「───俺の『
─────『スクール』のリーダー───
「オマエは俺の能力の本質を掴めてねぇ」
─────『学園都市』の『闇』に住む青年───
「……痛ってぇな」
垣根提督は意識を初春から鈴科百合子へ向けると、静かに言った。
「そしてムカついた。流石は
やっぱテメェからぶち殺さなきゃな、と続けた垣根。
鈴科は首をコキリと鳴らしつつ、
「はン。あたしと戦うのが怖くて
「バッカじゃねぇの。ソイツは保険だよ。誰がテメェみてぇなヤツ相手に五分五分の勝負なんか仕掛けるか。面倒臭いっつってんだ。テメェにそれだけの価値があると思ってんのか」
学園都市第一位と第二位。
鈴科も垣根も、コソコソとした隠ぺいになど気を配らない。
「ブタが。丸焼きの下ごしらえは終わってンだろォな」
「にしても、流石は『
「あァ?」
「笑えるな、犬野郎。そうやって、弱者を守るために戦ってりゃ善人になれるとでも?」
「ハッ、わかってねェな」
「ちょうどイイ。悪党にも種類があるってことを教えてやろォじゃねェか」
二人がぶつかるその一瞬前に。
第三者の声が響いた。
「ちょっと待てよコラ」
背中から神秘的な翼を生やした
鈴科は驚き、垣根は殺意を増幅させる。
「
「……」
垣根は嘲るように、
「ハッ、何いまさら善人気取ってんだよ第一位───」
「
再び鈴科の方に向き直る。「だから」、と区切ってから
「
「は、ハハハッ! 面白ぇじゃねぇかオイ! 惚れちまったのはテメェの方じゃねぇのか!? 粋がんなっつってんだよ
翼を生やし、垣根は突撃した。
距離は一瞬でなくなり、『
「無駄なんだよ!その程度の既存の法則で、俺に勝てるなんて思ってんじゃねぇ!」
翼の先端を再構築し、一度距離を取った垣根が、語る。
「──知ってるか。この世界はすべて素粒子によって構成されている」
「素粒子ってのは、原子や分子よりもさらに小さい粒だ。クォークってのが複数集まって原子核を構成したりな。 電子も素粒子の一種だ。ただまぁ、そういう小さい粒によって、この世界は構成されてるわけだ」
一拍置いて、垣根は「だが」と呟いた。
垣根は続けた。
「───俺の『
刹那、
「ッッ!」
「コイツは『回折』だ。光波や電子の波は、複数の
なるほど、と
「それがお前の『応用性』か。あの日の烈風の謎が解けた」
「俺の『
言い終えてから、垣根は再び強烈な烈風を吹かせた。
「
叫んでから、彼は避けた。
大きな翼を展開した彼は、吹き荒れた烈風を交わしてビルの10階ほどの高さまで上昇した。しかし、垣根はすぐに迫って来る。
『
直接的な攻撃なら、疑似的な『
このグローブは、極限までに出力を高めることで、相手のAIM拡散力場を一瞬で乱反射させ、能力のコントロールを完全に遮断させることができるグローブである。入力した電力量によって出力量が変わり、電力は彼自身が発電機を請け負うことで機能する。グローブと肌の間には特殊な金属によって遮断されており、起動しても自分の能力まで阻害されることはない。ただし、
「打ち消されるのをわかった上で直接攻撃する訳ねぇだろボケ」
「チッ!」
烈風が吹いた。
翼を巧みに動かしてバランスを取ろうとするが、その翼に幾つもの風穴が空いた。
「『
完全にバランスの崩れた
「ハハッ! 哀れだなぁ
「哀れなのはテメェの方だ」
「あん?」
「『アレイスターとの直接交渉権』」
見上げながら、彼は言った。
「……、」
「オマエはソイツを求めて鈴科……
「はん、別にテメェにゃ関係ねぇだろ。教えてやる義理は、ねぇ!」
言いきると同時に、烈風が襲った。
「ッ!」
「テメェの力なんてそんなもんだ」
ゴガガッ! と大きく展開された翼が、
絶叫も忘れて、膨大な出血にドサリと
「なッ……」
鈴科百合子が驚愕の声を上げた。
それを見た垣根はニヤリと笑いながら、翼で心臓部を貫く。
ぶしゃ、と噴き出る血を見ながら、垣根は言った。
「次はテメェの番だぜ、
「……、」
ふとチョーカーを見ると、赤い光が灯っていた。
つまり、能力使用モードになっている。
彼が彼女に攻撃されたときからそうだった話なのだが、垣根が
彼はハッ、と周りを見る。
焦燥に駆られた祝日の第七学区。戦場と化したそこは、確かに荒れていた。
連続の烈風は周辺のビルの窓ガラスから外壁までもを潰し、
吹き飛んだ街路樹や看板は人を襲ったはずだ。
