聖戦の隙間   作:伊鬼名

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 なんだかカラスが主役


白銀編3

 動き出す巨大なカトバブレトスに聖闘士達は素早く自分の戦える相手を調整しようとする。しかし冥闘士は相手を逃がそうとしない。

「お前の相手は俺だ」

 唯一動きのとれるジャミアンが立ちふさがる。

「邪魔だ」

 ぶんっと音をたてて腕が振るわれる。同時にジャミアンは突風を受けて吹き飛んだ。

「曲芸ももう見あきたさ。これで終わりにするさ」

 ジラードも大きく翼をはばたかせる。今まで無数に見えていた円盤が風を受けて二つ、地面に落ちる。

「精神攻撃で無数の円盤が見えるようにし、高速拳で弾いて意外な動きを作り出す。俄か作りとしてはそれなりのものだが、俺には効かないさ」

 翼をたたむジラードはそう言って構える聖闘士達に一歩踏み出した。

「地の星を倒したんだ、天の星でも俺たちだけで倒せる!」

 怖気づく心を読んで仲間を奮い立たせようとするアステリオン。それに応じたのはジラードだった。

「残念ながら、お前達を相手にしていたのは単なる暇つぶしさ。部下がいる身としては部下にも手柄をたてさせないといけないのさ」

 今までに倍する小宇宙がジラードから、そしてディーンから放たれた。

「こいつらは俺が片付けるから、ディーンはこの山を頼むさ」

「分かった」

 周囲をめぐる膨大な小宇宙に動けなくなった白銀聖闘士達へジラードの小宇宙が空へ昇っていく。

「ロックは鳥の王。ならばすべての鳥は我が部下さ」

 ロックの小宇宙がジャミアンの烏たちを捕まえていく。

「バードストライク!」

「何!」

 誰かの声が上がる暇があればこそ、空から烏たちが黒い矢となって聖闘士を襲う。

「馬鹿な。ジャミアンの兄弟烏だぞ。冥闘士の事を聞くはずが」

 カペラが円盤を盾にして攻撃を防ごうとしたが頑強な金属である聖衣を貫いて烏が降って来た。

「これは」

 シヴァが避けると烏はそのまま地面に激突する。嘴は砕け首が異常な方向に向いて死んでいる。

「烏を操って殺すとは、それでも人間か」

「鳥の王に仕えられる事を光栄に思うさ」

 アステリオンの言葉に平然と答えるジラードは全く気にしていないようだ。

「ふんっ」

 三人が動きを取られている間にディーンが光の壁の前に立った。腕に力を込めて壁を殴る。何の技を使っている訳でもないのにアラゴの小宇宙でできた壁が揺らぎ光が弱まっていく。

「させるかっ」

 孔雀の羽根をはばたかせて黒い矢が降り注ぐ中をシヴァがディーンに向かう。

「でえいっ」

 小宇宙が孔雀のオーラとなってシヴァを包み込む。そのまま体当たりでディーンにぶつかっていったシヴァだったが相手の巨体に容易くはじかれた。

「くぅっ」

 ディーンは全くシヴァには構わずに拳をぶつける。シヴァはそれを見て拳の前に立ちふさがった。

「ぐふっ」

 カトバブレトスの巨体から放たれる拳はシヴァの体では防ぎきれない。右拳を防いだだけでシヴァは倒れ、左拳が光を殴る。

「シヴァ、しっかりしろっ」

「アステリオン」

 

 弄ぶようにジラードは烏をぶつけていた。上空にいる烏は数百を超えるのに一度に五、六匹しか降って来ない。しかも突撃した烏達は避けられたらそのまま地面に激突して死んでいるのだ。そんな中強い意志の声を聞いてアステリオンはカペラを見た。

