幻想殺しと電脳少女の学園都市生活   作:軍曹(K-6)

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ローマ正教 参 The_Roman_Catholic_Church. Ⅲ

―――その夜。

準備の時間の間、仮眠を取れとステイルに言われた上条だったが、彼は薄明座の屋上にいた。

その背中に声がかかる。

 

「ご主人」

「・・・・・・ん、貴音か。どうした?」

「いえ、本当にあのローマ正教に協力するのかな。と思いまして」

「はははっ。そんなバカな。俺は学園都市の人間として保護下のあいつを助けるだけさ」

「でっですよね。でも、何でですか?」

「本当に分からねーの?」

「・・・・・・はい。お恥ずかしながら」

 

少し顔を赤らめる貴音に、上条はお前そんなキャラじゃねーだろ。見たいなツッコミを入れる。

 

「じゃあ聞くが、何でオルソラは味方であるはずのローマ正教に戻ろうとせず、学園都市に逃げ込もうとしたんだ?」

「・・・えーと、安全だからじゃないですか?」

「ああ。その可能性もあるな。だがな、俺達が到着した時、ステイルにアニェーゼは言ってたんだ。学園都市と繋がりがないから捜しにくい。って」

「?」

「天草式は追おうと思えば追える場所だろうが、ローマ正教は違う。天草式十字清教と違って隠密性にも優れていないからな。人払いの術式ぐらいは使えても、学園都市のゲートをくぐる事はできないだろうさ」

「・・・・・・じゃあ!」

「そーゆー事。オルソラの目的はローマ正教から逃げる事さ。その仲介役にでもなったんじゃねーの? 天草式は」

「・・・・・・なるほど」

 

納得したように頷く貴音を見て上条は少し笑う。

 

「なあ貴音。ちょっと相談なんだが」

「? 何ですか?」

「空って飛べると思う?」

「・・・・・・。ご主人、いつからそんなメルヘン思考に・・・」

「誰が翼で空を飛ぶって言ったよ」

「でも、『飛んだら』駄目ですよ?」

「分かってるよ。だから物理的に飛ぶんだ」

「は?」

「ほら、この前の海の時。俺両手から水撃ち出して移動したじゃん? あれの応用でさ、手から炎を出したらさ。飛べるんじゃね?」

「・・・・・・馬鹿ですか。馬鹿なんでしょうね。ご主人ですから。確かに炎を撃ち出せば飛べるでしょうが、それはロケットや飛行機と同じ原理、細かい調整をしないと上に上がってしまったり、徐々に落ちたりでホバリングは難しいですよ」

「んー。だよなー」

「分かってたんですか・・・。・・・それじゃあそんなご主人に救済処置です」

「ん? は、え!? ・・・手袋と、指輪・・・?」

「着けといてください。いずれ役に立ちますから」

「お、おう」

「あ、あー! 右手の中指ですよ!」

「あ、わ、悪い」

 

着け直す上条。そのリングはなぜかとても喜んでいるように見える。リングには真ん中に大きな石と、周りに六つの小さな石がついていた。とても綺麗な装飾が施してあって、センターストーンの奥には何かの紋章が見える。

 

「VONGOLA・・・? イタリア語で『あさり貝』・・・だったよな。FAMIGLIA・・・ファミリー?」

「深く考えたら負けですよご主人」

「27?」

 

手袋の甲の部分に編み込まれた27に上条は疑問を持つ。

 

「いいですから、体が覚えてますから」

「・・・・・・悪いな」

「いえいえ」

 

 

 

 

 

―――午後一一時二七分。

『パラレルスウィーツパーク』の職員用出入り口に近い金網フェンスの辺りまで上条、貴音、インデックス、ステイルの四人はやってきた。

まだ戦場にも入っていないのに、上条は静電気を帯びた空気のようなものをピリピリと肌で感じていた。フェンスの向こうに広がる闇のどこかから誰に覗かれているのか分からないのだ。実際には園内の限られた場所に敵が潜んでいるだけなのだろうが、もうこの施設全部が巨大な敵の胃袋のように見えてしまう。

