幻想殺しと電脳少女の学園都市生活   作:軍曹(K-6)

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激突!

それから一〇分たった。

貴音は上条の後ろをトコトコとついて戦場を駆け抜ける。オルソラの周りにはどんな物理・魔法攻撃も通さない結界を張ったようだ。

 

「それで? ご主人、さっきの技。物に出来そうですか?」

「んあ? X BURNERだろ? 慣らす時間がない気がするんだよな」

「そう、ですか」

「そっちこそ、大丈夫なのかよ」

「ええ。もうちょっとですけど。順調です」

「そうか」

 

上条達は歩いた後に手榴弾をばら撒いているため、地面が抉れていく。

彼は『婚姻聖堂』の扉を開ける。ゆっくりと開いていたら、貴音がドロップキックで勢いよく跳ね開ける。

 

「どう考えたってあれだけの人数を相手にしちまいながら、自由に敷地内を移動できるとは思えないんですけどね」

 

大理石の柱に悠々と背を預けるアニェーゼに、上条は同様に気楽そうにしながら笑って、

 

「まぁ。ちょっとばっかり、最終兵器があるからな」

「兵器?」

「貴音」

「後三分」

「二分三〇秒にしろ」

「はーい」

 

上条の命令にしか聞こえない指示に、貴音は意気揚々と答えた。それを見届けた上条はアニェーゼに向き直り言った。

 

「悪いがテメーラの信じる神様(げんそう)は、今からこの場所限定でぶち殺す」

「はっ。面白いですよあんた。だったら私がその希望(げんそう)を打ち砕いてやりましょう!」

 

アニェーゼは銀の杖を構え言う。それは細い柱の上に天使がロダンの『考える人』のようにうずくまっているデザインのもので、六つの翼がカゴのように天使を包み込んでいる。

その様子を、インデックスが教会の外から開け放たれた扉越しに見ていた。彼女の周りにはシスターはいるが、全く相手にしていない。それもそのはず、今の彼女は一〇万三〇〇〇冊の魔道書をフルに使って戦える魔神に近い存在だ。

 

「とうま・・・・・・」

 

アニェーゼが詠唱を行い、軽く杖を振る。

カツン、と杖の先が横合いに遭った大理石の柱に軽くぶつかる音が鳴る。

 

「何してんの?」

 

上条は明らかに間合いの外で振るわれた一撃に内心で眉をひそめていたが、

ゴン!! と。

次の瞬間、上条の側頭部に強烈な衝撃が走った。

 

「おっふ!」

 

何か重たい金属で頭を殴られた。そう表現するのが一番正しい。が、上条はそんな生半可なことで倒れるような鍛え方はされていない。

 

「どうやら、その杖を傷付けると連動して指定した場所に同じ攻撃が加わるみたいだな」

「ほう。見抜いちまいますか」

「ご主人。準備完了です!」

「ほんじゃまあ、始めますか!」

 

上条は一枚の護符を取り出すと、上に投げる。すると、宙に浮いた状態の護符が巨大な魔法陣を創り上げた。

 

「なんだ?」

『あ、あー。あー天草式やステイル。インデックスに伝達。今から魔術を使うな。絶対だからな』

「分かったよのな」

「ふん。いいだろう」

「分かったんだよ!」

 

「よっしゃ! エネ、やっちまえ!!」

「イエス! 私のご主人様(マイロード)!!」

 

貴音が右手を上にかかげる。そして、口を開く、

 

「形成。一万八〇〇〇・二九〇を媒体にアンテナ展開! AIM拡散力場、充満。・・・・・・一〇〇%完了。『界』出現!!」

 

バチィッ。と、電気が空中を走るような音がオルソラ教会の敷地のあちこちで鳴る。そして、上条がエネの方を見ると、少女は簡単に言えば天使に変身していた。

炎のように燃える髪、水のように透き通った肌、光のように輝く瞳、電気のように迸る翼、他にも所々に超能力の要素が垣間見れる。

 

「エ・・・ネ・・・? 大丈夫・・・いや、お前は虚数学区か・・・・・・?」

『はい。私のAIM拡散力場の集合体。虚数学区・五行機関の総意体です初めましてmyマスター』

 

上条の問いに、滑らかな声が聞こえてくる。それは貴音の声帯を通さずに話しているようだった。

 

「総意体って・・・・・・何か呼称とかない訳?」

『存在しません。私は今まで誰にも認知されませんでした。故、意思を持つこの私につく名前など存在しません』

「そうか。んじゃお前今から“エイム”な」

『はい! マスター』

 

そこまで言った瞬間。耐えきれなくなったように、教会の柱が悲鳴を上げ壊れていく。

 

「な!? な、何なんですかこいつは!」

「『法の書』の実行さ。と言っても全世界じゃない。このオルソラ教会のみで十字教は破壊される!」

「な・・・・・・なんで!」

「簡単な答え合わせだ。十字教はすでに出来上がってる。例え宗派は違えど十字教は全てルールに従って動いている。そのルールを根底から覆す新たな科学の『界』の出現。それによる魔術は崩壊し、今このオルソラ教会では魔術は使えない。いやーよほど魔術に恨みがある奴なんだろうな。アレクサンダーっていうのは」

 

ケラケラと笑う上条の目の前に、アニェーゼと分断するように支えを失った屋根が落ちてくる。

 

『マスター。大丈夫ですか?』

「ああ、大丈夫大丈夫」

 

「とう・・・・・・ま」

「インデックス! ここは危険だ!」

「おい、イギリス清教! 一体何が起こってるよの! 魔術を使った向こうが自分の魔術で暴走していやがるのよな!」

「説明は僕が求めたいぐらいだね。一体何が起きているのかは」

(もし、今当麻が言った事が本当だとして。あそこにいるたかねが科学の『天使』に近いものなら、いや。もしそのものなら・・・たかねが仕えるとうまって・・・・・・)インデックスは驚いたように目を見開く、「全く新しい神・・・・・・?」

「? インデックス。どうしたんだい?」

「あ、歩く教会が!」

 

インデックスが気付いて慌てる。彼女が着ている白い修道服『歩く教会』が効力を失い、魔術的要素を持つ布が繊維に戻ろうとしていた。

 

「あ、あわわ! あわわわわ!」

「くっ。上条当麻! さっさと終わらせろ!」

「わかったよ。さあ、これでローマ正教(おまえら)の幻想は終わりだ! アニェーゼ=サンクティス! テメェのみじめな幻想を・・・・・・跡形もなく喰い殺す!」

 

上条の左足がアニェーゼの足元に滑り込み、上条の固く握られた拳が振るわれる。

防御のために構えられた天使の杖がその一撃で、粉々に割れる。そのまま寸止めで止められた拳から起きた拳圧の衝撃が、アニェーゼの体を七メートルほどノーバウンドで吹き飛ばした。

アニェーゼは、そのまま気を失っていた。

それで、全ては終わる。『法の書』に記されし術を行使し、すでに崩れまくっていた勢力均衡はもう形も残らなかった。

戦いは終わる。

たった一人の少年の拳が、言葉が、二〇〇人を超す敵勢の心をねじ伏せた事で。

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