二人のぼっちと主人公(笑)と。   作:あなからー

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 明後日に私立の試験があるので初投稿初失踪です。

 ■TIPS ~このネタいる??~
・黒江 双葉 加古チャーハンの事故率が減って喜ぶ人間その2。食えるだけで美味しいとは思えなかったらしい。そらそうよ。原作よりもつよくなりました。
・川崎 大志 主人公() 出番増やすの難しい……難しくない?一応隊のエースではある。周りが料理上手なので自炊出来るかどうか少し心配している。
・太刀川 慶 天海と戦って30-0でボッコボコにした人。J9J9...(情け無用) 加古チャーハンの事故率が減って喜ぶ人間その3……なのだがこの前運悪く事故った様子。
・加古 望 全ての元凶。でも太一よりはマシ。善意でトンデモチャーハン出してくるあたりは本物の悪系列なのではないか。最近の作品は「レモンとキウイのシナモンチャーハン」。

 前回の3つの出来事!

・開発室「サイドエフェクト分かったで」きぬた「これマジ?」

・(2学期)もう始まってる!

・ゆきのん「数学は出来ましたか……?(小声)」

 ひっきーゆいゆいあまみん「「「出来ませんでした……(小声)

 ゆきのん「じゃあオラオラ(補習)来いよオラァ!!」


 今回は割と真面目に書いた筈。


鉄棒の逆手ってあんまり使う機会ない

「あそこのメロディが格好いいですよねー、どんどん音が上がる所」

 

「テテテテテ↓ テ・テ・テ・テ・テ・テ・テ・テ・テ・テ・テ・テ・テテテテテテの導入がオレは好きっすね」

 

「……僕は始めのててん、てーん……ってところが」

 

「またお前らは昔のアニメ見てんのか。今度は何だよ」

 

「メガゾーン23」

 

「中学生に見せるアニメじゃねえだろうが!ヤバい場面になる前にとっとと……」

 

「(ヤバイシーン)もう始まってる!」

 

「15歳だから、15歳だから安心!」

 

「……僕、初めに見た時かなり吃驚した」

 

「ダメみたいですね……」

 

 

 ※茶番タイトル「スパ○ボDで強かったからDVD借りて見て後悔したおもひで」

 勿論ほんへには関係ありません。親や彼女と一緒に見てはいけないぞ!

 

 

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『ランク戦 30本勝負  ○風間 蒼也 対 天海 樹● 勝者 風間 蒼也  26ー4』

 

 結果を報告する電子音声が聞こえる中、二人はそれぞれ個人ランク戦ブースの一室を出て合流する。

 

「有難うございました」

 

「ああ」

 

 会話は無駄がなく、また短い。これだけで内容が通じるからだ。

 

「(あの場面での身の躱し方は今までに見たことも試したこともないものでした。僕の間合いならまだ追いつけますが自分の間合いが少しでも広ければ全く反応できません。……それと同時に長いリーチへの対処法も学び直す必要がありそうです。付き合ってもらって)有難うございました」

 

「ああ(、構わない。逆手のメリットをまた発見できたのはこちらにとっても収穫だ。あのスピードを活かせる事が出来れば俺達はもっと上に行くことが出来る。お前は自分の目に頼り過ぎている、本能に身を任せずにまずは頭で判断するように心がけろ)」

 

 先程の会話の内容を翻訳するとこうなる。形こそ違うものの同じ得物を持つ、尚且つ互いに剣士――片方は特殊ではあるが――だからこそこれで全て通じるのだろう。少なくともこの二人は相手の言いたい所がなんとなく分かっていた。普通に口に出して言えばいいだけの話ではあるのだが、樹も蒼也もそれよりまずリプレイを見返したほうが身になる事を知っている。自分たちの戦いを客観視出来るというのは大きいのだ。

 

 

 

 

    *

 

 

 

 さて、風間 蒼也の天海 樹に対しての評価は「飲み込みの早い凡人」である。また、樹自身それを自覚している。これに関しては、樹と個人総合1位である太刀川 慶が個人ランク戦を行った際により明確になった。

 

 天海 樹 という人間は、センスはあっても才能は人並みか、それより少し下程度だろう。3人が3人とも、そのような結論に達したのである。

 

 慶や蒼也は、自分がそれなりの才能を持っていると自覚している。そしてその能力を伸ばすセンスもあると分かっている。だからこそ彼らは自己研鑽を続け、だからこそ彼らは今の地位に立っている。攻撃手ランク1位と2位という座の源は、底知れない向上心と長年の努力からなっているのである。

