幻想殺しと電脳少女の学園都市生活 作:軍曹(K-6)
上条は可哀想な目でアウレオルスを見ていた。インデックスを傷付けようとしてもなお、大切な存在である彼女を傷付けることはできなかった。
「―――――
ありとあらゆる重力に上条の体は押さえつけられる。立つこともままならないが、それでも無様に床にへばるつくようなマネはしない。
「は、はは、あはははは! 簡単には殺さん、じっくり私を楽しませろ!」
「待って」
そこに、姫神秋沙が立ち塞がった。
だが、残酷だがもうアウレオルス=イザードにとって彼女は必要ない存在だ。このままではマズい。と判断した上条は、右手のエネルギーを全身に伝達する―――
「邪魔だ、女―――――」
上条の右手を基点として、全身に刺青のような紋章が広がって体の自由が取り戻せた時。
「―――――死ね」
(ふざ――――――)
体が動くようになった上条は一瞬で姫神の元へ駆けつけ、倒れゆく彼女の体を抱き留めた。
「―――っけんじゃねえぞ、テメェ!!」
「な・・・・・・我が黄金の錬成を、右手で打ち消しただと? ありえん、確かに姫神秋沙の死は確定した。その右手、聖域の秘術でも内包するか!」
「そんな魔術的なものじゃねえ。科学的なものでもねえ。ただ俺の右手は、異能の力なら神の奇跡だって喰い殺せるってだけだ!」
上条はそこで一拍おいて。
「いいぜ、アウレオルス=イザード。テメェが何でも、自分の思い通りにできるってなら―――」
姫神をゆっくりと床に下ろし、そして立ち上がる。全身から怒りというオーラを放ちながら、
「―――まずは、そのふざけた幻想をぶち殺す・・・・・・ッ!!」
「なるほど。真説その右手、私の黄金錬成も例の外に洩れず打ち消すらしい。ならばこそ、右手で触れられぬ攻撃なら打ち消す事は不可能なのだな? 銃をこの手に。弾丸は魔弾。用途は射出。数は一つで十二分。人間の動体視力を超える速度にて、射出を開始せよ」
「おっと」
撃ち出された銃弾を体をひねってかわす上条。今ヤツはなんと言った? 人間の動体視力を超える速度? だったら動体視力を引き上げてやれば良い。
「先の手順を量産せよ。銃の暗器銃にて連続射出の用意」
上条は避けようとはしない。否、避けれない。足元には姫神が転がっているからだ。
「馬鹿が! 何を立ち止まって―――ッ!」
「準備は万端。十の暗器銃。同時射出を開始せよ」
十の青く輝く魔弾が上条の居る場所で爆発を起こすのは同時だった。
「ふっ。当然」
「何が当然だ? 爆発で殺さない程度に痛めつけようって算段か?」
綺麗な布がひらりと舞っている。その羽衣の名を
「でも残念。この“セイレーン”を貫ける攻撃は存在しないと思え」
“セイレーン”それは“ハーディス”と同じ超硬度の金属オリハルコンで作られたもの。ただし、オリハルコンの鋼線を編み込んで作られているため、布のように良くしなるし良く切れる。
「内容を変更。暗器銃による射撃を中止、刀身を持って外敵の排除の用意」
その言葉にも上条は何の興味を示さない。セイレーンの防御力を信じているからこその狼藉だ。
余裕そうな笑みを続ける上条当麻にアウレオルス=イザードは何かに気付いてような顔をして、
「ふむ。貴様の過ぎた自信の源は、その得体の知れない右手だったな。ならば、まずはその右腕を切断。暗器銃、その刀身を旋回射出せよ」
簡単に言って、セイレーンで刀身は防がれた。ハーディスでも同じようなことはできるだろうが、武器交換の時間は与えられなかったため、上条はそのまま刀身を受け止めた。
地面に落ちた刀身を見たあと、上条は笑って、
「なぁ。・・・何で今俺の右腕を切り落とそうとした?」
笑顔でそういう上条に一、二歩後ろに下がるアウレオルス。だが上条は止まらない、ゆっくりとアウレオルスに近づいていく。
「答えは簡単だよな。お前は俺の右手がお前の黄金錬成にどこまで通用するかが分からなかった、だから姫神の時のように死ねって言わなかったんだ」
「こっ、この場から消えろ!」
上条当麻は消えない。
「今すぐ立ち去れ!」
上条当麻は去らない。
「その場に止まれ!」
上条当麻は止まらない。
「直接死ね!」
上条当麻は死なない。
「ほらほらどうした。錬金術師?」
上条は笑う。馬鹿にするような笑い方でゆっくりとアウレオルス=イザードを追い詰めていく。
ポケットから針を出そうとして取り落とすアウレオルス。
「そいつが無けりゃ、ハイにもなれねぇなぁ? 『雑念をかき消せ』ねぇよなぁ?」
ギャハハ。とまるでどこかの第一位のような笑い方で上条は笑う。
「どーした? 言葉にしてみろよ。言葉のままに歪めてみろよ!」
「く、来るな!!」
(ありえん。我がアルス=マグナがその効力を失うなど! 待て、考えるな! そんなことを考えては・・・!)
もう遅い。それを考えてしまったアウレオルス=イザードの黄金錬成は効力を失ってしまっていた。
「敵いっこねぇよなぁ? なんせ、テメェの能力は『言葉のままに現実を歪めること』なんかじゃなくて・・・」
「コイツ・・・化け物・・・!?」
「『考えていることをそのまま現実にしちまう力』なんだからなぁ!」
ベキリ、と。上条当麻の右腕から異質な音が聞こえてきた。それは腕中に現われていた蠅王紋をなぞるように割れた腕からしみ出すように出現した。
透明なガラスの彫刻に血を撒き散らしたように、得体の知れない透明なものがそのカタチを成していく。
大きさにして二メートルを超すほどの、獰猛にして凶暴、それ以前に伝説の中でしか見ることのできないような―――――巨大にして強大な、
(待て これ 私の 不安 過ぎん 落ち着け 不安 消せば こんな 馬鹿げたモノ 消せる はず ――――――ッ!!)
「―――喰い殺せ。
(無 理 敵う はず な)
そう思った瞬間、 最大限に開かれた竜王の顎が錬金術師を頭から呑み込んだ。
右腕は切り落とされてないけれど、竜王の顎を出すことはできました。理由付けも大丈夫だと自負。