二人のぼっちと主人公(笑)と。   作:あなからー

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スパロボFをしようとしたらSSのコントローラーが猫に食いちぎられたので怒りの初投稿です。 絶対に許さない。

 いつも見てくれる方々にはありがとうございます、初めて見る方にもありがとうございます。初めて見る方は設定だけ見ておくといいかもしれません。初めの話を見ると後悔すると思います。
 地の文に比べて台詞が多いのはもうなんというか許してくださいとしか。



前回のあらすじ

・大志、パシリ役に

・作戦室の構想がすんなり収まり比企谷困惑

・周りの皆も困惑


うん。

それでは、どうぞ。




騙される方が悪い云々

 

 

『キッチーン、伏せるんだー!!』

 

ドカーーン

 

『おわぁー! …キッチーン!!!!』

 

(キッチンの生首がメット越しに映る)

 

『!!!……バッフ・クランめえええええええーーーー!!!!!!!』

 

 

「ヒェッ……、発動篇グロすぎだろ」

 

「こんなん今放送したらクレームの嵐っすよね……」

 

「すぐ人が死ぬからねー、これ」

 

「富野監督だから、仕方ない」

 

「「これだな(ですねー)」」

 

「え?富野監督って、ガンダムの人でしょ?俺でもそれくらいは分かりますけど、それがどうかしたんですか?」

 

「ああ、大志くんは知らないかも。この人が監督だと、大体登場人物がドンドン死ぬから、一部でつけられたのは『皆殺しの富野』」

 

「えぇ……」

 

「ダンバインに至っては主人公も死ぬ」

 

「マシなのもあるけどな。キンゲとかザブングルとか」

 

「動画サイトのOP集に白富野って書かれてた時は笑っちゃいましたよー」

 

「ブレンパワードのOPは……見ないほうがいい」

 

 

 

 

 

 

 

※ほんへとは全く関係ありません

 

 

 

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in どこかの、例えば諏訪隊作戦室っぽいとこ

 

「諏訪さん。いいバー見つけたんですけど、呑みに行きませんか?」

 

「お、いいねぇ。どうせなら他の奴らも誘おうや。場所はどこだ?」

 

「えーと、場所は確か、ホテル――――――」

 

 

 

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「僕、そろそろバイトだから行ってくる」

 

「ん。あんまりやりすぎんなよ」

 

「ありがと、比企谷くん」

 

「姉ちゃんみたいに無理しないでくださいね!」

 

「行ってらっしゃーい」

 

 比企谷隊(この呼び方は彼は嫌だそうだ)の皆に見送られながらバイトへと向かう。今まで見送ってくれてたミィやクルトに加えて、妹も、この3人も増えた。クルトはたまに寝てて来てくれなかったけど。

 

 ボーダーに入った今でもバイトを辞めていないのは、マスターへの恩義も勿論だが、少しでも貯金を増やしておきたい、料理のバリエーションを増やしたいという目的もある。B級の収入でも割と暮らせるものではあるけど、それでもやっぱりA級よりは少なくなってしまう。駿君は僕よりも高いし。

 その中で僕とナツの食費(半分近くはカルピスやヤクルト)を補いつつ生活費にも、となるとお金はあまり残らない。その中で、お給料の高い厨房のバイトは中学生の頃からお世話になってきた。もう働き始めて4年近くになるけど、その過程で調理師の免許も取る事になったので、来年の冬には試験を受ける予定。調理師の資格は中学校を卒業してからでないと経験が認められないから仕方はないけど、もし上手く合格出来れば働き口が増えるから是非受かっておきたい。

 

 そんなバイト先だけど、ちょっと困ったこともある。ホテルの中にあるため、お客さんが多い時なんかはどうにも人出が足りない時もある。最近、そんな時はフロアに出されるのだけど、偶にスーツに着替える必要が出てくる。普段ならコックの姿で「このような姿で申し訳ございません」と前置きを入れれば大抵許してくれるし、いつも来てくれる人なんかは労ってくれたりするのだけど、他県とかから来た人達が大勢来てしまうと、どうしても前置きを連発する必要があったり、似合わないスーツ姿になる必要があったりして、とても疲れる。ただ、その分ボーナスを出してくれるから他に比べればずっとマシなほうじゃないだろうか。フロアをやらされる理由は『最近マシになってきたから』。 何が?

