二人のぼっちと主人公(笑)と。   作:あなからー

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 間違った愛情の入れ方もあるらしいですね。


料理は愛情!

 翌日。

 

 いつものように、端で昼までの授業を受けた俺はいつもの場所へと向かう。購買へと行きかけたが、今日は天海が作ってくれるらしいのでマッ缶だけ買っておいた。

 

 腰を下ろしてぼうっとしていると、直ぐに天海の姿が見えた。無言で座らせるのも悪いので、声だけでもかけておく。

 

「よう」

 

「ん。……これ」

 

 無駄な話をあまりせずに本題を持ってくる。ボーダーで慣れたとはいえ、未だに人と話すことが好きではない俺にとっては好感が持てる。

 

「ん」

 

 受け取って保冷袋を開けると、弁当箱とタッパーが入っていた。早速開けてみると、タッパーの中には肉と玉ねぎをタレで炒めたものが入っていた。

 

「これは?」

 

「豚丼の具材。ご飯にかけて食べればいい」

 

「成程」

 

 ぶっちゃけこいつ、別にアドバイスもらう必要ないんじゃね?と思いながら弁当を開けてみる。中身はミニトマトにほうれん草とウインナーのソテー、わかめの酢の物など、ヘルシーなものが多かった。

 

「女の子は油っぽいものが多かったら困ると思った」

 

 ほう、中々気が利いている。だが、一つだけ直すべき所があった。

 

「トマトは要らないな、うん」

 

 何故弁当にわざわざトマトを入れなきゃならんのだ。食う側の身にもなってみろ。そう思いながらふと天海の方を見てみると、前にも見た目が少し見開かれていて、「何いってだこいつ」とでも言いそうであった。

 

「……それは肯定できない。トマトは栄養もあるし美味しい」

 

「は?いらねえよこんなもん。なにが辛くて食わなきゃいけねーんだ」

 

「もしかして、トマトが嫌い?」

 

「そうじゃなきゃここまで拒んでないだろ」

 

「……分かった。次からは比企谷くんのお弁当にはトマトを入れないようにしておく。君は変わっている」

 

「トマトが嫌いなだけで変わり者扱いをするな」

 

 そんなやり取りをしながら箸を進める。あっという間に完食。あ、トマトは天海が食べてくれました。なんでも、好物なんだそうだ。俺は信じられないけどね。さて、感想を述べるとしよう。

 

「……全体的に味が薄い。豚丼はあれでもいいかもしれないが、お弁当のご飯と合わせるならもう少し濃いほうがいい。ソテーについてだが、多分お前調味料振ってないだろ?」

 

「うん」

 

「ベーコンなら多少味があるからいけるかもしれないがウインナーはダメだ。ほうれん草なら……醤油でいいだろ」

 

「……」

 

 無言でメモを取る天海を見て、こいつは本当にシスコンだなあと感じた。そこに共感と共にライバル心も覚える。それなら俺も負けていない筈だ。

 

「ありがとう。それじゃ、また」

 

 メモを取り終わるや否や、すぐに行ってしまった。ホントに無愛想だな。ま、余計な会話を省けて楽なんだけど。その後の昼休憩は、また再びボーッとして過ごした。

 

 

*

 

 

 放課後になった。廊下から気配がするので帰るのは諦めるか……いやまあ了承しちゃった以上、逃げるのは負けのような気がして悔しいから逃げないけど。

 

「どうしたんすか平塚先生。俺も流石に逃げませんよ」

 

 とりあえず先制のパンチを打ってみる。

 

「ん、あ? いや、勿論知っているさ。君のことは信用している、信用しているが……ほら、あれだ。最近流行りの心配性だ」

 

「マイナ○ターズでも聞いてろ」

 

「お? 減らず口を叩く口はどの口だ?」

 

「どの口なんでしょうね」

 

「そうか、では二度とその口を開けないようにしてやろう」

 

「教師の台詞じゃねえだろ……痛でででで、ぎう、ぎう」

 

 思い切り頬をつねられた。滅茶苦茶痛い、思わず先生の腕を二回叩いてギブアップ宣言をすると解放された。

 

「っつぅ……」

 

「校舎内での教師へのタメ口は生徒の台詞ではない」

 

「さようですか……」

 

 

 

      *

 

 結局部室である教室まで一緒に来てしまった。思い切りつねられて頬が少し腫れた件に関しては、コッソリマッ缶を奢ってもらったので許すことにした。

 

「ではな」

 

 国語教師の癖に何故か何時も羽織っている白衣を翻すと、先生は歩いていってしまった。凄く映える。ひょっとして平塚先生がモテないのは男よりも格好良すぎるからなのではないだろうか。

 

 失礼な事を思いつつ一応ノックをして中に入ることにする。平塚先生の二の舞にはならないようにしなくてはな。

 

「どうぞ」

 

 女王様からのお許しが出た。

 

「……比企谷くんだったのね。新しい依頼かと思って損してしまったわ。責任を取って頂戴」

 

「なんでちゃんとノックしたのに罵倒受けなきゃいけねーんだよ」

 

