幻想殺しと電脳少女の学園都市生活 作:軍曹(K-6)
「まいどまいど思うけど、君って割とファンタジーな生き方をしてるよね?」
ファンタジーなんだろうか。と、上条は思う。
そもそも今回は右手の至る所に猫に引っかかれた程度の傷があるだけといういたって軽傷だし、病院に来る意味が分からなかった。それでも『入院費もかからないしまあ行っとくか』なんて軽い気持ちで来ているのだった。
そして話は戻るが、ファンタジーとはどの辺りがそうなのだろうか。
「十日以内に二回も病院にお世話になる患者さんというのは例外なく看護婦さん達の間でウワサになるね? 君、もしかして看護婦さん属性なの?」
「生憎とナースに興味は無いですね。
「君は一途なんだね。そしてもっと言いたいのはこれだ。君は面倒事というか厄介ごとに首を突っ込むクセがあるね? 学園都市に入学して、僕が“彼”から入院費を受け取ってから君は何度ここに来たか覚えてるかい?」
「・・・・・・さあ?」
上条は看護婦さんに包帯を巻いてもらいながら、首を傾げた。
「僕も百回以降は数えてないね? それでも、その内の五十回が
「・・・・・・今日も、あいつに会ってきても良いですか?」
「僕は早く彼女に退院してもらいたいけどね?」
「俺もその方が良いと思います」
「ここままじゃ僕は初めて敗北してしまう。もし彼女が冥界にいるのなら君のその右手で早く引っ張り戻してやってくれないかな? 死者以外は必ず直すが僕の身上だからね? 彼女の意識も早く戻ってほしいんだよ?」
「ええ。知ってますよ。
そう言って上条は頭を下げて診察室をでる。彼が出ていった扉を見つめながら冥土返しは呟いた。
「彼女が起きることでもう一人救われる患者がいることを分かっているかな。上条くん」
*
「うっわ。厨二病患者かよ」
自分の右腕にグルグル巻かれた包帯を見ながら上条はそう呟いた。これではまるで蛇王心眼の持ち主ではないか。
「とうま」
「やぁ、上条当麻」
「・・・・・・お前等」
怪訝そうな顔をして上条は呟く、それもそのはず。彼らは今邪魔をしたのだ。彼女に会いに行く邪魔を。
「何だ? 用件なら手短に頼むぞ」
「一応、今回の件については礼を言うつもりだったが・・・・・・実際に会ってみると礼も言いたくなくなるほどに態度が悪いな君は」
「年上には敬意を払えよ十四歳」
「・・・・・・ふぅ。で? 君なら今回のことがどのようにして終わったのか見当はついているだろう?」
「まあな」
上条はあの後後始末をステイルに押しつけて逃げるように寮に帰ったのだったが、事の顛末については予想できていた。
「アウレオルス=イザードは記憶喪失。その後お前が顔を変えてアウレオルス=イザードという人間を殺したって事だろ?」
「流石。見る目が違うね。じゃあそろそろ僕は次の仕事もあるし、別のところに行かせてもらうよ」
「そうしてくれ」
「とうま、とうま。売店にマスクメロン味のポテチが売ってるんだよ! レアだから買いたいし、お金が欲しいかも!」
「止めとけ、止めとけ。どうせ学園都市製の試作品だろ? ろくなもんじゃねーっての」
「・・・・・・そういえばあのビルの中にはひめがみあいさがいたんだよね」
「ん? ああ、そうだな。俺は全く知らなかったが。ってなにインデックス。自分で尋ねておいてその人を疑うような視線は」
「・・・・・・、とうま。今回はあいさのために戦ったんだよね。私じゃなくてあいさのために」
「んなわけねーだろ。俺は最初から最後まで、自分のために戦ってたっつの。二年間のニート生活ナメんなよ」
「それはそれで嫌かも」
「で? 結局言いたいことは?」
「・・・・・・分かってるくせに」
「ああはいはい。だから結局『歩く教会』も教会なんですよー、ってだけの話だろ?」
インデックスと別れた上条当麻はとある病室にやってきていた。
そこでは病院服を着たツインテールの少女が培養器に入っている。見た目は十五、六歳と行ったところだろう。上条と同年代に見える。
三年前、冥土返しが彼女に施した治療は、その当時最新鋭の肉体保存治療だ。だが、そんな物が完璧なはずもなく、彼女の肉体は一年ほど成長が止まっていたため、実際二年ほどしか肉体年齢は年を取っていない。
彼女の肉体に触れたくても触れられない上条はその手を空中で漂わせるだけ。
『・・・ご主人』
「―――んで。なんでお前はそこにいるんだよ・・・!」
『ご主人・・・?』
「なんでお前は出てきてくれねーんだよ。なんで触れられないんだよ・・・。早く、早く出てこいよ馬鹿・・・」
『・・・・・・ごめんなさい』
「・・・・・・馬鹿」
『・・・・・・ごめん』
「だったら・・・早く起きて来いよっ」
『・・・ごめん・・・なさい・・・っ』
―――病室の外。
「・・・僕は患者に必要な物を揃える医者だってのは知ってるだろ?」
『ああ、知ってるさ。何度かお世話になったからね』
「・・・だったら彼らを救う方法を何とかしたいんだが」
『・・・意識不明の重体の少女の意識が、電子の海で生きている。科学の街でも流石に良く分からない現象だ。何度言ったら分かる?』
「ふむ。君ならどうする?」
『彼女の意識が電脳世界にあるなら彼女の脳と電脳世界を繋げば良い。私ならそうする。ここはそういう事を一般的に行っているのだから』
「・・・・・・そういう事をしないで済むように、彼らが自力で解決することを祈っているよ」
吸血殺し編 完!