 

 太刀川 慶という人間が1を聞けば10を知る とすると、風間 蒼也は1を聞いて8を知る となるだろう。そして天海 樹に関しても、1を聞けば6,7を知る程度のセンスがある。これは所謂飲み込みの早さ という観点から見た場合だ。

 

 では、才能を比較すればどうなるのか。3人の中で最も才能があるのはまず間違いなく太刀川 慶である。次点で風間 蒼也、そして……大きく離れてようやく天海 樹が入る。そしてそのトップ二人と樹との距離に他の攻撃手の才能を加えると、恐らくかなりの人数が彼らと樹の間に収まるだろう。その位、才能の差には開きがあった。

 

 言ってみれば、才能とは『器』のようなものである。『器』が大きければ大きいほど、その努力を多く詰め込む事が出来る。大きいほど、どこまでも伸びていく。そしてそれが溢れそうになった時、その器は拡張されてまた大きくなっていく。

 

 だが、もしも『器』が小さかったなら。その『器』に入る努力の量は限られており、余りを入れるのには器を拡張させる必要があるのだが、元の器が小さいために拡張する大きさにも限りがあり、長い時間を、大きな努力をしなければ一生大きな『器』に並ぶことはない。

 

 大器晩成、という言葉があるが、それはその名の通り『器』が大きいが為に全て収まりきるまでに時間がかかるだけであり、一度その器が収まってしまえばその器は一気に大きくなっていく。才能がある者がある一定のラインを過ぎてからグンと伸びだすのはその器が完成したからである。

 

 単刀直入に言えば、慶や蒼也の『器』はとても大きく、また樹の『器』は小さいのであった。いくら飲み込みが速かろうが、それを入れる器が小さければ全てを収めることは出来ない。器に収まり切らず、また拡張してもまだ収まらない努力は溢れてしまう。知識としては増えても実力としては結びつくことはない、「無駄な努力」分だ。

 

 「才能」は先天的なもの。「センス」は身につけることが出来る後天的なもの。だからこそいくら樹がセンスを磨き、飲み込み――つまりは知識の吸収を素早く行うことが出来ても、先天的な能力――英語で言うと「Ability」になるだろう――を得ることは出来ないのである。

 

 つまり蒼也の「飲み込みが早い凡人」という評価。これはとても正しい評価であると言える。凡人は天才にはなれないからだ。

 

「お前にはセンスはあっても才能はない」

 

 これを言うと傷つくかもしれないし、厳しいかもしれないが、自覚なくして成長はない。だから彼は樹に告げたのだが、

 

「分かっています」

 

 樹はそれを受け入れ、また自覚出来ていた。その口調に蒼也への怒りや恨みなどはなく、ただ平坦で、だが少しの悔しさ――つまり、才が足りない自分に対し悔いを感じているのである――を滲ませて。だからこそです、と蒼也よりも小さな剣士は続ける。

 

「才能のある人間が1の努力から10を得られるのであれば、僕は10努力すればいい。そうすれば、同じ」

 

 才能がない。それにも関わらずこの眼の前の小さな少年は自分に食いついてくる。蒼也はそれを評価していた。足りない才能を努力で補うという考え方を彼は好んでいるからだ。

 

 

 

 

 そもそも、風間 蒼也という男が天海 樹に初めに興味を持ったのはその努力量であった。

 

 蒼也が普段から行っている自己鍛錬の一つに仮想訓練室を利用したトレーニングがある。そこでは主にカメレオンを使用した隠密行動の特訓をしており、自らの隊員である士郎のサイドエフェクトに頼り過ぎることの無い様に自らの動きや技術、また精神を高めていた。

 

 また、その仮想訓練室には簡単な使用時間の記録機能があり、誰がその週に何時間ここを使ったか……といった情報を簡潔に表示する事が可能だ。その使用時間が長い順に表示される欄に、夏から一人の人間が増えた事に蒼也は気づき――――その人物に興味を示すのに時間はかからなかった。夏から毎週のように上位を独占している三人。

 

 

 風間蒼也。

 

 木虎藍。

 

 そして――新たに増えた人間である、天海樹。

 

 

 この一件が蒼也から樹への勝負の誘いのキッカケとなり、その勝負がまた互いに鍛錬をする関係が生まれるキッカケにもなったのだ。

 

 

