DAO《デブアート・オンライン》   作:夜中のタヌキ

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カイナさん、葵さん、ゲーム厨さん、感想ありがとうございます。

これで7コメントを頂いたことになり感謝感激です。

この期待に答えられるかどうかがプロとアマチュアの違いなんですね先生っ!

胃、胃が・・・


うん、よっしでは5話目始まります。


デブ、総会を行う

人に歴史あり、デブに肉あり

 

何事にも人間には歴史がありデブには肉が必要であるという格言である。

 

その歴史に、肉に、良し悪しに関わらない。

 

それでも今日も人は歴史を歩み、デブは肉を食す。

 

 

 

 

 

その日の夜、ステディー(焼きトウモロコシ)を身体の芯までしゃぶり尽くしたデブは32層のとある場所にきていた。

 

「それでは第21回定例総会を始める、一同・・・整列っ!礼っ!」

 

号令と共にデブに向かって敬礼をする集団。。一連の動作から統制の取れた集団に見えるがよく見ると服装に統一性はない。コック、商売人、軍人、裸族、執事、鍛冶師、中にはボロボロのフードを被った人間や落ち武者、山賊などなど。これから何かイベントが始まるのかとゲーマーからすれば心をくすぐられるような光景にも見えなくはない。

 

そんな彼らは元オレンジギルドの面々。つまりデブのパシリを行っている面々である。

 

彼らの周囲は松明で照らされておりこれから行われることへの緊張がうかがい知ることができる。目を凝らせば身体が震えている者が視認できる。

 

そんな集団の敬礼を一身に受けながらも右手に持ったホールケーキに被りつくデブ。30人ほどの集団の前でもこの肥満体は通常運転である。そしてホールケーキを10秒で胃の中へ飲み込んだことも通常運転である。

 

デブはおもむろに前へと一歩踏み出すと総会を進め始めた。

 

「あ~、それじゃあ報告宜しく~、チュポンッ」

 

五指に付いた生クリームを舐めながら報告を諭す。

 

「料理部門、55層に肉汁飯店11支部を設立しましたっ。客足は上場ですっ」

「商店部門、中層プレイヤーの増加に伴い売り上げが先月から5%増ですっ」

「調達部門、ボスの食欲に食料調達が追いつきませんっ人員増加を願いますっ」

「会計部門、ボスの食費が今月は50万コルを超えましたっ」

 

次々と直立不動でデブに報告していく。調達部門が涙目になりながら訴えるように報告していたが周りは同情の視線を送ったりはしない。彼らを見れば自分たちの首を絞めかねないのだ。それほどまでにデブの食欲は旺盛で彼らの中で調達部門イコール懲罰部門と囁かれている所以でもある。

 

程なく部門ごとの報告が指も舐め終わったデブが本当に重い腰を上げた。

 

「皆、ご苦労。今月は来月12月のイベントが予想され売り上げが伸び悩むことが予想されたが良く頑張ったように思う。そこで今回の総会では皆の労いを兼ねて宴会を設けることにした。」

 

すると料理部門の面々がストレージから次々と料理や酒を取り出し集団の真ん中に配膳していく。

 

「今回は特別に全て俺が調理を担当した。意味は分かるな。」

 

その言葉を聞いて男達は神妙に頷く。解説は必要ないかも知れないが残飯出現が彼らの死に直結する。ただし、彼らがそんなことをするはずもない。彼らはデブの食育を受けている。つまりデブの食に対する厳しさと料理の腕を知っているのだから残す筈もない。

 

「ではまずは――――――――――手を合わせろっ!」

 

バチンと両手が合わされる音が其処彼処から響いた。

 

「・・・・・・・いただきます」

 

「「「いただきます」」」

 

デブも含め全員が目を閉じ合掌をする光景―――――――――――――――異様だ。

 

「・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・ゴクッ」

 

どこからか唾を飲み込む音が聞こえた。それはデブに対する畏怖か、はたまたデブの料理に対する歓喜か

 

「「「・・・・・・・・」」

 

しばしの沈黙の後

 

「好きなだけ食えやあああああああああっ!」

 