しかしそこには、『悲劇』がなかった。
あるはずの死体が、無い。
「ま、さか……」
「守ったって、言うのか……?」
思えば、最初の一撃目。彼女は風を利用した一撃を叩きこんできたが、あそこでもっと威力の高い奇襲を仕掛けることもできたはずだ。無論そうすれば、
つまりは、それが彼女の生き様。
殺し合いから身を置いても、尚も一般人を守り続ける。関わった人たちに、無益な血を流させない。
考えを巡らせていると、
垣根が最初に烈風を使った時の、ある種の合図。ガラス片から守るためにベクトル操作でなんらかの対策を取ったのだろう。
つまり。
「
不意に、後ろから低い声が聞こえた。
「
見ると、服は血だらけになり、肩の袖は破れつつも、
おかしい。
「テメ……、どうして」
「……」
確かに
「確かにテメェは死んだはずだ。
「てめぇは一体、
「思い出せ。
「ッ……」
能力とは成長する。
能力検定をしていないだけで、レベル5にまで到達した人間が居ても、理論上はおかしくないおかしくない。
「オマエは俺の能力の本質を掴めてねぇ」
「……、」
「
「
「ッ!?」
肥大化したそれが、気の抜けた垣根を容赦なく吹き飛ばす。
「こ、れッ……」
「テメェは、この世には存在しない物質を作るって言うが、厳密にいえばそれは違う」
彼は一歩ずつ近づきながら、
「オマエの
つまり、と
「
ぶちん、と何かが切れた。
「俺の『
「出来ないと思うか?」
「ハッ。俺の底まで掴み取るつもりか」
「浅い底だな」
嘲笑うように、
「ッ……!!」
「悪いが……。いちいち掴む程でもねぇよ」
ゴパッ!! と、垣根の翼が爆発的に展開された。数十メートルまでにも達するその光は神秘的で、しかし同時に機械のような無機質さも秘めていた。
その六枚の翼を一気に
彼はまだ続けた。
「
「……」
「
そこまで言って、
「ッ!?」
突如飛行能力を失った彼は、高さ10mほどの高さからドサリと地面に落ちた。
「が、っあああああ!」
肩と背中を打ちつけ、悶える垣根。
「テメェの全種類の『
例えば烈風。
例えば回折。
例えば殴打。
そのすべてを受け止めたのは、即ち、その中に存在する『
「……テメェに、」
「テメェに酔ってんじゃねえぞ、
ゴォッ!! と空気を引き裂きながら、再び垣根の六枚の翼が噴出する。
一瞬で10m以上も上昇した垣根。別の未元物質を用いて、
おかしなことに、『対未元物質用』の『未知なる物質』は素粒子単位まで分解され、『翼』としての効力を失ってしまった。
「チッ、」
翼をもがれた彼は、再構成しようとはしなかった。代わりに作ったのは、とある少年の力を模したグローブ。
「オオオオォォォォォォオオオオォォォオオオォォオオオ!!!」
重力の自由落下に身を任せ、
『
垣根の顔面に突き刺さった。
バゴン!! と轟音が響いて。
スクランブル交差点のど真ん中に、垣根の身体が叩きこまれた。
鈴科百合子は、電極のスイッチを切りながら、初めて回りのざわめきを聞いた。
戦闘の緊張のせいだろう。無意識のうちに無駄な音は『反射』していたようだった。
能力使用は9分といったところか。彼女の能力使用は15分が限界だった。
杖を突きながら、戦闘を終えた彼のもとへ足を運んだ。
「……、なァ」
「あぁ……?」
割と疲れたようだった。
この戦闘の間に、軽く20トン以上の物質を生成していた。緊張からの解放で、頭の痛みが来た。現在はすべて『分解』してある。
彼は特別、演算能力が優れているわけではなかった。
垣根帝督には勝てる程度の脳は持っていても、
「……お疲れさン。まァ、なンだ。助かった」
鈴科百合子は頬を掻きながら言った。
「全くだ。……ったく、散々走りまわらせやがって」
百合子は戦闘が始まる前の言葉を思い出していた。
お前は俺が守ってやる。お前は黙って守られてろ。
百合子は僅かに頬を染めて目を伏せながら、
「しょォがねェだろ。
相変わらず口が汚い奴だ、と
「……まだ、事は片付いてねぇ」
「事後処理なンて、あたしらのやることじゃァ、」
「
「?」
彼は雑踏の奥の
「
六話でした。再編集してみて、結構やらかしてるなーって思うところが多いですね…。
まぁ厳密には主人公の能力の本質はそれだけにとどまらないのですが、それはまた後々、作品内にて明かしていきたいと思います。