死の超越者と大いなる種族   作:河灯 泉

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……は?


月は出ているか

「ようこそいらっしゃいました。エトナ様とフロン様がお待ちです……ッス」

「うん。ご苦労様」

 

 工場の門番をしているプリニーを労って中に入る。

 ちなみにあのプリニーは『プリニー神』というプリニー族の最上位種族なのでめっちゃ強い。やはり門番は強くなくてはいけないと思うんだ。

 魔王プリニーバールはいないがね。あんなチートキャラが仲間にいて堪るかっての。バランスブレイクはゲームの寿命を縮める。神で十分だよ。

 ま。どれだけ強かろうが、普通のプリニーなので投げられたら爆発して死ぬんだけどね。それでこそプリニー族だ。

 

 

 

 ここはブラックシティの奥深くに位置するプリニー工場である。

 死者が己の罪を清算するためにプリニーとなって汗水垂らして働く、健全な職場なのだ。

 彼らには生前の行いによって選ばれる天界バージョンと魔界バージョンがある。しかしデータ容量の問題で割と適当に詰め込まれているため境界などは無い。魔界の方が少しばかりハードなお仕事が多い傾向はあれど、やはり大して違いはない。

 

 自動ドアが私のために開いてくれる。

 ……今のでちょっと歌いたくなった私は悪くない。

 わからない? いいよ別に。ネタだから。

 って、誰に向けて言ってるのかって。これ何度目だ?

 

 まぁいい。

 気を取り直して、中で待っていたエトナとフロンへと意識を向ける。

 

「二人ともご苦労様。稼動状態は?」

「はいっ! プリニーの出現および教育にはなんら問題ありません!」

「フロンからはなにかあるか?」

「は、はいっ! アルタイル様から仰せ仕りました回復魔法の検証は蘇生系以外全て終えています!」

「……そう。良い働きだ。ありがとう」

「「光栄であります!」」

 

 ……なんだかなぁ。

 アルタイルー? フロンに指示出してたとかなにそれ私聞いてないんだけどー? どーなってんのー? ねー? ねぇー? おいこらー?

 

(『確かに伝えたぞ』)

 

 知らんよ。

 

(『貴様が転がっている間に』)

 

 知るかぁッ!!

 平常時に伝えてくれないとわかるわけないだろうが!

 自分に対してぶちきれるってどゆことよ?

 てか自分で自分にうまく情報を伝えられないってどうよ? どうなのよ?

 本体はなにか私に言うことがあるんじゃないかな? かなぁ?

 

(『……おかけになった伝言(メッセージ)は現在通信の繋がらないところにいるか電源が切れて――』)

 

 だんまりか。

 もういいよ。ちぇっ。

 と。

 ちょっとだけ拗ねてみるものの。やっぱ相手が自分じゃあねぇ。

 意味無いからね。自分は自分の全てを知っている。私は自分のことを把握し切れていないのにね。人間の身体じゃ仕方ないのかもしれないけど。一方通行なところも多くてやはり不満が溜まる。不平等で不公平だ。

 身体は複数。意識は……複数。元々はひとつだし仲違いすることもないはずなのだが、なんだか色々とおかしなことになっている。人間の身体でしか考えられない私じゃこれ以上の考察は不可能だ。

 

 ま。

 いまここでなにを言ってもどうなるものでもなし。思って考えて。別にどうもならない。

 私は私にできることを、したいことをやるだけさ。それでいいさね。

 

 さてと。

 こちらを見つめている二人に意識を戻す。

 

 

 エトナ。

 私の盟友”ラハール”さんが作り出した悪魔の少女。歳は4桁だが……だが少女なのだ。

 赤いギザギザ髪をツインテールにし、局部以外の大部分の肌を晒す服装をしている。主な武装は槍。前衛職だけあって近接戦においては私よりずっと強いし、攻撃系の魔法も使える。比較的フランクな性格が好きだ。

 業務中は敬語だけどね。ラハールさんはそこらへん真面目だったから。

 カルマはちょっとマイナス気味の悪。

 

 フロン。

 エトナと時を同じくして作られた天使の少女。堕天使ではない。なおエトナよりも年上の模様。

 支援と回復を担当する後衛職……なのだが前に出ても戦える謎。攻撃時に「なるとっ」「かにみそっ」といった不思議な掛け声を放つようにしていたあたりラハールさんの拘りようを感じた。

 現在のこの状態では堕天していないので瞳は青いままである。極善天使。

 

 ……ちなみにフロンは味方に降り掛かる即死系効果を無効化できる能力を有しているのだが、死霊系に特化した結果エクリプスまで得たモモンガさんの即死魔法だけはどうしても防げない。というか既に死んでいるアンデッドすらも即死させるモモンガさんマジパネェ。

 

 

「エトナ、フロン。私のことをどう思っている? 業務モードは解いてくれて構わない」

「え? そうですねー……殿下の親友ですし、上司だけど仲の良い友達って感じですかねー」

「えーっと、友達というにはちょっと恐れ多くて、でも上司という感じもあまりしないのでー……なんでしょうねぇ?」

「あぁうん、まぁわかった」

 

 一言では言い表せない関係かね。複雑ではないが、簡単でもないと。

 ラハールさんからして創造主ではあるけれど元ネタ通りフランクな付き合いって設定だったし、少し難しく捉えているのかもしれない。

 かく言う私もなんと言って良いのか迷っているのだけれども。

 

「二人ともなにか私に言いたいこととか要望があったら聞くが?」

「別になんもないのでお構いなくー」

「大丈夫です」

「じゃ、引き続き職務に戻ってくれ。ホワイトに、定時上がりでね」

「「はーい」」

 

 残業なんてするもんじゃないよね。

 

 帰りがけに新人たちの教育現場を覗いてきたが、これが意外と普通だった。

 出現(スポーン)したプリニーにここの規則や仕事内容をレクチャーして、適当な寮に振り分けていく。あとは同室の先輩方に聞いてくれという丸投げスタンス。

 先輩プリニーたちも職務に忠実で立派な社員だった。新人たちにも特におかしなところはない。一部「マモレナカッタ……」と呟いておきながら自分で自分のその言葉を不思議がっている者もいたが、放っておいてもいいだろう。私が立ち入って解決するとも思えない。

 

 

 

「――さて」

 

 お次は我が同僚”トロ・ミンチ”さんの拠点を見に行こうかね。

 あぁ忙しい忙しい。

 

 





月は出ているのかと聞いているんだッ!
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