死の超越者と大いなる種族   作:河灯 泉

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なんか良いサブタイないっすかねー?



罪と業と正義と私

「――村?」

『村ッスね』

「街とかではなく?」

『村ッス』

 

 先行して偵察に出したローグプリニー隊から連絡があったのは仕事が一段落して、仮眠を取ろうとした時だった。

 寝かせろよ……てか私以外の担当いないの?

 誰か対応してよぉ。

 なんて。弱音を吐いてる場合じゃない。他も忙しいらしいのだ。

 頑張るしかないんだ。頑張ろう。

 

 

 

 完全隠蔽されている状態のタュピラから転移をすると真下にしか送り込めず、別の場所に転移するためには目印となる転移マーカーが必要不可欠だ。

 最初に降下させたローグプリニー隊は見渡す限りの平原の一角にグリーンシークレットハウスで簡易拠点を築き、そこから八方へと散らばっていったらしい。索敵と隠密行動を優先し1キロ単位で簡易転移マーカー(簡易型だと一度そこへ送るとマーカーが消滅する。普通のは何度か使える)を設置しながらの行軍だったから移動速度はかなり遅かったのだろう。

 そして、あるチームが壊滅した村を見つけたと報告してきたのだ。

 

「どんな感じかもっと詳しく教えて」

『みすぼらしい木造家屋が数十軒あったっぽいッスね。あとは柵と畑と井戸と……面白い物はなんもない場所ッス。つい最近荒らされて燃やされた跡があるんで知的生命体の存在はほぼ確定したッス』

「残留物の採集を許可する。村人の死体とかは見つかった?」

『えー、あー。あったッス。第一発見は村娘の死体ッス』

 

 返答に間があったのは別のプリニーと話をしていたからか。

 

「人間?」

『見た感じ普通の人間種ッス。レイプされた後に殺されたんじゃないッスかねー凄い顔ッスねぇ~こんなぶっさいくな顔して死ぬなんてかわいそうッスねー目がギョロっとしてでっかく開いた口から舌がニョロっと出てて手と足がバラバラな方向を向いてて指も折れてグニャグニャになっててああ爪も血肉と土だらけッスね、抵抗でもしたんスかねー頭だけに可燃物をぶっかけられて焼かれたからでしょーけど燃え残った髪がチリチリでところどころハゲてるのがこれまたウケるっスわーしかも何人でヤったのか知らないッスけど足の付け根から顔まで笑っちゃうくらい大量のビカビカになったせいえk――』

「……いいからさっさと次を探せ」

『ういッス!! すいあせんっしたぁ!!』

 

 軽く不機嫌な声を出して報告を打ち切らせる。

 なにちょっと嬉しそうに言ってんの? 女の子に聞かせる内容じゃないでしょう?

 えぇいこれだからローグプリニーは好きじゃないんだ。デリカシーってもんがない。

 

『男は甚振って殺して女は犯してから殺したっぽいッスねー。生存者は0ッス』

「住居の中になにかあった?」

『特になんもないッス。燃えてなくなった物が多いし価値のありそうな物なんて残ってないッスね』

「……そう。マーカーを設置して撤退して。痕跡は残さずね」

『りょーかいッス』

 

「……はぁ」

 

 溜息一つ。

 面倒事の予感しかしない。

 しかし。放っておくのもなんだか目覚めが悪い。私は善人なのだ。

 地上に設営した拠点にいるはずのプリニー隊長に<伝言/メッセージ>を繋げる。

 

「観測班。遠隔視の鏡(ミラー・オブ・リモート・ビューイング)はいくつ使っている?」

『5つッス。これ以上は人手が足りないッス』

「陽が出る頃には本隊を寄越すからそれまで頑張ってくれ。南西の隊から話は聞いたな?」

『聞いたッス。まだ残ってる村を探すんスね?』

「安全に注意して、大急ぎでね」

『了解ッス!』

 

 ちゃんと敬ってくれている隊長の見えない敬礼を幻視して<伝言/メッセージ>を切る。

 生存者が見つかればいいが、それよりも襲撃者のことを考えた方がよかったか。

 生活模様を見るに文明はそこまで発達していないように思えたが。未発達だからといってそこの住民が弱いとは限らない。

 出会った瞬間に10位階魔法とかをぶっ放してくる野蛮人じゃないことを祈ろう。いやなんかもう村の惨状を聞く限り野蛮人以外の何者でもないしかなり性質の悪い相手だと思うのだけれども。

 

 他の隊の報告を聞いていくとどうやら襲撃者共は南から侵攻してきているらしい。複数の村の荒れ具合を聞いてそう判断した。

 北西に向かった別の隊が騎乗速度で移動する一団を確認したが襲撃者共とは違うグループだと思われる。隠蔽を厳にしつつ追跡中。プリニーの足は極端に遅くは無いが速くも無いので馬が相手だと分が悪い。加速装置は参謀以上のプリニーにしか与えてない。

 

 そして。

 

 そのまま私は寝ることなく朝を迎えた。

 迎えてしまった。

 とりあえず。シリウスに指揮権を譲渡して本隊を降下させた。

 

 今回の主力。エトナ、フロンを中心としたプリニー将軍隊。将軍がただの一兵士として動くことを気にしてはいけない。だって種族というか格の名前がそうなんだもの。

 ”しきかんどの”とマシュマロちゃんは遊撃隊。使い捨てても問題無いネンドじんも何体か送っておいた。

 他に飛行できる戦力として考えていた青竜のドラゴはお留守番。あれはたぶん野良モンスターと間違えられて攻撃される。

 

「……これでようやく寝られる」

 

 地上のことはシリウスに任せて、私は休もう。

 ハードワークが過ぎる。

 ていうかお腹空いたな……。

 

『緊急事態です!』

「……なにごと?」

 

 切羽詰ったエトナからの<伝言/メッセージ>に「私不機嫌です」と言わんばかりの低い声色で返す。

 ようやく。ようやくゆっくりできると思ったのに……!

 

『シリウス様が単独で現在進行形で襲われている村に向かいました!』

 

 なにやってんだぁあああああああああぁあのバカぁ!!

 って言うのは自虐かぁぁぁぁ!?

 




加速装置:移動力と跳躍力を上昇させる装備アイテム。
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