幻想殺しと電脳少女の学園都市生活   作:軍曹(K-6)

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追撃の再開とその終わり Accidental_Firing

今上条は問題の前にいた。競技場に向かう途中、小萌先生とステイルを見つけたのだ。その側に姫神もいた。

 

「上条君。タスケテ」

「えー・・・・・・姫神。あれは止めなくていいんじゃね? むしろあいつは一度小萌先生に本格的に叱られた方が人生のためだ」

 

上条はそう言ったが、ステイルはその上条に自分の胸元を指して見せた。髑髏の悪趣味なストラップが光っている。どうやら着信でもしているのだろう。

 

(あれが使徒十字に関する件だったら小萌先生に聞かせるわけにはいかないだろうな・・・・・・)

 

上条がそんなことを考えていると、ステイルがお手玉していた煙草の箱を投げてきた。

それを受け取った上条は即座にステイルの考えをくみ取った。

そして一本口に咥えて、煙草の箱を姫神の方へ突きつけると、

 

「姫神、ライター持ってる?」

 

え? と反応の遅れた姫神に対し、小萌先生は高速でグルン!! と振り返って、

 

「上条ちゃん! 何を無意味なチャレンジャー精神を発揮しようとしてますかーっ! 姫神ちゃんももっと強く引き留めなくてはだめなのです!!」

 

ものすごい速度で接近してきた小萌先生をするりと回避すると、上条は姫神に咥えていた煙草と箱を渡して。

 

「お望み通り口論は止めた。そんじゃ、後よろしく!」

 

ものすごい勢いで走り去っていった。姫神は上条から渡された一本の煙草を見つめると、吸い口を彼と同様に咥えようとして、

 

「何してるですか姫神ちゃん! あなたも無意味なチャレンジをしなくていいのです!!」

 

と、取り上げられた。

 

 

 

 

 

 

それからしばらくして、一つの競技が終わり上条は町中を歩いていた。

 

「ご主人。どうしたんですか? 急に立ち止まって」

「・・・血だ」

「へ?」

「それもとびきり強い・・・。誰かが怪我をしてるのかもしれない・・・。距離が遠いのにこれほどまで強くにおうって事は、かなりの大怪我だぞ!!」

 

上条は撃ち出された銃弾のように飛び出した。その後を貴音も追う。

 

「こっちかっ!」

 

上条は嫌な予感がしていた。大覇星祭でこれほどまでの血の匂いがしたことは今までない。この血の匂いをかいだことあるのは。裏の世界に生きていたときぐらいだ。

 

「・・・あそこかっ!」

 

上条の視線の先に強い匂いを発する場所がある。だが、その場所には学生を中心とした集団が人混みを作っていた。

上条はそれを飛び越えるようにビルの外壁沿いに路地裏の真上まで来ると、そのまま落ちた。

 

ダンッ! と両足のバネを使って衝撃を吸収した上条が顔を上げてみたのは、

 

 

 

血。

 

 

 

狭い路地だった。

背の高いビルと細い道の組み合わせのためか、真昼なのに太陽の光が全く当たらない。じめじめした道路は黒っぽい色をしていて、空気も全体的に流れが滞っているような匂いがする。

そんな暗い路地裏が、

より一層暗い赤色によって染め上げられている。

 

「か、上条ちゃあん!!」

 

聞き慣れた声は小萌先生のものだ。

ただしその体も、服も、擦りつけたような赤黒い血で染まっている。その大きな瞳からぼろぼろ流される涙が、跳ねた血と混じり合って顎に伝っていた。

おもむろにその血に手を伸ばした貴音に、上条は

 

「舐めるな!」

「んぐっ」

「貴音。その血を今すぐ拭け。もしくは洗い流せ、これは俺達が舐めていい血じゃねーんだ」

「わ、分かりました」

 

血は、小萌先生のものではない。

小萌先生のすぐ足元に、一人の少女が倒れている。血で染められた地面に黒い髪を浸しているのは、姫神秋沙。その血とは対照的に、顔から手足の先までが、真っ青に色が抜けてしまっている。

 

「小萌先生。何があったんですか。姫神は、なんでこうなったんですか」

「わ、分からないんです」

 

上条の感情を押し殺したような平坦な声に、小萌先生は震えるような声で応える。

 

「せ、先生、ここで女の人とぶつかったんです・・・・・・。それで先生はちゃんとごめんなさいって言って、その人に笑って許してもらえたと思ってたんですけど。何か、急に怖い顔したと思ったら、いきなり・・・・・・姫神ちゃんに・・・・・・ッ!」

「オリアナか・・・」

「このタイミングで動いたとなれば十中八九ヤツでしょう。・・・・・・、随分とまた、龍の逆鱗に触れる真似をしてくれたものですね」

 

貴音が憐れむようにそう言った。

姫神秋沙はオリアナの件には全くの無関係。ただの一般人だ。だが、インデックスと同じ、歩く教会の方法で作られたイギリス清教のケルト十字。それをつけていたという理由だけで、オリアナは姫神に魔術を使ったのだ。

 

「あっち行ってください」

 

言葉と同時に、路地裏の入り口に留まっていた人達が、栓が取れたように再び大通りへ戻っていった。

貴音の『人払い』だ。

上条は右手を姫神の胸の中心で開いてそして、姫神の体を喰らうように巨大なガラス細工のような龍が、上条の右手から出てきて姫神の体を通り抜けた。

 

「ここまでやっておいて、姫神のことをこんなにして、その理由が、間違えただけ、だって? ・・・・・・、あ、の、野郎。ふざけやがってェェええええええええええええええッ!!」

 

上条は手近な壁を思い切り殴りつけた。それだけで壁には円形の穴が開く。泣き続けている小萌先生が、思わずビクリと肩をふるわせる。

 

「貴音」

「は、はい」

「姫神の事、頼んだぞ。俺はあいつを・・・喰い殺す!!」

「分かりました」

 

貴音はそう言うと、姫神の体に右手で触れ左手は空中に掲げる。例えるなら、まるでアンテナのように。

 

上条はそれを確認すると芸術品とも称される青い眼を開いて学園都市を掛けだした。




舐めちゃいけないって・・・まあ当たり前ですよね。
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