さて、今回恋愛テイストを少し混ぜてみました。
少しだけです、期待しないで
それでは第8話始まります。
※7/15修正
いい女のってなんだろう。
尽くす女、確かにいい女だろう。
器量の良い女、これもまたいい女だ。
でもそれ以上にいい女ってのはよく笑う女であると思う。
そこにどんな感情があろうとも相手のためを想い笑って背中を押して後押しする。
人によっては自己犠牲の女、弱い女と蔑まれるかもしれない。
自分の感情を殺した結果、意中の相手と結ばれないかもしれない。
しかし、それでも全てを飲み込み笑っていられる女は強くて美しい。
ミシミシッ
入り口からそんな音が聞こえてきそうな圧迫感と共に二人と1匹のお茶会に一人の男が入ってきた。
「おぅふ、ふんっ、ふんっ」
いや、訂正。お腹が引っかかって入って来れないみたいだ。
「ふんん゛っ―――――――――――――――――――――入り口狭すぎねぇ?」
「アンタが大きすぎるのよ。いい加減痩せたらどうなの?」
「そうですよ。トムさんらしいといえばらしいですけど限度があります。」
「きゅくー」
私に1人と1匹が同調する。
「まあそういいなさん、な゛っとぉ」
そんな力んだ声と共にようやく私の店に入って来た肉達磨。心なしか入り口が広がっているのは私の気のせいだと思いたい。
「言いたくもなるわよまったく。これで入り口に引っかかるの何回目だと思ってるのよ?」
「ん~、5回くらいか?」
二重顎に手をやり考える素振りをした後にそんなことをのたまうデブ。
「私が見ただけで軽く20回は超えてますよ」
「アタシは初来店からずっとこの光景を見てるわ」
私は目の前の少女と同時に溜息を吐く。
これが私が店主を勤める《リズベット武具店》の常連、トムとの日常風景である。
「どうしたのよ珍しい。何時もなら開店前に仕入れに来るのに。」
リズベットは本当に珍しがっていた。いつもこのデブ何時もなら早朝に近所迷惑もかくやと言った感じに扉を大音量で叩き(デブにそのつもりはない)彼女の迷惑も考えず大量に武器を仕入れに来るのに今日はもう昼を跨いでいる。
デブはその疑問にこめかみを太い人差し指で掻きつつ残念そうに答えた。
「ん?ああ、ちょいと狩りで槍を投げすぎてなぁ、素早いのなんの。1番の獲物は結局逃がしちまって散々よ。」
この1番の獲物というのは昨夜戦った包丁野朗のことである。
あの戦闘後、相手に逃げられた怒りの矛先を発散するため昨夜から狩りに出かけていた。基本的にトムの狩り方というのは投槍による狙撃によって行われる。この世界でのモンスタードロップは倒した瞬間にストレージに自動収納されるので極論だとその場から動かずとも手に入れることができる。極大の筋力値によるSAOで最長の投擲距離とデブの飯への執念が成せたカンストしている索敵スキルが合わさればこっちの方が効率がいいのだ。
デブはこの方法が最も生かされる平原フィールドのある各階層を手持ちの投擲装備がなくなるまで渡り歩き今朝まで狩りを行っていた。昼にリズベット武具店に辿り着いたのはトムが狩り取った食材を食い尽くすまでにかかった時間である。
「で、まあ本来こんな日は寝て過ごす寝て過ごすのが最良なんだが、店の商品に手を出したことが商会の商会の奴らにバレてついに泣かれちまって。だからまあ今日は無理でも明日分の仕入れを行おうと思ってきたんだが」
商店部門の人間が商会専用の共有ストレージを見たら消耗品であり回復アイテムの次に売れ行き商品の投擲系の武器が全てなくなっていたらしい。トムの食欲に狩りが追いつかない現状を商売によって支えてくれていた商店部門の大打撃に狩りを担う調達部門の面々は泣くしかなかった。
「そりゃ泣くわ。あの人たちアンタのためにどんだけ頑張ってると思ってるのよ」
「……たぶん『ついに食われる』とでも思ったんだと思います」
「食わねえよ、あいつ等不味かったし」
「不味い!?あんたあいつ等を食べたことがあんの!?」
「いや、齧っただけだ」
「「齧った!?」」
食育という名の拷問としてハムスターがヒマワリの種をカリカリと食べるように指の先から頭に向かって齧っていったのである。前に説明済みだがこの教育はデブの商会では見慣れた光景で、この食われながら徐々にデブが這い上がってくる様は過去に最前線の主街区で執行され攻略組を震え上がらせた。
確実にR-18指定の光景を見た攻略組の面々は「吐くっ、もう無理」「コレが地獄か」「レッドなんてメじゃない」等々と好き勝手言っていたらしい。