 

 

 

 ホテルに到着したので直ぐにエレベーターを使って上へと上がる。変に絡まれても面倒になるだけだし、そういうのは出来るだけ避けるに限るから。扉が開いたら素早くプライベートルームへと入って着替えてから手を洗ったり消毒をしてキッチンへ。

 

「天海君、こんばんは」

 

「こんばんは、マスター」

 

「よう、天海!今日も頼むぞ!」

 

「はい、料理長」

 

 挨拶を交わしてからコンロの前へ。

 

 僕はこの瞬間が好きだ。数少ない、『認められている』と感じる瞬間だから。だけど、それを表情に表すことが出来ない。口でしか感謝を伝えられない。こういう時、表情は大事だと思い知らされる。動かしたくても動かせないのはもどかしいものだ。

それをマスターや料理長さんが気にせず笑ってくれるのが救われる。

 

 そんなことを思いながら調理を続けているのだけど、中々注文を消化しきれていない。途中まではあまり料理の注文もなく、お酒類が多かったのに、ここにきて一気に量が増えた。

 

「くっそ、今日は多い日か。天海もフロア出る準備しとけよ」

 

「はい」

 

「嫌そうなオーラ出てるぞ」

 

 と料理長さんに笑われた。彼曰く、面倒だと思うときに限ってそういうオーラが僕から出ているのだとか。絶対に気のせいだと思うのだけど、実際に見破られているのは何故なんだろうか。あ、でも比企谷くんにも言われたし、もしかして、というのもあるかもしれない。

 

「まずは料理を作りきりましょう」

 

「おうよ。ほら、これ頼むわ」

 

「はい」

 

 無駄話もここまで。あとは指示の通りに料理を黙々と完成させてはフロアの人達に渡していくだけだ。調理したり仕込みをしたりと、やることは多いけれど、楽しい。やはり料理というものは作る分には楽しいし、上手く出来れば嬉しい。でも片付けるのは面倒くさい。食器洗浄機を買おうかと真剣に考えたり考えなかったり。

 

 そうこうしている内に料理も次々に出来上がり、一段落も出来そうな頃合いに入った。のだけど。

 

「おーい!ちょっとフロア増員お願いしまーす!」

 

「おう!!ほら天海」

 

「行ってきます」

 

「また嫌そうなオーラ出てるぞ」

 

「苦手なだけです」

 

「すまんな。夕飯、まあ夜食みたいにはなるが、用意しといてやるから」

 

「行ってきます」

 

「現金な奴め」

 

 料理長さんとの会話は楽しい。まるで歳を取った比企谷くんみたいな反応をしてくれる。というか、比企谷くんの反応が若い料理長さんのよう のほうが正しいか。出来上がった料理をトレイに載せてフロアへ。

 

 

 ……やっぱり人が多い。とっとと終わらせよう。何も考えず、お客さんの顔も見ず、ただ目的のテーブルへと足を運ぶ、

 

 

 

 

 

 

 多分、そんなことをしていたから。

 

 

「このような姿で申し訳ございません。こちら、生ハムとチーズのサラダとマルゲリータになります」

 

「あら。中々カワイイ格好してるじゃない」

 

「申し訳ありません。混雑しているため、ご了承いただければ幸いです」

 

「……おう。あのよ」

 

「はい。何か追加のご注文でしょうか?」

 

「いや、お前。もしかして……、いや、もしかしなくてもなんだが、天海だよな」

 

「はい?」

 

 

 

 

 

 

「………………これは皆様、お揃いで」

 

 

 

 

 

 

 ボーダーの大人達に全く気づかなかったのだろう。諏訪先輩に堤先輩、東先輩、加古先輩に加えて太刀川先輩までもがこちらを見つめていた。諏訪先輩や堤先輩、東先輩はちょっと気まずそうな顔、加古先輩と太刀川先輩は少し面白がっている顔をしている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……………………これは、うん。そう、アレ。

