やってまいりましたブラックシティ名物『キマイラ研究所』前でございます。
今はほとんどのエリアが閉鎖中で機能を停止しているがね。
制御不能なキマイラ……有機物と無機物、生物と無生物を組み合わせた狂気の産物。それを作り出すこの場所はエゴロジーにとってあまりに危険すぎる。
じゃあなんで作ったのかってーと。エゴロジーの幹部が一人『トロ・ミンチ』さんが「やりたいからやる」とか言うからよ。有言実行の傍迷惑な天才がやらかしてきた事件は数多い。
彼女の最高傑作である
しかし、使い勝手の良い労働力である”ネンドじん”を創造したのも彼女である。本当にあれだけは良い仕事したと思う。アレだけはね。それ以外は許さん。
エゴロジーは名前の通り自分勝手な人が多いから、彼女のようなやんちゃ娘がやんちゃしても仕方がないことだと言える。それでも限度ってもんがあると思うのだけれど。
あの人も、いたらいたで迷惑な人だったけど。いなくなってしまうととても寂しくなる存在だった。例えるなら……紫外線みたいな感じ? 無いと困るが常にいられても邪魔になるってところとかそれっぽい。
さて。
話を現実に戻そう。思い出話は程々に。
キマイラ研究所に続く道の手前にはコーバがある。工場のことだ。
今回用があるのはキマイラ研究所ではなくコーバの方である。
コーバの前には機能を停止させているネンドじんが大量に並べられている。これらはただのネンド――粘土に戻すこともできるのだが、再形成や再起動に問題が無いか全て調べさせているのでこんなに溢れてしまっている。クレイゴーレムというゴーレムの一種なのだが、蕩けて柔らかそうな見た目に反して
「指揮官殿は……ここだよね」
豚の仮面を被った人たちの「ぶっぶひー」という人語を忘れたような声と敬礼を受けながら司令室に足を踏み入れる。
黒い豚マスクの”ブタマスク将軍”が椅子を引いてくれたので遠慮なくそこへ座る。
座った次の瞬間には後ろから瞬間移動してきたとしか思えない速度で現れた、顔がメカメカしいツインテールメイドちゃんが出してくれる紅茶を一口。
……くっそ甘い。っていうか溶けきっていない砂糖がジャリジャリする。
美味しいからいいんだけどさ。あ、マシュマロもくれるの? 流石はメイドロボ”マシュマロちゃん”だね。
……やっぱり甘い。
よし。一息つけた。
本題を忘れる前に、ちゃんとお仕事しよう。
対面に座っている一人の少年……『指揮官殿』を見つめる。右腕のロックバスター的な武装と背中の翼が邪魔そう。
”しきかんどの”に会話する機能はないため私が一方的に話すことになる。
「調子は良い?」
こくり。首肯。
「みんなとは仲良くやってる?」
こくり。
「なにか不満とか、訴えたいこととかあったら言ってね」
……こくり。
ほんの少し間があったのはどう捉えるべきなのか。
わからない。
でも、彼の前ではあまり支配者として振舞いたくない。
友達感覚で付き合っていたいのだ。理由は色々あるけれど。
彼の重い設定とかも、私のこの態度の一因ではある。
……。
ここにいると整備作業に影響が出そうだったのでもう出て行くことにした。深い話はこれからじっくり進めていけば良い。焦らず慌てず、ゆっくりと。
「じゃ、また明日」
こくり。
ふりふり。
手を振る”しきかんどの”にこちらからも手を振り、見送りのブタマスクたちが上げる奇声を意識に入れないようにしてコーバを立ち去る。
あの人のエリアは精神的につらいことが多すぎる。あ、ぶんちょうぼうと目が合った。欝だ。
なんだかな。とっても疲れてきた。
これ、全部声掛けて回るの? 今夜中に?
……。
ただの人間種にこの重労働はひどいと思うの。
まぁ。
リアルの頃と比べりゃまだマシなんだけど。24時間以上ぶっ続けでお仕事とかざらだったし。
だがしかし。
これでも十分きつい……。
マシュマロちゃん
数段階のプンスカシステムを搭載した殺戮兵器。普段はただのお世話メイド。
通常モード(無手)
↓
おこモード(武装に鋏追加)
↓
激おこプンプン丸(右アームドリル追加)
↓
ムカ着火ファイヤー(左アームチェーンソー追加)
↓
カム着火インフェルノォォォオウ(ビーム兵器解放)
↓
激おこスティックファイナリアリティプンプンドリーム(最早意味不明)
↓
憤怒バーニングファッキンストリーム(世界級並)
↓
「キジモ ナカズバ ウタレマイニ……
ニンゲン バンジー サイオウガ ウマ
トンカツ クッテ ウマカッタ……
アナタノ オカケニナッタ
デンワバンゴウハ ゲンザイ
ニシカラヒガシ デス……
コーワレチャッタ コーワレチャッタ コーワレチャッタヨ~ン
プスッ プスプスッ ポンッ。」