二人のぼっちと主人公(笑)と。   作:あなからー

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一人一人は小さいけれど ひとつになればごらん無敵だ君も(君も)君も僕らのように 初投稿です

前回を見てくれた方々、有難うございます。私がこの作品をつくるキッカケともなった前駆者の方にも見ていただけたようで、光栄です。
これからも(ネタ被りや設定被りがしないように)頑張りますので、よろしくお願いします。



夜叉の構えから左手は回さない

 放課後、ボーダー本部に行こうとした時にはた、と思い出す。

 

 

 

「ヒッキー!奉仕部逆じゃん!ドコ行くんだし!」

 

「んお? ああ」

 

 そうか。そういえばコイツには説明していなかった。

 

「説明してなかったな。俺ちょっと事情があって週3くらいでしか参加出来ないんだわ。雪ノ下とか平塚先生には言ってある」

 

「あ、そうなの?う~ん……あ!じゃあさ、ヒッキーのLINE教えてよ!」

 

 少しは深く聞いてくるかと思ったがそんなことはなく、アッサリと承諾してくれた。まあ大規模侵攻からこっち、色々と大変な奴は一定数存在する。そこら辺の事情を受け取ってくれたのか、もしくはただ雪ノ下が了承してるなら大丈夫だろう、の精神なのか。まあそれはどちらでも構わない。

 

「ん?ああ、連絡用か。ほれ」

 

 とスマートフォンを由比ヶ浜に投げた。軽く投げたんだが、慌ててキャッチする由比ヶ浜を見ると悪手だったかと少しだけ後悔した。

 

「ちょ、ちょっと、危ないじゃん!てかこんなに簡単に渡して大丈夫なの?」

 

「ああ、別に見られて困るものなんて入って………………」

 

 る。バッチリ入ってるじゃん何やってんの俺。ボーダーの連絡先がかなり入っているではないか。俺の職種がバレる!

 

「たわ。すまん由比ヶ浜、返せ」

 

「こっちに投げた癖にそんな言い方なくない!?」

 

 そう言いながらもちゃんと渡してくれる由比ヶ浜。いい子やでぇ。

 つか、パスワードかけてたからどっちにしろ由比ヶ浜に渡しても無理じゃん。こんなに俺阿呆だったんだな…由比ヶ浜のせいにしておこう。

 LINEのQRコードを表示させ、彼女に見せる。

 

「ん」

 

「おっけ、ちょっと待ってて!」

 

 そうして由比ヶ浜もスマートフォンを操作し始め……ってコイツ指動く速度凄いな。音ゲーでもやってるのかと思うくらいそのスピードは尋常ではなかった。俺なんてこれに慣れるのにすげえ時間かかったんだが。もしかしてそれは俺が機械音痴なだけなのだろうか? もしくは今時のJKは皆これくらい速いのが普通なのだろうか。

 

「登録したよ!」

 

 と元気な声が聞こえ我に返る。早速友達登録欄を表示し……

 

 

 

 

 

☆★ゆい★☆

 

 

 

 

 

 

拒否した。

 

「待ってよヒッキー! 何で!?」

 

「すまんな、だがちょっとスパムメールは受け取りたくないなって」

 

「酷い!?」

 

たかが連絡先の登録先の交換でここまで疲れるもんなのか……全く。

 

「ほら由比ヶ浜、早くしろ。QRコード表示しといてやるから」

 

「なんであたしが悪い事になってるの!?マジありえないし……はい、もう消さないでね!」

 

「わーったよ!ったく…………」

 

 とは言っても、俺がいつ消すか分からない。忘れた頃に消してしまう可能性もあるからな、名前を変えておこう。

 

 

 

ガハマさん

 

 

 

 

「その略し方はなくない!?」

 

「ほな、また」

 

「無視!?」

 

 

 

   *

 

 

 時は変わってまたも平日。全日本もう帰りたい協会に入りたいのだが学業をサボると大学進学にモロに影響が出てしまうので休めないのだ。

 

 で、体育の時間。今日の相手も壁くんだ。よろしくお願いします。コイツとは長い付き合いになるが、やはり上手いと思ってしまう。俺が打った打球を素直に返してきて、ラリーが長く続くように合わせてくれる。俺の打球が悪くても食らいついてきてくれる最高の相棒だ。なあ、友達にならないか?