「俺が今から奴に攻撃する。援護を頼む」

「待て、カペラっ」

 皆まで言わせずカペラは小宇宙を高めた。

「ランナウェイ・チャリオット!」

 暴走する馬の幻影とともにカペラは駆け出した。それは襲ってくる鳥たちを弾き飛ばしながらロックのジラードへと向かう。

「ふんっそんな程度の技はこれで防いでやるさ」

 烏がジラードの前でホバリングして守りとなる。

 烏に小宇宙で異常な力を与えるジラードの戦い方に、兄弟鳥の死の叫びを聞いたジャミアンは目を覚ます。

「兄弟達!」

 吹き飛ばされた岩山から出ようともがきながら叫び声をあげるジャミアンに地面から声がかけられた。

「ジャミアン行けっ」

「何?」

 突然強い力で掴まれてジラードの方に投げつけられるジャミアン。そのまま勢いに乗って鳥でできた命の楯を飛び越えジラードに当たる。

「ぐえっ」

「うおっ何するさっ」

 ダメージにはならなかったもののぶつかった事でジラードの意識と小宇宙が烏やカペラからそれる。

「うおおおおぉぉぉぉっ」

 咆哮を上げながら突撃するカペラはそのままジラードに体当たりを命中させる。

 

ガキィィィン

 

 甲高い金属の音とともにロックの冥衣、その巨大な黒い翼が千切れて跳ね飛ばされた。

「おのれぇぇぇ!」

 止まることなく突っ切ったカペラに片翼をもがれた怒りの拳を向けるジラードが技を放つ間もなく、急にカペラは倒れる。

「カペラっ?」

 さっきまでの小宇宙が嘘のように地に伏せるカペラにスパルタンが悲鳴を上げた。ジャミアンを投げたのは体が動かせなくなったスパルタンだった。体が駄目でもスパルタンの得意とする技は精神力によるものが多い。聖衣を、体を溶かされてなお戦おうという意志だけで意識を保っていた。

そんなスパルタンだからこそ分かった。カペラが戦える状態ではなかった事に。アステリオンも気付いたかもしれない。カペラの受けた傷は鳳凰幻魔拳で受けた精神的な傷である。同じように技を受けた狼座の青銅聖闘士は復活したそうだが、これは多少手加減を受けていたためらしい。鳳凰座の青銅聖闘士も同じように地獄を見てきた相手に手加減したのか、それとも相手にしなかったのかかは分らないものの、カペラは最初から敵として受けた分だけ威力は深く根付いていたのだ。小宇宙は心で力を増す。傷ついて完全でない所に無理やり燃やした小宇宙は不完全だった心を一気に消耗させてしまった。

「ちいっ人の翼を壊しておきながら死ぬとは勝手な奴さ」

 腹を立てたようにガシンと音を立ててカペラを蹴るジラード。スパルタンは何もできない自分を呪ったが、次の瞬間頭の中に響いて来た声を感じる。

「まあいいさ。後は烏どもを使って皆殺しにしてやる」

「俺の兄弟をこれ以上殺させはせん」

 力なく立っているジャミアンを見てジラードは失笑した。まるで人形のようにだらりと垂れている手足は体を支えるのがやっとのようだ。

「お前は烏座だったな。なら、お前の魂を使って冥衣を直すとするさ。俺は鳥の王、お前は烏だから丁度いい」

「俺の血の代償は高いぜ」

 ジャミアンが音もなく空に飛ぶ。ジラードは技を使うまでもないと光速の拳撃を放った。

「むうっ?」

 ジャミアンの体はまるで凧のように人間ではない動きを見せてそれを避ける。

「何だこれは」

 飛び上がろうとすると今度は体が重圧に押しつぶされた。

「なんさ」

 ジラードは重圧を振り払うように体を奮って周りを見る。攻撃はスパルタンから放たれていた。それに気付かない内に、ジャミアンは背後からジラードを羽交い締めにする。

「くらえっ烏座のジャミアン最大の奥義を」

 ジャミアンの声と共にその小宇宙がロックの体を包み込む。ジラードは振りほどこうとしたが翼が千切れてバランスが取れないず苦戦していた。

「コロナホワイト!」

 

ボウッ

 

 ジャミアンの小宇宙から生まれた炎がジラードの体を覆っていく。

「こんなものどうともないさ」

 ジラードは大きく羽ばたこうとしたが、急に顔をしかめる。

「調子がおかしい?」

「貴様も冥闘士ならば知っているだろう。ギリシャ神話において、烏は元々アポロンの使いだったということを」

 すでにジャミアンの聖衣は白銀聖衣といえる色を超えて燃え上がり白熱していた。

「おのれっ」

「冥界の闘士は太陽の光を嫌うらしいな。例え天の星だろうと冥闘士である限りこの光はお前を焼く」

 太陽の力を持つのはコロナの聖闘士か黄金聖闘士だけであり実際にこれが太陽の力を持っているのかはジャミアン自身も分からない。それでももう一度離れたら二度とジラードに敵うことはできないとジャミアンは小宇宙を、命を燃やす。