 ……因みに彼ら三人は全員『このくらいの努力は当然の事だ』と考えており、またその使用時間は、気まぐれでそれをみた賢が「ヒエッ...」とビビる程度にはズバ抜けていたとか。

 

 

 

 

 

    *

 

 

 時を戻して現在の個人ランク戦ブース。その一角にはランク戦を観戦することの出来るパネルがあり、そこでC級隊員は彼らの対戦を賞賛し、努力のモチベーションとしたり、また正隊員が情報収集の為に観戦したりすることもある。

 また、ランク戦のリプレイは保存されており、ブースに置かれている端末や部隊室でそれらを閲覧することも可能である。

 

 その観戦者に、駿と陽介も混じっていた。見ていたのは勿論、B級21位の攻撃手とA級3位で攻撃手ランク2位の攻撃手との戦いである。どうやらお互いにスコーピオン以外は使わない取り決めをしているようで、映像にはウザいくらいに跳び回る樹の姿も消える蒼也の姿も見ることはなかった。

 蒼也が樹の胸を突き刺したのを最後に、パネルの画面から二人の姿が消える。

 

「よねやん先輩、最後のアレどう思う?」

 

「あー……読み合いで負けた感じじゃねーか?」

 

「だよね。センパイ、変なところでミスしたりするからなー」

 

 少しの間先程の戦いについて話した後、二人は樹の姿を探し始めた。ボーダーの内部は広いとはいえ室内だ、探していれば簡単に見つける事が出来る。二人が歩き出して数十秒、早速蒼也に頭を下げる樹の姿を見つけた。その横顔に相変わらず感情は見えないが、それを気にせず彼らは声を掛けた。

 

「よっ」

 

「こんちゃー」

 

「ん……駿くんに、米屋くん」

 

 ゆっくりと首を動かし、何時もと変わらぬ平坦な声。この声の調子が変わるのは不機嫌な時か戦っている時だけである。しかも全く表情筋が働かないので不気味と言われても仕方がない。少なくともC級の間では一定数陰口も存在した。勿論陽介達もその件については聞いたことがあったが被害者である樹が「慣れてる。言わせておけばいい」と気にもとめていない様子であった為にその話題は出さないようにしている。

 

 

 

 暫く3人であーだこーだと先程のランク戦について話していると、陽介が そういや、と思い出したようにある話題について触れた。

 

「スコーピオンを逆手に持つ奴ってかなり少ないけど、お前はいつも逆手だよな」

 

「ん」

 

 樹は誰が相手でも今のところスコーピオンを順手で持って戦っていない。敵が攻撃手であろうと、銃手であろうと。常に逆手だった。

 

「あー、それおれも気になってた!理由とかあるの?」

 

 その疑問に樹は少し考えたが、教えてもいいだろうという結論に至った。

 

「少し長くなるけど、いい?」

 

 と聞くと、彼らは笑顔で、

 

「おう」

 

「はい!」

 

「ああ」

 

「……あれ、返事が一つ多い」

 

 いつの間にか真顔の人間が一人増えていた。さすが隠密部隊の隊長、リアルステルスもお手の物である。

 

「……風間先輩、さっき別れてませんでした?」

 

「俺もスコーピオンを逆手で持つことがある。普段から逆手で持っている人間の意見を直接聞けばより応用も効くだろう」

 

 知らぬ顔で理由を説明する。その時に「直接」の部分を地味に強調していた意味を知るのは、この中では樹一人だけである。

 

 

 

 

 

 

 

「……僕が逆手持ちをするのには3つの理由がある」

 

 一番大事なのは3つ目。そう前置きして樹は話し始める。

 

「一つ目はメリットデメリットの話。まずは逆手持ちのデメリットから。これはさっき言っていたように、リーチが短い というのがある」

 

「まぁそうだよね。あと手首とか指とかも動かしやすいし突くのも切るのもも逆手に持つより普通に持ったほうが長いし」

 

「その通り、駿くん」

 

「え?」

 

「『手首とか指とかも動かしやすい』。これは逆手持ちのデメリットでもあるのだけど、また同時にメリットでもあったりする」

 

「ん?どういう事だよ?」

 

 陽介がそこに反応をした。彼は槍弧月と同時にスコーピオンも持っているからである。逆手での扱いを学ぶことが出来ればより相手の裏をかくパターンも広がる可能性がある。彼にとってはこういった話は学校の授業なんかよりも数十倍楽しいものであった。

 

