幻想殺しと電脳少女の学園都市生活 作:軍曹(K-6)
上条当麻は小さな紙袋を影に閉まっていた。
中には美琴が選んだ銀のハートと星のアクセサリーがついたネックレスが入っている。
彼はため息交じりで、
(なんか、すっごいオシャレなの買わされたな。ま、アイツに渡すんだから何でもいいだろ)
「何を莫大な疲労感に肩を落としているの? ってミサカはミサカは癒し系マスコットとしてあなたの背中に張り付いてみたり」
その声と同時、背中にのしっという重みが加わった。背中に伝わる丸っこい感触に、上条は一瞬驚いて、即行でその正体を確かめるため、後ろに手を回し、背中にくっついているものを顔の前に引きずりだした。
「何やってんだ。ラストオーダー」
「えへへ~? なんだろう?」
上条が首をかしげると、
上下反対になっている打ち止めも仕草を真似て首を傾げていた。
▽
見つけた。と白夜は思った。
ここは地下街の入り口を入ってすぐそこ・・・・・・といった場所である。ファーストフード店のオープンスペース、そのテーブルの一つに少女達がいた。
インデックスと榎本貴音。どちらも上条当麻と親しい関係にあるものだ。
片方・・・、シスターの方が大量のハンバーガーに顔を埋めていたのだが。
「オイ。榎本」
「・・・ん? あ、白夜じゃないですか。どうしました?」
「むぐ? あ、白い人だー」
「ラストオーダー、見たか?」
「ラストオーダーですか? ちょっと待ってください」
貴音は携帯電話を取り出すと、電話帳を開いたとは思えない速度で耳に当てた。
「・・・あ、もしもし。ご主人ですか?」
『―――・・・』
「今、インデックスと一緒にファーストフード店にいるんですけど、白夜さんがラストオーダーを探している。と」
『―――・・・――――――・・・』
「ほほう。それはまた面白い事ですね。ええ。それでは」
「ン?」
「ご主人が一緒にいるようです。またお互いの位置がわかると言っても、こっちはまだインデックスが食べてるので案内はできませんけど?」
「じゃあ待つか」
「あ、ハイ」
▽
「ミサカはこれをかっぱらってきたの、ってミサカはミサカは戦利品を自慢してみたり」
「いきなり
打ち止めがぐいぐいと指差しているのは、彼女の首にぶら下がったごついゴーグルだ。暗視装置のようにいかにも重たそうな軍用電子機器だ。御坂妹が奪われたとか何とか言っていたのはこれのことかもしれない。
と、いうよりまず見てみて分かったのが、これは以前インデックス捜しの時に上条が使ったゴーグル型デバイスの劣化版だ。御坂妹がいうには電子線を見る機能がついているらしい。そのぐらい上条のゴーグルにも付いていた。
「どうもこれはミサカのために作られたものじゃないから上手く装着できないの、ってミサカはミサカはちょっとしょんぼりしてみる」
「はぁ? ようはゴーグルを固定するバンドの長さを調節すりゃ良いんだろ?」
「?」
「貸してミソ」
上条が言うと、打ち止めは彼の正面に立って、心持ち顎を上げて爪先で立った。これは単に首に下がっているゴーグルを取りやすいようにしただけである。この仕草に何らかの深い意味を感じ取ろうとしてはいけない。
上条は打ち止めの首と言わず、頭からゴーグルを外すと、手元でそれを弄りもう一度打ち止めの頭に戻そうとする。
と。
そこで上条は視線を感じた。
嫌な予感がする。
「どうしたの? ってミサカはミサカは素朴な疑問を投げかけてみる」
打ち止めの無邪気な声にも応えず、上条は己の背後を振り返る。
ゆっくりと、恐る恐る。
「嘘だろ・・・・・・」
そこにいた人物を見て、上条は思わず呻き声をあげた。
そこにいたのは青髪ピアスと土御門元春だった。
彼ら二人は、一度上条の顔を見て、それから打ち止めの顔を見て、さらにもう一度上条の顔を見た。
それから彼らは言う。
「「この子ったらーっ!!」」
んだよその分かりづらいリアクションは!! と上条は叫び返す。すぐ側では、早くも警戒し始めた打ち止めが上条の背中に隠れつつある。
土御門と青髪ピアスはお構いなしだ。
「にゃーっ! いや小萌先生とかならまだ実年齢とか色々あるから分かるけどこれってどうなんだにゃー申し開きはできるのかにゃーっ!!」
「てっ、テメェ!! 節操無しにもほどがあるやろォォがァァ!! カミやんはどこまで全方位死角無しの体勢築いてやがんねん! もう縁側で背中を丸めて膝に猫を乗せとる可愛らしいおばあちゃんとかにも声かけてそうやし!」
だが! と青髪ピアスと土御門は同時に上条の顔を睨みつける。
彼らは最高の笑みを浮かべ、
「「友人として! 成功を祈る!!」」
この見るからに有害発言者な二人を撤去すべく上条は拳を握る。
「お前ら・・・・・・」
幻想殺しという名前は良い。まさにこういうときに振るうべきだと教えてくれる。
「・・・・・・滅込みパンチ!」
上条はそう一言呟いて、現況である二人を地面に埋め込んだ。
「あ、あの、お友達? ってミサカはミサカは確認を取ってみたり」
「子供は見ちゃいけません。コイツらの生き様およびトークはまだ刺激が強すぎる」
首から上を地面にめり込ませた二人を放って、上条は打ち止めの頭にゴーグルを引っかけると、歩き出した。
*
「ううむ、個性的なお知り合いだったかも、ってミサカはミサカは腕を組んで首をひねってみたり。そして未だにやや消化不良な部分があるのはどうしてなんだろう、ってミサカはミサカは放たれた言語を一つ一つ再チェックしてみる」
「もういい時間だ。ついて来いよ。
「え、あ、うん!」
打ち止めが上条について歩いて数分して、上条は人混みの中に見知った白い修道服を見つけた。
「ははっ、あの三人で何が目立つって、あの修道服だろうな」
「?」
上条の言葉に打ち止めが首を傾げた瞬間、人混みの向こうから放物線を描いて少女が上条の首に抱きつく。
「ごっしゅじーん!」
「ははっ。どうした?」
「・・・・・・・・・」
「よォ、白夜。元気そうだな」
「この肌でどこが元気そうに見える」
「俺から見たらオマエのそれは正常だ。よってオマエは元気。悪かったな、この面倒くさい二人の子守してもらって」
「なんですと!?」
「いや、そこまで面倒でもなかった。打ち止めの相手する方が疲れる」
「あっはっはっ。お互い保護者扱いされてると大変だな。ま、なんかあったときは呼べよ。何だったら声に出さなくてもいい。プライドが邪魔するんだったら、地面を殴るだけでも良い。頼むから、友達を頼ってくれよ?」
「それはオマエも言えることだ。上条。毎回毎回一人で全部背負い込んで。オマエもだ榎本」
「私もですか?」
「・・・友達を、頼れよな」
「・・・・・・ああ!」
「・・・・・・ええ!」
「・・・行くぞ、打ち止め」
「インデックス。帰るぞ~」
二組は離れていく。貴音と白夜は同時に来た道を振り返る。
しかしそこにはもう何もなかった。
ただ、漠然とした『人混み』があるだけだった。
いつも通りに。