幻想殺しと電脳少女の学園都市生活   作:軍曹(K-6)

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炎天下の中での開始合図 Commence_Hosttilities.

午前一〇時三〇分。

ようやく開会式が終わった。

 

「あっつ・・・・・・」

 

平凡なる高校生・上条当麻が立っているのは、サッカースタジアムだ。特に部活動に力を入れている体育学校付属の施設らしい。合成樹脂の人工芝も溶けてしまいそうなほどの厳しい残暑の中、様々な体操服を着た男女は行進で出口をくぐると、あとは三々五々に散っていく。

上条はそんな生徒達を置いて、さっさと競技場。自分達の高校に向かって駆け出した。

 

「最初の種目は棒倒しか・・・・・・」

 

インデックスは小萌先生に預けてあるので心配はないが、上条は自身の高校の校庭の前で、貴音と合流した。

 

「なぁ、あいつ等準備中に馬鹿騒ぎばっかりやってたよな? 大丈夫か?」

「やる気なーいとか言ってらどうしてやりましょうかね」

 

上条と貴音は、水撒きがされている校庭の端を通り、選手控えエリアへと意気揚々と乗り込み、クラスメイト達の輪の中へ入る。

そして、こういったお祭り騒ぎがいかにも好きそうな青髪ピアスがこちらへ振り返り、

 

「うっだー・・・・・・・・・。やる気なぁーいーぃー・・・・・・」

 

上条と貴音は何もない地面で盛大に転がった。

地面に突っ伏したままよくよく周りを見てみると、他のクラスメイト達も大体そんな感じだ。つまり、全員が日射病の一歩手前みたいな顔をしている。

 

「ちょ、ちょっと待ってください皆さん。何故に一番最初の競技が始まる前からすでに最終日に訪れるであろうテンションに移行してるんですか!?」

 

貴音がぷるぷると震えながら問い質すと、青髪ピアスがガバッと振り返り、

 

「あん? っつかこっちは前日の夜に大騒ぎし過ぎて一睡もできんかったつーの! しかも開会式前にも、どんな戦術で攻めこみゃ他の学校に勝てるかいうてクラス全員でモメまくって残り少ない体力をゼロまですり減らしちまったわい!!」

「自業自得じゃねェェですかァァァアアアア!!」

「こりゃ、負けそうだな」

 

上条は自分から体力を減らしに行く貴音を抑えながら頭をかく。

 

「にゃー。でもカミやん、テンションダウンは致し方ない事ですたい。何せ開会式で待っていたのは十五連続校長先生のお話コンボ。さらに怒涛のお喜び電報五〇連発。むしろカミやんはよく耐えたと褒めてやるぜーい・・・・・・」

 

土御門も青髪と同様にテンションダウン状態だった。それを見た貴音は、さらに肩を落とし。膝まで着いた。

 

「た、体力馬鹿の青ピさんや土御門さんですらこの有様・・・・・・!? い、いやまだだ。対戦相手も同じようにぐったりしてれば勝機は・・・・・・ッ!!」

 

貴音は最後の望みにすがるが、

 

「駄目だにゃー貴音っち。何か相手は私立のエリートスポーツ校らしいっすよ?」

 

うにゃあああ!! と貴音は完全に地面に突っ伏す。上条はそんな貴音を呆れ気味に見つめていたが、いたって冷静に

 

「こりゃ、相手にもナメられてそうだな」

「な、何なの。この無気力感は!」

「よ、吹寄。みんな前日までの馬鹿騒ぎで体力を使ったんだと。俺と貴音はそうでもないんだけどな? いや、たった今貴音はやる気を失ったみたいだな」

 

吹寄制理。どうやら彼女は大覇星祭の運営委員らしい。その証拠に薄手のパーカーを体操服の上からはおっていた。

 

「上条当麻。キサマはやる気はあるのか?」

「あったとしても無理だろ。まぁ、あるけども。吹寄も見ろよ。この学校全体の無気力感。やる気の無さが充満してますぜ」

 

上条はチームワークが全くない生徒達をぐるりと見渡すと、吹寄に向き直り、な? と同意を求める。

吹寄は満足がいかないのか、他クラスにまで叱咤激励に行き始めた。

上条はため息をつくと、選手入場口近くにある体育館の壁に寄りかかる。すると、ふとどこからか男女が言い争う声が聞こえてきた。ちょうど体育館の陰に隠れる形で、誰かが話し合っているらしい。