「手首や指が動かしにくい、つまり可動域が狭いということは、逆に言えば『固定されやすい』という事でもある」

 

 それを今から説明する。そう言って、樹はスコーピオンを右手に展開した。

 

「こうして実際に持ってみると分かりやすいけれど、普通に持つと…………」

 

「待て待て、逆手になってるぞ!」

 

 慌てて陽介が訂正を入れる。樹は少し黙ってからキチンと得物を順手に持った。

 

「……普段から逆手だったからつい。……こほん、順手で持つと切る動きも突く動きも出来るけれど、どうしても素手よりはタイミングが遅くなる。これは順手持ちのデメリットの一つ」

 

 素手、順手持ちの順でそれぞれ振って実演。勿論誰にも当たらないように距離は置いている。何回か繰り返してからスコーピオンを消し、「少しだけ話を変える」と言ってから再び話を始めた。

 

「まず、逆手持ちのメリットの一つは捌きの動きが楽なこと。勿論これはリーチの問題も存在するけれど、至近距離まで持ち込めれば一気に防御が楽になる。……とは言っても僕は躱す事の方が多いんだけど」

 

「ふむふむ」

 

「それに、さっきも言ったように順手で持つと手首を動かす時間が必要。それがほんの少しの時間だとしても、至近距離だとそれは致命的になることもある。その点逆手なら素手とほぼ同じ感覚で振る事が出来る。捌くのが楽になるというのはそういう事」

 

「あっ!ホントだ、斬る時はオレ、いっつも手首動かしてる!」

 

 実際にスコーピオンを展開し、振ってみて驚く駿。理論ではなく感覚と実戦で成長している彼にとって、こうしてゆっくりと理屈づけて考えてみる機会は少なかったのである。いつもやっている当たり前の事を見直す中で新たな発見をする、そんな瞬間だった。

 蒼也は順手、逆手の順で素振りをし、その僅かな時間差によって起こるリスクの考察を始めていた。

 

「他のメリットといえば、力を込めやすい……というのがある。言葉で説明するのは難しいから実践してもらったほうが早いと思う。順手よりも逆手の方が押し込み易い筈」

 

 これも手首が固定されやすい事によって起こる利点の一つだと樹は言う。もっとも、一定の長さを超えてしまうとその利点は無意味になるのだが、スコーピオンの硬度を考えるとダガーのような短剣くらいの大きさで展開する隊員が多いため気にする必要はないだろう。

 

「あと、これは駿くんも僕と戦って経験した事があると思うけれど。僕に思い切り近づかれた時、防御、難しくなかった?」

 

「ん?う~ん……あ、確かになんか窮屈な感じはしたんだよなー」

 

「そう。順手持ちのデメリットの二つ目は『至近距離の攻防に強くない』こと。腕を畳んだ状態だとどうしても動きが窮屈……駿くんが言ってたみたいに、になるから防御するのが難しくなる。押しに弱くなる、と言い換えたほうがいいかもしれない……のだけど、コレに関しては一つの例外のようなものと思って欲しい。そもそもそんなに至近距離まで詰めてくる相手なんて殆どいない」

 

「例外がなんか言ってるぞ」

 

「気にしないで欲しい」

 

「そういうもんか?」

 

「そういうもん」

 

 最後は良く分からない理屈であった。

 

 

 

 

 

 

 次に二つ目だけど。樹は続ける。

 

「これは単純。元々僕の師匠が逆手持ちで、その技術を主に教わってきたから」

 

「あー……そりゃそうか。師匠がいたんならフツーその戦い方を受け継ぐよな」

 

「天海先輩でも全く勝てない師匠ってどれくらい強いんだろ」

 

 それを聞いて考える事数瞬。急に樹が腕を抱き俯き始めた。何だと思っていると勢い良く震えだした。少し離れていても分かるくらい、ガタガタという擬音が相応しい程度には震えている。

 

「……思い出したら震えが止まらない。たすけて」

 

「えぇ……」

 

 それくらい、という事だったらしい。

 

 

 

 

 

 

 

「最後の理由はとても簡単」

 

 震えが収まってから気を取り直し、最後の説明に移る。その表情は変わらないが、雰囲気は真剣そのものであった。

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

 簡単かつ重要。一体どんな理由なのかと身構える陽介と駿、そして……呆れたような目で樹を見やる蒼也。彼はこの理由を以前聞いており、知っていたからである。そして。

 

「3つ目は」

 

「「3つ目は……?」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「浪漫」

 

