深夜、こっそりちょっとずつ書いてたのがある程度伸びたので気休め程度に投稿。次の投稿はそれこそ2月の終わりくらいになりそう。
~前回のぼっち、みっつのできごと~
・姉ノ下「お ま た せ」 三人のぼっち「「「こないで」」」
・姉ノ下「ほら、見ろよ見ろよ」 比企谷「もう終わりだぁ!(レ)」天海「生きる意味を失う(レ)」
・天海「ベストを尽くせば結果は出せる(至言)」雪ノ下「何いってだこいつ」
レスリング成分多めだけどゆるして
「……タイマーを買ってみた」
「あ?何だそれ」
「『サンダータイマー』。台所から離れてても十分に聞こえる音らしい」
「なぁ、すごく嫌な予感しかしないんだが」
「……奇遇。僕もそう思う。だけど使ってみてからじゃないと」カチッ
「ちょ、お」
『あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ』バンッ
「ハァッ、ハァッ……五月蝿すぎるだろ!絶対却下だ!」キーン
「……残念。でも、これは当然」キーン
「どうしたんすか比企谷先輩!?なんかいま凄い声が……」
「いや、天海が持ってきたこの不良品タイマーが……あ」
『あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ』
「うるせえええええええええええ!!」
※茶番タイトル『ああああああああああああああああああああああああああああああ』
文字数稼ぎじゃありませんがごめんなさい。やりたかったんです。サンダー兄貴すき。あ、ほんへには全く関係ありません。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
突然だけど、影浦先輩と戦った。遠くから見ていたらこちらに気づいたようで、声を掛けられたので折角だからお願いしてみた。
そしてその結果だけれど。
とても良い経験だった。負けはしたけど、それ以上に得たものはとても大きかった。
まず一つ。例の技術、教えてもらえるらしい。我ながらあの時叩いた大口は中々阿呆らしかったけど、それもまた高ポイントだったようだ。
マンティス――――二本のスコーピオンを繋ぎ合わせ、瞬間ではあるがその射程を一気に伸ばす技。基本レンジがとても近い僕が銃手や射手に対抗するためには、どうしてもこれを覚える必要があった。それに、オサレな台詞回しをする死神の漫画で関西弁の銀髪さんがあんな事してた気がする。漫画の技の再現は、一種の憧れ。無論、ちょっとやそっとで覚えられるなんて思ってはいない。何回も何回も失敗して、モノにする瞬間。それを目指してただ励むだけ。
もう一つの大きな経験は、影浦先輩がお好み焼きを焼けるのを知ったこと。本来は料理のレパートリーに入っていなかったし、入れるつもりも無かったけれど、話を聞いてみると中々面白そうだった。だけど詳しい話はお店で、らしい。何というか、意外と抜け目ないと思った。意外と。
買い物にでも行こうか。そろそろ冷蔵庫のストックが……。
「あっ、天海君!お疲れ様!」
? この声は聞き覚えがある。確かそう、どこかのラーメン屋で……ああ。
振り向いてみれば想像通りの人物がそこにいた。人の名前を覚えるのは苦手だけれど、彼女の事は覚えている。何故なら、彼女は僕の同志として記録されているのだから。
「こんにちは、三上さん」
「うん、こんにちは」
三上歌歩さん。少し前にラーメン屋さんで出会った仲間。友達とは違った何か。同志以外で表現するのは難しい。少なくとも友達、ではないだろう。何故なら僕は彼女に頼んでいないのだから。
「あのね、美味しいラーメン屋さんを見つけたんだけど。天海君も行かない?」
「……聞くまでもないとは思うけど。何ラーメン?」
腕を組んで首を横に振られた。アニメとかのキャラだと「チッチッチッ」と人差し指を立てて振るのだけど。少し誇ったような顔で無い胸を張っているその姿は、そう。
『可愛らしい』。というか、優希ちゃんと比べるのが間違っているのか。あの子は別格だ。
「それは愚問だよ天海君。勿論…………」
勿論。
「「豚骨」」
ぱしっ。