 

 

 

 大ピンチだ。どーしよ。

 

 

 

 

    *

 

 

「あはははははははは!!!マジで運がねえな、お前って奴は!」

 

「はぁ……一応まだ勤務時間中ですから笑わないでください。はぁ……」

 

「ククク……いや、すまんすまん!」

 

「天海君も大変だねぇ」

 

「言わないでくださいよ、マスター」

 

 

 

 さっきからずっとこの調子だ。取り敢えず僕の勤務が終わるまで待ってくれるというので、先輩方には待ってもらっている。比企谷くんの時は早く帰ってもらいたかった(悪い意味でなく、バレたら大変だからという意味合いで)から途中で抜けだしたけれど、大人の皆なら大丈夫だろうと思って。

 お客さんの数も減り、注文もお酒が多くなったので厨房は平和になっている。カクテルやワインなどは大人の仕事なので僕は立ち入りできないし立ち入るつもりもない。という訳で、しばし暇を持て余しているのである。遅い時間になってくると脂物は少なくなり、サラダやつまむものが中心となってくるので、調理の手間も楽になっている。だからこそこうして料理長さんとマスターには色々と話す時間があるのだ。

 

 ボーダーに入ったということを告げた時、二人共まず心配してくれたのは、僕の人間関係についてだった。僕のことをよく分かっているのは嬉しいけれど、ちょっと複雑な気持ちになってしまう。

 

「いじめられてねえか!?」

 

「何か悪口とか言われてないかい?」

 

「ちゃんと人と話してるか?」

 

「君を理解してくれそうな子はいる?」

 

 

 これじゃアニメで見る親戚のおじさんやおじいちゃんみたいじゃないか。心配性にも程があると思って、部隊にも入ることが出来たと伝えたら。

 

 

 

 

 マスターに涙を浮かべられた。えっ。

 

 

「天海君、どんどんと君も成長していたんだね。私はそれだけで嬉しいよ」

 

「あの」

 

「これからも様々な人と出会いなさい。きっと君の人生はより豊かになる」

 

「はい……」

 

 とても嬉しい。いつもこの人は周りの人に気を遣って優しく接してくれる。嬉しいんだけど。

 

 先生みたいだとおもいました。

 

 

 

   *

 

 

 

「先輩方、お待たせしました」

 

「いやー、ビックリしたぜ。まさかお前がこういう店で働いてるなんて思ってなかったからな!」

 

「諏訪。この子が天海君か?」

 

「そっすよ、東さん」

 

「へえ、やっぱりカワイイわね。しかもエプロンをしてたってことは厨房で働いてるんでしょ?気が合いそうだわ」

 

「……悪寒が……」

 

「堤!?」

 

 どんなことを言われるかと思っていたのだけど、なんかフリーダムである。某キラも呆然とするくらいだろう。だけど話はとっととつけなければいけない。

 

「あの、司令や学校には」

 

「言わねえよ、少なくとも俺はな。他の面子もそんなに厳しくはねえだろ」

 

 と、諏訪先輩が言ってくれたのでひとまずは安心していいだろう。城戸司令や忍田司令?には事情を伝えているけれど、他の人達に知られても特にメリットはない。それなら隠すのが吉。

 

「天海」

 

 ふと横から声を掛けられた。

 

「……東先輩」

 

 実は僕は東先輩との面識がなかった。この人も深夜に防衛任務を入れている時があったのだけど、時間が被った時も部隊が別々になったので関わる機会がなかったから。

 

「はは、俺は直接天海と防衛任務では一緒にならなかったからな。それよりだ。理由は見当がつくが、推測だけでものを言いたくはないからな。何故ここで働いているかの理由を聞かせてくれないか?」

 

「……分かりました。とは言っても、割とどこにでもありそうな話ではありますけど」

 

 と、前置きしてから僕は大規模侵攻からの事を語った。両親や親戚が亡くなった事。妹が足に後遺症を受けたこと。入院費や通院費などの為にバイトを始めたこと。あまり話が長くなってもいけないので流れを説明しただけだけれど、大体分かってくれたようだ。東先輩は少し頷いた後、