「これで最後だ!」

 ひときわ輝くジャミアンの光はまさしく地上に太陽が現れたように周囲を照らす。

「こんな事で俺がやられるかぁっ」

 いつもの口癖もなくなってジラードは片翼を大きく羽ばたかせてジャミアンを引きはがそうと動く。光は白銀聖衣から冥衣に移り大きく広げられた翼は逆に光源を広げている。

 

 もうどちらの命が尽きるまでが勝負と言える戦いは意外な場所にも効果を及ばしていた。

「うぐぅ」

 今まで何にも構わずに拳を奮い続けていた天暗星カトバブレトスのディーンの動きが初めて止まったのである。ジャミアンの技は確かに冥闘士に影響を与えていた。

「吹き飛べっ」

「動けぇっ」

 ディーンの動きが止まった事をチャンスと見てかシヴァとアステリオンは光の壁からディーンを引き離すべく体当たりを、いや空中に突進するように技を放った。

 

 ズゥン

 

 実際の場所は動くことがなかったがディーンは尻餅をついて倒れる。

「このままっ」

「待て、シヴァ」

 続けて攻撃を繰り返そうとするシヴァをアステリオンが止めた。

「何故止める」

「スパルタンが引き離す」

 今まで動かなかったディーンの巨体が浮いていき徐々にだが運ばれていく。

「ぎりぎりまで小宇宙を燃やして一気に片を付ける」

「よかろう」

 アステリオンの言葉に手を孔雀明王の印相に組んで目を閉じた。

 スパルタンは全精力をかけてカトバブレトスの冥闘士の体の動きを封じ移動させる。ジャミアンの放った光が冥界の力を削るのか多少相手の動きは鈍るものの、冥衣の獣通りの巨体は決して動きを束縛されようとはせず少しでも力を抜けば反撃が来るのは目に見えていた。

 スパルタンはぎりぎりのところで持ちこたえている状態だった。怪物へ変貌した地異星スネイルの宴との戦いで、特に相手に打ち込んだ腕は聖衣を溶かされて生身の腕に重傷を負っている。自分を進化しなくとも魔物だと言い切った宴の撒いた毒液は何もせずとも体を蝕んでいつ意識が消えてもおかしくない。

「我が名となりし偉大なる先祖よ、今しばらくでいい、力を」

 声にならない声で祈りを捧げながら体を起こしディーンを睨む。そんなスパルタンの様子に気づいたのかディーンがスパルタンを見た。

「ゴルゴンアイズ」

 声が放たれたがかすかに聞き取れないか聞き取れたか分からないまま力の波動と共に小宇宙がスパルタンを覆った。

「!」

 声を出す間もなくスパルタンは石に代わっていた。

「スパルタン!?」

「何っ」

 攻撃しようと小宇宙を高めていた二人は突然消えた小宇宙と目の前の変化に驚愕の声を上げた。

 ディーンは体の自由が戻った事を確かめると再び光の壁を破壊しようと歩み寄った。

「何があった?スパルタンは」

「駄目だ。石と化している。奴は睨んだ物を石へと変えるカトバブレトスの冥闘士。その能力を使ったのだろう」

 アステリオンが思わず口にした声にシヴァが応えた。岩陰なので見ることができないが今まで燃え上がっていた小宇宙が欠片も感じられない。

 ゆっくりと体を起こす天暗星カトバブレトスのディーンはジャミアンが放つ光を眩しそうに見た後体の動きを確かめるように手を振る。アステリオン達の事など眼中にないその姿に二人はジャミアンに攻撃仕掛けさせないという意味を含めて放てる最大の技を放つ。

「孔雀明王光拳!」

「ワン・ファントム・ストライク!」

「ヘヴィ・インパルス」

 共に今までの技が無数の攻撃を放つように見える技ならば新しい技はただ一撃に見える技だった。渾身の力を込めた技はディーンに襲い掛かるが、逆に再び巨体から放たれた一撃に吹き飛ばされた。

「ぐふっ」

「うがっ」

 発生した衝撃波に吹き飛ばされて岩壁に激突するアステリオンとシヴァ。その行方を見ようともせずにディーンは黄金の柱へと歩を進める。

 