やはり三上さんは分かっている。ラーメンのスープにおいて何が最も美味か。数多くの派閥が存在するけれど、僕達からすれば豚骨以外の選択肢は無いに等しい。
勿論、それは他のスープを否定しているわけではない。僕は醤油も好きだ。味噌はあまり合わないけど、塩だって嫌いじゃない。ラーメン、という括りで良いのかは怪しいけど、ちゃんぽんだって好き。ただ、それらが豚骨を超えられないだけ。壁を超えるにはあと一歩が欲しいのだけど、その一歩を持つスープや麺とはまだ会えていない。何より、今はそんな事を考えている場合じゃない。僕達にはまず豚骨ラーメンを食すという使命があるのだから。
「部屋に、書き置きだけ」
「うん。じゃあここで待ってるね?」
「ん」
わざわざ待ってくれるらしい。本当に三上さんはいい子。クラスの男子が彼女を狙うのも案外分かる気がする。
*
「ここだよ!」
「……お腹すいた」
僕達が電車を使ってやってきたのは、千葉県の松戸市にある『も○や』。赤い建物に黄色の看板。店自体は結構小さそう。取り敢えず一枚写真を撮る。ぱしゃっと。
「入ろうか」
「うん!」
入り口に近づくと自動ドアがわたしのたーめーにー……ひらいてくーれーるー。だけど別にここにはエロ本を読んでいる親父はいないのでとっとと中へ。
「っらっしゃいませー!お二人様ですか?」
「……」
「お座敷でもカウンターでも、お好きな席にどうぞー!」
オフタリサマデース アイヨー
「カウンターでいいかな?」
「ん」
80年代くらいのPOPが流れる店内を歩いて適当な席に座り、店内を見渡した。内装は普通。……だけどテーブルの上にあるものは普通じゃない。いや、その物が、じゃなくて、量。
「……これ」
「私も初めて来たときはビックリしちゃった。すごい量だよね-!」
ごま、紅しょうが、高菜!G、B、T!って感じで丼にドンと盛られている三種のトッピング。今まで小さな器に入れられているのは何回も見たけれど、ここまで豪快に置いているのを見るのは流石に初めてだった。
「はい、メニュー」
「ん」
メニュー自体は割りと普通だった。らーめん、チャーシューめん、ネギらーめん等、豚骨の具材としてはオーソドックスな感じ。それよりも驚いたのは、値段。
「ご注文をどうぞー!」
「安い」
「だよね。最近だと、どこも700円とかくらいはするんだけど、ここはずっとこの値段なんだって!」
「替え玉100円はつよい」
「あの、すみません、注文は……」
「つよいね」
割りと興奮しながらメニュー片手に値段の談義。ふと、あるものが気になった。
「すみません、ご注文……」
「……この『豚とまと』は?」
「うーん、私もこれは食べたことがないんだ。初めての時はラーメンだけっ!って決めてるの」
「すごくわかる」
「でしょー!」
「あの、あの……」
「「あっ」」
ごめんなさい。
「……この『豚とまと』って、何ですか?」
「これはトマトと挽肉を煮込んで作ったもので、何回か豚骨スープを入れた後、つけ麺みたいな感じでお召し上がりいただけるトッピングです!」
「成程」
「じゃあ私、挑戦してみようかな。すみません、らーめんバリカタとトッピング豚とまとで!」
「……僕はチャーシューめんカタメで」
「かしこまり!あっ、お冷どうぞ~!」
優しくお水を置いた後、店員さんは厨房へと消えた。
「……お客さん、少ないけど。ここ、マイナー?」
「ううん、そんなことないよ。私が来たときはたくさんいたし……タイミングじゃないかな?」
携帯の時計を見てみると、なるほど、と思えた。現在時刻は11:54分。夏休みと雖も今は平日のお昼前。また、他の席を見るにどうやら開いたばかりのようだった。僕達は中々ラッキーな時に来られたみたい。
「そう言えば天海君、お昼に抜けて大丈夫だった?比企谷君たちの御飯、いつも天海君が作ってるんだよね?」
「問題ない。そうめんとめんつゆがまだ残ってる。一日くらいなら彼らでもなんとか出来るはず。比企谷くん、夢は専業主夫らしいから」
「あ、アハハ……。比企谷君らしいなぁ。前からずうっとあんな感じだったし」
「……気になる」
「……天海君には教えちゃおっか。あのね…………それで………………しかも……」