 

 とか思いながら壁打ちを続ける。前にスライスがどうとか言ってるリア充グループもいたけど壁が相手なら返してくるからな、それの練習には持って来いだ。

 

 小休憩していると、後ろから肩を叩く感触があった。振り返ろうと首を動かすと、そいつの指が俺の頬に刺さる。痛くはないがこんなつまらないお遊びをしてくれやがって、文句の1つでも……

 

「えへへ、引っかかった!」

 

 言いません。いやマジ何この子。なぜ男なんだ(血涙)。いや、もしかしたら戸塚の性別は男でも女でもなく戸塚なのかもしれない(錯乱)。

 

 さて、改めて紹介する必要があるだろう。この目の前の少年の名は戸塚 彩加。最近由比ヶ浜の件があってから少しクラスの人間について目を向け始めて、そこで改めて同じクラスであることを理解した。パッと見た感じの見た目だけなら天海と同じく完全に女子で、戸塚の場合は肩の硬さで男なのだと気づく事が出来る。だがその肝心の肩は普段隠れているために本当に女子にしか見えないのである。天海についてはまだ情報不足なのだが、この前家に上がった時に見えたゲームの種類からなんとなく男なのかな、と感じた。

 さて、そんな戸塚は何故かいつもジャージ姿なのだが、誰もそれを指摘する人間がいないのは恐らく違和感が全くないからであろう。流石に行事ごとの際は学生服を着ているのであるが、まあサイズが少し大きいために若干萌え袖になっているのだ。女子の一部と男子の一部のハートはブレイクである。

 

 とつかはかわいいなあ。いやかわいいなあ。本当にかわいいなあ。ずっと見ていたい、そんな気にさえさせてしまう罪なヤツだよお前は……

 

「あ、あの。そんなに見つめられたら照れちゃうな、アハハ」

 

「お、おう。すまん」

 

 あざとくない、且つかわいい。小町はあざとかわいいけどこいつはかわいい。俺の中で戸塚のお持ち帰りランキングがマッハで上がっていく。今では小町と同レベルだ。男なのになにこの女の子らしさ。そうだ、男の娘なんてジャンルがあったな。因みに女装男子よりも断然男の娘派である。

 

「それで、何か用か?」

 

「う、うん。あのね、今日はいつもペアの子が病気で欠席しちゃって………それでね、もしよかったらなんだけど、一緒にやってくれないかな?」

 

 頼む、その上目遣いは止めてくれ。

 

 こうして一人で壁打ちに励む俺を誘ってくれる辺り、優しい奴でもあるのだろう。もし何か同情の眼差しがあれば断っていたのだが、彼の目は生憎純粋そのものであり自分が浄化されるような幻想さえ感じさせる。成る程、これが『真の英雄は目で殺す』というものか。

 

 断れるわけがなかった。

 

「おう」

 

「ホントに!やった!ありがと比企谷君!」

 

 

吐血しそうになった。

 

いくらその胸板が穏やかな太平洋だとしても、俺は変わらず戸塚を愛し続けたい。

 

守りたい、その笑顔。

 

 

 

       *

 

 

 戸塚はやっぱり上手い。さすがはテニス部ってのもあるが、普段の昼の練習もそれに一役買っているのかもしれない。俺が打ったボールに素早く反応して打ち返してくれる。だがしかしどうやら体力はないようで、暫くラリーを続けた後、先に息が上がり始めたのは戸塚だった。あ、俺の体力については職種上という事で納得してもらいたい。入る前はガリガリ引きこもり君だった体型も今では某筋肉氏の影響でバッチリエセ細マッチョである。リアル筋肉の大事さはついてみて初めてわかった為にあの人の事は尊敬しているのだが、やけにプロテインを勧めてくるのは止めて欲しい。

 

「ごめん、少し休憩してもいいかな?」

 

「いいぞ」

 

 即答だった。汗ばんだ顔に少し赤らんだ頬。中性的な顔立ちも相まってまるではつjおいなにをするやめろ

 

