幻想殺しと電脳少女の学園都市生活 作:軍曹(K-6)
上条と貴音、そして五和は。教皇庁宮殿に向けて走っていた。
走りながら当たりを見渡せば、そこら中にいるのが
彼らは暴徒達に向かって対隔壁用ショットガンを放っている。
恐らく中身は空砲だろう。
だが、莫大な炸薬を使って放たれる衝撃波は、それだけで人間の肺から酸素を吐き出させ、その体を地面へ突き飛ばす。
(こんな事をするのは・・・・・・)
学園都市上層部。
統括理事会。
さらにそれを束ねる、実質上の科学サイドのトップ。
(探しているんですね。ご主人と私を)
(ああ。あの衝撃波喰らって無事なのは、俺と貴音ぐらいしかこの地にいない。俺の予想だが、そろそろ上の羽虫が動くぞ)
(羽虫・・・。あれは。学園都市製のHsB-02・・・・・・超音速ステルス爆撃機ですか!?)
上を見上げた貴音の目には、青い大空を悠々と舞う漆黒の爆撃機があった。
一〇〇メートルクラスの機体は一つだけではない。一〇機以上の爆撃機が大きく弧を描く形でアビニョンの上空をぐるりと回っている。
上条達がアビニョンへやってくる際に利用した、時速七〇〇〇キロオーバーを叩き出す超音速旅客機。あれと同じ技術を使った爆撃機だ。その圧倒的な速度は、ただ真っ直ぐ飛ぶだけで追尾ミサイルを振り切れるとまで言われている。
(ちょっと、待ってください・・・? あれが動くという事は・・・『
「ああ、おそらくな」
念話をやめた上条達は、教皇庁宮殿に突入した。
教皇庁宮殿の中は広かった。
「何も・・・ないな」
「誰も・・・いませんね」
上条は何かが気になったのか、携帯電話を取り出してテレビ機能を付けた後、登録メモリからある番号に電話をかける。
「・・・あー、御坂」
『なっ、何よ』
「ちょっと聞きたい事があるんだけど、今大丈夫か?」
『へ、へぇ。それって私じゃないとダメな訳? 他の人でも別に良いんじゃないの』
「ん? ・・・・・・そうか、そうだよな。別に御坂じゃなくても――――――」
『ノンノンノンノン!! ちょ、アンタ私に何か聞きたい事があったから掛けてきたんじゃなかったっけ!?』
「ん、まぁ。そうだな。御坂、ニュース見れるか。アビニョンって街でなんか起きてないか?」
『はぁ? アンタ何を言ってる訳? テレビなんてどこを点けても臨時ニュースしかやってないじゃない。アビニョンってフランスの街でしょ。なんかそこで、どっかの宗教団体が国際法に抵触する特別破壊兵器を作ってて、その制圧掃討作戦が開始されたって大騒ぎになってるでしょ』
「・・・・・・・、そうか」
『何でも本来ならフランス政府が始末する所を、特殊技術関連のエキスパートが必要だからって、学園都市がかなり深く食い込んでるとかって話だけど。・・・・・・つか、アンタ今どこにいる訳? むしろこの情報が入ってこない場所を探す方が難しいんじゃないかしら』
「・・・仕方ねーだろ。現地にいるんだから」
上条がポツリとそう言った瞬間。
轟音と共に、上条の真横にあった分厚い壁が唐突に破られた。
(駆動鎧!? っつか速い!!)
