とある科学の幻想生成《ジェネレータ》   作:レイヴン

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「……」

       ─────学園都市第一位『一方通行(アクセラレータ)』を保有する超能力者(レベル5)───一方通行(アクセラレータ) 

「『一方通行(アクセラレータ)』は、俺の獲物だ、っつってんだよ」

       ─────学園都市第二位『未元物質(ダークマター)』を保有する超能力者(レベル5)───垣根(かきね)帝督(ていとく)

「テメェ……第二位か」

       ─────『学園都市』の『闇』に住む青年───幻想生成(ジェネレータ)


第二話 遭遇

 第三学区に存在する施設、個室サロン。

 中身はカラオケボックスを豪華にしたようなところで、ある種の秘密基地を、お金で買えるというシステムである。「監視の目が完全に無い」のは幸か不幸か、性犯罪の温床になることもある、らしい。

 幻想生成(ジェネレータ)はその四階の一室の上のソファに寝転びながら、思考を巡らせていた。

 

(……『グループ』。学園都市の暗部組織。そんなものが秘密裏に出来てるのか。……しかも、第一位だと?そんなものと俺が比べられてるってのか。クソ)

 時間がたって冷め、気の抜けた炭酸を少し飲みつつ、

(俺が独力で調べるにも限りがある。モノは作れても情報は作れねぇ。となると……)

 彼は携帯端末を生成し、()()()()()()()()()()()()()()()、アンチスキルへとコールした。

 

 一コール。応答なし。

 二コール、繋がった。

 

『何のつもりだ』

 

 狙い通り、『電話の男』が割り込んできた。

 

「(便利だな、アンチスキル)」

 

「『グループ』っつったな。そいつらは何モンなんだ。俺はどうすりゃいい」

 

『言っただろう。我々は用済みなのだ』

 

 幻想生成(ジェネレータ)は冷静に、

 

「ざけんなよ。その気になればてめぇらを潰せるってことを忘れたのか」

 

『……「グループ」を調べ上げて、どうするつもりだ?』

 

「決まってんだろ。潰しに行く。この俺がな」

 

『……本気で言っているのか?』

 

 鼻で笑いながら、「電話の男」は返してきた。

 

「あん?」

 

『「()()()()」はお前が思っている以上に強いぞ。言ったはずだ。学園都市第一位、「一方通行(アクセラレータ)」が居る、と』

 

「だったらどうした。俺がその第一位に勝てないとでも?」

 

『むしろ勝てると思っているのか』

 

「……、」

 

『お前は奴の能力を知らない。()()()()では第一位(アクセラレータ)は愚か、第二位(ダークマター)にも勝てそうにはないな』

 

「ンだと……ッ」

 

『やめておけ、とだけ言っておこう。私が言えるのはそれだけだ』

 

「……チッ」

 

 手に力を込める。端末が歪にひしゃげた。

 

 冷めたヒョロいポテトを口に含んでから、彼はサロンを出た。

 

 

 

 

 

 十月二日、夕暮れ時。第十八学区にて、幻想生成(ジェネレータ)は、目標を見つけていた。

 

 ()()は、長点上機学園の制服を着込み、長いスカートを邪魔くさそうに翻しながら下校しているようだった。

 

(第一位ともあろう奴が、元気にガッコーかよ)

 

 そんな学園都市の超能力(レベル5)第一位の怪物は、首筋に彼と同じようなチョーカーを付けていた。聞いた話によれば、脳に損傷を受け、演算をなんらかの形で補助しているという。

 但し()のそれは演算の外部化ではなく、単なる時間制限として稼働していた。それはさながら、暗部からの『首輪』だ。

 

 距離は60m。銃殺するには少し遠いか。

 

(やるか、いや)

 

 思考と同時、右から烈風が襲った。

 

「ッッ!」

 

 咄嗟に全身に『窒素装甲(オフェンスアーマー)』を展開した。生成された窒素は吹き飛ばされつつも、毎秒常に彼の体から展開される。『周りの窒素を操る』だけの本家の『能力(オフェンスアーマー)』を遥かにしのぐ効率を誇る。