「「おい」」

 

「…………」ハァ

 

 それが中々に阿呆らしい理由であったことも一つであった。

 

「どうしてもア○ンストラッシュがしたかった」

 

「お前実は30代だろ!」

 

「カク○ンジャーも逆手だったし」

 

「もっと古いんだよなぁ……」

 

「風間さん、カ○レンジャーって何ですか?」

 

「お前の生まれる前のテレビ番組だろう、気にする必要はない」

 

「はぁ……」

 

 ニチアサの特撮ものだろうなぁ、程度にしか駿は理解できなかった。一方色々と(無理やり)教えられた陽介は理解させられている。

 

「……というか、僕自身普通に逆手より順手のほうが簡単だと思ってる。少し考えれば当たり前の事。間合いのコントロールが難しい逆手なんか使う人間がどうかしている」

 

「えぇ……」

 

「自分から言っていくのか……」

 

 さも当たり前のように自分は頭おかしいと明かす樹に、駿も陽介も困惑するしかない。蒼也でさえ、――顔には出さないものの――少し困惑しているのだから。

 

「だけど逆手のメリットはさっきも話した通りあるにはある。だから基本的には風間先輩のように場合によって使い分ける事をお薦めする」

 

 おしまい、と締めくくった。

 

「なるほどなー……サンキュー!早速色々試してくるわ!」

 

 米屋は聞くが早いか、個人ランク戦ブースに走り出していった。

 

「あ、オレもオレも!」

 

 センパイ、またランク戦しようぜー! そう言い残して駿も駆けていってしまった。残される樹と蒼也。

 

「やはり直接聞く意見は参考になる」

 

「どうも。それより……」

 

 と、彼らは二人が走っていった方向を見た。

 

「元気ですね」

 

「ああ」

 

 その二人の会話は子を見守る大人のようであったという。……身長については触れないほうが良いだろう。

 

 

 

 

 

 ――――余談ではあるが、この会話を離れて聞いていたC級隊員のスコーピオン持ちに逆手スタイルが増えた、とか。ポイントの増減は……推して知るべし。一つ言うとすれば…………樹のあの戦法とポイントは、長年の努力と死にかけた特訓があったからこそだ、と言っておく。

 

 

 

 

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 基本、僕がボーダーで料理をする時は隊の皆のため。特に大志くんや優希ちゃんなんかは育ち盛りだから沢山食べてもらえるようにしている。

 

 他にも加古先輩や双葉ちゃんと料理を――チャーハンを作るときのぶっとんだアイデアは出来るだけ止めている――する時もあるし、女性陣に頼まれる時もある。そして、今は…………深夜に防衛任務をする人の為に軽く夜食を作っている。

 

 何時でも夜食を作るわけではなく、僕のボーダーでの仕事とバイトが被っていない時に作るようにしている。とは言っても僕が夕食を作り終えた後の余り物や使わなかった部分を使った簡単な物だけれど。

 

 

 今回は『厚揚げ豆腐の豚バラ巻き』と『豚肉ともやしの炒め物』。二つともとてもお手軽。名前だけで大体どんな料理か分かる。

 

 まず、厚揚げ豆腐の豚バラ巻きを作ることにする。用意するものは厚揚げ豆腐、豚バラ肉、小麦粉に、あとは油。味付けは自由だけれど、僕はポン酢と大根おろしをよく使っている。今回は相手に振る舞うものだから使わないけれど、手軽なので是非試してみてほしい。

 

 初めに調味料、つまりはタレを作る。

 

 使用するのはこれもありきたりなもので、醤油とみりん、料理酒と砂糖。分量は……順番に大さじ2杯、大さじ1杯、大さじ2杯、最後は大さじ1杯と小さじ2分の1杯。これも自分にあった味付けがあるから色々変えてみるのもいいかもしれない。それらを混ぜ合わせればタレの完成。

 次に厚揚げ豆腐を切るのだけど、大きく切りすぎないように注意する。また、豚バラ肉の代わりにこまぎれを使ってもいいけれど、その時はより小さく。お肉が巻けるように気をつけるようにする。あと、出来るだけ同じ大きさに切るのが望ましい。

 

 切り終えたら早速お肉を厚揚げに巻きつける。厚揚げ一つにつきお肉は一枚。この前、適当に巻きつけたら大志くんと比企谷くんが争い始めてしまったから。大学生が多いとはいえ男の子なのだからそういった醜い争いは避けるべき。