「ん……えっ………………想像は出来るけれど……」
彼の弱みを握った気がする。今度話してみよう、口止め料を貰えるかもしれない。
*
「お待たせしました、らーめんバリカタと豚とまと、チャーシューめんのカタメです!」
「ありがとうございます!」
「……どうも」
とは言いつつも、実はあんまり待ってない。時間にして5分も経っていなかった。
「ほぅ……」
写真をぱしゃり。それからスープを一口。
「……これは、美味しい」
「うん、とっても美味しいよ!」
インスタントやファミレス等の豚骨ラーメンというのは、大抵味が薄い。すっきりした、といえば聞こえがいいかもしれないが、僕が豚骨ラーメンのスープに望むのはそんなすっきりあっさりとした味わいではなく、こってりと濃い味なのだ。さらに言えば、同じ博多豚骨というジャンルでもその味は様々で、さっきのファミレス等といった所ほどではないが、『味わいがすっきりした』スープもあれば僕好みのスープだってある。さて、そこでこのスープだけど。
好みドストライク。スープはもう満点と言っていいくらいだ。臭みのある濃厚な豚骨。実に好ましい。表現がとても難しいけど、とにかく濃厚。これまで食べてきたお店の中でもかなりのものと言っていい。リピート案件が出来てしまった。夏休みの内に是非もう一度来たい。
隣を見ると、そちらもとても美味しそうにスープを飲んでいる。いや、このスープであれば飲む、というよりは啜る のほうが正しいのかもしれない。レンゲに残る油がそのコクを教えてくれる。隣からは既にキラキラとしたものが出てきている。このままどこかに遠征に行ったら色々と持ち帰ってきてくれそう。
次は麺。先ずは少なめの一口を啜る。……成程。
「カタメじゃ柔らかい」
「む、むぐぐ。……んんっ!そうなんだ、私も初めは普通で頼んでみたんだけど……替え玉はもうバリカタにしちゃった」
「ん。そうなるね」
麺は博多風のストレートな細麺。この口に残る小麦の甘さ、恐らく低加水麺だろう。……博多系のお店は大体低加水麺だった。咀嚼する度に仄かに香るその甘さとスープを通した事により麺に加わった濃厚さが非常に良いマッチングを見せている。もっとゆっくりと味わいたいけれど、時間が経ってしまうと直ぐに麺がやわらかくなってしまう。急いで食べないといけない。麺を多くスープの面、水面と言っていいのだろうか、否。これは水ではない。よってスープ面――――から出すと、もわぁっと湯気が舞う。少しだけ息を吹きかけ冷ましていると、横からパシャッと音がする。お箸を空中で固定したまま振り向くと、三上さんが笑顔でこちらに携帯を向けていた。
「……何?」
「あはは、美味しそうに食べてたからつい。駄目だった、かな?」
「構わない。僕もかなり気に入った。情報料、みたいな」
「あっ、じゃあもう一枚だけ撮らせて!」
……こういうところは実に女の子らしい。他の人に比べてどちらかといえばお淑やか、という感じだったのだけど、こうして話してみるとやはり活発で良い子だと思う。さっき見た時に笑顔で麺に手を付けていたのを見ると、こちらまでなんだか穏やかな気持ちになってしまう。
「……問題ない」
と、ふと彼女の丼を見る。
綺麗さっぱりと麺が消えていた。
……食べるの、早くない?僕がゆっくりと食べすぎたのか。博多豚骨のその特徴の一つはなんといってもその替え玉システム。替え玉、という概念は博多が発祥と言われているくらいだ。幸い財布には余裕もあるし、ここは素早く、そして沢山食べるとしよう。
「すみませーん!」
「はいよっ。ご注文は?」
「「替え玉、ハリガネで」」
「毎度!替え玉ハリガネ2丁ー!」アイヨー
元気にそう叫んで店員さんが消える。そう言えば。
「豚とまと、だっけ。あれは、どう?」
美味しければ次に来た時に是非挑戦してみたいのだけど。トマトだから。
「ん?えーとね、実はまだ食べてないの。替え玉した時にって」
「成程。確か食べ方は、スープをレンゲ2杯入れてから――」
「つけ麺みたいに、だったよね」
