二人のぼっちと主人公(笑)と。   作:あなからー

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 色々と余裕がないので初投稿です tasukete

 主人公視点です。

 もう一度言います。主人公視点です。

 それと、画像一覧の方に天海と比賀のイメージ画像を投稿してみました。

 ~きっかけ~
カスタム○イドプレイ中作者「戸塚のプリセットなんかもあるのか(困惑)……ん? 戸塚?」

じゃあ天海も行けそうな気がする

で き た

以上! 暇なら見てね。暇な時にしか見ないでね。

~前回のあらすじ~
・脇役、巨乳、男の娘「ナムナム」 いいんちょ(笑)「えっなにあれは(困惑)」

・毒舌のやべーやつ「ホラホラホラホラ、もっと腕使って腕」 目がやべーやつ「委員長やばそう」 委員長「ああ許して亭許して」

・風間「もう許さねえからなあ」 天海「お兄さんゆるしてポイントこわれる」

こんな感じだった気がする。


秋は何処もかしこも忙しく

 

 

 

 

 

 

 最近、天海先輩が目に隈を作ってくる事が多くなった。近界民を倒す動きこそ普段と変わらない……ように見えるけど、やっぱりなんとなくいつもと違う気がする。

 やっぱり限界だったんだ。最近毎日のようにこっちで特訓してるみたいだし、日に日に隈が濃くなっているのが分かる。

 

 

 あ、因みに生身の方だ。トリオン体でいる時は隈もないしフラフラとしている事もない。便利だけど、トリオン体で疲労ためたら生身に戻った時ぶっ倒れないか? っていうのだけが心配だ。幸いオレはそんな事態にはなった事がないし見た事もないけど、天海先輩が換装解いた瞬間ぶっ倒れたら多分パニクると思う。

 

 

 

 

「おい、天海」

 

「?」

 

 先程の酷い顔を見かねて、お兄さんも思わず声を掛けた。

 

「明日お前休め。学校じゃなくて仕事な」

 

「? ……どうして?」

 

 先輩が首を傾げた。……って、自分の事が分からないのかよ、フラフラだったのに!

 

「どうしてってお前……取り敢えず後で鏡見とけ」

 

「分かった」

 

 頷くと、天海先輩は警戒区域内部にある空家へと向かっていった。

 

「いや何するつもりなんだ……」

 

「いやあ……」 

 

 あの人、顔に中々出ないっスから。 そんな言葉を挟みつつ先輩を見る。

 

 オレは、自分の心についてはともかくとして、自分の身体についてはきっとオレ自身が一番良く知っているという確信を持っている。例えば顔に表れてなくてもその人からすれば身体が重いとか、頭が痛いとか、しんどいとか。もしかしたら色んな症状が出ているのかもしれない。

 だけど、他人の内心なんて殆ど分からないんだから、結局はどこまでいっても「どこか具合が悪そうだな」までしか分からない。だけどその人は自分の頭が痛かったりする事が細部まで分かる。ま、当然っちゃ当然なんだけど。

 

 だからこそ、天海先輩が自分の症状について把握していない筈がないんだ。自分の動きのキレが悪い事だって、きっと分かってる。口では何とでも言えるけど、限界くらいは弁えてると思うんだ。なのに決して休まない。なら、それなりの理由がある。そう考える事しか出来ないんだよな。

 

 ……じゃあ、その理由って一体? 夏菜ちゃんに何か関係が?