「行かせてっなるものか」

 アステリオンが動かない体を執念で動かすように起き上がる。かつての苦しみに比べればこれくらいなんともないと自分に言い聞かせた。アステリオンが敗れたのは星矢達ではない。同じ階級の白銀聖闘士である鷲座の魔鈴だ。同時にアステリオンは魔鈴の手で倒されたことでこの場にいる他の白銀聖闘士達はと別の悩みに悩んだ。簡単に言えば今まで大したことがないと思っていた女の聖闘士に動揺を突かれたとはいえあっさりとやられたことで仲間内のランキングが下がった、と言えば分りやすいか。それは魔鈴の実力の過小評価と言うものだというのは確かだが、男としてはここで引き下がっては誇りに関わる。必死に新たな技の開発と基礎能力の底上げをした。それは皮肉にも確かに現在役に立っている。アテナが降臨したことで二度と戦う事はないだろうと何とも言えない気持ちになったアステリオンをさらに口にしにくい気持ちにさせる結果になってしまったが。

「さっさと終わらせてもらう」

 足元に食いつくように縋り付くアステリオンを見もせずに天暗星カトバブレトスのディーンはアゴラの前に立った。その拳を再び光の壁に叩き付ける。ただし今度は自分の技も同時に放って威力は遥かに高い。

「ヘヴィインパルス」

 衝撃波と共に放たれた拳に黄金の光が揺らぐ。小宇宙を展開するアゴラの顔も歪む。

「やらせんっ」

 アステリオンの背に猟犬の小宇宙が浮かぶ。今までとは違う小宇宙の姿にディーンが拳を止めてアステリオンを見た。

「ダークネス・シール!」

 アステリオンが技の名を叫ぶと同時にディーンの動きが止まる。手や足を振り目をしばたたかせる。アステリオンの新技は脳と五感を切断するように誤認させる物だ。サトリの法は受動的テレパシーと言われる事がある。つまり精神的な能力であり、それを段階をふんで能動的テレパシーへ相手を攻撃するテレパシーへと切り替えていった。魔鈴にやられて体が動かせなかったからこそやっていた精神修養が大いに役に立った。

 あくまで誤認であり乙女座の黄金聖闘士シャカの天舞宝輪のように封印、断絶させるわけではない。しかし一瞬の隙を作るのには十分だった。

「ワン・ファントム・ストライクッ」

 本来無数の影と共に相手に叩き込む蹴りがただ一つに集約されて付きこまれる。今までの必殺技を集約した形で、カトバブレトスの冥衣に突き刺さる。ただ一か所でで多重分身するというこの技は超能力が強化されたからこそ出来た技であり、そのことを修行中スパルタンに指摘されて思いついた物だ。全く同じ場所に同じ威力の蹴りが一瞬のずれもなく百回打撃されるという普通ではできない状況を生み出し、

 

バキィッ

 

高い音を立てて冥衣が割れアステリオンの足が初めて相手に打撃を与える。

「邪魔だ」

 カトバブレトスのディーンは自分の冥衣に食い込んだアステリオンの片足を掴むと宙吊りにした。

「ゴルゴンアイズ」

「ダークネスシールッ」

 相手を視線で石に変えるカトバブレトスの魔力が放たれ、アステリオンは凍りつく。それを見るとディーンは興味を失ったようにアステリオンを放り捨てた。

 

「うおおぉぉぉぉぉっ」

 最後の輝きとばかりにジャミアンは小宇宙を燃え上がらせて輝きを増していた。その小宇宙は少しずつ冥闘士の力を奪っていくが、天の星の位は伊達ではないのか全体的な小宇宙の量は拮抗し、ジャミアンが少しでも気を抜けば逆転されてしまうほどだった。

「埒が明かないさ。お前に付き合っているほど暇でもないさね」

 天空星ロックのジラードはまるで翼のように両手を広げて空へとかざす。

「バードストライク」

 

ズズンッ

 

 ジラードに操られた烏が矢となって降り注ぐ。ジャミアンは背中にぴったりと張りついている形なので直接攻撃はしてこないものの周囲にクレーターが出来るほどの勢いで突撃され、爆風が起こり、削られた地面の切片がジャミアンの肌を切り裂く。

