが、少なくとも元人間としての心はそう遠くないうちに消えてしまうだろう。微かな残滓があったとしても所詮それは残りカス。
人として、意識して存在していれば人間だった頃の気持ちはなくならない……と思いたい。それがダメでも時間稼ぎにはなるだろう。
アインズはアインズとしてこの世界で生きて……いや死んでいるが。存在することを決めたのだろうが。そうしたらモモンガはどうなる? ただの一人のプレイヤーとして遊んでいた彼はどうなる?
同類がいて、変わることがあれば……心の支えになれればそれはきっと幸せなことなのだと思う。
私だって本当に人間として正しいわけでもないが、間違っているとは言わせない。
「私たちが揃って、不可能なことがありましたか?」
「いっぱいありましたが」
「……ありましたね」
レイドボスとかね。絶対に勝てないのがね。
ガゼフがこの世界でもそこそこの強者だとするならば、それよりもいくらか強い奴が出てきたってこの編成なら勝てるだろう。世界級アイテムを使われたとしてもそれを防げる世界級アイテム持ちのアインズがいるからカバーかフォローくらいはできるだろうし。
いざとなれば逃げれば良いだけの話。
逃げられなければ、その時はその時。そんな理不尽なことがあるとすればこうしている間にもう手遅れになっていそうだ。
「うーん。じゃあネンドじんを一体貸しますから、それでいいですか?」
「いいんじゃないですかね。妥当なところで」
「……感謝する」
死の騎士は……いらないか。
ですね。怖いし。
といった会話が裏であったりなかったり。
アインズが渡した木彫りの小さな彫刻を大切そうに受け取るガゼフを見ているとハズレアイテムだと知っているだけになんとも言えない気持ちになってくる。ぶっちゃけそれただのゴミですし。
「テレレレッテレー、簡単作成ゴーレムあんてな~」
なんかSEを間違えたような気がするがまぁ構わないだろう。
あらかじめ取り寄せておいた「ネンドじんの素」……つまり普通のネンドの塊に赤い丸のアンテナが付いたコードをぶッ挿す。
ボコボコ、ブクブクと蠢き固まっていくネンド。
ほんの数秒で人型のクレイゴーレムが完成した。
「――ムオーン」
「おぉ……なんと勇ましい!」
「勇ましい……かな? 可愛いと思うんだけど」
「勇……いや、ちょっとわからないですね。可愛いというのも」
「えー」
感性の違いにショックを受ける。
ガゼフはなにをどう感じたのか勇ましいなどと称し、アインズはこの可愛さがわからないようだった。
可愛いのに。
それ以上に憐れというか働くことしか存在意義がないことに対して思うところがあるのだけれど。社畜の鑑っていうか、労働者そのものを体現したような道具として見てしまうと泣けてくる。
それが彼らの本懐だとしてもね。
「アインズ殿、ディア殿。この村を救っていただき、本当にありがとう」
「……」「……」
「では」
騎乗して部下と走り去るガゼフ。
それを走って追うネンドじん。図体がでかい上に二足歩行なのにかなり速い。
「それじゃあ、観戦タイムといきますか?」
「……ですね」
危惧することなんてなにもない。
私とアインズがいる。
それで十分だ。
さあ。
見せてもらおうか。王国最強と謳われる者の戦いというものを!
(´・ω...:.;::..