 ……と、その前に。フライパンをここで熱しておくと少し時間短縮が出来る。

 

 

 …………お肉を巻きつける作業が終わった。この後、小麦粉――薄力粉がいいだろう――を厚揚げの表裏に軽く振りかける。

 そうしたら熱されたフライパンに油を大さじ1杯(割と適当でも構わないらしい)程度敷く。その後厚揚げを投入し、中火で焼いていく。この時、ちゃんとお肉を固定出来るように巻き終えた部分を下にすると解けずに済むのでおすすめ。

 その面のお肉が焼けたら90°ずつ返し、再び焼く。のだけど。お肉は焼いた時に油を出す。その油を最後まで残してしまうと、出来上がりが油っぽくなってしまう。勿論それが好きな人はそうするのが良いけれど、あんまり夜中に胃を疲れさせるのも良くないので出てきた油はキッチンペーパー等で適当に取るのがいいと思う。

 

 360°焼き終えたら最後の仕上げ。作っておいたタレを回しながら(特に深い意味はない)入れ、厚揚げを返しながらタレが全面に付くように軽く煮詰めれば完成。

 

 

 因みにポン酢と大根おろしを使う時は、お肉に軽く塩コショウをまぶしておくと良いかもしれない。あくまでそれも自由。豚肉も厚揚げもポン酢に合うのだからそれを合わせたところでポン酢が合わなくなる訳はない。さっぱりして美味しいのでこれも試してみてほしい。

 

 

 

 次に炒め物に入る。用意するのは豚肩ロース(豚バラでも構わない)。今回はコスト的に余裕があるのでロースを使う。もやし、小口切りのネギ、ニラ。お好みで鷹の爪なんかを入れてみると辛味がでて面白い。あとは片栗粉を適量と塩コショウ。

 タレについてだけど、個人の好みで色々とアレンジ出来るので細かくは言わないでおく。今回は醤油、ウスターソース、料理酒、お酢、チューブ型の生姜、あとは砂糖を使う。これらは混ぜ合わせておく。

 

 初めにお肉やニラを一口大サイズに切る。ネギは市販の青ネギの小口切りのものを使用。切り終えたらお肉には片栗粉をまぶす。

 フライパンを熱し、サラダ油を敷く。準備が出来たらまずはもやしとニラから炒め始める。お肉はまだ入れない。鷹の爪を使用するのであればこのタイミングで切ったものを入れるのがいいだろう。どうでもいい話だけど、僕はこの焼いている「じゅ~」という音が好き。「ぐつぐつ」という煮込んでいる音も好き。料理を楽しんでいるという実感が湧くから。美味しく出来たら嬉しいし、失敗したら反省。ちょっとの分量の違いで味が変わる。料理というものは奥が深い。

 炒め終えたらそれらを一旦フライパンから別の器か何かに移しておく。その後その同じフライパンにサラダ油と豚肉を入れて再び中火か少し弱火で焼く。もやしから水分が出ているからどちらかというと「揚げ焼き」に近いかもしれない。

 

 豚肉に火が通ったら、後はさっき炒めていたもやしとニラ、あとはネギをすべて加え、タレを投入。具材をタレに絡ませながら混ぜ合わせて…………。

 

「完成……ふぅ」

 

 料理をする上で外せない楽しみの一つが味見。他の人が食べる前にコッソリ食べると優越感のようなものが得られる……かもしれない。

 

「それじゃ」

 

 ………………。

 

 

 

「問題無い」

 

 なかなかよく出来ている。これは普段の夕食に採用してもいいかもしれない。……取り分けておかないと、また醜い争いになりそうだけど。

 

 

 

 

 

     *

 

 

 

 防衛任務が始まる前にいつも先輩方が寛いでいるスペースにお皿を持っていくと、既に何人か大人達が集まっていた。因みにほぼ全員に僕のバイト先はバレている。なんてこった。

 

「お疲れ様です」

 

「天海か。すまないな」

 

「趣味みたいなものですから」

 

 東先輩は結構な割合で深夜の任務に参加している。大学でも結構忙しいと聞いているのだけど、大丈夫なのだろうか。

 

「今回も簡単ですけど、どうぞ」

 

「っしゃ!これを待ってたんだよ……んむ…………あ、美味えわ」

 

 諏訪先輩は早速手をつけ始めている。せっかちだとは思うが、美味しそうに食べてもらえるのなら、悪い気分はしない。それを見ていた堤先輩や柿崎先輩も割り箸を手に取り始めた。どうやら好評のようで作る側としては一安心。

