とある科学の幻想生成《ジェネレータ》   作:レイヴン

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「──俺の能力は『幻想生成(ジェネレータ)』。それがこの世に存在するモンなら、石っころだろうがスプーンだろうが核兵器だろうが、なんだって作れる。そんなチカラさ」

       ─────『学園都市』の『闇』に住む青年───幻想生成(ジェネレータ)


第一章 『暗部』
第一話 超能力


 東京西部を一気に開拓し、その一部を神奈川や埼玉に及ばせながら東京都の中央三分の一を円形に占める都市、学園都市。

 総人口は約230万で、うち8割は学生である。

その学園都市の目的は、「脳の研究」による「超能力」開発にあり、その技術力は外に比べ「20年進んでいる」ともいわれている。

 大勢の学生を「授業の一環」として能力開発を促しており、それによって学生は能力を開花させる。

 が、全員が全員能力を得られるというわけでもない。

 『能力者』たちは0から5の、6つのレベルに分けられる。即ち、

 

 無能力者(レベル0)。周りからはある種の落ちこぼれと評価されてしまっている。6割の学生はこれにあたる。

 低能力者(レベル1)。多くの生徒がこれにあたり、スプーンを曲げるなど、どうにも役に立てそうにない能力が多い。

 異能力者(レベル2)。レベル1よりマシという程度で、やはり日常生活では役に立たない。

 強能力者(レベル3)。日常生活においてようやく便利になり始めるレベル。エリート扱いされ始める程度。

 大能力者(レベル4)。軍隊において、戦術的価値を得られる程の能力。

 超能力者(レベル5)。単独で軍隊と戦うことが可能なレベルの力。学園都市において7人しかいないとされている。

 中でも役立たず認定されるレベル0の一部は、周囲からの劣等感からか、群れて犯罪に走ったりするケースもある。

 

 

 

 

『聞いているか、幻想生成(ジェネレータ)?』

 

「……、ああ」

 

 電話越しに、低い男の声が車内に響く。合成音とも取れる単調で感情の無い声は、ある種の恐怖を覚えるほどだった。今となっては、もう慣れた話であったが。

 

『次の仕事だ。第一〇学区の、アジトへ向けて逃走中のスキルアウトの排除だ』

 

「数は」

 

 間を置かず、幻想生成(ジェネレータ)は吐き捨てた。

 

 『七。うち二人は能力者。片方はレベル1、特筆する能力はない。もう片方は、レベル3の発火能力者(パイロキネシス)だ』

 

 相手も単調に返す。もう何度も繰り返してきたことだ。

 

「わざわざ俺がやる仕事かよ?」

 

『そういうな。お前の最後の仕事になる』

 

 その言葉に、彼は顔をしかめた。

 

「……、どういうことだ」

 

『お前の仕事はこれ以降、最近発足した暗部組織が請け負うことになってな』

 

「なに?」

 

『「()()()()」。聞いたことはないか?かの第一位、「一方通行(アクセラレータ)」も所属するという組織だ。要するに我々はお払い箱というわけだよ。これは「上」の決定だ。逆らうことはできない。お前であってもな』

 

「チッ。……そろそろだ」

 

 一つ舌打ちしつつ、彼は携帯端末の通話を切った。途端に携帯端末が「消失」した。彼の能力によって生成されたものは、彼の任意によって無かったことにできるのだ。

 

 

 私服ひとつで車を降りると、落書きだらけの薄暗い道の前に立つ。適当に首のスイッチを押して、右てのひらに拳銃を「生成」した。

 

 左手でわしわしと髪を掻きつつ、ずんずんと入っていく。

 

 一つ目の曲がり角。やはり薄暗いところで、「目標」を見つけた。

 

「……」

 

「あぁん?なに見てやがんだテメェ!」

 

 目が合ったスキルアウトの一人が、『幻想生成(ジェネレータ)』に向けて声を張り上げた。

 

(数は8。一人多いじゃねぇか。……いや、違うな。一人「囚われて」いるのか)

 

 男たちの中央で気を失っている女を一瞥もせず、彼らへ向かって声をかけた。

 

「そういうテメェらは、なにやってんだ?」

 

「見せもんじゃねぇんだよ。散れオイ!」

 

「チッ」

 