 

 そんな事を考えてる内に、いつの間にか戻ってきてた。

 

「なにもない」

 

「後で見とけって言ってるんだよなぁ」

 

「あ」

 

「ホントに大丈夫なのかよ……」

 

 なんだか、この二人が話してると漫才コンビみたいだなあ。いやでも漫才コンビの割には、天海先輩って天然成分が強すぎるし……。その点では、狙ってボケる比賀先輩の方が向いてるのかも……いやいや、やっぱりテンポ的にはお兄さんの方が……。

 

 なんて事を考えていた時。

 

「生身に戻ってから鏡を見らん事には始まらんだろ。とっとと終わらせるぞ」

 

『鏡だけに、ミラーんと、みたいな……」

 

 

 

 

 

 全員が真顔になった。

 

 段々と、目線は下へ、下へ。

 

 三人で地面を見つめる。

 

 

 

 

「…………」

 

 

 

「…………」

 

 

 

「…………」

 

 

 

『…………』

 

 

 

 空気が凍っている。

 

 トリオン体なのに、何故か寒気がするような気がして。

 

 

 

 このいたたまれない雰囲気に我慢できず、思わず首を上げた。それを皮切りに先輩二人も顔を上げる。

 

 お兄さんが目線を向けた先には天海先輩がいた。

 

 天海先輩もお兄さんを見据えている。

 

「比企谷くん」

 

「んだよ」

 

「馬鹿じゃないの」

 

「なんで俺なんですかね……」

 

 

 うーんこの。折角心配してくれたのになんて言い草だろうか。濡れ衣な上にドストレートだし、反応的にも随分ダメージがでかそうなんだけど。いやホントに、これに関してはお兄さんの気持ちがきっと分かるぞ。回りくどい言い方よりも直接的な言い方をされたほうが傷つくなんて事はオレにだってあるし。

 姉ちゃんなんて悪口の語彙が微妙に少ないからストレートな悪口しかオレに言わないんだもんな、うん。

 

 他には、クラスで友達としていたバカ話が女子に聞こえた時のあの「ガキ乙」みたいな冷たい視線。あれは何か言われるよりもずっとキツイ。あれを小町さんにされたらオレは死ねる自信がある。ていうか一回された事があった。

 

 一週間くらい立ち直れなかった。

 

 そういう事もあって、オレ達思春期男子にとっては女子の視線や言葉には何よりも敏感になってしまうのだ。

 

 

 え、天海先輩は男だろって? いいや女だって? どっちだよ(半ギレ)って?

 

 天海先輩はほら、男子だけど女子みたいなもんでしょ多分…………。「性格:天海 なんだよ」ってお兄さんも言ってたし。その後の戸塚の性別も戸塚だからセーフ、っていうのはよくわからなかったけど。

 

 

 

 それはさておき、哀れなお兄さんへの攻撃はまだ終わらないみたいで。

 

『たいちょー』

 

 と、今度は比賀先輩。もう嫌な予感しかしない。

 

「今度はなんだよ…………」

 

『今の録音しときましたー!』

 

 あんまり似合わないハートマークが浮かんでいそうなあざとい声音から、ぐうの音も出ないくらいの鬼畜だった。やべぇよやべぇよ、最近あんまり出番なかったから……。

 

「俺何も悪くないのに何を録音したんですかね。つかそもそもお前が……」

 

『「聞こえてない」「何か言ったの?」「俺のログには何もないな」』

 

 ついには一人芝居まで始める始末。しかも声をちゃんと変えてる辺り凄い凝ってる。いやそもそも悪いのは比賀先輩なんだけど。

 

『私、最近ニンジャ欠乏症なんです。憂さ晴らしにちょっと付き合ってもらいますよー』

 

 単なる比賀先輩の八つ当たりだった。なんて酷い。こんなにターゲットにされて可哀想だ。

 

 

 

 

 

 さて、今俺がやるべき事は……。

 

「隊長、隊長」

 

 比賀先輩に聞こえない程度の声で呼びかける。

 

「んだよ川」

 

 今更もう名前で呼ばれないのは気にしない。どう足掻いても、今この時点でオレの扱いが軟化する事は無いからだ。普段からお兄さんはオレにだけ厳しい。こういうのを差別だと思うのだが、そこら辺どうなんだろう。だけど今はそんな事を考えるよりももっと大事な事があった。伝えねばならない、女子のあの面倒臭さを。

 

 あとなんだかんだ声の大きさ合わせてくれてる当たり、優しいんだよなあ、って思う。

 

「ここで歯向かうとまた面倒な事になるっすよ! 女子ってのはそういうもんです」

 

「リア充が言うと説得力があるな死ね」

 

「違いますからね?」

 

 因みにソースは姉ちゃんだ。一回こっちの弱みを握ったが最後、こっちが懇願するまでそれをネタにオレをパシらせたりし続ける、凄くイイ性格をしている。……別にオレに被虐趣味があるとかそんなんじゃないぞ?