「……それもそうね。ノックもせずに入ってくる先生に比べたら少しはマシだわ。でも貴方までノックすると紛らわしいのよ」

 

「ならノックの回数でも変えるか?普通のノックは3回だが、俺が入るときは4回 みたいに」

 

「あら、貴方にしては考えたほうねアホ谷君。それを採用してあげるわ」

 

「おう。というか俺は国語は学年四位だ」

 

「私のほうが順位が上なのだけれど」

 

ムカつく。その勝ち誇ったようなドヤ顔が凄く様になってるから余計に腹立つ。というかその言い方だと一位じゃないように聞こえるぞ。

 

「では比企谷君、貴方が入るときはノックを五十回してから入りなさい」

 

「俺の腕を過労死させる気ですか?」

 

 とても会って三日目とは思えないようなトークだよこれ。周りから見たら知り合いかと思われちゃうじゃんなにそれこわい。何が怖いかって誤解された時のコイツが怖い。きっと俺の罵倒のオンパレードになるんだろうな……あれ?

 

 いつの間にか部室の中には天海がいた。

 

 問題:天海はここにいました。俺たちはそれに気づかずあんな漫才をしていました。天海はどうなるでしょう?

 

 天海はこちらを向いてしばらく間を置いた後に呟いた。

 

「……ノックはしたけど声しか聞こえなかったから、入って話が終わるまで待っていた。仲いいね」

 

 答え:ものの見事に誤解する。

 

「「俺(私)とコイツ(彼)は仲良くなんかない(わ)!」」

 

「息、ぴったり」

 

 あ、やべえ氷の女王様が震えだした。アナと、ってそれは雪乃女王様……合ってるわ。俺中々上手いこと言うな。

 

「……天海君?」

 

 良かった怒りの矛先こっちじゃなかった!天海め、氷の力を受けるがいい。

 

「何?」

 

 ……案外余裕そうな声が聞こえたんですけど。見ると、いつもの無表情。心なしか、雪ノ下をからかっているようにも思える。無表情キャラの感情が分かるとか俺もしかしてエスパーじゃね?

 

「声が合わさったことについては変態谷君が悪いから不問にしておいてあげるわ。でも、勝手に私と彼の仲を考えないでくれるかしら?酷く不愉快だわ」

 

 違いました。これ怒りの矛先はあっちに向いててもその罵倒内容は見事にこっちに刺さってます。フェイントを入れて俺を罵倒するとは中々じゃないか。少し泣きたくなってきたぞ。でも大丈夫。ハチマンナカナイ。

 

「おい待て、俺は変態じゃ「黙りなさい」アッハイ」

 

 訂正しようと思ったら速攻で言葉が殺された。

 

「つかお前友達他にいるのかよ」

 

「……そうね、ではまず友達の定義から教えてもらえるかしら?」

 

「絶対いねえだろ」

 

「貴方も友達がいないじゃない。人に言えないわ」

 

「甘い。MAXコーヒーの3.14倍は甘いぞ雪ノ下。昨日の言葉を忘れたのか? 俺にはなんと、一人友人がいる!」

 

「……ぱちぱち」

 

 拍手は一名。雪ノ下は額に指を当てて溜息吐いてた。スルーとかいくら慣れてるとは言えちょっと腹立つぞ。

 

「……そんなことはどうでもよくて。雪ノ下さんにもお弁当の感想を聞きに来た」

 

 そりゃあ天海にとってはどうでもいいだろうな。いきなり依頼人を放って争いを始めたのだからそう言われても当然だ。当然なのだが……何故かお前が言うな、と脳が叫んでいた。

 

「初めからそれを言いなさい……全く、無駄な時間を過ごしてしまったわ。お茶でも飲みながら話しましょうか」

 

 俺をボロクソに貶めたあの雪ノ下を弄ぶ天海ってマジで何者だよ。当の本人は全く動じずに紅茶を入れるところを見てるし。

 だけど…………あの瞳。どこか、俺の目と同じ感じがする。あいつに気持ち悪い感覚はないから、恐らく演技はしていないのだろう。だけど、どこかあいつの瞳は感情を押し殺しているように見える。

 物思いに耽っていると、いつの間にか目の前には紅茶があった。なんだかんだいってこういう所は律儀だな。

 

「それで、お弁当の感想だけど」

 

「うん」

 

「薄いわ。特にソテーと酢の物。あの豚肉と玉ねぎは豚丼かしら?冷めてしまうとあれも味が少し薄くなってしまうのだからお弁当にするなら熱いうちから濃目に作っておくべきね。酢の物も酢が少なすぎるわ。恐らく、味が濃過ぎたら食べにくいと思ったからなのでしょうけど……味のアクセントが弱すぎるのよ。ベース自体は悪くないのだから酢をもう少し多めに入れなさい。ソテーに至っては論外ね。ほうれん草とソーセージで味が別れてしまっているわ。もっと醤油や塩でまとめていくべきよ」

 

 ひええ。中々酷評だな…でも大体俺も同じことを思ってたし、好みは似ているのか?

