DAO《デブアート・オンライン》   作:夜中のタヌキ

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ユッキーさん感想ありがとうございます。

感想来たのでもう一回書いてみました。

ちょっと批判のありそうな回なのでヤバければ削除します。


デブによる食育

 

食とは魂を喰らうこと。すなわち戦である。

いったいどれほどの人間がそれを理解して食事をしているだろうか。

それさえ理解していれば食した魂は俺達に生きる意志を、力を与えてくれる。

食に感謝しろ今を生きる人間達。

 

されば道は開かれる。

 

 

 

「おぃ~す、邪魔するぞ~」

 

「あ、トムのおっちゃんだ~」

「久しぶりおじちゃーん」

「おっちゃんおっちゃん、僕お腹減ったー」

 

トムにわらわらと群がってくる子供達。腹に抱きついたり手をひっぱたり中にはトムによじ登っている子供までいるがデブは朗らかに笑うだけだ。

 

ただしデブの脂肪に隠れた男の勲章にタックルを咬ましてきた悪ガキは足を持って宙吊りにしている。宙吊りにされた子供がデブの手を空いている左足でガシガシと蹴って抵抗しているがデブにはマッサージ程度の刺激しか与えられていなかった。

 

ここは第一層《はじまりの街》。そこでは二年前阿鼻叫喚の大事件の発端となった俺達SAOサバイバーにとって因縁の街である。そんな街ではあるが今現在も推定2千人が此処で生活している。

 

前回の戦闘で皆様もご理解しているだろうが彼はKoB団員に勝るほどの猛者である。そんなデブが夜にこの街を訪れるのには訳がある。この教会の存在だ。

 

はじまりの街の東に位置するこの教会はサーシャという二十歳前後の保母さんの管理するSAOでは珍しい児童保護施設である。ここでデブは週に一度ここに住む子供達に飯を振舞っている。要は先のボッタクリ商店の店主が陰でコソコソ中層プレーヤーをサポートしているのと同じようにこのデブも慈善活動をしている訳だ。

 

ふと思いついたようにデブは右手に持っていた足を持ち上げて子供の顔を自分の顔と同じ高さに持っていく。

 

「子供見ると腹減るよな」

 

「なに子供達の情操教育に悪影響を及ぼすような戯言を抜かしているんですかっ」

 

保母さんは右手に持ったハリセンで片手剣ソードスキル『スラント』をデブの後頭部に放った。

 

微動だにせずデブは話を続ける。

 

「だって保母さんよ~、せっかく第三間食にマイスイートハニー(肉)を食べようとしたら鶏ガラ野朗に横からかっ攫われて空腹で仕方ねぇんだよ」

 

「だからって子供を食べようとしないで下さい。―――ああほらジンをいい加減降ろしてくださいよ。さっきのあなたの発言で固まってしまっているじゃないですか。」

 

デブは右手に持っていた子供を仕方なく放してヨダレを拭いた。

 

サーシャは固まっている子供を介抱しながら心の中で溜息を吐いた。

 

彼女はこのデブの間食が第5回まで存在する事実を知っている。一度たかが1回の間食を抜いたぐらいでしにはしませんよとデブに言ったことがあるのだがこのデブは聞く耳を持たなかった。「そこに俺に食べ物があるから俺は食うんだ」と一蹴された。

 

「まあいいか。いい加減空腹も限界だから厨房借りるぞ、速攻で夜飯作ってくるわ。」

 

そう言って教会の奥にある厨房へと身体にくっついた子供を剥がしながら向かっていった。そのとき未練タラタラに先ほどの子供を振り返っていた。

 

そのたびにビクつく子供を見てほくそえむデブ・・・・・・・・・・最低である。

 

 

 

 

 

「よし、こんなもんかな。おーいガキどもこれ運んどけー」

 

子供達に呼びかけ簡単に厨房を片付け次の食材を取り出すデブ。

 

この厨房、デブには狭すぎるため随時腹がつっかえている。これが現実世界なら調理ができる環境ではないのだがそこは仮想世界、ストレージというアイテム収納機能のお陰で調理道具を取るために屈まずに済むのでこんな状態でも調理ができるのである。

