死の超越者と大いなる種族   作:河灯 泉

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サブタイにはなんの意味もないのですよ。
その時の気分です。


星が降り地は墜ち空を翔る

 ふぅ。

 落ち着いた。

 

 こんなところで自棄になってもどうにもならない。

 冷静な自分はなにも言ってくれないし。

 自分で、自分を、自分がなんとかしなきゃいけないのだ。

 わけわかんないけど、そういうことなのだ。わかんないけどとにかく頑張らなければいけないのだ。

 

 なぜなら、私はエゴロジーのギルマスなのだから。

 ここに住まう者たちを捨ててはいけない。私一人だけで逃避行なんて許されるものではない。

 私がやらずに誰がやる?

 

 やるんだ。

 

 

 

 

 

 胸元に下げたネックレスに意識を集中させる。

 某飛行石によく似た青い石が光を放つと微かな浮遊感とともに景色が変わる。

 レインボーパレスにある自室。大四畳半の狭き私室。

 このアクセサリーはタュピラ限定でどこへでも転移できる凄いアイテムなのだ。セキュリティの問題があるため個人認証が必要であるし、そもそもこれは全部で9個しか作っていない。私とその盟友たちの分しかないのだ。

 

 ……残りの8個とも全部宝物庫にあるが、あれはもう二度と使われることはない。

 私しか、これを使う者はいない。

 

 ……。

 

 やめよう。気が滅入る。視線が下がってしまう。

 そして、畳で勝手に繁殖しているサルマタケを見て。

 ……。

 見ないフリをした。

 私はなにも見なかったのだ。イイネ?

 

 昨日まではなんともなかったはずなのだが。

 サービス終了間際になにがあったし。

 イグサが侵食されているぞおい。

 

 

 

 とりあえず。

 もう何も考えたくない。

 

 レインボーパレスの外に転移する。

 

「――うわぁ……!」

 

 悩みとか考え事とか、全部なにもかも吹っ飛んだ。

 外部監視システムによって外がどんなものだったのかは知っていたが、やはり肉眼で見ると全然違う。

 視界の全てを埋める、満天の星空だ。

 キラキラと光る小さな小さな点や粒。

 あれらひとつひとつが、自分達の立っている大地と同じ星々であると、どうして思えようか。

 

 素晴らしい。

 自分なんて、本当にちっぽけな存在であると、そう思ってしまうくらいに遠くて広い。

 

「ブループラネットさんが見たらなんて言ったかなぁ……」

 

 私よりもずっとずっと星のことを想っていた友人を思い浮かべる。

 銀河の欠片を生で見たって言ったらさぞら羨ましがるだろうなぁ。

 前にお邪魔させてもらった第六層にあった闘技場の星空も手が込んでいて綺麗だった。いったいあれにどれほどの情熱と労力を注ぎ込んだのか。

 

「モモンガさんにも見せたいな……」

 

 彼ならなんて言うだろうか。

 この輝く星たちの煌きを、それを見せ付けてくれるこの素晴らしい世界を、彼なら――

 

 

「……宝石箱」

 

 

 とでも例えるだろうか。

 その場合は、むしろ観察者である自分達が宝石箱の中にいるような気もするが。

 まぁいい。もうどうでもいいや。

 

「はぁ……夜風が気持ち良い」

 

 そよそよと、身体を通り抜ける感覚がくすぐったい。

 公害に犯されていない、自然な風だ。

 人類の魔の手に掛かっていない世界。

 なんという楽園か。天国か。

 

「まるで死んだみたいな……って、もしかして本当に死んでたり?」

 

 頬をむにゅーっと引っ張る。

 ……痛い。

 夢か現実かって話じゃないんだから当然か。

 

「はふぅ……」

 

 宮殿の屋根の上で大の字になって転がる。

 見上げた先には遠い遠い光が見える。

 私が目にした時にはもうその星はなくなっているのかもしれない。

 逆に、私が見ていないところに新しい星が生まれているのかもしれない。

 本物の星を見るのは初めてだ。知識として知ってはいても、体験しないことにはわからないことだってある。

 

「ふぃー……」

 

 深呼吸。

 空気が薄くなるはずの高高度であるが、タュピラは地上と変わらない環境を維持できるので酸欠にはならない。当然、雲の上だと雨も降らないし風からも守られている。日差しも調節可能だ。

 タュピラには魔法というシステムがあるから自然災害などなんの問題にもならないのだ。

 

 そのあたりの検証は既に別の身体が担当している。

 現在、ある程度わかったこと。その中で重要だと思われることといえば、フレンドリーファイヤが解禁されていることくらいか。

 プリニーの有爆はユグドラシル時代からあったが、ここでは更に気を遣わないといけなそうだ。うっかり転んだ拍子の連鎖大爆発で大量死亡事故とか笑えない。

 タュピラの広域殲滅兵器も使いどころが難しくなってそうだ。あまり高度を下げすぎると自分たちまで巻き込まれかねない。

 魔法やアイテムの使用もしてはいるものの、まだまだ時間が必要だ。

 生産工場は特に問題なく稼動しているが地上からの補給がないと作れないものも多い。栽培や養殖で賄えるものだって世界が変わったことによる突然変異なんかがあったらもう大変。世代交代もどんな影響を受けているのか調べなければ。

 

「ま。それらは他に任せるとして」

 

 私はオールマイティになんでもできるようになっている。おいこらそこ貧乏器用とか言ったらぶん殴るぞ。

 ――って、誰に向けて言っているのか。

 自分か?

 まぁいいけどね。

 独り言が増えたのはもうずっと昔からだし。

 

 この身体の私が動くのは手が足りない時だけだ。

 あとは、私が動きたい時くらいだな。

 そして、今は猫の手も借りたい状況にある。

 

「さぁて。お仕事お仕事、視察視察~」

 

 まずは我が盟友ラハールさんのNPC、エトナとプリニーたちのところか。フロンは出席してなかったけどなんでだろ?

 ……行けばわかるか。

 

 NPCたちが意思を持っている。

 それを怖くないといえば嘘になる。

 私は上に立てる、上等な人間じゃないんだよ。ただのちっぽけで矮小な人間なのだ。

 

 ……でもね。

 

 

 

 ちゃんと生きている者に囲まれて、慕われるって、とっても幸せなことなんだ。

 

 そう、思う。

 死体の相手は、もうごめんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あ、モモンガさんは別だよ?

 遺骸のアンデッドだけど。

 

 それはそれ、これはこれ。

 




ラハールさん
魔王。アインズ・ウール・ゴウン41+1人の二次主人公候補その1。
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