頷いて返す。見た目は中々グロテスクだけど、トマトなので苦にならない。寧ろ煮込んでいることによって甘酸っぱい香りが広がり、もうこれだけでも美味しいんじゃないかと思えてしまう。赤の中にチラホラと見える挽肉。それは一種のアクセントにもなる。梨汁、もとい肉汁ぶsy……そこまで多くなかった。
それにしても、麺もスープも美味しいだけに少しチャーシューが弱いのが惜しい。チャーシューめんを頼んだ為に全て食べたけれど、このスープに合わせるのであればもっと固い方がいい。柔らかすぎて、スープの濃厚さに肉の風味が完全に負けていた。ただ、それを込みにしても十分満足できる食事なので気に留めておく程度にしておく。
「へい、替え玉になります!」
いつの間にか現れていつの間にか消える謎の店員さんから替え玉を受取り、素早くスープの中へ落とす。その後箸を入れて少しだけほぐした後、素早く口の中へと入れた。
……うん、この硬さ。この小麦の味わい。これこそこのラーメンの醍醐味。直ぐに食べてしまうのも悪くない。けれど……やはりこちらも気になる。見ると、どうやら丁度豚とまとに豚骨スープを入れ終えたようで、ゆっくりと器の中をかき回していた。
「三上さん」
「うん、それじゃ早速いただきまーす…………」
暫く沈黙。音は三上さんが麺を啜り終えた後一切の鳴りを潜め、ただ彼女の口が動くだけ。器の中には少しだけ残った麺と挽肉が浮いている。コクンと喉が鳴る音を聞いた後、彼女の顔を見る。
すごく輝いていた。漫画みたいに、目がキラキラしてる。
「美味しい!すごく美味しいよこれ!あのね、豚骨ラーメンなのにイタリアンなの!トマトの酸味とスープの濃厚さがうまい具合に噛み合ってて、うーん、えっと……そう、ミートソースみたいな感じ!でもやっぱり豚骨もしっかり残ってて、お互いが殺さず邪魔せずに成り立ってるって言えばいいのかな?」
「OK。 ……だけど、落ち着いて」
「あ、ごめんね。だけど天海君もこれ食べたら吃驚すると思うよ!」
そう言って器を渡された。彼女の勢いが凄い上、僕自身とても興味があるのでお言葉に甘えて頂こうと思う。まだスープの海に入って間もない麺を掬い上げ、照明によってトマトの赤色が輝いている器へと静かに浸す。麺を持つ箸先ごと浸した後、汁が飛ばないようゆっくりと持ち上げてみた。
小麦色、というには薄い色の麺には赤い汁が所疎らに散らばっており、また挽肉がいくつか麺に絡んでいる。見た目的には確かにパスタに見えなくもない。
それを顔に近づけた後、これまた汁が飛ばないように箸を動かしながら麺を啜った。
「……!」
「どう? どうかな?」
……成程。これは三上さんが興奮するのも分かる。
「とても美味しい。これは……そう、今まで食べたことのない味。挽肉の旨味とトマトの酸味、スープの濃厚さが全て活きてる。あえて言うならトマトの酸味はスープで抑えられているけど、寧ろそれがこのつけ汁を美味しくする一つのキーとして成り立ってる。麺自体の美味しさを殺さないようにうまい具合に中和してる……のかな。さっき三上さんが言ってたミートソース。良く言い表せていると思う。豚骨ラーメンのお店でイタリアンのような味を楽しめるとは思っていなかった」
凄く興奮しているのが分かる。こんなに饒舌になったのは何時ぶりだろう。多分ナツについて語った時くらいぶりじゃないだろうか。相変わらず表情筋は動かない――――動かさないようになったのだけど、どうか察して欲しい。
次来た時に食べる。そう言って器を彼女に返してから再び自分の丼に手を付けた。……さっきのイタリアンを食べた後だからか、替え玉なのに味が新鮮。交互に味わえるシステムはとても面白い。何より100円という破格の安さがより感動を引き立たせている。学生の身分、給料が出るとは言え少しでも節約したい中でこれは嬉しい。次に来たときは高菜や紅しょうがも入れてみよう。味のバリエーションはまだまだありそうだし、リピートの中で新しい味を見つけるのもトッピングの醍醐味。次に来られる時が、楽しみ。
*
「っんんー!ふぅ、美味しかったね!」
「……うん、美味しかった」
外に出てから軽く体を伸ばす。結局二人共二杯ずつ替え玉をしてしまった。僕よりも早くペロリと食べ終えた三上さんが、
「うう……カロリーが…………」
