幻想殺しと電脳少女の学園都市生活 作:軍曹(K-6)
薄暗い地下とは異なり、地上は真っ白に目が眩むほどの炎天下だった。
そんな街中に、インデックスと御坂美琴と風斬氷華はポツンと残されていた。白井黒子は今も地下に閉じ込められた学生達を運び出している。
上条達が無事に出てこない以上、帰るのは薄情だし、かと言って彼女達の間に共通の話題もない。さんさんと太陽光の降り注ぐ青空の下に、何か妙な沈黙が下りていた。
(あーもう。黒子の奴め・・・・・・)
美琴はここにいない後輩に心の中で恨み言を告げる。地下街の隔壁ぐらいなら超電磁砲で破壊することも可能だが、それをするとテロリストとやらが外へ逃げる危険性もあるので踏みきれないのだ。
暑さに耐えられないとでも言うように、インデックスの腕の中で三毛猫が暴れた。
その瞬間。ちょうど後ろの地面から、巨大な土塊の塊が飛び出してきた。
「ご、ゴーレム!?」
「な―――っ。何なのよこれ―――っ?!」
「ひぃっ」
インデックスがその正体に驚いた瞬間。ゴーレムはその拳を振るう。確実に獲物を仕留めるために。その速度に一瞬インデックスも対応が遅れる。美琴もあまりの事に反応ができないでいる。
そして、その拳が振り切られた時、生肉をコンクリートで押し潰すような、鈍い音が辺りに響いた。
インデックスはその目を見開き、美琴は急な嗚咽に苦しんだ。
その二人が見ているのは一人の少女。
「――――やっぱり、単純な速度だけなら私の方が上ですかね」
にこやかに笑う少女だが、その右手は血が流れ骨が折れ、肘から先が使い物にならなくなっていた。
「た、かね・・・・・・?」
「ちょっと風斬氷華さん。手伝ってくれません? あなた“使い”なんですから」
「え・・・・・・? なに、を・・・・・・?」
「あれ? もしかして知りません? 私は残酷なのではっきり言いますが、あなた人間じゃないですよ?」
「え・・・・・・」
「たかね! いくら私でもそれは許せないんでよ」
「驚くのも無理はないでしょうけど、あなたはAIM拡散力場が生み出した科学の使いってところですかね」
「あ・・・・・・」
「もしかして記憶。あるんですか? まあどうでもいいですが。でもこれだけは言っときます。例えあなたが何であれ、あなたは風斬氷華。私達の友達に変わりはありません」
「っ・・・・・・。分かりました! 私に出来る事があれば・・・!」
「じゃ、ご主人が到着するまで、コイツの相手よろしくです」
貴音はそう言って笑うと、ゴーレムが振るった左手で吹き飛ばされた。そのせいでゴーレムの右手も吹っ飛んでいたが、すぐに再生していた。
「た、たかね!?」
「やれる事。やってみます!」
―――街中。
「だーっ! エネの奴どこへ行ったァ!!」
上条はビルの上を走っていた。ビルからビルへと飛び移りながらノンストップで走っていく。がどこにいるか見当が付いている訳でもなく、当てもなく走っているだけなのである。
「闇雲に探して見つかるか―――っ!!」
その場所に轟音が響いた。小惑星が激突したような威力で、エリスの身体が吹き飛ぶ。
「ひょうか・・・・・・?」
「インデックスちゃん。逃げて、全部思い出したから。大丈夫だから」
エリスはゆっくりと立ち上がると、大きく吠えた。そもそも土の人形に声帯があるのかは不明だが、それはまさに地の底から響くようなものだった。
「化け物の相手は私がするから」
えーと、どうしたらいい? と、若干の混磊状態の美琴だった。いきなり出て来た巨大な土の塊が意志をもったように殴りつけて来た。もうこの時点で美琴の思考回路は停止しかけていた。
「ちょ、ちょっと。私に何かできる事ない?」
「・・・・・・そこらへんのがれきで超電磁砲。撃てます?」
笑顔でそう聞く風斬。対して美琴は大きく頷くと、磁力で大きな電動石を捜しだす。
「私は・・・っ! 友達を助けます!!」
「私だって・・・! アンタを倒す事ぐらいは・・・!」
―――暫くして、エリスの猛攻は少し収まった。
が、それはインデックス達の勝利を意味しているのではない。むしろほぼ惨敗だ。
「くっ・・・もう駄目・・・疲れたー・・・」
「私は・・・まだっ・・・・・・」
「あーもう。自動制御に変わったから何もできないーっ!!」
そしてゆっくりと、とどめを指すように、エリスの拳が振るわれる。
何かを砕くような、低い地鳴りのような音が響く。
「え・・・・・・?」
「あ・・・」
「――――はー。見つけるのに苦労はしなかったな。轟音のおかげで見つけやすかったぜ」
エリスの上半身が吹き飛んでいた。それに連なるように下半身も崩れている。軽い調子で話す声は粉塵の中から聞こえてくる。
「・・・・・・まさか・・・。とうま!?」
「おう。インデックス。そこにいるのか? 上条さんは元気ですよー」
煙の中から出て来た上条は少しだけボロボロだった。
「とうま! 何したの!」
「シェリー=クロムウェルっつうイギリス清教の魔術師と戦ってきた。アイツ、相当
「あ、あの・・・彼女が・・・・・・」
「ん? エネか? 大丈夫だろ。あいつなら・・・・・・とっくに回復してどっかで高みの見物でもしてるんじゃないか?」
「いやー。流石にご主人の目はごまかせませんね」
上条が見ていたビルから少女が下りてくる。
「え。あ、アンタ・・・さっきボロボロに・・・!」
「チッチッチッ。私を舐めてもらっちゃあ困りますよっ!」
「・・・・・・馬鹿かお前は・・・。あれ? 風斬は?」
「あれ? ひょーか!?」
インデックスがトテテーと捜しに行ったのを、美琴が追いかける。何だかんだで仲良くなったようだ。
「・・・・・・ご主人」
「ん? なんだよ」
「・・・もう分かってるんでしょ? 彼女がどこにいるか」
「当たり前だろ。さて、行くか」
上条は何かを確認してからいくつもある廃ビルの一つへと入っていく。
ビルはすでに窓も内装も取り払われ、灰色のコンクリートが剥き出しにされていた。取り壊す手順でもあるのか、赤いチョークのようなもので壁や床に専門用語による指示みたいな文字が書き込まれている。
上条はそんなものには目もくれず、ビルの外壁から登っていく。数歩窓枠を蹴るだけで、上条は屋上までたどり着く。
少女。風斬氷華はそこにいた。
落下防止の足場の端に座って。
「よっ。風斬」
「・・・・・・」
「さっきさ。エネに無理言ってAIM拡散力場の世界を見せてもらったんだけどよ。ありゃ辛いな。ま、俺達が体験した夏に比べればしょぼいけどな」
「・・・何を言ってるんですか」
「一つだけ言える事はお前は俺達の友達だって事」
「違います。体験した夏って所です」
「何? 気になるの? 俺達の終わらない夏」
「終わらない・・・夏」
「そんな事は置いとこうぜ! な、お前のお話はまだ終わってねェから」
その上条の言葉の後、エネがインデックスを抱えてやって来た。
「ほらほら、仲直り・・・っておかしいか。友達なんだからさ。元気出せよ」
上条はインデックスと風斬の距離をほぼゼロにする。
二人は抱き合い勢いに負けて転ぶ。
上条はそんな様子を見て小さく笑うと、何もしゃべらなくなった。
もう駄目、ネタはない・・・かも・・・。