 しかしその鉄壁の防御は、信じられないほどに簡単に崩れた。

 

(コレは…ッ)

 

 ボゴォッッ、と。

 

 やたらと高級そうなビルに、彼の体が突き刺さった。

 

 ビルは横向きに巨大なクレーターを作り、その中心に彼の体を埋めた。

 

「ッッく、」

 

 自然と息が漏れる。

 

「よぉ」

 

 久々に味わった痛覚に歯噛みしながら、声がかかった方を見上げた。

 

 俗に言う「イケメン」と呼ぶに値するような顔立ちに茶髪の男は、両手をポケットに突っ込みながら、ゆっくりとこちらに歩いてきていた。

()()()()()んだってなぁ、お前」

 

「……あん?」

 

 立ち上がりつつ、正面から見据えた。

 

「使える人材なら雇ってやろうとも思ったが、そうもいかなくなってな。テメェに一方通行(アクセラレータ)は渡せねぇ」

 

「ハッ。シャレッ気ねぇ第一位に惚れ込んだクチか?イイ趣味じゃねぇな」

 

「違ぇよ」

 

 二度目の烈風が吹いた。

 

 「面」として襲ってくるはずの風は、「点」として幻想生成(ジェネレータ)の座標へのみ突っ込んできた。横に転がりつつ回避すると、クレータが出来たビルに不可視の攻撃が突き刺さり、その高そうな表面を見事に廃墟にする。

 

「『一方通行(アクセラレータ)』は、俺の()()だ、っつってんだよ」

 

「はん?」

 

「テメェが第一位を狙ってるのは知ってる。テメェに奴は殺せねぇ、おとなしく寝てろ」

 

「チッ!」

 

 そこでやっと、首筋のスイッチを押した。あらゆる物質をその配下に置いた彼は、殺傷能力を含めて無限の可能性を得る。

 

 手始めにその右肩にロケットランチャーを構築し、射出した。

 

 ゴォッ、と大きな音が炸裂。しかし奴は、信号機の上に座っていた。

 

(空間移動…?いや、)

 

 そこで、彼は見た。“奴”の背から伸びる白い羽を。

 

「言ったろうが。テメェじゃ俺は殺せねぇ。()()()()()しか作れねぇテメェじゃ、『未元物質(ダークマター)』越しの俺にゃ傷一つ付けらんねぇってわけだ」

 

「テメェ…第二位か」

 

「随分いまさらだな。ってわけで死ね」

 

 羽ばたいた第二位がゆっくりと向かってきた。ロケットランチャーを消去し、代わりに拳銃を構築する。

 

 セーフティは作られていない。幻想生成(ジェネレータ)お手製の、コスト度外視で殺人に最適化されたハンドガンが、その鉛弾を吐きだした。

 

 パン、と乾いた音が鳴った。しかしそれだけ。

 

 鉛弾は真っ白な翼に風穴を開けることは無く、

 

「学習能力ねえのか」

 

 高速で迫った垣根に対応が遅れた。周囲30cmの距離に強大な『窒素装甲(オフェンスアーマー)』を配置。しかし、

 

「ごッ、」

 

 その30cmの壁をぶち破り、打撃として転用された未元物質(ダークマター)の翼が腹に刺さった。幻想生成(ジェネレータ)の身体が、真新しいビルの二階のガラスを突き破って、反対側の壁に突き刺さる。

 

 肺の中の酸素が一気に吐きだされた。

 

「かはッ」

 

 声にならない声と同時に酸素が無くなる。一瞬の朦朧とする思考の中でなんとか演算。肺の中に酸素を直接生成して、二撃目に備える。

 

 構えた幻想生成(ジェネレータ)だったが、未元物質(ダークマター)を羽ばたかせる彼は、突き破ったガラスが並ぶ壁をまるごと崩壊させ、その端に立っていた。

 

「クソボケなてめえに説明してやる」

 