避けきれなかった上条の体に駆動鎧がぶつかる。手にしていた携帯電話が床に落ち、液晶画面が粉々に砕け散った。
「テッラ・・・・・・」
駆動鎧は動いていなかった。機能停止していたのだ。
その原因を作った『優先』の魔術を使って駆動鎧を潰した男は、汗一つかいていなかった。
「やられましたねー。暴動という混乱を収めるために、さらに大きな混乱を生んで呑み込んでしまうとは。学園都市もそれだけ本気という訳ですか。ある程度の国際的非難を受けてでも、
手に持つ丸められた羊皮紙。蠟で封をされたそれこそが・・・・・・。
「C文書・・・・・・」
五和が呆然とした調子で呟いた。
「それを持ってバチカンへトンズラですか?」
「行かせると思うのかよ。俺が、俺達が黙って行かせると思ってんのか?」
「だから何だと言うのです。このアビニョンを制圧している学園都市の部隊では、私を止める事はできないんですがねー。それとも、あなたの右手は彼ら全員よりも優れていると? そう断言できる根拠があるんですか」
「ああ」
上条はそう言うと、右拳を握りしめた。
*
暫くして、無謀にも突っ込んだ五和が床に転がされていた。
「がっかりですね。
「・・・・・・・・・?」
「おや。もしかして、知らない?」
「ッ」
「くくっ、そんな訳がありませんよねー? 普通ならば知っていなければならない。だとすると・・・・・・んン? もしかして
「大したもんだな」
「まさか図星ですか」
「・・・・・・だが外れ。大外れだ馬鹿野郎」
「・・・なに?」
「
「なるほど。そうかそうかそうですか! 確かそういう報告を受けた覚えは無かったんですが・・・・・・もしかしてー、隠していたとか? 何のために? そちらでのびている魔術師にはちゃんと話したんですか? どうして記憶を失ったのか、そこから調査してみるのも面白いかもしれませんねー?」
「無駄だけどな」
上条の中で静かな怒りが燃え上がる。目の前の敵は上条や貴音が一番嫌う人種だった。
「お前にかける時間はもうあと数秒で良いだろ。
上条がそう言ってテッラに右手を向けると、テッラを幻想紋が囲む。
「これは・・・」
「それは、俺が見つけた
上条は余裕そうな表情を貼り付けたまま、体中。顔にまで刻まれた幻想紋を赤く光らせて、彼は笑う。
「
上条が右手を空中に振り抜くと、そこから炎の柱が伸びテッラを呑み込む。テッラを囲む幻想紋が反応し、爆発を起こす。
(・・・あれを喰らっていろんな意味で無事なヤツはいねェ。終わりさ)
上条は床に転がるC文書と思われる残骸に触れて完全に破壊されている事を確認する。
「はは。なるほど」
「お前、意識があるのか」
床に転がったままテッラは、忌々しげに上条を睨みつける。
「確かに幻想殺しは我々とは相性が悪い。何でもかんでも無効化してくれて、まったく自分達の努力を否定されているような気分ですよ」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・尋ねないのですか」
「何を」
「
「・・・・・・知ってるのか」
「くっくっ。そこで私に確認を取るという事は、どうやら本当に記憶を失っているらしいですねー」
「・・・・・・、」
「ふふ。その幻想殺しが、何故あなたの『右手』に備わっているのかを考えてみる事です。そこには大きな答えが隠されている。あらゆる魔術を問答無用で打ち消してしまうというその効力にも、意味があるんですがねー・・・・・・」
「・・・結論だけ言えよ」
「せっかちですねー。簡単な事ですよ。幻想殺しの正体は―――」
上条はその言葉の続きを聞き取る事ができなかった。
莫大な轟音と共に。
左方のテッラの体がその場から消え失せたからだ。
天井を突き破って襲いかかってきたオレンジ色の閃光が、テッラの真上に降り注いだ。直径三メートル程度の光の柱が床を貫いた途端、恐るべき爆風が教皇庁宮殿の室内に吹き荒れた。
爆風と同時上条の左腕が肩から消え去った。即座に左腕は再生したが、その場には敵であったテッラの姿はなかった。
「幻想殺しの正体が何だよ・・・・・・」
「『
「・・・・・・エネ」
「それが、私にご主人が教えてくれた幻想殺しの正体、です。それにしても、携帯電話がおしゃかですね」
「ん?」
「『
「
「買い直しかー。ま、ディスプレイも砕け散ったからここで消えなくても使い物にはなりそうにないけどな」
「帰りますか?」
「・・・・・・だな」
上条さんは原作通り記憶を失っています。
このお話の中でその描写がないのは、この世界で失ったからではないからです。
ですから、そう言った類いの事を相談されても返答に困りますのでご遠慮を。