 

「・・・・・・そんなことは・・・・・・絶対に、――――ですよーっ!」

「・・・・・・馬鹿馬鹿しい―――――に決まって・・・・・・ですか」

 

上条はそのまま体育館の壁にピタリとくっつき、端から首だけ出して様子を窺う。

日当たりの悪い体育館裏手にいたのは、上条のクラスの担任の月詠小萌だった。さきほどインデックスを預けたばかりなので、そのチアガールのような衣装も特に気にもならない。

それよりも、彼女と向き合ってる男性の先生が気になった。この暑い中しっかりとスーツを着込んでいた。相手の学校かな? と上条は思う。

小萌先生と男の先生は言い争っていた。

というより、嘲る男の先生に、小萌先生が食い下がっているような構図だ。

 

「だから! ウチの設備や授業内容に不備があるのは認めるのです! でもそれは私達のせいであって、生徒さん達には何の日もないんですよーっ!」

 

小萌先生は両手を振り回しながらそんな事を叫んでいるが、男の先生は気に留めず、

 

「はん。設備の不足はお宅の生徒の質が低いせいでしょう? 結果を残せば統括理事会から追加資金が下りるはずなのですから。くっくっ。もっとも、落ちこぼればかりを排出する学校では申請も通らないでしょうが。ああ、聞きましたよ先生。あなたの所は一学期の期末能力測定もひどかったそうじゃないですか。まったく、失敗作を抱え込むと色々苦労しますねぇ」

「せ、生徒さんには成功も失敗もないのですーっ! あるのはそれぞれの個性だけなのですよ! 皆さんは一生懸命頑張っているっていうのに! それを・・・・・・それを、自分達の都合で切り捨てるなんてーっ!!」

「それが己の力量不足を隠す言い訳ですか。はっはっはっ。なかなか夢のある意見ですが、私は現実でそれを打ち壊して見せましょうかね? 私の担当教育したエリートクラスで、お宅の落ちこぼれ達を完膚なきまでに撃破して差し上げますよ。うん、ここで行う競技は『棒倒し』でしたか。いや、くれぐれも怪我人が出ないように、準備運動は入念に行っておく事を、対戦校の代表としてご忠告させていただきますよ?」

「なっ・・・・・・」

「あなたには前回の学会で恥をかかされましたからねぇ。借りは返させていただきますよ? 全世界に放映される競技場でね。一応手加減はするつもりですが、そちらの愚図な失敗作どもがあまりにも弱すぎた場合はどうなってしまうのかは、こちらにも分かりませんねぇ」

 

はっはっはー、と笑いながら立ち去って行く男の先生。

対戦相手の学校だったか、と上条は大雑把な感想を抱いた。正直、無能力者の上条としては、今更すぎる言葉だったので、大して気にも止めなかったが。

 

「・・・・・・、違いますよね」

 

その時。ポツリと、小萌先生は言った。

たった一人で。誰に言うでもなく。俯いたまま、ぷるぷると震える声で。

 

「みんなは、落ちこぼれなんかじゃありませんよね・・・・・・?」

 

ただでさえ小さな肩を、より小さくするように。

今の罵倒は、全て自分のせいでみんなに降りかかったものだと告げるように。

彼女はそっと空を見上げ、何かをこらえるように、じっと動きを止めていた。

 

「―――、」

 

上条はちょっとだけ黙る。

そして振り返る。

そこには彼のクラスメイト達が無言で立っていた。

上条当麻は、彼らに確認を取るために言う。

 

「はいはい皆さーん。話は聞きましたね? ついさっきまで、やる気がないだの、体力が尽きただのと、各々勝手に喚いていましたが・・・・・・」

 

上条は片目を閉じて、

 

 

「――――もう一度だけ聞く。テメェら、本当にやる気がねえのか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

御坂美琴は学生用応援席にいた。

敵情視察という名目で、美琴は上条当麻の実力を探りに来たのだ。

 

(アイツ今までずっと、私に対して力抜いてきてるの知ってるんだから。さあ、見せてもらうわよアンタが一体・・・どれ・・・だけ強・・・いのか?)