 

「分かった。ただ、事情があるにしても天海がやっていることは条例的に正しくないことは分かっているな?」

 

「はい。個人の意思としては間違っていませんが」

 

「分かっているなら、まあいい。ただ、ここで無理をして防衛任務等に影響が出てくるのならまた話は変わってくるからな、気をつけろ」

 

「了解です」

 

 と、諭された。当然の話だろう。この中で一番マトモなことを言うのはいつもこの人だろうから。因みに次点で堤先輩が来る。

 

 そしてその堤先輩からは

 

「比企谷以外の高校生にはバレるなよ?」

 

というお言葉を頂いた。当然です、これ以上バレたらまた面倒なことになっちゃいますから と言うと、諏訪先輩から、

 

「おい、なんか変なオーラ出てるぞ」

 

と言われた。……これ、どうしようかな。治らない?

 

 

 加古先輩には、

 

「今度料理を手伝ってくれるかしら?挑戦したいメニューがあるのよね」

 

 と言われたので、分かりました。 と伝えた後にふと目を横に向けると、太刀川先輩と堤先輩が震えてた。一体どうしたんだろう?

 

 で、一番何言うか分かんなかった太刀川さん。

 

「天海。お前のことは風間から聞いた」

 

「?」

 

 凄く気になる。今の目標はあの人相手に勝つこと。そのためにはその下の人達にも勝たなきゃいけないから、防衛任務が無い日はいつも模擬戦ブースで一人練習をしている。

 

 寂しくなんてない。

 

 

 

「バイトの事は俺もまあ、黙ってやろう。そのかわりと言っちゃ何だが」

 

 笑顔が不吉すぎる。悪巧みしていそうな顔、かどうかは分からないけれどどっちにしろ良いことではないのは分かる。

 

「お前、今度俺とランク戦な」

 

 

 

 …………。

 

 

 

「……すみません、もう1回いいですか」

 

 

「いやだから、今度俺とランク戦な」

 

「………………」

 

「やー、なんか風間が珍しく多弁になってたから一度やってみたかったんだよ。つーわけで、また呼び出すから」

 

「……はい」

 

 

 

 流されるままに約束を取り付けられた。一体風間先輩は何と言ったんだろうか。ランク戦とか面倒だし、できるだけやりたくないんだけど。風間先輩とも模擬戦ブースでやったし。でも、これはチャンスじゃないか?風間先輩より上の攻撃手。僕や風間先輩とは使っているトリガーこそ違うけれど、その本質は基本的に変わらない、近距離戦だ。いつも格好つけて腰につけている2本の弧月。アレをどう使ってくるのかが知りたい。見たい。感じたい。個人のランクポイントなんて微塵も興味はないけれど、強い人間と戦うのは、別に嫌いではないから。それは自分のレベルアップにも繋がるし、迅先輩の言っていた、『悪いもの』に対抗できる力にもなるだろうから。

 ……どうやら僕も、米屋君程じゃないけどバトルジャンキーみたいだ。

 

 結局のところ、何か襲ってくるものを防ぐには力が一番手っ取り早い。対話というのは、どうにもならなくなった時の苦し紛れの選択肢だ。話が通じる相手ならともかく、話も通じない、通じたとしても理解しようともしない相手にどうやって対話をしようと思うのか。それはきっと無駄以外のなにものでもない。なら、とっとと力を行使したほうが時間の点でもリターンが大きくなるんじゃないか。

 

 ……駄目だ。こういうことはあまり考えたくない。頭がこんがらがって自分でも何を言ってるか分からない。疲れたし、早く帰りたい。

 

「皆さん。僕、帰りますね」

 

「ああ。気をつけて帰れよ」 と東先輩。

 

「あんまり無茶はするな」 と堤先輩。いい人達だ。

 

「料理、楽しみにしてるわ」 と加古先輩。この人のチャーハンは有名らしい。美味しくて倒れるほど、とか。是非ご教授願いたいものだ。

 

「絶対呼び出すからな!耳の穴を洗って待ってろよ!」と太刀川先輩。日本語を覚えてから呼び出して欲しい。

 