「ふう、やっぱり比企谷くんは上手だね」

 

「いや、別に……やっぱり?」

 

 それではまるで前から俺の事を見ていたような言い草ではないか。

 

「うん、比企谷君が壁で打ってる所見てたんだ。フォームがとっても綺麗だったし、筋肉もあるし………いいなあ、僕は筋トレしても全然筋肉がついた感触がなくて、比企谷君みたいに細くてもがっしりとした身体にはなれないや」

 

 俺の事を見ていたということは、それはつまり俺に好意を持っていると考えても可笑しくはないのではないだろうか。ありまくりですね。そういうのは勘違いさせる系女子の常套手段だ、騙されてはいけない。つまり戸塚は女子だった……?

 

「駄目だ戸塚。お前の身体はお前のものなんだから無理に人に合わせる必要はない。たとえ力がなくってもそれに拘らず、技術で勝負すればいいじゃないか。筋トレで無茶して怪我したら元も子もないしな。それにお前はよくやってるよ。そのまま頑張ってくれ」

 

「え、え?うん、ありがと」

 

 ふう、危うく戸塚がムキムキになってしまうところだった。いや例え戸塚がムキムキになろうが俺は全く構わないんだがやっぱりこのままの戸塚が一番だ。オンリーワンでナンバーワン。いい響きだ。

 

「それでね、急に申し訳ないんだけど比企谷くんにお願いがあるんだ」

 

「おう」

 

「あのね、比企谷君。テニス部に入ってくれないかな?」

 

 ん?

 

「どういうことだ?」

 

「うん。うちのテニス部ってすっごく弱くてね。夏の大会で3年生が抜けたらもっと酷くなっちゃう。だけど、皆なかなか練習に参加してくれなくて……」

 

「成程」

 

 戸塚の頼みだ、出来るだけ聞いてやりたい。聞いてやりたいが……それはできない。

 

「すまん、俺にはそれは無理だ。奉仕部なんてもんに入っちまってるし、俺も毎日は参加出来ないしな」

 

「そっか……、残念だな。あ、急にこんなこと言ってごめんね?」

 

「いや、いいんだ」

 

 少し辛そうな顔。それが俺の申し訳のなさを加速させてしまう。それなら俺の取るべき道は1つだ。

 

 

 

    *

 

 

「無理ね」

 

 取るべき道、なくなる。

 

 まあ戸塚には悪いが残念だが当然だろうな、という感じだ。奉仕部の理念とやらを考えるとどうしてもこの依頼は受けられないのではないかという予感もあったからな。

 

「そうか」

 

「ええ」

 

 気落ちして勉強を始める。すると程なくして元気な声が聞こえた。

 

「やっはろー!依頼人連れてきたよ!」

 

「こんにちは、由比ヶ浜さん」

 

「よう」

 

「それで、依頼人は?」

 

後ろから入って来たのは

 

「し、失礼します」

 

戸塚だった。

 

「戸塚!」

 

「あ、比企谷君だ。えへへ」

 

 か゛わ゛い゛い゛な゛あ゛と゛つ゛か゛ち゛ゃ゛ん゛

 

「さいちゃんの事情はヒッキーも知ってるよね?だから奉仕部としてあたしが紹介したんだ」

 

 成程。どうやら俺みたいなものではなく、依頼として持ってきたらしい。

 

「由比ヶ浜、お前ちゃんと仕事出来たんだな……」

 

「はぁ!?どういうことだし!」

 

「いえ、由比ヶ浜さん。この男はこれでも、貴方の事を褒めているのよ?」

 

「えっそうなの?あっエヘヘヘ…………」

 

「まるで子供を褒めている親のようだわ」

 

「えっそれってあたしが子供ってことじゃん!なにそれヒッキーキモイ!」

 

「それはともかくだ、戸塚」

 

「ともかくなんだ!?」

 

無視。

 

「何かな?」

 

「雪ノ下に依頼内容を具体的に伝えてくれ。ここの部長はこいつだからな」

 

「指を指さないでくれるかしら。貴方の指から黒い何かが漂っているのだけど」

 

「何、俺は悪魔か何かなの?」

 