 

 あと小町さんは身近な人にしかそういう事はしないって夏休みに塾で言ってた。

 

「だがまあ、これについてだけはお前の言う通りだ」

 

 ん? 何時もならハイハイと聞き流すか五月蝿い黙れで圧殺するかのどちらかが殆どで、こちらの意見など全く聞いていないように思えたのに何故か全面的にこちらを肯定している。

 

 どういう事だろう、やられすぎて頭おかしくなったのかな、などと首を傾げていると、お兄さんが凄く言いにくそうな顔で呟いた。

 

「……小町がな」

 

「あっ…………ふーん」

 

 その言葉だけで全てを察した。小町さんが言っていた身近な人、お兄さんからの謎の同意――つまりはそういう事なんだろう。

 

 

 

 

 

 さていきなりだけど、小町さんは人気者だ。マジで人気者だ。

 

 まず、単純に可愛いんだ。クラスでもトップクラスの美少女だと思う。形が整ってるとしか言えない、オレが惚れたからっていうのもあるけど、うん。可愛い。……他の女子に比べたらスタイルはその、まあ……うん。でも、オレは顔で惚れたわけじゃないから。

 

 オレの他にも小町さんに惚れてる奴ってのは何人かいて、その中でも告白した勇気ある漢だっている。だけど返事は「ごめんなさい」との事。

 

 ハードルはとっても高い。でも、オレは諦められない。

 

 なんていうか、笑わせてあげたいと思ったんだ。勿論オレの思ってる事は感覚でしかないのは分かってる。でも、なんだか……無理してるっていうか。笑ってるんだけど笑ってないって言うのかな? 無理して笑ってる、みたいな。なんかちょっと他の子とは違うんだよ。うーん……よく分からなくなってきた。まあともかく、オレの理由としてはそんな感じって事で。

 それできっと、小町さんがちゃんと素で笑えるのはお兄さんと一緒の時くらいなんだろうな、とも思っている。だからお兄さんは小町さんを大切にしているんだろうし、守ろうとしているんだろう。

 

 あっ、姉ちゃんだって人気者じゃないにしろ……ってこんな事言ったら怒られるな。だけど料理も裁縫も出来てオレ以外への気配りだって出来るいい人なんだぞ? しっかりしてるしちゃんと自分の意志、自分の責任で行動が取れる凄い姉だ。春には見られなかった笑顔だって最近はようやく見せてくれるようになった。久しぶりに笑ってくれた時は凄く嬉しかった。ようやく元に戻れたんだなって思えたんだ。……それが今の姉ちゃんのオレに対する増長を生んだ、とも言えるんだけど。

 

 嬉しいやら悲しいやらで目線を遠くに向けると、誰かに肩を叩かれる感触があった。

 

 同じ目をしたお兄さんだった。

 

 

  

 

 

「お前の家でも、大変なんだな……」

 

「隊長……」

 

 この瞬間だけは、オレ達は同志。ぐっと手を握り合う。外野が「友情?」『いや、なんかすげーどうでもいい事なんじゃないでしょーか』とか言ってるけど無視。

 

 

 

 オレ達は同じ被害者であり、同じ漢だ。

 

 オレは姉ちゃんが好きで、お兄さんは小町さんが好きだ。オレとお兄さんの仲が悪くても、その根にあるそれぞれの家族への愛ってのは変わらない。

 

 だからこそ、オレ達は甘んじてその意地悪を受けるワケなんだけど。……偶には、傷つく事だってあるんだよ、姉ちゃん。

 

(妹からの口撃って、案外キツイよな)

 

(すっげえ判ります)

 

 

 

 

 お兄さんの好感度、ゲットだぜ!