 そして、「料理美味かったぞー!」 と、諏訪先輩。僕が全部作ったわけではないけれど、やはりそう言ってもらえるのはいつでも嬉しい。口で「有難うございます」と言う代わりに、先輩方に礼をして、プライベートルームの扉を開けた。

 

 

 

 

 ……先輩方、ちゃんと帰れるのかな。結構皆、顔赤かったけど。

 

 と、ここで携帯電話の着信音が鳴った。画面を見ると『ナツ』の文字。どうしたのだろう、ヤクルトが切れたとかそんなのかな。

 

「もしもし」

 

『あ、樹兄?家に帰ってから詳しく話そうと思うんだけど、私の同級生の妹がね――――――』

 

「……考えさせて。じゃ、これから帰るかr」

 

『あ、あとヤクルト買ってきて!』

 

「……ん」

 

 

 

 

 

 

 

 …………また、面倒な事になってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

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「にゃー」

 

 とカマクラの鳴き声がたまーにする我が家。そのリビングには、

 

「ねーねー、おにーちゃん?」

 

 というあざとい声を俺の耳に囁きかけてくる小町と、

 

「ちょっと待て。今いいところだから」

 

 プリキュアを見る俺の姿があった。録画で見てもやはり良いが、一番はリアルタイムだな、うん。

 小町が続ける。

 

「小町はね、勉強に疲れてしまったのです」

 

「宿題は終わりましたか……?」

 

「で、でね、外に遊びに行きたいなーって思ったりするんだけどね?」

 

「宿題は終わりまし「だーけーどーねー!?小町ってばか弱いから、もしかすると誰かに連れ去られてしまうかもしれないのです!」

 

「人の話を聞け」

 

「あぁ、こんな時に頼りになる人がいればなぁ…………(チラッ」

 

「次回予告の作画いいな」

 

「……お兄ちゃん、最近小町に対して酷くない?」

 

「小町ちゃん、いつも兄に対してごみぃちゃんとか酷くない?」

 

「酷くないよ」

 

「あ、はい、ソウデスカ」

 

 と、良く分からない口論を続ける俺達。そもそも話が噛み合う気配すらないのだから仕方ない。

 

 

 

ピリリリリリリリ ピリリリリリリ

 

 

「うわ、またかよ……」

 

 あと、平塚先生からやたら電話がかかってくる。マナーモードに設定したらメールがドサっと来たので(あまりメールが来ないからちょっと嬉しかったのは秘密だ)止む無く電話放置作戦に出ている。メール怖かったからね、仕方ないね。

 

『お話したいことがあるのでこれを見ていたら連絡をくれると嬉しいです』

 

『電話下さい」

 

『つうわしよ』

 

『電話』

 

『マナーモード解除しろ』

 

『デンワデテ』

 

『無視するな』

 

『逃げるのか?』

 

『ハヨ』

 

『でろ』 『で』 『もしもし』 『おい』 『おーい』 『おはよう』 『今お前の後ろにいるぞ』 『なあ』 『トマト食わせるぞ』 『トマトマトマトマトマトマト』 

 

 

 

 

「怖えんだよ!」

 

 そりゃ無視する俺も大概悪いけど、メールの量といい質といい新手の嫌がらせかと思うほどだ。最後に至っては完全に嫌がらせ、というかなんであの人俺の嫌いなもの知ってんだ。

 

「また電話?人気者になったねー、お兄ちゃんなのに」

 

「バカ言え。催促の電話だよ。出ねえけど」

 

「ふーん。ま、どうでもいいけど。それより出かけようよー!」

 

 じゃあ聞くな。……それより、さっきからうるさい小町を黙らせないといけない。

 

「外出たくない」

 

「そんなんだから引きこもりって言われるんだよ?」

 

「否定はしない。このクソ暑い中態々外に出るくらいなら引きこもった方がマシまである」

 

「分からなくもないけど中々底辺な台詞だね」

 

「やかましい」

 

「行こうよー。ほら、小町のボディーガードだと思ってさ!千葉だよ千葉!」

 