 

子供達に呼びかけつつトムはメインディッシュの調理に取り掛かる。

 

今ごろキリトはあの嬢ちゃんと飯でも食ってるんだろうか。

 

ここに来る最中、俺が夕方訪れるつもりだったボッタクリ商店の店主から愚痴と怨念が篭ったメールが送られてきた。あの忌々しい鶏ガラ野朗が絡んできた経緯を知るためにメールしたが愚痴が返ってくるとは思わなかった。なんでもS級食材をゲットしたからあの嬢ちゃんに調理して貰うそうだ。ボッタクリ店主は単純にS級食材が食えないことへの愚痴だがこれがクラインあたりなら食材を食えないことより女と同衾することへの愚痴になっているだろう。男の嫉妬ほど醜いものはない。

 

とりあえず商売人のよしみで今度良い食材でも手に入ったら酒と一緒に持っていってやろうか。

 

そんなことを考えなら調理が終わり俺は席についた。

 

「よ~し、それじゃぁ手を合わせて――――――――」

 

「「「いただきます」」」

 

今時珍しく食事の挨拶を行って食事を始める子供達一同。昔は食事が出たら挨拶もなしにいきなり飯をがっついていた子供たちだがここ数ヶ月で「いただきます」を言う習慣がついた。

 

理由はデブが『教育』を施したからである。

 

このデブ、食に関してはうるさい方で食に対して礼儀がなってない奴を見ると暴走状態へと移行する悪癖を持っている。

 

確かに食への礼儀を躾けるのは良い・・・が如何せん躾けがヤリ過ぎであり一度つまみ喰いをした子供を黒鉄宮というSAOの監獄に監禁し絶食の後デブ本人は子供の入った檻の前で実に旨そうに飯を食らうという罰を与えた。

 

一応現実世界では輸液によって身体機能を維持しているだろうこともあってこの仮想世界では断食によって死ぬことはない。そのこともあってデブはこの教育方法を実践した。

 

最終的に子供は「ワタシハ先ノ蛮行ヲ悔イ改メ母ナル大地ノ恵ニ感謝シ全身全霊ヲモッテ食事ニトリカカルコトヲココニ宣言シマス。」と魂の抜けた表情で言うのだから虐待と言っても差し支えないようにも思う。

 

サーシャは当然「やり過ぎですっ!」と怒っていたがデブはこのことについて悔い改めたことは一度もない。

 

デブにとっての食事という魂を賭けた神聖な戦を汚したのだから。

 

そのことが子供達の間に広まり現在の状況に至っているのである。

 

といっても感謝さえしていれば食べ方についてはこのデブは何も言わない。

 

よって――――

 

「このスープおいしいね」

 

「ホントだおいしーね」

 

「あーっ、お兄ちゃんジンが僕のお肉とったー!」

 

「かわりにピーマンやったろー!」

 

「コラ、ジンー!、ああほらカイン俺の分あげるからゆっくり食べな」

 

「ギン、お塩とって!」

 

「はいよ、落とすなよ」

 

「おじさん、おかわりちょうだい」

 

「おう、まだまだおかわりあるからタンと食え」

 

――――このような騒がしい食卓になる。

 

デブがくるとこの教会の夕食は大体いつもこのように過ぎ去っていく。

 

それを見ているサーシャは言葉に出すとトムが調子に乗るので言わないが、こんなに笑顔に溢れた食卓にしているデブに毎回感謝していた。

 

そんなことも露知らず飯を食い続けるデブが一人。コイツはかれこれ1時間は食べ続けている。

 

流石に食べすぎだと重いサーシャは注意を諭すことにした。

 

「トムさん、まだ食べるんですか?」

 

「?、これはまだ前菜だが?」

 

「食べ過ぎです。いい加減節制というものを覚えてください。」

 

「だってどんだけ食っても0カロリーだし。」

 

「 節 制 し て 下 さ い 」

 

本日二度目のハリセンによるソードスキルが炸裂した。

 




このデブの行った教育は真っ黒剣士さんにも行ったことがあるため前回彼は「やっちまったなぁ」とのたまいました。ちなみに彼の場合は子供ではないので一週間です。

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