 

 

       *

 

 

 さて、任務から帰ってきた後はスナイパーの特訓だ。

 

 他のスナイパー全員との訓練は、隊員が殆ど学生だから基本的には土日にしかないのもあって、平日に訓練する時は少人数での訓練、若しくは的当てをする事が多い。勿論的当ての的は設定を変えればランダムに動かす事も出来るから、オレは一度だけ的を止めて撃ってから設定を変えて動かしてる。因みにこの前、アタッカーの天海先輩に仮想訓練室で的になって貰った事がある。

 

 一発も当たらなかった。しかもこっちの方は一回も見ずに避けられてんだからなぁ。しかも理由を聞いてみたら、

 

「簡単。どう動かれたら嫌かを考えながら動く」

 

 という事らしい。やっぱり高ランクになってくると色んな動きが出来るんだなあ、とその時は思わず感心したんだけど、その後の「大志くん、もう少しちゃんと狙うべき」という言葉には思わず「お前が言うなよ」と返してしまった。

 

 すぐ謝ったら許してくれた。

 

 

 

 当たらなかった理由はもう一つあるんだ。というか、今考えてるとこれが大きい原因な気がする。

 

 それは、読み撃ちの精度。絶対これだ。

 実際にチームランク戦を見てると、単独で止まってる相手なんかまあまずいないんだよな。大体何かしらのモーションを起こしてるか、接敵してたりする。だから、確実に当たる、なんて場面ってのは中々作れるもんじゃないと思ってる。だからこそその読み撃ちが必要になってくるわけなんだけど……。

 

 東さんはこれが滅茶苦茶上手い。つかバケモンだと思う。なんであんなに狙ったところに相手が動くのか不思議で仕方がないんだけど……。聞いてみたら、懇切丁寧に服のシワとかにまでついて細かく教えてもらえた。やっぱあの人化物だわ。

 

『ここで膝の部分を見てみろ。少し曲がってるのが分かるな? お前ならこいつを狙う時、どうする?』

 

『うーん……この部分だけだと分からなくないスか?あるとすれば……後ろ?』

 

『いや、不正解だ。いいか川崎、膝のこの曲げ具合で後ろに跳ぶという選択肢はない。力が少し入りすぎているからこの状態で後ろ跳びをすると後隙が大きくなってしまうんだ。体勢や身体の向きからして横に跳ぶわけでもない。ならあとは上だけだ。それも前跳びだな。だからこの膝の動きがあったら少し上に向かって撃てば当たる可能性が非常に高くなってくる。……とまあ、これが読み撃ちだな』

 

『こんなの普通分かんねえよ(はい、凄く参考になります!)』

 

 言おうとした言葉が出なかったのも仕方がないと思うんだ。

 

 

 

 

 一つ一つ、的を色んな動きをしながら撃ち抜く。例えば跳びながら撃ったり、走ってから少しだけ止まって撃ったり。これは隠岐先輩や荒船先輩をモデルにした練習だ。あの二人はスナイパーの中でもかなりアクティブに動いたりする方だから、その動きを参考にしつつ動いては止まってすぐ狙って撃つ、また跳んだりしながら直ぐ狙って撃つ、この繰り返し。大事なのは反復練習だ。

 

 そしてこの「直ぐ狙って撃つ」という技術?C53781832

に関しては中々やりやすいように感じた。当たればめちゃくちゃ嬉しいし、外れても「じゃあ次はここを狙ってみるか!」って切り替えやすい。

 

 なんていうか、素早く的を狙って撃つゲームみたいな感じだ。

 

 銃を撃ち合うゲームなら確か『クイックショット』だったっけか。そんな名前だったと思う。

 