 

上条達の対戦相手はスポーツ重視のエリート校らしく、簡単な柔軟体操にも専門的な匂いを感じさせる。が、美琴の言葉が詰まったのはそちらではない。パンフレットを見る限り、彼の学校は進学校でも何でもなく、本当に個性のない『極めて一般的な学校』だ、と()()()()()()

 

そこに、本物の猛者達がいた。

 

はい・・・・・・? と美琴は思わず自分の目を疑ってしまう。

その集団は妙な威圧感を放っているくせに、野次や騒ぎの一つも起こしていない。むしろ無言のまま、上条当麻を中心にして、校庭へ横一列に並ぶ。棒倒しというか、戦国時代辺りの合戦の一歩手前といった感じだった。テレビカメラによる緊張感がどうのという次元ではない。もはや自軍と敵軍以外は何も目に入っていないに決まっている。

ドゴゴガガガガガガ、と彼らの周りから妙な効果音が鳴り響く。

三ケタ単位の能力の余波がぶつかり合って空気を震わせる音だ。

 

(へ、へぇ・・・・・・そ、そんな脅しには乗らないから。さあ見せてみなさい。その力を!)

 

顔を引きつらせる美琴の前で棒倒し開始のアナウンスが入り、テンションの落差に恐れをなした敵軍の元へと、上条当麻が一歩前に出た。

 

 

 

少しずつ上条は前に出る。他の自軍は動こうとしない。相手も思わず疑問に思うが、三分の一ほど進んだ上条に、能力が飛んでくる。上条はそれを横に振り抜いた右手でかき消すと。

ダン!! と、足で地面を踏みならし腹の底からありったけの声で言った。

 

「ガンダムファイトォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」

「「「「レディィィイイイイ!!!!」」」」

「「「「「ゴォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!」」」」」

 

そして、砂煙を上げて上条達(ツワモノたち)が敵軍に襲いかかっていった。

 

本来、棒倒しに参加する人間は、自然と二つのグループに分けられる。

一つは自軍の棒を立てて、それを支える役。

そしてもう一つは、相手の棒を引きずり倒す役。

上条達は圧倒的に後者の方が多かった。というか、支える人間は一人で十分だった。エイムを体に宿した貴音一人が、巨大な棒を悠々と能力で支えていた。

先陣を切った上条は仲間が到着するまでの間、挑発をし逃げ回っていた。

 

「ほらほら、当ててみろよ。ノーコン野郎ども! 宝の持ち腐れのヘナチョコ能力者が!!」

 

そんな事やっていた上条の肩を叩いて並走する者が一人。

青髪ピアスだった

 

「行きますよーカミやん。お高くとまった腐れエリート集団が放つ、あの二枚目オーラ。お笑い専門のわたくしめが見事木っ端微塵に打ち砕いて見せましょう! わはははははーっ!!」

 

最初の上条の気迫に押されたのか、敵陣営は遠距離攻撃しかしてこない。その能力を迎撃組が撃ち漏らした分、爆圧の弾丸が襲ってくるが、青髪ピアスは笑いながらバレリーナみたいにクルクル回転しつつ、前段を余裕で回避していく。

両陣営、激突までおよそ一〇メートル。上条は先制攻撃の用意をする。

 

「カミやん。行けっ」

「はいよ!」

 

上条は先頭集団の中から空中に飛び出すと、右手に電気を帯びた火球を生み出した。

 

「カッ消えろ!!」

 

それを某バトル漫画のように、敵陣営に叩き落とし、進路を作り出す上条。何一〇本と立っている棒倒しの棒に飛びつきだす影もあった。

貴音の方は若干暇ではあったが。

 

が、数一〇人が、上条達の突撃をかわして自軍の方に向かっていくのが、空中にいた上条には見えた。

 

「あいつ等っ!」

 

貴音に能力が効くかどうかそれは上条にも分からない。だが、こちらとしては一本も倒される訳にはいかないのだ。ハイパー化する時間も惜しかった上条は、そのまま両手から炎を逆噴射して、数一〇人に追いつく。

 

「よォお前ら。相手は俺がするぜ?」

 