 

「おー。夜の遊園地って学校と同じくらいテンションあがりますねー」

「心霊現象とかでな。まあもっとも学園都市じゃそんな事はできないがな」

「ちょっと緊張感が足りないかも」

「まぁまぁ。なあステイル」

「何だ?」

「お前は、本当に時間内に全部の仕事を片付けられると思うか? ポイントの破壊と、『法の書』の探索、オルソラの救出。その全部だ」

 

上条の問いにステイルは少し黙った。インデックスも緊張した顔で二人を交互に見ている。

 

「・・・・・・。正直、厳しいだろうね」ステイルわずかに間を空けて答えた。「ただでさえ園内のどこに『法の書』やオルソラが保管されてるかも分かっていないんだ。それに、実はローマ正教には伝えていない情報が一つある」

「神裂関係か?」

「その通り。事件発生直後にイギリス国内にいたはずの神裂火織が消えた。おそらくかつての部下・・・・・・いや、仲間を思っての行動だろう。天草式決定的なダメージを与えようとすれば、あの聖人が襲ってくるかもしれない」

「ほーう」

 

上条は気楽そうに感嘆の声を上げる。なぜなら上条は一度神裂に勝っているからだ。

 

「だから全ての仕事を成功させようなんて思うな。ただでさえ破綻気味の計画で、さらに危険要素が満載なんだ。最悪『法の書』が解読されるのだけは防ぐように立ち回るんだ」

「んだったら最優先はオルソラで良いよな?」

「僕は別に構わないさ。解読者がいなければ『法の書』は宝の持ち腐れだ。『法の書』の知識自体はその子の頭の中に入っているんだし、原点にも興味はない。それに『法の書』の持ち主はローマ正教なんだから紛失してもイギリス清教はどこも痛まない」

「私はそれでいいと思うよ。ていうか、とうまはダメって言っても勝手に突っ走っちゃうに決まってるもん。ただでさえ人数少ないんだからみんなでまとまらないとね」

 

インデックスとステイル、イギリス清教の魔術師達は特に悩みもしないで答えた。

おそらくプロとしての事情もあるのに、何も事情を知らない素人の意見を聞いて。

 

「分かった。ありがとう」

 

上条がそう言うと、二人はやや面食らったような顔をした。元々表情豊かなインデックスはまだ普通だが、ステイルは見方によって滑稽にも映る。

チッ、とステイルは舌打ちして、

 

「突撃前に気を削ぐような気持ちの悪い真似はするな。一一時三〇分には陽動が始まるんだ。それに合わせて内部へ侵入するんだから、そろそろ―――」

「とうま、中に入ったら気を緩めちゃダメだよ? ちゃんと私の後ろに隠れてて、私の言う通りに動かなきゃ危ないんだからね」

「ん? 大丈夫大丈夫。襲い掛かってきた奴全員ぶっ飛ばすから」

「それがダメなんだって!」

 

上条とインデックスは意見の不一致によって睨みあう。

 

「―――そろそろ進入するんだから、気を引き締めて欲しいんだけどね。本当に」

 

会話の輪から外されたステイルが平坦な声で言った瞬間、

遠く離れた一般用出入り口の方が爆発が起きた。

 

「おっぱじめやがったか」

「すっごー」

「爆炎って感じだな」

 

上条は時計を確認してから金属フェンスを飛び越える。

 

「ほら、行くぞ」

「イエッサー」

「あ、こら待つんだよとうま!」

「やれやれ」

 

暗い園内を上条はスイスイと歩いていく。本来の観覧コースではないため普段見ない景色だが、上条はものの数秒で観覧コースへ突入する。

 

「そんじゃまー、広いトコに出たんだし、貴音さんよろしく!」

「ほいきたご主人!」

 