 まあ勿論そんなに上手くはいかない。だってこれゲームじゃないしな。でも、これが少しでも出来るようになれば相手の不意を突けるチャンスが増える。そしてその不意というのはスナイパーにとっては大きな好機になる筈なんだ。

 

 だから読み撃ちの練習と、クイックショットの練習。平日の夜はこんな感じで過ごしている。

 

 

 

 

 

 

「……よし」

 

 設定をデフォルトに戻して次の人が使えるようにしてからトリオン体を解く。

 

 

 

 

 あと少しで10月、集団ランク戦だ。オレ達にとって初めての集団戦。

 

 

 不安だらけではあるけど……それでも出来るだけ負けたくはない。

 

 オレはオレに出来る事をしよう、そして四人で上を……うん。

 

 

 

 あんな面子だけど、目指したい。

 

 あんな面子だけど。

 

 

「お疲れっす。最後鍵どうしますか……って」

 

 

 

 

 

 

「……ここ、怪しい」 

 

「GM、ここで<目星>だ」

 

「はーい。ダイスは……おっ、成功だね。えー、じゃあアセムは何者かの財布を見つけました」

 

「財布か……。じゃあその財布を二人に見せるぞ。『なあ、ちょっと来てくれ。こんなものがあった』」

 

「じゃあ言葉を返しますー。『これは何かクトゥルフ真実にたどり着くヒントになるやもしれぬ』」

 

「『開けてもいいのではないか? 持ち主を特定する程度なら許される筈だろう』」

 

 

 

 国近先輩と残り三人でなんかやってた。

 

 

 

「TRPGやってんじゃねーよ!」

 

 一旦中断させた。ってかどっから持ってきたんだそれ。そんな分厚いルールブックなんか何処にあったっけ。

 

 

 

 

 

「国近先輩、来てたんすね。 あっちの隊ほっといて大丈夫っすか?」

 

「うん、今は公平くんが掃除中だからねー。太刀川さんは風間さんに引きずられてどっか行ったし」

 

「「「「あぁ……」」」」

 

 レポートだ……。

 

「(レポートだ……)」

 

「(レポート……)」

 

「(レポートでしょうねー……)」

 

 すごい一体感を感じる。今までにない何か熱い一体感を。

 

 風……なんだろう吹いてきてる確実に、着実に、オレたちのほうに。

 

 いや、まあ引きずられてってワードでもう皆察しただろうけど。

 大変だよな、風間さん。うん、その気持ちはよく分かる。……当真さん、偶にオレの所に勉強聞きにくるし。大体奈良坂先輩が被害に遭ってるからいいんだけど、運悪く任務とかと被ってたらしわ寄せは他に来るからな。隠岐先輩トコに行って下さい! と何回叫んだ事か。

 

 ついでに小町さんもよく勉強を聞きに来る。こっちは全く、これっぽっちも構わない。もう喜んでGOサインを自分から出しちゃうくらいには構わない。寧ろこっちから教えに行ってもいいレベル。がっつくのはよくないから我慢するけどな!

 

 あと、関係ないけど加古さんから勧誘が来た事もある。「K」がどうのこうの、という話があったけど、オレはお兄さんに認めてもらうまではここから出るつもりはない、と言って断った。

 

「え、あの彼に何を認めてもらうのかしら……? んん……?」

 

 と本気で困惑していて凄く申し訳なくなった。すいません、隊長の妹との交際なんです……。

 

 あ、その後加古隊の隊室でチャーハンご馳走になったけどめっちゃ美味かった。なんで皆避けるんだろな? あんなに美味いのに。

 

 

 

 

 で、結局どうしようか。天海先輩はトリオン体のまま帰った。「ここで解いたら駄目な気がする」らしい。

 

 うん、誰だってそー思う。

 

 オレもそー思う。

 

 で、比賀先輩はパソコンで動画見てるし。凄いなこの隊、フリーダム過ぎる。

 

「隊長はどうするんスか?」

 

「あ? 帰るに決まってんだろ。家に帰って小町の顔を見てから文化祭の書類と格闘だよ」

 