 

 ……さて、これで今日やるべき事は全て終わった。

 

「……お皿は、どこかのお部屋で洗っていただければ取りに行くので。では」

 

 失礼しますと告げて出ていこうとしたのだけど。

 

「おう、待て待て天海」

 

 出ていく直前に何やら諏訪先輩に止められる。麻雀のお誘いなら明日にしてほしい、そんな事を思いながらも振り返ると、

 

「お前に食わせてもらってばっかってのも俺が気に入らねー。つーわけで、常識的な範囲でなんか欲しいもんとかあったら買ってやるぜ」

 

 さっきのくだらない僕の考えを一蹴するように、笑顔で、先輩はさらりとそんな事を言うのだった。

 

 

 

 ……どうしていちいちこの人は格好いいのだろう。常識的な範囲で、という言葉がなければもっと格好良かったのだけど。それでも、何食わぬ顔で僕のような変な人間に向かってそう言ってくれる人はなかなかいない。口が悪いのに人望が厚いのはこの、とても人情深い振る舞いから来ているのだろう。粗いけど、暖かい。諏訪先輩を嫌う人間が殆どいないのも頷ける。

 そんな先輩の好意に甘えて、早速注文をさせてもらおうと思う。

 

 

「じゃあ、買い出しの時に車を出して頂けると」

 

「あ?そんなんでいいのかよ?」

 

 ……ああ、全く。

 

 ……………………甘い。この人は買い出しを甘く見ている。両手が痺れそうになる感覚をこの人はまだ味わっていないからこんな事が言える。片腕に米、もう片腕に野菜やら肉やらを詰め込み、容量ギリギリまでになった袋を持つ苦痛を殆ど知らないから。ここは一つ経験談を話せば分かってくれるかもしれない。

 

「……ビニール袋で、指先が青くなる事もあるので」

 

「あっ……」

 

 

 即OKを貰った。やったぜ。

 

 

     *

 

 

 

 家に帰って初めに出迎えてくれるのは最近どんどん大きくなっていく猫達。相変わらず僕と、あと最近ナツもこの子達と意思疎通が出来る。仕組みも分からない、オカルトみたいな話。でも今は困っていないから気にしていない。

 

「ただいま」

 

『やあ、ご主人』

 

『お腹すいたぞー!』

 

 ……言葉は通じるけど、この子達はそれがなくても案外分かりやすい反応をする。

 

「うん、少し待ってて」

 

 そう言い残して階段を登ってナツの部屋の戸を叩く。

 

「ただいま」

 

「あ、おかえり!お疲れ様」

 

 ……ナツ、いいよね……。はにかむ姿、頑張って勉強している姿、寝ている姿。どれも愛おしく、ずうっと見ていたくなる。だから、守らなければ。それにしても、最近また大きくなっているような気がする。何処がとは言わないけれど。こういうことはナツが言い出すまで待ってあげるのが上の役目。僕から言うのはデリカシーも無いから。そんな最愛の妹のパジャマ姿が、いま目の前にある。毎日見ていても飽きないしやめられない。妹が寝るまで見守る役目だ誰にも譲れない。もし、もし、もしも仮に、かーりーに、彼氏が出来たとしたなら。丁寧丁寧丁寧に語り合わなければいけない。ナツが選んだなら信頼は出来るけど、それとこれとは話が別。別なのだ。

 

「今は何を?」

 

「えとね、絵を描いてたんだ!」

 

「絵?」

 

「うん。初心者だからどうしても上手く描けないんだけど……凄く楽しい!」

 

 前に描いた完成品少し見せてもらうと、確かに初心者というのが分かる絵だった。……僕の美術センスはからっきしだから人には言えないか。だけど、ナツなりに、揺れたり震えたりしている線でも丁寧に描けている。思わずボックスを踏んでしまいそうになる。次も、その次もきっとボックスを踏むかもしれない。

 

 ……ふと、一つ気になる絵があった。お世辞にも上手とは言えない、ぐにゃっとした絵。でも、これはどうしても欲しいなと思った。欲しいなと思ったなら行動すればいい。簡単な事。

 

「この絵、貰う。部屋に飾る」

 

「ほえ?……ってダメーッ!!なんでよりによってそれ選ぶのさ!」

 

「僕はナツが大好きだから」

 

「そういう問題じゃないんだよなぁ」

 