「……、」

 

「俺の『未元物質(ダークマター)』は、この世には存在しねぇ物質だ。『まだ見つかって無い』だの、『もしかしたら存在するかも』、なんてモンじゃねぇ。言葉通り、『()()()()()()()()()()』物質なんだよ」

 

「そしてそいつにゃ、この世の物理法則なんて常識は通用しねぇ。テメェが

『この世に存在する』物質しか作れねぇ時点で勝率はゼロだ」

 

「チッ…!」

 

「(考えろ。今ある物理法則の中で、それでも突破できる方法を考えろ……!)」

 

 二撃目。

 

 『未元物質(ダークマター)』の翼による物理的な殴打が迫り、幻想生成(ジェネレータ)は足元に小型のジャンプ台のようなものを生成し、大きく跳んだ。

 

 ドガガッ、と先刻背中から打ちつけられた壁が抉られる。

 

「とりあえずよぉ」

 

「……、」

 

()()()()()()()()()()()

 

 ゴパッッ!!、と正体不明の爆発があった。

 

 本能的に限界まで作りだされた窒素で『窒素装甲(オフェンスアーマー)』を形成したが、衝撃波はまともに彼の身体を吹き飛ばす。

 

「ぐッッ!」

 

 歯を食いしばる。すんでのところで転げずに踏ん張り、両腕に大口径のショットガンを生成する。

 

 狙いは垣根帝督ではない。

 

 バァン!、と音が響き渡って、垣根帝督の()()の天井が抉られた。

 続けざまに二射。同じく彼の後ろの左右の柱が抉られ、支えきれなくなった圧倒的な質量が簡単に降下する。

 

 最後に威力のみを重視した手榴弾を投げつけて、『窒素装甲(オフェンスアーマー)』で壁を殴りつけて飛び降りる。

 

 巨大なビルの3階から上がズシリと降下し簡単に崩れだす。しかし、

 

 ゴパッ、と何かが爆発した。

 

「(さっきの攻撃か。どうやって引き起してんのかは知らねぇが、同じような不可視の攻撃をいくつも持ってるはずだ)」

 

 同時に、崩れるビルの外壁を突き破り、真っ白な翼を広げた垣根帝督が、空から降ってきた。

 

「チィッ!」

 

「(超能力…AIM拡散力場…そうか)」

 

 幻想生成(ジェネレータ)は、その右手に最適化された拳銃と弾を生成した。

 

 真上から蹴りおろすように降下する垣根帝督を避け、大きく距離をとってから、更に演算する。

 

「(()()()()()()()───これしかない!)」

 

 直後、特殊な機械を積んだワンボックスカーが出現した。同時にキィィ、と甲高い音が鳴り響き、両者は顔を歪ませる。

 

「テメェ、ソイツは…」

 

 翼が歪に(うごめ)いた。幻想生成《ジェネレータ》は迷わず右手を振り上げ、

 

 タァン、と乾いた音が木霊する。

 

「キャパシティ、ダウン……か」

 

 ドサリと、胸に鮮血の模様を広げた垣根帝督は力なく倒れた。

 

「嘗めすぎてたな。第二位」

 

 

 

「どうやら、既存の技術でも喰えるようだぜ、()()

 

 吐き捨てるように言ってから隣の騒がしい機械に繋がれたコードを引き抜いた。まだ少し痛い頭を抑えながら、「消去」の演算を行う。

 

 チョーカーのスイッチを切り、倒れている垣根を見ながら、

 

「……チッ、対応策は見つかったが、諸刃の剣だぜ、ったく」

 

 トドメは、刺さなかった。




というわけで、第二位を退けました。
第一位(♀)はヒロインです。そこは譲りません。

結構傍点を多用します。ヘタしたら原作よりも……。

正直なところ、幻想生成ほどのチートキャラは居ないんじゃないかと思っています。その応用性は、今後以降も本編にて描写していくつもりです。

さて、そろそろ原作で言う15巻の内容に入っていきます。
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