そう上条が言った時、大量の能力が飛んでくる。が、上条は余裕の表情で全てかわし、数一〇人の前方に飛び込んだ。

 

「行かせねーよ」

 

上条の目線の先では二本、敵陣のポールが倒れていく。

その上条にも大量の能力が襲い掛かってくるが、彼は全ての能力を反射した。

自分の能力を食らった数名は倒れるが、まだたくさん残っている。

 

「悪いな。この大覇星祭期間中。俺の枷を取っ払っていいってお許しが出たんだ。遠慮なくいかせてもらうぜ!!」

 

 

 

 

結果を言うと、上条達は競技に勝った。

正面からスポーツとして争っても上条と、貴音さえいれば勝てるに決まっている、というのが彼らの答えだったが、ここは相手のペースを崩す電撃戦に出たのだ。

統括理事会から、能力の制限が解除された上条と貴音は、そのチカラを要所要所で使っていた。特に貴音は、超能力者相当の念動能力(テレキネシス)を使っていたのだが、『上』からのお咎めはない。

擦り傷だらけの猛者達は、その手で勝利をもぎ取った事も怪我の事も全く気に留めずに選手用出口から校庭の外に出る。と、小萌先生が何か訴えていたが、多くは語らないのが美徳だとばかりに生徒達は三々五々と散っていく。上条も選手控えエリアから出て、次の会場をゆっくり目指し始める。

すると、青髪ピアスが駆け寄ってきた。

 

「なーぁカミやん。何であれで無能力者なん? どう見ても超能力者なんやけど」

「知ってるか? 青ピ、計測器は計測不能な時でも無能力と表記するんだぜ?」

「なるほどな、カミやんのそれは計測不能っちゅうことか」

「そーゆー事かもな」

「あー、そんな事言いに来たんとちゃうんやわ。カミやん。さっき全員で決まった事なんやけど、ウチの学校あんな風にどこからでもナメられとるみたいでな? せやからカミやんと貴音っちに暴れてもらおうと思とんやけど。どやろ」

「あー。別にかまわねーよ。この大覇星祭期間中は俺の枷も外していいって言われてるから。好きに暴れられるしな」

「ありがたいわー。ほな、また頼むでーカミやんっ」

 

走り去っていく青ピの後ろ姿を見る上条。『待っててねー』とか言っている辺り、彼女にでも会いに行くのだろう。

 

「他校に彼女がいると複雑だろうねー」

「こういう時は敵対しちゃいますからね」

「貴音か。どうした?」

「いや~聞いて下さいます? なんか記者が私の事探してるみたいで」

「超能力者がいない学校であれだけの事やらかしたらそりゃ注目されるわな」

「ご主人も気をつけた方がいいですよ?」

「なんで?」

「上位五校。つまり五本指、強豪校の代表選手が一名。全校、全生徒の中から一人選んでバトルマッチができるんですよ」

「御坂から聞いたよ。で?」

「上位五校といえば、常盤台と長点上機ですよ? そこの代表といえば誰だか分かってますか?」

「だれだよ。御坂か」

「常盤台。といえば超能力者の御坂美琴嬢ですね。長点上機は、今年は必ず彼が出てきます」

「誰だよ」

「超能力者第一位の一方通行ですよ」

「白夜が? 出てくるって・・・・・・まさか」

「そう、一〇〇%ご主人を指名してくるでしょうね」

「おいおいおい。ふざけんなよ。御坂は指名してくるって言ってるし・・・・・・。白夜まで!?」

「あと、一応なんですけど」

「何?」

「超能力者第七位の人も、出てくるかもしれません。そこは、分からないので」

「俺には関係ないだろ?」

「一種の筋肉馬鹿、いえ、根性馬鹿らしいです」

「・・・・・・なに? 俺の身体能力を『スゲェ根性だな! 手合わせしようぜ!』とか言い出す訳?」

「その辺は全く分かりませんけど・・・・・・」

 

貴音は少し首を傾げると、何かに気付いたように目を開く。上条が『どうした?』と聞くが貴音は耳を澄ませている。

 

「ご主人。今何が行われてます?」

「そうだな。目立って行われてるのは常盤台の借り物競走だな」

「常盤台の、ですか?」

「そうそう。注目選手はやっぱり御坂らしいな」

「ですか~。ご主人危ないっ!!」

「おわっ!?」

 