 はぁ、仕方ないなぁ。 そう言って顔を赤くしながら絵をくれるナツ。所謂ツンデレに近い、素直じゃない妹を見ていると疲れた身体が全回復するような感覚になる。これは精神コマンドの「愛」だろう、間違いない。今では便利なブーストコマンドだけど、ウィ○キー時代はまさに切り札のような精神コマンドだった。それを毎日ナツの顔を見るだけで使えると考えるとこれはもう神の恵み以外の何物でもない。そう、きっとナツはそうなのだ。折角なので一句。

 

 天使かな 天使じゃないな 女神だな

 

 

 我ながらよくナツの事を表現出来ている。今まで授業で書かせられた俳句や川柳よりもずっと完璧な出来だろう。ここまでくるともっとこの自分の才能を戦いに持っていけなかったものかと後悔する程だ。いや、もしかすると僕はこの句を書くために才を持ったのかもしれない。

 だけどまだまだ僕には伸びしろがある。ナツへの愛は3つの正義と同じくらい、いやそれ以上の百万パワーなのだ、そう簡単に止まりはしない。

 

 暫く貰うあげないの争いをした後、

 

「……はぁ、もう。分かったよ!でも変なところに飾っちゃダメだからね!?」

 

 という制約付きの元無事手に入れることが出来た。宝物にしようと思う。

 

「それじゃ、おやすみ」

 

「うん。今日の夕飯も美味しかったよ!」

 

「……一緒に食べられなくて、ごめん」

 

 そう言い残してから部屋を出た。

 いくら暮らす為とはいえ、ナツに寂しい思いをさせているのはとても申し訳ないと思っている。ボーダーのお仕事がない時は一緒に食べられるけど、それでもまだ妹は中学生なのだから。僕が守ってあげないと。……取り敢えず、部屋にこの絵を置いてから下に行こう。

 

 

 

 

 ――下に行けばエサ皿の前で陣取る元子猫が二匹。ついでに水も残っていなかった。成長期という奴だろうか、食い意地が張っている。彼らは僕の姿を見た瞬間、ミィはコロンと転がってお腹を見せ、クルトは足に擦り寄ってきた。あざとい。というか、何というふてぶてしさだろう。

 

『めーしー!めーしー!おうあくしろよ』

 

『ふぅ。ちょっと、ちょーっとだけお腹が、空いた、気がするかな?うん。だからご主人、餌を……』

 

「分かってる」

 

 昔はいい子だったのに。クルトは食いしん坊に、ミィは素直ではなくなってしまった。いや、後者は猫らしいと言えば猫らしいのだろうけれど行動のせいで台無し。充くんの所のアーサーはそれはもう賢く格好良い(本人談)らしいので、ウチとは天と地の差がある。どうしてこうなった。

 水を補充してから洗い物を済ませ、洗濯機を回す。その間にお風呂に入って、出れば洗濯が終わり猫はタオルケットの上で寛いでいる。そろそろサイズの大きい毛布を買うべきなのだろうか、寒いのが苦手だと言うし。

 

 洗濯物を干してから電気を消して、自分の部屋に入る。それからさっき貰った絵を引き出しに仕舞った。曲がらないように、汚れないように大切に。

 必死に書いてくれた『僕』の絵を、どうして雑に扱うことが出来るだろう。これは誰にもあげられない。

 

 『樹にぃ』 と端に書いてある絵に思わず笑みが溢れた。――ああ、ナツの為なら笑えるようにでもなってしまおう。妹が望んでいるのだから、絵に描かれているような『僕』の笑っている姿を。……だけど、それでも。

 

「ごめん、ナツ。もうちょっとだから、許して欲しい」

 

 だからその前にもう少しだけ、この楽しい日常を過ごさせて欲しい。

 

 

 

 

 ……さあ、明日も晴れればいいな。皆、おやすみなさい。




 彼らの才能云々に関してはかなり想像で書きました。風間の才能も凄いですが太刀川がもう天才なんやでって考えていただければ。勿論その上で沢山の努力があるわけですが。全部私のイメージ。また、センスと才能の違いに関しても私の独自解釈です。この話題については色々意見をもらえるとうれs(乞食)
 あれ、それよりうちのグリリバギャグ枠臭くなってきたぞ……。

 逆手順手云々も想像とネットの知識なのでガバガバ。でもやっぱヒーローものには逆手は欠かせません!バイオ○ンのレッドも逆手でしたし!


 ……まあ、天海はヒーローじゃないけど。
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