前回のお話を見てくれた方々、ありがとうございます。評価等いただけるのも光栄ですね。相も変わらず気まぐれ路線ですが優しい世界を目指して適当に頑張ろうと思いますのでこれからもよろしくおねがいします。
------------------------------------------------------------------------------
前回の3つの簡単なあらすじ
・由比ヶ浜、LINEを一回削除される
・戸塚、天使
・戸塚、天使
だいたいあってる。
さて、奉仕部で戸塚の依頼を受けて翌日。朝っぱらから走りこみや筋トレをしながら、今日は防衛任務なので「放課後は用事があるから行けん」と由比ヶ浜に伝えた昼休み。この週で最後らしい依頼期間、その最後の日の弁当にそそくさと箸を伸ばす。
「……今日は何か用事?」
天海が聞いてきた。普段適当にノンビリ食べてる人間が、急にこんなに早食いしだしたら誰でもそんな疑問を抱くだろう。
「ん? あぁ、戸塚の依頼で昼休みとか朝にテニスの練習に付き合ってるんだよ」
そう言うと、「そう」と、それだけ言って自分の分の弁当を食べ始めた。
相変わらず自分のペースを崩さない変な奴だ。だが、深く人の関係に入り込んでこない辺りはこちらとしては過ごしやすい。自分の依頼以外に興味がないのだろう、由比ヶ浜のクッキーを作る時だって「自分の依頼の邪魔になるかもしれない」という理由でキッチンを貸したくらいだしな。
だが、何故かコイツは俺とは普通に話してくる。雪ノ下や由比ヶ浜相手にはどこか一歩引いていた感覚があるのだが、俺には感じられない。やめろよ、「……はっ、これはもしかして、俺に気があるんじゃ!?」とか思っちゃうだろ。
「天海」
「?」
首をこちらに向けて少しだけ傾げる。うん、戸塚程ではないがやっぱりコイツも仕草が何処と無く女子に見えて緊張してしまう。戸塚程ではないけどな!!
…………よく考えたらコイツと戸塚の髪の色ってほぼ同じだよな。変装したら分からないんじゃね?あ、話逸れた。
「お前の妹ってどんな子なんだ?」
さり気なく聞いてみる。ボロが出るのを待って、一度口に出してしまえば俺の勝ちだ。すると、天海の無表情が少し強張った……ような気がした。やっぱ分からねえよコイツの表情……。もしかして聞いたらいけない話題だったか?
「いや、別にどうってわけじゃねえよ。ただ、俺にも最愛で世界一かわいい妹がいてだな、それd「比企谷くん」……どうした?」
天海の雰囲気が変わった。いつものような静かな雰囲気ではない、どちらかと言うと、前にカルピスを買った時みたいなあの雰囲気。静かな怒り、でも少し楽しんでいるようなギラギラした目だった。いや、まぁ見た目は一個も変わってないんだが。
「一つだけ訂正がある」
「な、なんだよ」
「…………世界一可愛いのは僕の妹」
はあ??
何言ってんだこいつ????意味分かんねえ、小町が一番なんだよなあ。
「天海、怒らないからもう一回言ってくれ」
「何度でも。僕のナツが世界一可愛い」
「いや、ウチの小町だろ」
「違う、ナツ」
「小町だ」
「理解できない」
「お前がおかしいんだよ」
「「………………」」
静かに見つめ合う俺達。暴力は振るわないし暴言だって一切吐かれない。しかしその目は、その闘志は。その殺気は。
「ヒッキー何やってんの!?おs………!?」
少なくとも、由比ヶ浜がビビる程であったらしい。
*
結局決着は付かなかった。俺も天海も膠着状態の中、ただ睨み合うだけ。その時の天海の目はマジだった。普段の無表情も合わさってめちゃくちゃ怖かった。
だが、同じ千葉の兄として負けるわけにはいかないのである。例え負けても決して小町が世界一可愛いのは譲らないが。
「悪い、遅くなった」
案の定、雪ノ下はこちらの方をまるでゴミを見ているかのような目線をしている。しかしこちらとしても譲れないことがある。
「全く、約束もまともに果たすことが出来ないなんて……貴方、本当ににんg「おい」!?」
「俺と天海の勝負に口を出すな」
「何を言っているの……?」
無視。どちらがより妹への愛が勝っているかの勝負に女はいらない。俺と、天海。二人の兄だけの一騎討ちだ。たとえ俺が今奉仕部に入っているからといっても、雪ノ下が俺を自由に操れるわけでもない。ならばこの戦いは誰にも邪魔をさせない、それが例え小町だったとしても、戸塚だったとしても。多分。
そんな事を誓っていると、いつものジャージ姿の戸塚がこちらに走ってきた。ううむ、汗を額に浮かべている姿、実になんというかその、うん。かわいい。
「遅かったね、比企谷君。何か用事でもあったの?」
「いや、ちょっとな。悪い」
「えへへ、大丈夫だよ!これから比企谷君に手伝ってもらえばいいだけなんだから!」
うせやろ?