貴音の袖口から大量の護符が飛び出してくる。そしてそれが勝手に地面に魔法陣を作り上げる。

 

「ほんじゃまー。いっちょ探索を・・・」

 

貴音が1枚、指で挟んで構えた瞬間。ガン、という金属音が聞こえた。

お? と彼らが音の所した方―――自分の頭上を何気なく見上げた瞬間、

そこに、ジェラート専門店の屋根から飛びかかってきた四人の少年少女が宙を舞っていた。

彼らの手には、それぞれ西洋剣らしきものが握られている。

 

「はっ」

 

軽く笑った上条の視界の端にインデックスが映る。別に気にした様子もなく上条が宙に掲げた右手に二メートル級の日本刀が握られる。その日本刀は地面を擦るようにふるわれる。

全ての西洋剣の剣先を弾き持ち手のバランスを空中で崩す。

少年少女達が地面に降り立つ。少年が一人、少女が三人。全員上条と同い年ぐらいだった。服装も奇抜な修道服などではなく、普通に、街を歩いているような格好だ。しかし、だからこそ逆に手に握られた西洋剣の禍々しい輝きが強烈な違和感となっている。

ステイルは忌々しげな声で、

 

「ハンドアンドハーフソード、バスタードソード、ボアスピアソード、ドレスソード。まったく、この国の人間は本当に西洋圏ぼくたちの文化がお好きだな!」

「だな」

 

上条は楽しそうに笑う。クルクルと日本刀を器用に回すと自らの影に刺して、そのまま影にしまった。

ステイルはルーンのカードをばら撒き、炎剣を引き抜きながら、

 

「君にやる。死にたくなければ肌身離さず持っていろ!」

 

懐から取り出した何かを、上条に向かって投げつけた。彼が慌てて受け取ると、それは銀でできた十字架のネックレスだった。

 

「これは・・・・・・」

 

・・・・・・何に使うものなんだ? と聞こうと顔を上げた瞬間、上条の眼前にデッキブラシぐらいの長さの細身の両刃剣(ドレスソードというらしい)の切っ先が天草式の少女によって無言で、轟!! と突き出された。

 

「おっ」

 

上条は軽く後ろに跳んで避ける。が、続いて少女が踏み込む。そして横薙ぎの一撃が放たれる。が、上条はその踏み込みの足を払った。

 

「ご主人!」

 

貴音の叫び声が聞こえた瞬間、真下の少女のドレスソードが草刈り機のように振るわれた。上条は先程足払いしたため、体幹が整っていなかった。そのせいもあって、上条の足が足首から先が切り裂かれる。

 

「とうま!!」

 

後ろに倒れた上条は側転とバク転を組み合わせたような動きで距離を取る。その際、血の流れが足の軌跡を描いていたが、地面に着いた時には靴も足も元通りになっていた。

 

「「「!?」」」

 

驚愕のような空気がその場を支配する。

上条が顔を上げるとステイルが蜃気楼を残して消えていた。

 

(逃げた・・・・・・?)「おいおい? 人任せかよ」

「背中、預けて良いですか? ご主人」

「全員潰すぞ」

「イエッサー」

 

その言葉を聞いたのか、天草式の刺客が構える。どうやら今の優先順位はインデックスより上条らしい。

 

「さて、遊ぼうか」

 

そう言って上条が取り出したのは二丁の装飾銃。はだけた制服から見える胸と同様。XIIIの文字が刻まれていた。

 

「『不吉』を・・・・・・」

「届けに来ましたよっ!」

 

それを合図に貴音が護符をばら撒く、その一つ一つがすでに発動していて―――

 

「殺れ」

 

―――四方八方に光の柱が突き立った。

 

「「「「 ! 」」」」

「余所見たァ。余裕だなァ、オイ」

 

それを見逃すはずのない上条の攻撃で、全員沈む。

そして、上条と貴音。お互い振り向きざまにハイタッチをする。

 

「よし。ほんじゃまあ。オルソラを捜すか」

「ですねー」

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