 お兄さんはルールブックを本棚にしまって帰る準備を進めている。そこにあったのか……。

 

 チラリと見えたカバンの中は白い紙が沢山入っていた。前から聞いていた話から察するに、文化祭の書類関係だろう。

 

「ああ、そういや最近凄く忙しそうっすね……」

 

「ただ委員やるだけならまだサボれたんだよ。でもうちの部長が何故かやる気出してな。お陰でその煽りに巻き込まれて滅茶苦茶書類押し付けられた」

 

「じゃんけんに負けて実行委員押し付けられた挙句ソレっすか」

 

 なんともまあ救えないというか可哀想な話だ。ジャンケンに負けるのが普通に悪いんだろうけど態々言う事でもないしな。出来る年下は暴言を吐かないってそれ一番言われてるから。多分。

 

 

 

 

 比賀先輩はいつの間にかいなくなっている。さて、オレも帰るか……。

 

「ああ、そうだ。おい川崎弟」

 

「はい?」

 

 と思ってたら、珍しくあちらから話を振ってきた。 急にどうしたんだろうか。

 

「…………小町の勉強、どんな感じだ」

 

「へっ?」

 

 少し照れくさそうに言うお兄さん。

 

「アレだアレ……あいつに直接聞いたら絶対モチベ落ちるだろ。それに変に強がりそうだしな。だからあいつには聞かんし言わん。でも気にならないと言っても嘘になるからな。……言っとくが、正直に言えよ? 言わなかったら除隊するからな」

 

「ヒエッ」

 

 横暴すぎません?

 

 でも、聞くのは嫌だけど、どうしても気になってしまうというその気持ち。

 

 ひっじょーーーーに分かる。分かるぞその思いが! そうだよな! 俺も姉ちゃんの成績滅茶苦茶気になるし! でも聞いたら「こっちは気にせずアンタは自分の事頑張りな」とか言うに決まってるしでもでも気になるああああああああああああ……落ち着け。冷静になれ川崎大志。オレだってKなんだ、その気になれば1500秒でなんかヤバイ事ができるに違いない。だから落ち着け。ヤバイ事ってなんだ。

 

 

 

 落ち着いた。

 

 

 

 さて、オレはお兄さんの気持ちが分かる。そして分かるからこそ、オレには正直に応える義務があるだろう。

 

「正直、国語と英語は頑張らないとヤバイかもしれないッスね。社会は夏休みに相当頑張ってましたし、このまま維持できれば」

 

 お兄さんはそれを聞くと本気で訳が分からないといった顔をした。

 

「アイツは俺の妹なのになんで理系みたいな成績してんだ」

 

「いや、そこまでは分からないッスけど。暗記自体は苦手らしいんですけど、一度関連付けして覚えると滅茶苦茶覚えるのが早かったですよ!」

 

 これは本当の事だ。いや、確かに関連付けして覚える、というのは誰にでもある程度有効な記憶方法ではあるんだ。

 例えば一つの出来事、そうだな。簡単なのだと『ペリー提督』という人物をそのまま覚えるんじゃなくて、『黒船』に乗って『開国』を迫りにやってきた『ペリー提督』みたいに、他の単語と組み合わせてみると覚えやすいし効率いいよなって……まあこんな感じだろう、うん。

 

「あー、なんか小町らしいっちゃらしいわ」

 

「ですよね!」

 

「黙れお前に小町の何が分かる」

 

「えぇ……?」

 

 ドリルのような態度の変化。まぁ何時もよりマシだからいいけど。……なんか最近、お兄さんの態度に耐性がついてきたような気がする。

 

「国語は俺が教えられるが、英語か……」

 

「文法で詰まってる感じっす」

 

 まあオレも、「なんでhaveに幾つも意味があるんだ」とか「asの使い分け難しいな」とか結構悩んだし……。「日本語も難しいしな」と割り切らなければ中々上手く覚えられなかったと思う。正直受験で一番不安なのが英語なので、ここらへんはお兄さんに頼ったほうがいいかもしれないな。

 

「先輩、英語お願いしてもいいっすか?」

 

「あー、うーん……多分な」

 

 ちょっと不安な返答だったけど、教えてくれるのなら大丈夫だ。

 

「まあいい、帰るか。……大志。鍵貸せ」

 

「あ、はい」

 

 鍵を渡し……ん? 今、なんか。

 

 うーん……まあいっか!