「もういい、アンタと話してると疲れるわ。…それで?ご注文は投擲系の武器でいいのね。」
「ああ、頼む。それで量はいつもの2倍お願いできるか。」
「分かったわ。ちょっと見繕ってくるからお茶でも飲んで少し待ってて。」
そう言ってリズベットは店の奥へと引っ込んだ。
「さってと、それじゃ…」
デブは先ほどまで店主が座っていた椅子にどっかりと腰掛けると勧められた茶を遠慮なく飲みだした。次いでストレージから袋を2つ取り出す。
その袋に反応したのか先ほどまでシリカの頭の上で丸まっていたフェザーリドラのピナが此方にパタパタと近寄ってくる。
「うん?食うか?」
「きゅいっ」
ピナは嬉しそうにひと鳴きするとデブの手の平に乗ったドライフルーツを首を伸ばして食べ始めた。その仕草に微笑んでから何気なくシリカに尋ねてみる。
「そういやあいつ等から連絡きたか?」
「はい、ついさっきこのお店に結婚の報告をしに来てましたよ。」
そんなやり取りをしつつ2つ目のクッキーの入った袋に手を突っ込むデブ。実に旨そうな食いっぷりである。
「あ、私もいいですか?」
「いいけど先にシリカはこっちな」
持っていたクッキーを口に放り投げた後、もう一度右腕を軽く振りデブはストレージから新たな袋を取り出すときょとんとしているシリカの前にドサリと置く。
「?、これはなんですか?」
「ん?、ああこれはケインの差し入れだ。前に世話になったから渡してくれってよ。」
「ケイン君がですか?」
テンションの上がるシリカ。デブはケインとシリカがピナ復活の一件から仲良くなっている。詳しくは知らないがなんでも35層の迷いの森で見かけて助けたらしい。常にカーソルがオレンジなケインが面識もないグリーンに近づくのは珍しい行為ではある。その一件を期にケインと交流を得たシリカはその後も度々パーティを組んだりしており見た限りでは惚れているのだろうと思われる。
トム自身はある依頼を受けてある女を捜している時に今現在顔を嬉しそうに緩ませている少女に出会っており、それ以来ケインを通じて交流があった。簡単にいうと橋渡しでオレンジのため主街区に入れないシリカのためこうして連絡を伝えたりしていた。
「ケイン君、そういえば今何処にいるんですか?…メッセージを送っても全然返信が返ってきませんし。」
シリカ少し心配そうに呟いた。若干怒気を孕んでいるのはご愛嬌だ。
「(ったくあのチビ介は…)今はこの層の迷宮区にいるな。あそこは過疎ってるからアイツには居心地良さそうだし。」
ちなみにケインには居場所は黙っておいてくれと頼まれていたが無視した。女の笑顔の方が飯が旨くなるから当然だ。
「そうなんですか!?よぉし――――――ピナ、行こうっ。トムさんドライフルーツありがとうございましたっ!」
「きゅいっ!」
言うが速いかシリカは迷宮区へと向かっていった。それをデブは微笑み茶を飲みながら見送る。
「青春だねぇ~」
「なにがよ? ほら、御所望の武器を持ってきたわっよっ」
ストレージにティーセットを仕舞い込み机の上に武器の詰まった袋をドスンと乗せる店主。
「ありがとさん。いや~青春っていいなって話だ」
「…確かにいいわねぇ。シリカやあいつら見てると微笑ましいわ」
「…お前さんの青春はいいのか?」
誰とは言わずリズベットにそう尋ねてみた。
「いいの。アスナ幸せそうだし。それに第2ラウンドは私があの黒いのに先制攻撃するんだから。」
そう言ってリズベットは晴れやかな笑顔を浮かべて笑っていた。
その日の夜、話題の夫婦を巻き込だ大宴会で結婚祝いと言ってキリトの頭を叩いたデブは悪くないと思う。
デブが恋愛すると思ったかっ!
―――――――――――――――――――――――――――残念、やるのはケインでした。
ケインはこの時点でシリカに対して若干意識し始めたという程度の心情でしかありません。まあ暗い過去を持っているのでそれを払拭するには時間がかかるかと。
それとキリトさんは末永く爆発すればいいと思う…
そんな私の独断で爆発の替わりに筋力MAXのデブの拳をプレゼントです。
まあこんなことしても彼のジゴロ度数は減少どころが上昇しっぱなしなんですが……
あと、今回初めのいい女電々については2次元にしか彼女を見出せないモテない男の戯言だと聞き流してくれればと思います。
怖いもの見たさで女性の方はこの戯言にどう評価するのか気になります。
………評価されても凹むしかないかもですけど