「「「ワアアアアアアアアアアアアアアアッ!」」」

 

デブの号令と共に集団から雄たけびが上げられる。そして圏外村は男達の熱気に包まれた。

 

 

 

 

「・・・・凄いな」

 

「・・・・ああ、というかヒドイな」

 

ここに今回の総会に招かれ、そして放置されている客人が二人いる。名をビッタクリ商店の店主ことエギルと野武士ことクラインと言う。なぜ彼らが場違いにもこの総会に参加しているのかというとエギルは売品等の転売+食材調達相手として、クラインは調達部門に参加した礼として呼ばれているからである。

 

デブは食に対してはガメついがこれでも礼は弁えている。曰く「飯の恩は三倍の飯で返す」だそうだ。

 

ただし客人そっちのけで飯をガッつくデブの行動は決して客人に対して行っていい対応ではない。

 

そんな唖然と集団を見つめている二人に一人の山賊風の男が近寄ってきた。

 

「ほったらかしてすんませんエギルのアニキ、クラインのアニキ。あ、これ黒エール(酒)と今日の宴会の目玉の赤ドラゴンの丸焼きっス。切り分けてきたんで遠慮せず食って下さいっス」

 

そういってとジョッキに入った酒とこんがり焼けたドラゴンの片腕を二人の前に置く山賊。こいつの名はリッキー。総会の始めにムサ苦しい集団に向かって号令をかけていたデブの側近である。エギル、クライン両名はよくデブの食材関係で迷惑を蒙っており今のようにリッキーが二人によく謝りに会いに行くため顔見知りになっている。

 

「おう、リッキーかスマンな」

 

そう言ってとりあえずジョッキを受け取るエギルとクラインにジョッキを渡そうとしているリッキーに野武士がが質問を投げかけた。

 

「ところで、アレいいのか?」

 

二人がクラインの視線の方を向くと騒乱の中心でデブが落ち武者を放り投げ木と熱烈なディープキスをさせていた。

 

「ああ、アレはあらかたボスが取ろうとした料理に落ち武者が手を出そうとしたからじゃないっスかね。いつものことっスよ。」

 

言いつつドラゴンを食いやすいように解体しているリッキー。

 

「今度は十人ぐらいが空高く舞ってるぞ!?」

 

「アレもいつものことだ」

 

「おいっ、今度はトムに齧られてる奴がいるぞ!?」

 

「たぶん新入りがまだ料理があるのに「お、俺、腹いっぱい」とか言っちまったんじゃないいんスかね。」

 

「おいいっ!さっきの奴がソードスキル喰らって地面に頭から突き刺さってんぞぉ!?」

 

俗に言う『スケキヨ状態』である。

 

「うん?・・・・ああ、クラインはコイツらの総会参加は初めてだったか。知らないだろうがこんなのはいつものことだぞ。そのうち慣れる」

 

そう言いつつ達観した表情でエールを傾ける禿頭の黒人。彼もクラインと同じように初参加の時にツッコミまっくった一人であったが今では落ち着いて飯を食えるようになっている。

 

「飯残せばああなるのかアイツらは・・・・・不憫な」

 

「いや当然っスよ。俺達が食うために殺した命を残すなんて言語道断っス。・・・・・・・・・・・あのガキには再教育が必要っスねぇ」

 

暗い笑みを浮かべるリッキー。

 

「エギル、リッキーが恐いっ!」

 

「まあこいつもトムに丹念に食育された人間の一人ってことだな」

 

そこに一人の中学生程度の少年が配膳を行いに来た。

 

「・・・・これ、ボスからです。どうぞ」

 

「おお、ありがと――――――――ってオレンジッ!?」

 

クラインが腰の刀に手を伸ばし迎撃の態勢をとるがリッキーが慌てて少年を庇った。

 

「ああ、身構えないで下さいっス!―――ほらケイン、お二人に挨拶するっス。」

 

「・・・・ケインです。よろしく」

 

「エギルだ。宜しくケイン。」

 

「――――――――ク、クラインだ。」

 