と嘆いていたけれど、帰るときはまた電車に乗ったりして歩くのだから燃やせるだろう と適当に言ったら納得してくれた。正直、彼女は細すぎるので、少しくらい脂肪を溜めても大丈夫だと思う。甘いものが大好きな比賀さんや由比ヶ浜さんみたいに、ある部分でも成長が望めるかもしれない。……勿論、彼女にそれは伝えない。女の子というのはそういう部分に関して非常にデリケートなのだから。
「やっぱり感動を共有出来る人がいると全然違うんだね!私、今までこういうのって一人だったから……」
「……僕もずうっとそうだから、気にする必要はない。それに――」
「それに?」
「今日、とてもいい経験が出来たのは三上さんのお蔭。……有難う」
「…………うんっ!」
食事は一人で、孤独に、静かに、ゆったりゆっくり楽しむものだと漫画で見たけれど、今回に関しては僕はそれを否定する。いつもはそれが落ち着いて食事に集中できていいけれど、それでもたまにはこうして、『分かる』人達と共有するのもいいんじゃないか。
「また一緒に食べに行こうね!約束!」
「……うん。約束」
そう、思えた。
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なんか最近、天海も大志も妙に張り切ってんだよな。これで俺が何もしなかったらあいつらからの視線が怖い。大志なら痛くも痒くもないが、天海の感情の消えた目で見つめられるのはとても不気味なので少しは頑張ってみようと思う。自らの安寧の為に努力する。うむ、素晴らしい。
というわけで。
「今日は森林地帯に来ております」
「『頑張る』とは一体」
「バッカお前、マッピングはどんなオンゲでも超大事だろうが」
「あー、確かに」
これで納得するあたり完全にゲーマーですね。
市街地A。市街地Bに市街地C。工業地区や河川敷。色んな場所があるが、そもそもチームランク戦において、MAP選択権というのは常に変動する。で、もしも俺らが全く知らない……つーか主に天海と川崎だな、一応俺は観戦で見てるだけ見てるし。そんなMAPが出てきた場合、地の利は間違いなく相手に行くだろう。
だが、もし俺が全ての地形、そして敵が通りそうな道を網羅していれば?
そう、
「より高度な嫌がらせが出来る」
「うわぁ……」
「で、その位置を知らせてたら必然的にあいつらも動くだろ?つまり俺に余計な仕事が回らなくてすむわけだ。敵同士で戦わせて川崎弟が漁夫の利の狙うことだって出来る。その場合も俺の仕事は減る。まさにwin-winってやつだ」
「どこまでも面倒くさがりですねー」
呆れた声が聞こえるが知ったこっちゃない。我が身が一番かわいいんだ。ああ、違う。小町と我が身が一番かわい……戸塚も追加するか。
「天海も負けてねーだろ。あいつ、自分と妹の事以外になったら途端にだらけだすしな」
何回「……面倒臭い」って台詞を聞いたことか。付き合いが長くなってくると、表情が全く変わらなくてもなんつーか、オーラっぽい何かで分かるんだよな。「あ、コイツマジで面倒くさそう」って。今のとこそれが分かるのは俺と大志と比賀と……国近さんも最近は分かるようになってきたみたいだな。あの人遊びに来すぎだろ。あと俺の首を締めるな。何故比賀や天海にそれがいかないんだよ。
ただ、さっきも言ったように天海は自分の事、特にバトル方面になると途端にストイックになる。ありゃ米屋と同レベルだ。自分より強い相手にガンガン向かっていって負けてその記録を見て悪い所を修正して……そこまでして強くなりたい理由は俺には分からん。
兎に角俺は俺の仕事の為に働くだけだ。ただ、運良く。もし、もしも凄く運良くA級を目指せたらより給料が増えてラッキー、というのもあるわけだが、今のところはなんとかやっていけてるからそこまで拘らない。
「お前の黒さも一応作戦の要だからな。喋りながらマッピングしてくから聞くか適当に録音しとけ。つか録音はしといてくれ、んで後であの二人にも聞かせとけ」
「どこまでも他人任せ……でもないのか。うーん?ま、どうぞー」
「俺は仕事はちゃんとする派なんだよ。残業せずに帰りたいからな。んじゃま、早速説明するぞ。この森林地帯についてだが、まぁ、見ての通り、森だ」