「俺トリガー無かったらただの凡人なんだが」

 

 最近筋肉が某筋肉な人によりついてきてはいるが、それでも出来るだけ面倒事は避けたいし力仕事はしたくない。レイジさんがボディーガードでいいんじゃないかな。あ、でもあの人まだ夏休みじゃないんだわ。

 ……こうなっては仕方ない。諦めよう。どうせ小町も女子だしショッピングとかだろう。千葉っつったら都会だからもしかしたらここらに売ってない本とかもあるかもしれないしな。

 

「はぁ…………。まぁ考えといてやるよ。他のとこに出かける機会とかなかったし、小町のおかげで家計も楽になってきてるしな。ちょっと遊ぶくらいなら」

 

「やったぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!さっすがお兄ちゃん!!小町の自慢の兄だよ!!!」

 

 小町の手首大丈夫か。クルクルしすぎてボロボロになってるかもしれないのだが。ゴミとか引きこもりだとか散々言っておいて、いざこちらが少し歩み寄るとこれである。

 

 

 あざとい。だがかわいい。あざとかわいい。

 

「じゃあ!小町はお兄ちゃんの荷物リストを作るので!御免!!」

 

 と、何故か最後の最後でニンジャになってシタタタタタ……と駆けていった。絶対転ぶ。 \ドゴン!アイエエエエエエ!!?/ ……ほら転んだ。あーあ、デコ打ち付けてら。全くアイツは、ドジを狙ったり狙わなかったり忙しい奴だな。

 

「ほら」

 

と、冷蔵庫から保冷剤を取り出して手渡しながら額を見る。

 

「あっ……」

 

「あーあ、これもしかしたらタンコブ出来るかもしれないな。早めに冷やさないと……と、タオル持ってくるからソレ服かなんかでくるんで一旦額に当てとけ」

 

と言ったのだが、顔を少し俯かせたまま反応がない。さっきのアイエエエエエエとか言う悲鳴にしては情けない声から殆ど声を発していないのだが、そんなに痛かったのだろうか。

 

「おーい?」 と声をかけると、身体をビクッと震わせて首をブンブンと横に振った後、少し上ずったような声で

 

「あ、なんでもないよ!ゴメンゴメン、ほら早くタオル持ってきて!」と俺を唆した。

 

「? ああ」

 

 まあ頭打ったら脳震盪みたいな感じになることもあるし、もしかしたらその影響があったのかもしれない。もし調子が悪そうであれば病院も考えるか。脳とか頭って怖いわホントに。さて、タオルを持ってこよう。

 

 

 

 ……そういや、ただ千葉に行くだけなのになんで荷物リストなんて作る必要があるんだ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 八幡がリビングを出て行ったあと、小町は一人息を吐いた。それは安堵の息であり、呆れたようなため息でもあり、また、脱力するための息であった。

 

「……あんな所で昔みたいな優しさを出してくるのは、卑怯だよねー…………」

 

 と独りごちる。小さな声なのできっと兄には届いていないだろう。

 

 何時もは愛想が悪く、口も悪く、態度も悪く、何より根性が曲がっている自分の兄。小町に対してだけは態度が一気に軟化しているが、それは他の女性に向けてするべきだと小町は思う。

 彼女がまだ小学生だった時に、可愛がってくれた両親が死んだ。生き残ったのは自分と八幡、猫のカマクラのみ。彼女は取り乱し泣き叫んだ。今までの家庭を一瞬で壊される絶望の中、ただただ、泣くことしか出来ず。一人の時は何時も泣いていたかもしれない。それくらい彼女にとって家族は大切なものであり、また小学生の少女にはあまりにも重い出来事であったのだ。

 

 そんな中、八幡――――彼だけは違っていた。目はその時から濁り始めており、泣くには泣いたものの涙は直ぐに止まった。理想を描きながらも、ただただ現実を見続ける彼が一番先に行動に起こしたのは、衣食住、仕事の確保であった。兎にも角にも衣食住が無ければ生きていく事は出来ない。仕事が無ければ両親の金もただ減るばかりである。火事にはならなかったため預金通帳が燃えることはなく、回収も出来た。暗証番号は知らなかったものの、銀行で両親が死亡した旨を伝えれば暗証番号の再発行をしてくれた。仕事だって、ボーダー隊員を募集していることを知った後にすぐ応募し、見事受かってみせた。