グイッ。と上条の体が、貴音の方へ引っ張られる。それぐらいで倒れる上条ではないので、すぐさま体勢を整える。すると、そこには睨みあう少女達がいた。

 

「危ないですねぇ。鳴神娘。私の目の前でご主人をかっさらおうなんて甘い考えはよしてくださいます?」

「あのねぇ、こっちは競技でやってんの。借り物競走なのよ?」

「ルールには第三者の所有物である場合、その人物に了承を取った上で、競技場へ向かう事って書いてありますけど?」

「だったら取ればいいんでしょ!? ほら、あんたらどっちかついてきて!」

「へ? どれどれ」

 

二人が美琴の持つ紙を覗きこむとそこには、『第一種目で競技を行った高等学生』と書いてあった。

 

「確かに『棒倒し』は第一種目だけどさ。どうする?」

「ご主人なら間に合います。私が許可しますんで、全力で走って来てください」

「ほんじゃ御坂、本気で行くからな」

「え!? ちょっと何!?」

「ご主人。~~学校の競技場らしいです」

「じゃあその入り口までな」

「ちょっと! 下ろしなさいよ!!」

「大丈夫だって、速いから」

 

上条はそう言うと、美琴を抱えた(所謂お姫様抱っこ)まま、跳び上がった。

 

「え、えぇ!?」

「舌噛むかもよ?」

 

ドンッ! と、上条の足がビルの壁を捉え、ビルからビルの壁を蹴りながらジグザグに跳んでいく。だが、地上を走るよりは数倍速いだろう。

 

「ちょっ! 待ちなさい! 降ろして!」

「フハハーッ! もう着いたから大丈夫だぜ」

 

ズザザザザ! と、上条の両足がアスファルトを捉える。どうやら競技場内を見る限り、まだ帰還者はいないようだ。

 

「・・・・・・どうやらまだ一位を取るチャンスはあるみたいだなァ!?」

「ほら行くわよッ!」

 

上条は高反発素材の靴底で地面を蹴り、猛加速した美琴に引っ張られて競技場に突入し、ゴールテープを切った。

先ほど、上条達が棒倒しを行った競技場とは別次元だった。スポーツ工学系の大学が所有している物らしく、オリンピックの屋外競技に使われそうな出で立ちだった。

待機していた運営委員の高校生が、美琴にマラソンのゴール直後のように大きめのスポーツタオルを頭から被せた。ドリンクの手渡しや小型の酸素吸入用ボンベの使用などもテキパキしているし、それは実用本位だけでなく、カメラに映る事を考慮した動きのようにも見える。

この後は表彰式と簡単なインタビューがあるはずだ。後続の選手達が到着するまでは、別の所で待機といった感じか。

 

「おぉ~。場違い感が半端ないほどぴっちりした競技場ですなぁ」

 

と、美琴の世話を終えた運営委員の高校生が、上条の顔をジロジロと見てきた。何だ何だ、と上条は少し身構えたが、その時運営委員は小声で言った。

 

「・・・・・・上条当麻。一応、『借り物』の指定は間違っていないみたいだけど、よっぽど女の子と縁があるようね貴様は!」

「お、その声は吹寄か。貴音も一緒だったんだけどな。俺に行けって来たのあいつだから。俺に女縁はないぜ」

「・・・・・・」

 

吹寄は呆れたように、何か競技記録らしきものをボールペンでクリップボードに書き込み始めた。

吹寄がこれ以上上条と話す気はないらしい事を雰囲気で掴んだ彼は、特に疲労感もないので、静かに競技場から退散しようとする。

 

「ちょっと、アンタ待ちなさいよ」

「んだよ、御坂。もういいだろ?」

「よくないわよ。汗とかかいてないの?」

「お前はオカンか。汗なんかかく訳ないだろ? あれぐらい余裕だから、気にすんな。ほんじゃドロンという訳で」

 

タッ。と軽い足音と同時、上条の体はものすごい勢いで競技場出口に消えていった。美琴は少しため息をつくと、どこからともなく取り出したメモ帳に何かを書きなぐっていた。

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