「森ですねー。いや、名前で察しはつくんですけどねー」
「まぁな。んで、大木やら茂みみたいな遮蔽物もかなり多いから、ここはスナイパーからしたらかなりキツイだろう。ざまあみろ川崎弟。反面、天海とか緑川みたいなアタッカーからするとかなり有利なMAPだな、やったぜ。」
「本音がダダ漏れですけどー。一応、録音してるんですから」
「それはアレだよ、アレ。たまにいるだろ?叩かれて伸びるやつ。悔しさをバネに、みたいな主人公タイプ。俺はそういうのを川崎弟に期待してだな」
因みに俺は叩かれても褒められても基本伸びない。成長のキッカケになるとしたら、脅し(加古チャーハン)とか脅し(筋トレメニュー追加)とか……つまりは恐怖によって伸びるわけだ。絶対誰にも言わないけどな。死ねるから。
ああ、例外はある。二人の銀髪天使、一人は腹に一物抱えてそうだが……あいつらに唆されたら間違いなく俺はどこまでも頑張れる。24時間だって余裕、かもしれない。
「言い訳くさいなー。あと大志君、今日は生駒先輩のトコに行ってましたよ」
「えぇ……」
あいつは何を目指してるんですかね……?荒船さんじゃあるまいし。いやあの人は攻撃手からの転向だったな。それよりも、だ。
「比賀」
「はいー?」
「お前、もし俺ならここでどう動く?」
「え、えー?うーん……ちょっと待って下さーい」
「あいよ」
その間に出来るだけMAP覚えとくか。それにしても、このMAP。
『足、なかった』
『』
……千葉村のアレ、思い出すよなぁ。いや、思い出したくなんかないんだけど。寒くないはずなのにブルッときた。何が一番印象に残ってるかと言われれば、あの天海の表情が一気に崩れたことなんだけどな。思い切り震えてたし。
俺もだった。
基本的には不規則に木が並んでいるだけなのだが、所々で大きな草むらがあったりするのを見つけたので早速頭に叩き込む。能力を使ってもいいのだが、頭が痛くなるので却下。誰だって我が身が可愛いんだ。
「比企谷せんぱーい、ギブアップですー」
「あ?いいから考えついたの言ってみろ」
「と言われても、バッグワームとかカメレオンで隠れて奇襲、くらいしか思い浮かびませんでしたー。森ならバッグワームだけでも割りと隠れやすいと思ったんですよねー」
「……お前、一番大事な事忘れてんじゃねえか。ほらよ」
「うおっと、ナイスキャッチです私。ってこれ、先輩のトリガーじゃないですかー!」
「トリガーホルダー見てみろ、答えが分かる」
バッグワームとカメレオンを除いた、俺のトリガー編成。アステロイドにバイパー、シールドにメテオラとスパイダー。以上。
ここで取る行動なんて決まってるも同然だ。
「自分から狙いに行くとか面倒だし、スパイダーにメテオラくっつけた地雷を辺り一面にばら撒く以外ねえだろ」
「うっわぁ…………」
「さっき言ったろ。このMAPってのは基本的にアタッカーが有利だ。んでアタッカーっつーのは基本接近戦、つーか殆ど接近戦だ」
「まぁそうですねー。アタッカーで射撃トリガー使ってる人って、メテオラ除いたら王子先輩と樫尾君くらいですっけー?」
「……よく見てんな」
「ふふーん」
結構感心はしているが、浮かべているであろうドヤ顔を想像すると褒める気を失くすもんだな。やはり褒めたいドヤ顔、褒めたくないドヤ顔というのは存在する。例えば褒めたくなるドヤ顔、まあ戸塚だな。後は双葉とか。褒めたくないドヤ顔は沢山いるから考えるのさえ億劫になりそうだ。
そうじゃない。スパイダーの話だ。
「王子さんも樫尾も結局はアタッカー。フィニッシュは弧月やスコーピオンになる。つまりアタッカーは態々移動して近づかなければならない。あとは簡単な話だな」
「……あ、だからその地雷スパイダーか」
「そう言うこった。更に言うとこの森林地帯の遮蔽物の多さはスパイダーの仕込みやすさに繋がってる。草むらのせいで見えにくいし木が多いから引っかかりやすい。もし気付かれても変に処理すればメテオラが爆発するし相手の行動に制限をかけられる」
「はえ~、すっごい嫌らしい……」