 その行動原理は自分が生きていくため、というのも勿論だが、何よりも彼の心を占めていたのは、

 

「小町を絶対に死なせない」

 

 ということであった。仕事重視の生活の結果は、妹の家出という最悪の事態であったものの、その生活も全て妹が苦労せずに生きていけるようにするためだったのだ。それを理解している小町は、八幡に弱い所を見せることがこれ以上出来ない。ただでさえ大きい彼の負担をこれ以上増やすことは、彼女には出来なかったのである。

 

 そんな最中のアレ。額をさすりながら。態度こそ悪いものの心配してそうにこちらを覗き込んだ時の顔に、少しだけ、ほんの少しだけ、また泣きたくなってしまった。

 

 しかし小町は顔に出さない。口には絶対に出さない。もし出したら八幡が心配してしまうから。彼が小町に依存しかけているように、また彼女も八幡に依存しかけているのである。

 

 弱みを見せられない少女が成長するのには、もう少し時間がかかりそうだ。

 

 

 

 

 

 

    *

 

 

「……で?何か申し開きはあるのか?」

 

「こんな事になるだろうと思ってたから無視してました」

 

「正直でよろしい。フッ!」ゴンッ

 

「ぷげらっ!?」

 

「相変わらずなのね、比企谷くん」

 

「ヒ、ヒッキー……大丈夫?」

 

「あの人の拳、なんてスピードしてんだよ……」

 

 

 謀ったな 千葉に行こうと ついて行き 待っていたのは 独身教s

 

「比企谷?」

 

「ハヒ」

 

 待っていたのは 読心(独身)教師 ハチマン 涙の一句

 

「小町ちゃん、やっはろー!」

 

「あ、結衣さん!やっはろーです!!」

 

 頭悪そうな挨拶やめーや。それより

 

「小町ちゃん?つか小町?」

 

「楽しいキャンプになりそうだね、お兄ちゃん!」

 

「………………」

 

「ヒッキー抑えて!ちょっと気持ちは分かるけど!」

 

「分かってしまうのね、由比ヶ浜さん……。貴方も大人になりなさい」

 

「雪ノ下。他人に騙されて自分の嫌なこと、そうだな……マラソンとかさせられる羽目になったらどう思う?」

 

「潰すわね」

 

「せやろ」

 

「怖い!? 怖いよ二人共!!」

 

 うん。奉仕部って感じがしてしまうな。と、チラリと横を見ると。

 

 

 

 キラキラした目でこちらを見る我が妹の姿があった。

 

「ふおおおおお…………!あのお兄ちゃんが、雪乃さん達とスムーズにお話してる……!」

 

「小町さん、これは私の教育の賜物と言っても過言」

 

「だな(だと思う)(ですね)」

 

「なんですって?」

 

 ピタリと息の合う俺達。由比ヶ浜は思う、と断定を避けてるのに対して、あまり面識のない妹の断定具合がまた酷い。

 

「おい。漫才はそこまでだ奉仕部諸君。これ以上遊んでいるとシャイニングフィンガーソードを」

 

「…………」

 

「怒りと悲しみはともかく、愛はありますか…………?(小声)」

 

「取り戻す!!ホワタァー!!!!」

 

「ぶべらっ」

 

「…………」

 

「平塚先生。貴方が乗っかってどうするんですか?大人としてもう少し確りとして下さい」

 

「はい」

 

「貴方もよ比企谷くん。いくら先生がまだ独り身「グハァ」だからって、そんな悲しい「ゴブゥ」先生も一応女性「ガッ」なのだから結婚できるように「……」と願いながらも紳士になりなさい」

 

「お前が一番ダメージ与えてるからな?」

 

 先生にも容赦のない、というかオーバーキル気味の言葉の暴力、さすが雪ノ下である。こちらに矛先が行かないとこうもありがたいものなのか。……というか俺は騙されたんだ。早く帰って俺はエアコンの効いた部屋でぐーたらしなければならない。その為にも一刻も早く……ん?なんか、あっれー?見たことある顔がこっちに来てるなー。

 

「はちまーん!!!」

 

「戸塚ァ!?なんでここに!?」

 

「僕、部活が休みなんだ。だから手伝おうと思って!」

 

「さいちゃんやっはろー!!」

 

「あ、やっはろー!」

 

え、なにそれやっはろーって。ちょうかわいい。もっと流行らせ!

