DAO《デブアート・オンライン》   作:夜中のタヌキ

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デブの主人公がデブのまま戦ってもいいじゃない

そんなことを考えていたら出来てしまった作品です。


デブ、怒る

一瞬の勝負。それは花火に似ている。

勢いをつけて飛び上がり、花のように咲、そして散る。

この瞬間、人々は驚き、悲しみ、喜び、そして感動する。

そして、その一瞬は

 

どのような勝負の最中でも節目には必ずその姿を現す・・・。

 

 

 

第五十層

 

アルゲードとよばれるその主街区は屋台や酒場、商店などが乱立している東京でいうなら秋葉原、大阪でいうなら日本橋といったような雑多な街である。

 

そんな街中を通行人に迷惑そうに避けられながら歩く、食べ物が大量に詰まった紙袋を何個も抱えながら肉をがっつく男がいた。

 

男は身長185cmを越す巨漢ではあるが決して引き締まった身体をしている訳ではない。むしろハート様体型のデブである。身体の周囲にはSAOの象徴である剣は装備されておらず服も防御力が低そうなものしか身に着けていないため下層から観光にやってきたと言われても納得の出で立ちだ。

 

「ふ~、あっちぃなここは。カキ氷が食いたくなってきた」

 

ちなみに現在夕方のアルゲードの気温は体感で18℃ほどで秋にしては暖かい。

 

「なんかいったか?」

 

いえいえ何にも喋ってませんとも。ですから暑苦しい顔で天を仰ぎ見ないで下さい作者がビビリます。

 

「うん、なんだありゃ?」

 

見れば彼の目的の店の前に小規模だが人だかりができていた。

 

よく見ると最前列には白い布地に赤のラインが混ざった集団、SAO最大手ギルド『血盟騎士団』が居た。基本的に血盟騎士団は六十一層のセルムブルクを本拠地としている攻略組の集団でありこんな最前線から二十層以上も離れている猥雑な街に用があるとは思えない。

 

怪訝な顔をしながら本小説のデブ(主人公)が集団の後ろに紛れて耳を澄ませると中から慌てたような声が聞こえてきた。

 

「アスナ様、こいつら自分さえ良けりゃいい連中ですよ!こんな奴と関わるとろくなことがないんだ!」

 

・・・・・なんか色の白い鶏ガラが叫んでいる。

 

周りでKoBだのアスナだの言っているので扉を覗き込んでいると腹に何かがぶつかりそのぶつかった相手がコケてしまった。

 

「お~い、大丈夫か?」

 

「い、いえ此方こそすみません」

 

なんか顔が赤い。多分騒動の中心にいたであろうアスナとかいう人物だろうと勝手に予想する。

 

このデブ、人の顔を覚えるのはメシをくれた人間だけという筋金入りの駄目人間である。そんな男にとってはSAO内で5指に入るであろう美少女を知っている訳がなかった。

 

とりあえず手を出して起き上がらせていると黒いのに声を掛けられた。

 

「トムじゃないか。珍しいなこんなところで」

 

「キリトか、食材を買うコルがなくて適当に仕入れたものを転売しに来た」

 

彼はキリト。いつ見ても全身真っ黒でなにそれウケ狙ってんのと言いたくなる。

 

「つ~かあれだな、お前ら二人組み見てるとオセロしたくなってきたわ。この店で売ってねぇかな?」

 

「売ってないだろうな、こんなボッタクリ店で娯楽品を売ってると思うか?」

 

「・・・ねぇなぁ」

 

一瞬でも考えた俺を褒めて欲しい。

 

「あ、あのすみませんでした。荷物大丈夫でしたか?」

 

「大丈夫大丈夫。腹にぶつかっただけだから食い物は無事だ。それだけで僥倖」

 

なんて言いながら朗らかに笑うデブ。

 

「まあいいやちょっと急いでるからまた今度でいいか?」

 

「ああ別に問題な「ア、アスナ様。考え直してください」」

 

「いいんです。さっきも言いったけど彼の実力は確かよ。なにか問題があるの?」

 

アスナが止まったことをいいことにまた鶏ガラがさえずり始めた。

 

「お~い、嬢ちゃん嫌がってんだからそれぐらいにしとけよ。ついでに営業妨害だからやるんならもっと離れたところでやれよ」

 

「五月蝿い、貴様には関係ないだろっ!」

 

そういって鶏ガラはトムの持っていた肉を払いのけた。

 

 

宙を舞う食いかけの肉。

 

悲鳴を上げるデブ。

 

現実世界なら飛び散っているであろう脂。

 

肉を避けようとする周りの人々。

 

必死に肉を助けようを手を伸ばすデブ。

 

しかし

 

無常にも彼の肉は地面へと落ちてポリゴンに変化し天に召された。

 

 

 

「やっちまったなぁアイツ」

 

黒の剣士はポツリと呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

side トム

 

 

「五月蝿い、貴様には関係ないだろっ!」

 

その瞬間俺の彼女(肉)は街中を飛んだ。

 

鶏ガラによって宙を舞う彼女(肉)

 

こんがりと狐色に肌を焼いた彼女(肉)

 

水(脂)のしたたるいい身体をした彼女(肉)

 