「鏡を見れば分かるはずよ、特にその目ね」

 

「さいですか」

 

 

 

 

 

 

 

閑話休題。(それはともかく)

 

 

 どうやら戸塚の目的は、自分の実力を上げることらしい。皆が堕落しきっている、その中で、自分が出来ることを見せれば自ずと皆がついてきてくれるかもしれない、と。

 

 戸塚には悪いから口には出さないが、それは理想論でしか無い。

 

 人間という生き物は下を見る奴があまりにも多い。自分より下なヤツを血眼で見つけて、『俺はアイツよりマシだ』と心の安寧を図るためだ。そして、自分より上に対して向けるのは決まって敵意であり嫉妬だ。何故コイツは俺より上なんだ。コイツはこんなに悪いところがあるのに。何故コイツは俺よりも強い。俺よりも人気がある?

 そうして敵意を向けて、同じような感情を持った人間でその上の人間を自分のところまで、自分の下まで落とそうとする。自分がソイツより上に行ったと安心するために。どこまでいっても人は競争を無意識に望み、それに囚われている。

 

 そんな人間が急に強くなった戸塚を見たらどんな感情を抱くのか、それを予想するのは難しいことではない。

 

 そしておそらくテニス部の人間はそういう奴が多いのだろう。

 

「残念だけど、貴方が強くなったからと言って他の皆がついてきてくれるとは限らないの。それに、貴方が強くなれるかさえ私たちには保障出来ない。何故なら強くなれるかは貴方の意思次第だからよ」

 

 雪ノ下もこの件に関しては否定的だ。戸塚が申し訳無さそうな顔になる。助けたい、助けたいが悲しいことにそれについては俺も同意見だからどうしようもない。済まない戸塚。

 

 そして女王様の視線は由比ヶ浜へと変わる。

 

「由比ヶ浜さん、あなたは一体どんな説明をしたのかしら?貴方の至らない説明のせいで彼の希望はなくなったのよ。」

 

 雪ノ下の責めるような視線に由比ヶ浜はたじろぐ。しかし彼女は引かなかった。

 

「うっ、で、でもゆきのん達なら何とかできるでしょ?」

 

 あっ。これは依頼確定ですね間違いない。元より雪ノ下はかなりの負けず嫌いだ。それは由比ヶ浜とのくだらない賭けが証明している。それを無意識ながら見抜く由比ヶ浜、あんた女の中の女だよ。料理できないけど。

 

案の定、雪ノ下はそれを挑発と捉えたのか眉をピクピクとさせ始めた。

 

「私を試すなんていい度胸をしているわね。いいでしょう、その依頼を受けてあげるわ。もう一度確認するけど、依頼内容は戸塚くん、貴方の実力の向上でいいのかしら?」

 

それに応じた。やだ、この子ちょっとチョロ過ぎない?

 

「あ、はい。お願いします雪ノ下さん」

 

 戸塚が若干引きながらも頭を下げた。当然だ、俺だって引くわ。

 

 何より俺が引いたのは彼女の発言、『受けてあげる』というものだ。これは奉仕する側の言葉とは思えない。間違いない、雪ノ下は強者の立場をいつまでも崩そうとはしていない。成る程、これは確かに平塚先生の言う通りだ。このままではいつか潰れてしまうかもしれないが、今それを告げるのは得策ではないだろう。

 

 今俺が言うべきは依頼の進行。

 

「で、戸塚に何をさせるんだ?」

 

「そうね、まず死ぬまで走らせてから死ぬまで素振り、死ぬまで打つ練習をして……」

 

「戸塚、骨は拾ってやる」

 

「え、比企谷君!?」

 

 大丈夫だろうか、これ。

 





・(胸板が)穏やかな太平洋
某アニメの歌詞その1。決して雪ノ下ではありません。これはね。どうでもいいですが私の許容範囲はAAAからDまでです。ロリコンではありません。




修正(5/14 2247)
文章の中に設定の矛盾があったため消去、代わりにちょっとだけ文章を加えました。
コメント欄での指摘、ありがとうございます。

こういったミスは私自身どんどんと増やしていく(増えていく)予定なので指摘していただけると嬉しいです。
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