ちょっと天使すぎるんとちゃいます? なんか本当に申し訳なくなってきた。
「いやほら、でも俺授業でしかやったことないし」
「大丈夫大丈夫、比企谷くんはきっとセンスもあるし、直ぐに上手くなるから!」
「だが…………」
「比企谷君は……」
ああ、だから。
「僕と練習するの、嫌?」
瞳を潤ませて上目遣いで聞いてくるのは止めてくれ。
汚れているように感じてしまうから。
まあ汚れてるんですけどね。
天海、すまん。天使には勝てなかったよ…………。
「いや全く。全然悪くないよむしろ悪いのは俺うんマジで悪かった。今からでも大丈夫か?」
「うん、一緒に頑張ろ!」
「おう!」
「ところで由比ヶ浜さん、ずっと気になっていたのだけれど…何故あの男はあんなになっていたの?」
由比ヶ浜は既に遠い目をしていた。それはもう、笑うのに疲れてしまったかのような無表情であった。
「あ~……なんかいっちゃんの妹とヒッキーの妹のどっちが可愛いかってことで二人して本気でケンカしてたっぽいんだよね」
「理解不能だわ……」
「そうだね、二人共マジキモイ……」
-------------------------------------------------------------------------------
今日で僕の依頼は終了になった。購買よりも確実に節約になっていて個人的には得したと思う。
今まで作ったお弁当のレシピや評価はまとめ終わった。奉仕部という形ではあるが、僕としてはアルバイトみたいなものだったのであの人達には何か給料的な物をあげたほうがいいだろう。思い立ったが吉日、僕は外の自販機へと歩いた。
僕を含めて同じものを4つ買った後奉仕部の部室へ。だけどあの3人はいなかった。戸塚くんのお手伝いだろう、ここからはあまり声は聞こえないけれど。
兎に角、何か書き置きが必要になってきた。僕が人に宛てて書ける文章なんてたかが知れている。
『ありがとうございました 天海』
これでよし。あとはこれを置いて完了。
さて、今日も働こう。
――――――余談ではあるが、この後、奉仕部の部室にあった書き置きと『カルピスウォーター』3本を見て、困惑する3人の顔が見られたのだった。
恋愛要素はまだありません。
ずっと書いていなかった天海 樹及び夏希の外見のイメージについて。あくまでイメージですイメージ。
実際のキャラクターとは性格が大分変わっていますのでご注意ください。
----------------------------------------------------------------------------
天海 樹
・基本的なイメージ・・・『DARKER THAN BLACK』より銀(イン)
・髪型・・・原作より後ろの髪は短く、首の後ろ辺りまで
・瞳・・・色が透明に
・髪の色・・・原作と同じ。ご都合主義により地毛。
天海 夏希
・基本的なイメージ・・・『ローゼンメイデン』より水銀燈
・髪型・・・原作準拠 カチューシャは市販の白いものを着用
・瞳・・・蒼色に
・髪の色・・・銀と同じ色に
・身長・・・165cmと女性の中では高め。ほんとに水銀燈なんですかねえ…
表情がコロコロ変わる銀とか想像しただけで笑ってしまいました
-------------------------------------------------------------------------
これ、あくまでも『外見』のイメージです。ちなみに設定上では夏希の方が背が高いようにしました(樹161cm,夏希165cm)。
乳酸菌が好きなのは共通です。ただし樹はカルピス派で夏希はヤクルト派の模様。