 

「おはようございます」

 

「「「「「!!!??!?」」」」」「あ、おはよーいっちゃん!」「戸塚君、おはよう」

 

背後からアイサツ! おれたち は おどろいた !

 

……って、え?

 

「なんでいっちゃんもここにいるの!!?」

 

「ああ、言い忘れていた。今回は戸塚と天海が手伝ってくれることになった」

 

「言うのが遅すぎるよ、平塚先生…………、? いっちゃん、その子は?」

 

と、ここで由比ヶ浜が疑問を唱える。気になったので天海の方へと振り向く。

 

 

 

 

 そこには、天海と同じ髪の色をした長髪、蒼い瞳にパッチリとした目。車椅子に乗っている姿は、薄幸で病弱な美少女のテンプレをこれでもかと言うほど抑えている、そんな少女がいた。

 

「見送りたいらしくて。僕の妹」

 

「はじめまして。天海夏菜です。いつも…兄がお世話になってます!」

 

 これに対する反応は本当に様々で、

 

「へー!かわいーー!!!!ね!ゆきのん!」

 

褒めちぎる者。

 

「天海君もそうだけど、妹さんも美形なのね」

 

冷静に評価している者。

 

「私もあんな感じ出せたらもっと早く結婚出来てたんだろうなあ」

 

悲壮感に包まれている者。早く誰か貰ってあげて。

 

「いっちゃんの妹、綺麗だね、八幡!」

 

純粋に感心する者。

 

「……ああ」(天海……お前がシスコンになるのも一応納得できる)

 

複雑な気分になりながらも好敵手を認める者。そして、

 

「…………同じポジション、負けられない……!!!」

 

対抗心もこれでもかと燃やす、一人の妹がいた。お前が一番やで。

 

 

 

「で、これいつ出発するんだ?」

 

「「「「「「…………あ」」」」」」




初タイトル詐欺です。ごめんなさい。これいつか手直ししたいなあ。勉強の合間に書くと心に余裕がなくてダメですね。

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皆が元ネタを待ってる

・キッチーン以下略
『伝説巨神イデオン 発動篇』のワンシーン。グロかったです。主人公であるユウキ・コスモの「グレンキャノンもだ!!」と「バッフ・クランめえええーーー!」は有名ですね。アガサ・クリスティー氏の小説に「そして、誰もいなくなった」というものがありますが、この作品では本当に誰もいなくなるんだよなあ。

・富野関連
イデオン!ザンボット3!ダンバイン!の三連コンボで相手は死ぬ。イデオンやダンバインは主人公が死にますし、ザンボット3では主人公のパートナーが二人共死んでしまいます。救いがない最終回に定評がありました。白富野、特にキンゲは個人的にとても好きな作品の一つです。主人公の告白は必見やね。

・ブレンパワードOP
見て。としか言えません。これ言葉で説明したくないです。

・某キラ
それでも!守りたい世界があるんだ! 種ふつう種死途中まですき途中からきらい
種死のあのシーンで死んでたら文句ありませんでした。なんで復活させたんですかねぇ。

・アイエエエエエエ
ニンジャ!?ニンジャナンデ!?

・シャイニングフィンガーソード
Gガンダムの作画だいすき 機動武闘伝Gガンダムの主人公、ドモン・カッシュがスーパーモード時に繰り出す技。『愛と怒りと悲しみのぉぉぉ!シャイニングフィンガーソーーーード!!』

・取り戻す
YOU は SHOCK! 北斗の拳OP『愛をとりもどせ!』より。




いろいろと今回ごめんなさい、ではでは。

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