 話をしていてもキリがない。彼はポケットに突っ込んでいた手を引き抜き、その拳銃を一人の男へ向けて発砲した。

 

 破裂音と同時に、胸に鮮血の波紋を広げながら、ゴツゴツとした男がドサリと倒れる。

 

「な、おい、」

 

 二発目。乾いた音と同時に今しがた女に取っ組みそうになった男へ飛翔した。漆黒の鉛弾は男の脳天を貫き、力なく倒れた。

 

「なんのつもりだテメェ!」

 

 ようやく状況が呑み込めたのか、リーダー格であろう男がこちらに向かってきた。発火能力(パイロキネシス)が火を吹き、周囲の温度が一気に高まる。

 

 手をかざすと同時に火炎の球が炸裂した。遅くも早くもないスピードで『幻想生成(ジェネレータ)』の体に迫る。

 

 しかし。

 

「温いな。温すぎる」

 

 その炎は、簡単に蒸発した。『水分子』によって急激に消化されたのである。

 

「んだと…ッ」

 

「レベル3相当か。その程度じゃ俺は倒せねぇ。元々戦いと形容することすらできねぇんだよ」

 

 言いきってから、コンクリートを蹴った。常人よりも速い程度の速度で、

 

 発火能力者(パイロキネシス)の男に肉薄した。

 

「ッ!」

 

 怯む彼。使うのは拳銃ではない。左手で軽く、男の腹を殴った。

 

「ごッッ!?」

 

 力なく突き入れた拳は、しかし男を5m以上ノーバウンドで吹き飛ばした。

 

 『窒素装甲(オフェンスアーマー)』という能力がある。

 

 レベル4相当。その周囲の窒素を操り、鉄壁の『壁』として機能させることができる能力だ。

 

 だが、彼は周囲の窒素を操ったわけではない。

 

 ()()()()()()()()()()を、操ったのである。

 

 男はほかのスキルアウトを巻き込みながら、狭い路地裏に倒れ伏す。

 

「あ、あんた、能力者か!」

 

「ご名答だな。どうせてめぇらは此処で死ぬ。冥土の土産に教えてやるよ」

 

 嘲笑い、彼は言った。

 

 

 

「──俺の能力は『幻想生成(ジェネレータ)』。それがこの世に存在するモンなら、石っころだろうがスプーンだろうが核兵器だろうが、なんだって作れる。そんなチカラさ」

 

 “核”という単語に男たちはひるむが、構わず彼は行動に出た。

 

 拳銃を向ける。弾はその「能力」によって半永久的に供給され続ける。ほぼ新品の漆黒の拳銃が、鉛弾を幾つも吐きだした。

 

 血が広がり、路地裏の路上は赤く染まる。最後に気絶している発火能力者(パイロキネシス)にも鉛弾をぶち込んで、拳銃をポケットに突っ込んだ。携帯端末を生成し、電話の男へ報告する。

 

「ああ。終わった」

 

「…ああ。そうだ」

 

「……女が一人。回収班を回せ。後始末は任せる」

 

「ああ。じゃあな」

 

 これで「仕事」は終わった。

 

 それは「居場所」が消えてしまったともいえる。

 

 彼はその能力(チカラ)をある程度自由に使えるという名目で、学園都市の暗部で使い古されていた。別段それを悪いとも思わなかったし、文句を吐きながらも、それが自分の生き様だとも思っていた。そんな自分の生き様が、別の誰か───『一方通行《アクセラレータ》』を含む謎の暗部組織、『グループ』によって潰された。

 

 彼はその顔面を歪ませ、携帯端末を足元にたたきつけ、おもむろに足を振りおろした。バリン、という音とともに液晶が砕け散る。

 

「……」

 

 適当に首のスイッチを切ってから、彼は踵を返した。

 

「『グループ』……」

 




一話目です。開始しました『とある科学の幻想生成《ジェネレータ》』。実は能力の妄想から始まったこの話なのですが、なんとか『ロシア編』まで続けて、様子を見ながら『新約』にも手を出していきたい、と思っています。一話時点での時系列は14-15巻程度と少し後からの開始となっています。



※02/12より、二章より追加した前書きでのキャラクター台詞を挿入開始、同時に仕様変更に伴い傍点の修正を開始。
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