「兄弟達をこれ以上操らせてたまるか」

 ジャミアンは小宇宙を燃やして一刻も相手を倒そうとする。輝きは大きさをまし火柱のように光が立った。

「烏ごときが、王に逆らうかっ」

 ジラードの攻撃が勢いを増してすでに周囲は爆撃機の攻撃跡のように穴だらけになっている。無数の烏たちが飛び回って横からの攻撃も加わり、ジャミアンの腹を切り裂いた。

「くそっ。まだまだぁっ」

 自分も後から付いていくと心の中で兄弟烏に詫びながらジャミアンは少しでも相手にダメージを与えられるようにと光をイメージする。

「なんさ、これは」

 そんなジャミアンの声にジラードの驚きの声が聞こえ、ジャミアンは周囲に目をやる。そして同じように驚きの声を上げた。烏たちがジャミアンと同じ光をまといながら周囲に展開している。

「これは一体?」

 ジャミアンの言葉に応えるように、空から一匹の烏がジラードに操られて飛んでくる。しかしその烏はジャミアンが立たせた火柱に触れると突撃するのをやめてまた一匹周囲に回り込むのに加わった。ジャミアンの腹を切り裂いた鳥も、攻撃の後に光が移っていった。

 かつてアポロンが使いにした白い烏の群れさながらに純白の光を湛える兄弟達にジャミアンは一瞬見とれるように気を抜いてしまう。

「離れるさっ」

 一瞬の隙を突かれてジラードはジャミアンの束縛を跳ね飛ばす。

「しまった」

「ふんっアポロンの使いか何かは知らないが、所詮は鳥。大した力はあるまい。まとめて吹き飛ばしてやるさ」

 天空星、ロックのジラードは片方の翼だけでも強風を巻き起こして空へと舞いあがる。目に見えないほど今までにないほどの高さへと飛んだロックはいつ落ちて来るか分からなかった。

「畜生。ならせめて」

 体当たりに来たところを接触して少しでも力を削ろうと考えたジャミアンは小宇宙を集中する。

 

カァー

 

 ロック鳥の姿が見えるか見えないかのその時一斉に烏達が羽ばたき出した。羽ばたきは羽をまき散らし純白の光が舞うように当たりを染める。

「うん?そうかっ!」

 烏達の意志を読み取ってジャミアンは白い羽を使って技を放つ。

「ブラックウィング!」

 突撃してきたロックのジラードは目の前の状況が読み取れなかった。一撃で終わるはずの攻撃は白い何かに包まれることで勢いが大きく減じてしまう。

「おのれっ烏がっ」

 本来ならば操れるはずの烏が我先にと攻撃を仕掛けてくる。ジラードはそのことに腹が立つ。

「民を弄ぶものが王を名乗るな!」

 ジャミアンは技を解き放ちながら吠える。

「ブラッ…ホワイトウィングシャフトッ」

 白い羽がロック鳥を包み込む。そこからジャミアンは蹴りを放たず小宇宙を爆発させて飛び上がる。蹴りではなく、もっと威力の高い、さっきまで相手が使っていた技で突撃した。

「これでどうだぁっ!」

 命などいらないと全身全霊で体当たりしたジャミアンの一撃は天の星であるジラードに突き刺さる。しかし同時にジャミアンにも反動が跳ね返り鏡写しのように吹き飛んだ。

「おのれっおのれぇっ!」

 ジャミアン最大の一撃でも天空星ロックのジラードは死ななかった。羽を振り落とし立ち上がる。逆にジャミアンは体が動かない。地面に仰向けに倒れたままだ。

「貴様の首をはねてその血で冥衣を癒してやるさ」

 ジラードは砕かれた冥衣の腹部から血と破片を落としながらジャミアンに近づく。ジャミアンは動かない。

「お前をやった後は烏共さ。この岩の塔を壊すのに一役買ってもらおう」

 ジャミアンに聞かせているように、独り言のように口に出しながらジャミアンの前に立つ。

「これで終わりだ」

 

カァー

 

 ジラードの手が降り上げられたと同時に烏の声が響き、それまで羽ばたいて空中にいた烏達が一斉にジラードの腹部目がけて殺到する。

「ぐはぁっ」

 白い輝きをまとった一本の黒い槍と化して次々に突き刺さる烏達。仲間が嘴が割れ落ちていくのに構わず次々と飛び込んでいく。

「うぐあぁぁっ!」

 ついに純白の一匹が冥界の鎧を貫く。そのまま傷は広がっていき、天空星ロックのジラードは倒れた。

 

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