 

 

 

 隊室を出て、今は自転車置き場。オレもお兄さんも、というか学生は結構自転車で通学してる人が多い。なので必然的にオレとお兄さんはそこまで一緒になるワケなのだが。

 

「おい川崎弟」

 

「何すか?」

 

「俺の知っている人間で小町に教えられそうな奴が現時点でお前しかいないから頼むんだ、勘違いはするな、したら殺す」

 

「わかりました」

 

 そのまま自転車に乗って帰っていった。こっちを睨みつけながら帰っていくお兄さんを見送る。

 

「あの人も大概働きすぎじゃないのかな」

 

 天海先輩に負けず劣らず。だって隈出来てるし目死んでるし。あ、後者は割と元からだったような気もするけど。本人は否定してるけど、絶対将来社畜になりそうなタイプだと思う。

 

 

 

 

 

「……オレも帰ろ」

 

 

 

 

 

     *

 

 

 

 次の日。

 

「ねえ、大志くん」

 

「っ、何? 比企谷さん」

 

「あのさ、もう直ぐお兄ちゃんの学校で文化祭があるんだよ」

 

「あ、うん」

 

 姉ちゃんが「なんか衣装係やらされる事になった。……はぁ」なんて、ちょっと嬉しそうにぶつくさ言ってたから知ってる。あの時の姉ちゃんの顔は永久保存版だった。でも「大丈夫だよ、姉ちゃん! 姉ちゃんなら絶対出来る!」なんて言って持ち上げたら殴られた。

 

 取り敢えず、ここは当たり障りのないような返答をする事にしよう。「え、そうなの!?」ってのは一番悪手、かと言って「知ってるよ」だと返答がぶっきらぼうすぎる

 

「オレの姉ちゃんも文化祭の準備で忙しそうにしてたよ」

 

「そうなんだ。ウチのお兄ちゃんも帰ってくるなりすぐリビングでパソコン立ち上げてたし……この時期は皆忙しいんだね」

 

「まあ、姉ちゃんってちょっと気難しいとこがあるし……。今回ので誰か仲良くなってくれる人がいたらいいんだけどね」

 

 なんて他愛ない会話をしているけど、この件だけに関してはオレはマジでそうなって欲しいと思ってる。

 

 折角顔も良くて(勿論オレの主観だ)家事も万能でスタイルもいいのに、あのとっつきにくい性格のせいで滅茶苦茶損をしてるんだよな、姉ちゃんって。いい人が早く見つかって欲しいもんだ。

 勿論そんじょそこらのクソみたいな野郎に姉ちゃんを渡す気はないけどな!

 

 ……あ、そうだ。それより、小町さんがオレに一体何の用なんだろう?

 

「あ、そうそう忘れてた。用件なんだけど」

 

「うん」

 

 

 

「一緒に行かないかな? 文化祭!」

 

 

 

 

 

「………………はい?」

 

「だから文化祭行こうよ!」

 

「文化祭」

 

「うん」

 

「オレと?」

 

「うん」

 

「他の人には?」

 

「いないけど?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 はあああああああああああああああ!?!?




 川崎大志を主人公にしても原作そのままだと活かしようがないのでなんとかしたった。後悔はしていない。

・狙撃技能云々について
あくまで主観です。真面目に考えたらきっと負けです。(訳:多少ガバガバでも許してください、なんでm)

・なんかキャラおかしくね
仕様です(半ギレ)

 原作再構成とかしてる人って凄いんだなとおもいました。ホントに。

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