幻想殺しと電脳少女の学園都市生活 作:軍曹(K-6)
学園都市に入る前の彼らの一番古い記憶です。
上条当麻と榎本貴音
―――それは一体何なのか。僕には何も分からなかった。
生まれ持った時からある一般常識や良く分からない力の事。
怖くて怖くて仕方がなかった。
本で読んだ事がある。力を使いこなせない人間は周りの皆に危害を加えるって。
だから、これは力のコントロールができていない僕への罰なんだと思う。
「来るな。疫病神!」
「お前なんかあっち行け!」
疫病神。僕が周りの皆に危害を加えているんじゃない。多分これは僕が不幸なだけだ。でも、周りの皆は僕に関わると不幸になると信じて僕を避けている。何だろう。こういうのを“悟る”って言うのかもしれないけど、こういう
なのに、なのに。なんで、君は僕にそうやって笑いかけてくるの?
―――貴音ちゃん。
▽
榎本貴音は、上条当麻の一つ上のお姉ちゃんである。上条家の隣家に引っ越してきたその家族は、上条の噂を聞いてもものともしなかった。
そのため、上条の両親も気を許せる間柄になったのか、楽しそうに話している。
ある日、二人で留守番をしていると、急に大人びた貴音が不思議そうな顔で上条に声をかける。
「ご主人。見事なまでの子どもの演技ですけど、これからどうするので?」
「・・・貴音ちゃんどーしたの?」
上条は純粋に疑問に思っただけだろう。だが、貴音は心底驚いているようだ。
「あ、あのご主人? 今は二人きりですし・・・」
「ご主人って・・・貴音ちゃんそーゆーのが好きなの?」
「えっと、当麻。不思議な知識とか記憶とかない?」
「知識なら・・・。一般常識。それと変な力」
「変な力?」
「
(・・・! ご主人が純粋無垢に育つチャンスですか! とは言っても、死ぬ気の炎も、あの
それはマズいですねぇ。と首をひねる貴音。上条はエピソード記憶。机上で例える所の日記帳を失っていた。辞書は残っているが、単語が分からないため検索すらできていない。
「とにかく、当麻の事を鍛えますか」
「お、おー」
その日から榎本貴音の上条当麻育成計画が開始する。
*
「さて、当麻。貴方には自分の力の使い方をちゃんとマスターしてもらうわよ」
「おう!」
どんとこいと息巻いていた上条も流石に初日から気絶すると言う事態に陥った。
貴音からの指令は、自分の中に意識を向けろ。ただそれだけだったのだが、なにぶん上条の中には数億単位の魂がある。そんな物を目の当たりにしてしまっては気絶するのも頷ける。
だが、次の日には上条は大分大人っぽくなっていた。
「なあ貴音ちゃん。昨日の自分の中に意識を向けるってヤツ、結局どういう意味があったんだ?」
「十分効果は出てるじゃない」
「ん?」
「当麻の口調、理解度。そして経験を限りなく前世の状態に近づけるための儀式だったのよ。十分すぎるほど元に近づいてるわ」
「・・・そ、そうか?」
「さて。当麻はどちらかというと努力家なんだけど、今だけは天才肌でいてもらいますか。さ、感覚でバシッと
「こうか?」
貴音の指示通り動いた上条の右手の甲には見慣れた紋章があった。
「おぉう・・・。まあ前まで当たり前に使っていた物だし、案外普通の事かもね・・・」
「さあ、どんどん行こうぜ!」
「あまりさくさく進むのもアレなんだけどねぇ・・・。そろそろ皆帰ってくるしまた今度にするわよ」
「うぃーっす」
―――深夜の河川敷。
「なぁ、こんなとこで何すんだ?」
「さて、では魂の切り替えを行うわ」
「魂の切り替え?」
「そうよ。今現在の当麻の魂は人間なのよ、それ以外に切り替えてもらうわ」
「どのぐらいの速さで?」
「一瞬、が理想的」
「OK。ホッ」
その一息で上条の魂は人から鬼へと変わった。生き血をすする最強のアンデッドに。
「うおっ。超見える」
「さて、では川向こうの的を撃ち抜いてもらうわよ」
「銃とかないぞ?」
「影の中に手を突っ込んで好きな物をとって」
「えっと・・・」
言われたとおりに影の中に手を突っ込んで中を探した上条が取り出したのは、黒塗りの大型装飾銃二丁だった。
「対化物戦闘用拳銃“ジャッカル”とオリハルコン製の“ハーディス”良い組み合わせね」
「・・・・・・コイツで狙えば良いんだな?」
「そうそう」
上条は川向かいに向かって左手でジャッカルを撃った。
「ナイスショット。相変わらずうまいわね」
「全く反動がねぇ・・・。これが吸血鬼・・・」
「さて、警察が来る前にトンズラするわよ」
「ウイッス」
上条と貴音は家に逃げ帰った。
「今日は何すんだ?」
「家で眼の練習ね」
「眼ェ?」
そう。と肯定する貴音。上条の眼の能力はいくつかある。
まず、いつでも開ける“神々の義眼”。これさえあれば大抵の事はできるチート。
次に、これもいつでも開ける十一匹の“蛇の目”。これは使い方さえ間違えなければ大丈夫。
そして、吸血鬼状態の時に吸血鬼の魔眼。人を洗脳したりできる。
これらを上条は以前のように使いこなせなければならない。
「アガッ!」
「グッ」
「イッテェ!」
吸血鬼の魔眼。蛇の目は難なく使いこなした上条だったが、神々の義眼が映し出す景色は彼を傷付けていた。
「難しいわね・・・」
「やれる。まだいける・・・」
「がんばんなさいねー」
神々の義眼を習得するのには三日間かかったという。
―――とある日の事。
いきなりだが、貴音の両親が事故に遭って亡くなった。周りの人間は皆、疫病神に関わったからだと言ってくる。
そして、貴音は謀ったように上条家の養子に来た。ただし名字は変えずに。
そして、上条が小学生に上がる前。彼の両親は学園都市に行く事を進めていた。
「学園都市?」
「そうだ。今度からそこに通ってくれ、当麻」
「う、うん」
「もちろん貴音ちゃんも一緒にね」
「はーい!」
現在貴音は上条よりも一歳年上です。