俺に食べられるために存在したであろう彼女(肉)

 

奈落(地面)に落ちないように必死に手を伸ばす俺

 

最後の瞬間まで一途に俺に食べられると信じて疑わなかった彼女(肉)

 

その彼女(肉)が天に召された。

 

膝から崩れ落ちる俺。

 

彼女が天に召された。

 

彼女が天に召された。

 

カノジョガテンニメサレタ。

 

・・・ダレダヤッタヤツハ。

 

アイツカ・・・・・・・・・・・・・・anotorigaraka

 

 

 

 

 

side out

 

 

 

 

 

 

「さあアスナ様、セルムブルクに戻りましょう。」

 

「おい、アンタ。早く逃げた方がいいぜ」

 

「何をいっているこのビーター風情がっ!てめぇには関係ないん「―――オイ」」

 

その瞬間周りの時間が止まった。

 

底冷えのする声だった。攻略組であるキリトやアスナでさえ震えが来るその声は当事者や野次馬をも巻き込んで周囲を威圧する。

 

皆は声のする方向へ恐る恐る視線を向ける。

 

「―――――オイ、聞いてんのか鶏ガラ?てめぇなにやってくれたか分かってんのか?」

 

皆の視線の先には地面に膝を付いたデブが背中を向けていた。

 

「あ、オワッタ」

 

黒い剣士が呟いたとかいないとか

 

「な、なんだ、何か用かデブ野朗。」

 

その瞬間鶏ガラの前にメッセージが届いた。

 

『トム  から1vs1デュエルを申し込まれました。受諾しますか?』

 

「おいおいおいなんだよこのデブ。ちょっと肉ハジいただけで喧嘩吹っ掛けてきやがったぞ。馬鹿じゃないのか」

 

鳥ガラに釣られて周囲は嘲笑を漏らした。当然だろう喧嘩を吹っ掛けた張本人は何処からどう見ても下層から観光にきたプレイヤーなのだから。

 

「ちょっとキリト君止めてあげて。幾らデュエルといっても彼の装備じゃ死んでしまうわ。」

 

「大丈夫だアスナ、見てれば分かる。」

 

周囲の雑音が大きくなる中トムは立ち上がり相手を見据えた。

 

「・・・で、どうなんだ受けるのか受けないのか?」

 

「そりゃ勿論受けるだろう。―――皆様ご覧下さい。これからKoB所属クラディールの実力をお披露目いたしましょう。」

 

トムの前には『クラディールとの1vs1デュエルが受諾されました』と表示が出た。

 

カウントが始まると両者はお互い10m程度の距離をとって構えた。

 

といってもトムには装備できる武器はなく中腰になって腕をダランと前に垂らしただけである。

 

「てめぇみたいな鈍足のおデブちゃんが俺に勝てると思ってるのか?」

 

苦笑が聞こえた。嘲笑が聞こえた。罵倒が聞こえた。

 

関係ない。

 

ギャラリーは当初の騒動から比べ2倍程度に増殖していた。

 

関係ない。

 

カウントが進む。

 

鶏ガラは嘲笑う蛇のように唇を舐めていた。

 

こんなデブに速度で負けるはずがないとたかを括っているのか。

 

初撃決着モードならこんなやつ敵じゃないと思っているのだろうか。

 

見たところクラディールは両手剣使いであるようだ前傾気味に身体が傾いている所をみると突進系スキルだろうか。

 

そんなことを冷めた目で見つめながら思う―――――が、関係ない。

 

やる事は一つだ。

 

【DUER!!!】

 

 

 

side キリト

 

 

「キエエエエエエエエッ!!」

 

奇声を上げてトムに突っ込んだ。

 

が、まだトムは動かない。

 

アスナが手で目を覆っているが手を握って大丈夫だという意思を伝える。

 

大方の予想通りヤツは両手剣突進系ソードスキル『アバランシュ』を発動した。

 

でもトムには関係ないだろう。

 

奴はトムにやってはならないことをした。

 

両者の距離が5mになった瞬間クラディールは背後の壁に激突して崩れ落ちた。

 

 

 

 

 

side out

 

 

 

 

デュエルが始まった

 

鶏ガラがソードスキルを発動し10mの距離を一直線に突っ込んでくる。

 

鶏ガラの顔には嗜虐的な笑みが浮かんでいた。

 

もう勝てると思っているのだろうか?

 

俺は倒れこむように身体を前に傾けた。

 

自然に右足が一歩前に出る。

 

そのまま俺は5mとなった距離を一気に詰め懐に入る。

 

鶏ガラが驚いた顔をしている。

 

一言言いたかった。

 

「デブが遅いと誰が決めた」

 

 

俺は踏み込みからの勢いそのままに自分の背面を奴に叩き込んだ。

 

鶏ガラが背後の壁に激突するのを見るまでもなく俺はその場を立ち去りながら呟く。

 

「俺の彼女を殺ったんだ。命があるだけありがたく思え。」

 

瞬間、歓声があがった。

 

 

 

 

 




戦闘描写を簡潔に書くとノーモーションからの鉄山靠となります。

あれ、一行で終わってしまった!?

あと最後にカッコいいっぽいこといってますが彼女=肉なので残念極まりないです。
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