「ただ勿論デメリットはある。一つ。これを使うと必然的に天海の行動にも制限がかかりやすくなる。あいつもアタッカーだからな。ま、足元だけにスパイダーを置くのなら大丈夫だとは思うけどな」
「え、そりゃまた何故」
最近の天海の戦闘記録を見てみると、あいつが緑川にピンボールを教わった日から一気にグラスホッパーの使用頻度が増えた。スピードで言えば緑川に分があるが、キレや軌道で言うならば同レベルに達しているだろう。そこから出た結論。
「あいつなら木とか足場にしそうじゃね?」
「あー、納得ですー。なんか、忍者みたいな! ワザマエ!」
軽やかなピンボールからのスコーピオンの一薙ぎで、しめやかに爆発四散!タツジン!でも爆発四散するのは忍者なんだよなぁ……。よってキャンセルだ。
「天海が爆発四散してどうする。それより二つ目、これが一番重要だ。何よりも大事なことだから良く聞いとけ」
「はーい」
「もし作戦が読まれてた場合、優先して俺が狙われるから面倒だ」
「うーんこの」
仕事したらとっとと逃げてベイルアウトするでも良し、さっき比賀が言っていたようにスパイダーに気を取られた所で奇襲を掛けてもいい。ただいずれにせよ結局は仕掛けるだけの時間が欲しい。仕掛けている途中に狙われでもしたら厄介だが、だからと言って隠れながらだと時間がかかる。
「だからこそ天海がここで光る」
「え、天海先輩ですかー?」
「……あいつ何故かスパイダー入れてんだよ。理由を聞いたが、『ごめん。教えられない』らしい」
「…………」
「ま、スパイダーの張り手が増えるって事だな。俺が逃げてる間に天海が張る。グラスホッパーもあるから逃げ足も早いだろ、多分」
「私からすると、アレってけっこー謎チョイスなんですよねぇ……」
あいつが拘ってスパイダーを抜かない理由を聞ける日は何時なのだろうか。多分来年のランク戦か10月になれば聞けるのかもしれないな。別にトリガー編成なんて個人の自由だし、あいつのトリオンも中々多いらしいから多少詰めても問題はないだろう。ただ、
「グラスホッパー入れてりゃ十分だとは思うんだよな」
最近また天海は新しい移動技術を覚えようとしている。もしそれを会得出来たら、尚更スパイダーを別のトリガーに代えたほうがいいのではないか。それともあいつには何か狙いがあるのか。それは分からないが……。ただ一つ言えるのは、
「もうすぐ昼だし一旦中断だな」
飯食ってからまた適当にマッピングしますかね。
「つーわけで終了だ。録音ストップ」
「はーい。今日のお昼は何でしょうね?」
「さあな」
訓練機器を終了させて比賀と合流。さて、今日は……ん?
『三上さんと御飯。そうめん、めんつゆ、及びトッピングの具材冷蔵庫にアリ。よろしく』
「「…………」」
普通に作った。
そうめんの味がした。
…………俺ら、天海に胃袋掴まれてるなぁ……。
私は近畿出身なので旅行で一度訪れただけなのですが、凄く美味しくて記憶にも残っていたためにスラスラっと書けたつもりです。あそこ美味しいですよね。
……夏休みのワンシーンの半分がラーメンになった。これ一応、バトルものと学園モノを適当に(禁句)組み合わせたコメディなんですけど。
追記 忘れてたので。
■TIPS ~どうでもよさげな設定をさらしていくなんかすごいアレ~
・比企谷 八幡 主人公() 社畜になったことにより多少マシになった捻くれ具合は働きたくないでござる思想に変化した。性格は多分隊内でも一番悪い。
・天海 樹 しゅじn……ヒロイ……んん? 表情の中の感情をきっちり読めるのは極限られた人達だけ。性格は多分隊内で一番謎。
・川崎 大志 今作の主人公。というかこの作品を書き始めたキッカケの一つ。でも周りの面子のせいでかなり苦労人。性格は隊内でも間違いなく一番純粋。
・比賀 優希 オペレーター。語尾を伸ばしているのはそういうキャラ付けをしたいからなんだとか。性格は隊内でも間違いなく一番黒い。
追記の追記(11/20 大体6時)
誤字報告をくださった方、ありがとうございます。忙しくて(建前)自分の前の話は大抵ヘタッピ文章のため見るのが辛くて(本音)中々そういうチェックができていませんでした。誠にありがとうございました!