今だに警戒するクラインを見てもこのケインと呼ばれた少年は微動だにしなかった。一応攻略組でもあるクラインの威圧を見せつけられれば中層程度のプレイヤーであれば普通は怯む。だがこの少年はそんなクラインの行動を冷めた目で見ていた。エギルはその少年の態度に少し疑問に思った。そしてこの少年を見ていると何か違和感を感じとったためそれを口に出そうとしたが前にリッキーがその場を取り繕ったため質問を引っ込めることにした。

 

「よ、よし。じゃあケイン、ここはもういいからボスの横で飯でも食ってるっス」

 

「・・・・わかりました」

 

ケインはそう言うとボスの方へとゆっくりと向かっていった。向かった先で少年はボスの横に腰を下ろすとトムに乱暴な手付きで頭を撫でられている。エギルは若干少年が迷惑そうに身を捩っているのに少し笑みを浮かべているとクラインが空気を読まずに話をぶり返そうとしていた。

 

「お、おい!いいのかよ。ここにオレンジが居て!?」

 

「大丈夫っスよ。新入りではあるんですがアイツも立派なオレラの一員っス」

 

不満そうな声を上げる野武士に胸を張ってそう言いきるリッキー。エギルは先ほど抱いた疑問を自信満々に答えていたリッキーに投げかけることにする。

 

「リッキー。さっきのあのケインとかいう少年は元攻略組か何かか?クラインの威嚇を見ても微動だにしてなかったぞ。それにあの眼。あの眼は自分が斬られたがっているように見えたんだが」

 

それを聞いたリッキーは溜息を吐いた。

 

「やっぱりエギルのアニキにもそう見えるっスか?まあアイツのオレンジには事情があるんスよ。」

 

「事情も何もオレンジってことは犯罪を犯したってことだろうが。それにオレンジがイヤなら今は信用回復クエストもあるんだしそれ受けりゃいいじゃねぇか。」

 

「出来れば今すぐにでもやってるっスッ!」

 

そう言ってりリッキーはジョッキを地面に叩きつけ、そのリッキーにしては珍しい行動に野武士がビビりエギルも若干目を見開いた。そして叩き付けた張本人は自分の行動に気が付くと気を落ち着けるようにジョッキを煽って息をついた。

 

「・・・ふぅ、スミマセンっス。ちょっと熱くなっちまいました」

 

「い、いや。こっちもスマン。で、リッキー。良ければ話を聞かせてくれねぇか?」

 

「ああ、いいっスよ。でもまずは信用回復クエストについて話すっス。まだアニキ達も詳しく知らないみたいっスから」

 

信用回復クエスト。MMORPGによくある犯罪者救済のクエストである。SAOでは各階層によって信用回復クエストの内容は異なるが大体が圏外村や林道などにいるNPCからの依頼を達成しコレを繰り返すことでグリーンに戻ることができる。

 

SAOプレイヤーでこのクエストを行うのは中層や下層などのプレイヤーがソードスキルの発動によるフレンドリーファイヤによりオレンジになった人間が大多数を占めるため信用回復クエストを受けること自体に問題はない。

 

ただし問題なのはオレンジになるような窃盗、障害、殺人といった行動を繰り返した場合である。この場合そのプレイヤーは信用回復クエストに戻ることができなくなる。好き好んでオレンジになる人間はあまりいないためどれ程繰り返せばグリーン帰りができなくなるかは不明でネズミなどの情報屋でもその情報を取り扱ってはいない。ただグリーン帰りができなくなったプレイヤーのHPゲージがモンスターと同様に青く表示される。

 

「俺の違和感はそれか。ああ、たしかに今思い出せばケインのHPゲージは青色だったな」

 

上を向きながら思い出すように話す黒人。

 

「つーことは何か?あのケインってガキはグリーンに戻れないってのか?」

 

「そういうことっス。あとアイツの名誉のために言っておくとレッドプレイヤーのように自分の快楽で殺人や犯罪を犯したわけじゃないんっスよ。ケインは何度も襲われて逃げて戦って殺してその繰り返しでグリーンに戻れなくなったんっス。」

 

ケインは10層あたりから攻略組として研鑽を重ねたプレイヤーだった。実力としては攻略組の中でも下方に位置していたためあまり実力的に目立たなかったのだが一部では有名な存在だった。オレンジのパーティーたちである。

 

ケインは攻略組では珍しい年少のソロプレイヤーであり攻略組でレベルの高いほうではなかったためよく迷宮区の人気のない場所でアイテムを取られるといったことがあった。それでもケインが攻略組をやめなかったのは早く母に会いたい一身だったとのちに彼は語っていた。

 

20層を過ぎたあたりでグリーンを擁するオレンジギルドの面々にケインは襲われた。そのころになるとケインのレベルは攻略組の中堅ぐらいに位置していたため追い返してやる意味でグリーンをも傷つけオレンジになった。信用回復クエストを受ければ大丈夫といった軽い気持ちだったのだろう。しかしクエスト中にPPK(プレイヤーキラーキラー)の集団に襲われ彼らを殺してしまった。

 

それによりPPKにケインは目を付けられるようになり信用回復クエストを受ける暇もないぐらいに襲われ続けた。年端も行かない少年が人間の負の感情に晒されれば精神に以上を来たすのも時間の問題だった。

 

「で、結果が今の状態っス。あれでもよくなった方だと俺は思うっス。ボスがケインに会ったころは人即斬って感じだったらしいっスから。」

 

「酷いな・・・」

 

二の句が告げずにエギルは拳を握り締めた。

 

「まあボスはそんな事情なんか知ったこっちゃなかった訳っスけど。ケイン、ボスの飯時に襲ったらしいっス。」

 

「それはやらかしたなぁ」

 

ケインがチリのように吹っ飛ぶ様子が目に浮かぶ。

 

「それでボスを襲撃している最中にケインの腹が鳴ったらしいっス。まあそれが切っ掛けでボスはケインに飯を与えることにしてを仲間に加えたって訳っス。」

 

結局は餌付けである。まったくもって酷すぎるデブだ。

 

「最初にケインをボスが連れてきた時は正直俺らも驚いたっス。でもまあ知っての通り俺とか他の連中は自分から犯罪を犯してた訳っスから表示はグリーンといってもケインより罪人だって意識はあるんで事情を聞いたら受け入れられたんスけどね。」

 

そう言い終わるとリッキーはジョッキを煽った。それは何か思い出したものを飲み込むように。後悔を飲み込むように。エギルたちにはリッキーのその行為が自分の罪を飲み込んでいるように思えた。

 

それに習うようにエギルやクライン、そして周りでこの話を聞いていた集団も一緒に酒を煽った。

 

飲み終えた目線の先ではデブの肩の上でパンをゆっくりと食べているケインがいた。その表情は無表情に見えるが心なしかエギルたちに見せたものとは違う嬉しそうな表情に見えた。

 

「俺、ケインに謝ってくるわ。」

 

そう言ってジョッキをその場に置いてクラインは立ち上がった。そのまま野武士はケインへと向かって「ケイイイイイイイイイイインッ!」と叫びながら駆けて行った。

 

「うるせぇ、肉がマズくなるっ!」

 

その一言により首をデブに握りつぶされるクライン。そしてそのまま持ち上げられて頭を丸齧りにされる。

 

「ウォェッ、・・・マズイ――――――――いるか?」

 

左肩の少年に聞くと無表情でブンブンと首を横に振られた。

 

「わかった、じゃあイ~ラネッ!」

 

クラインの身体を片手で手早く持ち変えて緑色に光らせるとデブはソードスキルによって野武士を投擲した。

 

 

 

翌日、ウッドクラフトのお兄さんが森で目にしたのは地面から生えた二本のスケキヨだったそうな。

 

 

 




今回、二人のオリキャラが登場しました。ショタと優男です。

ただし作者は男なのでホ~モは勘弁してください

この小説、肉との恋愛は考えています。

そして相変わらずシリアス(×シリアル)イーターなデブ

作者はシリアスに耐え切れなくなると必ずといっていいほどデブをイジります。
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