 

 雪ノ下の言葉はまだ続く。

 

「ご飯も少し水っぽすぎるわ。お弁当のご飯…特に、ご飯にかける具材があるならご飯自体は少し固めに炊くのが当然よ。具材を一口大にしていたのは良かったけれど、それだけね」

 

 この注文に次ぐ注文の嵐に、天海は。

 

「ん、了解」

 

 一言。たったそれだけだった。雪ノ下も驚いているようだ。

 

「……私、少し酷く言ったのだけれど」

 

 小さい声で言った。という事は自覚はあったということか。凄く面倒なタイプだな。

 それに天海が返そうとした時、コンコンコン とノックの音が鳴った。天海はそれを聞いて口を閉じる。雪ノ下は天海をみて、一旦保留にしたのか「どうぞ」とドアの外の主に向かって声を掛けた。

 

「し、失礼しまーす…」

 

 入ってきたのは一人の女子。髪は染めており、なんというか……あれだ、ビッチっぽい。彼女はこちらを見ると目を見開いてこちらを指さしながら叫んだ。

 

「な、何でヒッキーが此処にいるの!?」

 

「……誰?」

 

「はあ!?なんでヒッキーあたしの事知らないの!?ありえないんだけど!」

 

 いや知らんもんは知らんよ。ていうかヒッキーってなんだよ。引きこもりかなにか?残念だったな、俺は引きこもりかけたことはあるものの引きこもったことはないんだ。

 

「貴方は…2年F組の由比ヶ浜結衣さんね」

 

「えっマジ?」

 

 俺と同じクラスじゃねえか。クラスなんてロクに見てないから分かんなかった。まあ関係ないか。

 

「あたしのこと知ってたの?」

 

「殆どの人の顔と名前は覚えるようにしているわ。そこの目が腐った人のことは知らなかったけど」

 

「俺は気配を消してるからな」

 

「消してる、ではなく消えてる……のではなくて?」

 

「うるせえ」

 

 合ってるのが腹立つ。あと両方だからそこら辺は間違えないで欲しい所だ。

 

「彼はどうでもいいけど私の自己紹介がまだだったわね。私は2年J組の雪ノ下雪乃よ。よろしく」

 

「よ、よろしく…あ、そ、そうだよ!なんでヒッキーがいるの!?」

 

「さっきも言ってたよなそれ。俺はここの部員なんだよ。つかヒッキーって何だ」

 

「私もこのような男が部員だなんて嫌なのだけれどね。平塚先生からの依頼よ」

 

「へ、へー……あれ?その人は?」

 

 由比ヶ浜は彼女が入ってから一言も発していない男を遠慮がちに指をさした。雪ノ下が彼の代わりに説明をする。

 

「彼は天海 樹くん、私と同じクラスよ。昨日私達のところに来た依頼者よ」

 

「……天海。よろしくお願いします」

 

 そう言って頭を下げた。こいつホントに礼儀いいな。どこぞの女二人にも見習わせたいくらいだ。その一人は何故かこれまた遠慮がちで、

 

「よ、よろしく……同じ学年だから敬語いらないよ?」

 

 と返した。俺と天海で態度に差がありすぎる。同じぼっち気質なのに何故だ。眼のせいですね分かります。いや、目は天海も大概だな。遠くから見たら白目にしか見えない。つまりは見たことがあるかないかの違いだろう。

 

「ん。初対面だしマナーは大事。そう教えられた」

 

「あ、そうなんだ……んでね!平塚先生が、此処に来れば悩みが解決するって」

 

 あの先生は全く……と呆れてしまう。雪ノ下も同じことを考えていたようだ。

 

「先生は全く……少しだけ違うわ。ここは食料に困ってる人に魚を渡す部活じゃなくて、魚の獲り方を教える部活なの。あくまで、解決するかどうかは貴方次第よ」

 

「な、なんかよく分かんないけどカッコいい部活だね!」

 

 分かんないのか。

 

「それで、貴方はどういった悩みを持ってここに来たのかしら?」

 

雪ノ下が促す。前も言ったが、素早く本題に入るのは俺にとっては有難い。だが、彼女は

 

「あの、えっとね?その……」

 

 と気まずそうにこちらをチラチラと見ている。よく見ると、俺だけじゃなく天海のほうも見ているようだ。これは男がいると相談しにくい依頼か?それならとっとと出て行ったほうがいい。俺は場の雰囲気が読めないワケじゃないからな。

 

「何か飲み物でも買ってくるわ。由比ヶ浜、お前は何がいい?」

 

「え!?えっと、じゃあレモンティーを」

 

「分かった。天海は?」

 

「僕はついていくから」

 

どうやらコイツも意図を察したようなので頷いてから外に出ようとすると、背後から

 

「私は野菜生活100のいちごヨーグルトミックスでいいわ」

 

とか声が聞こえる。

 

「お前には紅茶があるだろ」

 

「いいから早く買って来なさい」

 

 なんてワガママな方だこと。そんなツンケンした態度をとってるから、由比ヶ浜とくらべても、そのむ「貴方、失礼なことを考えてないかしら」ここの女子は皆エスパーなのか?

 

 そそくさと教室を出て、天海と一緒に自販機で飲み物を買う。当然のことながらお互い無言。因みに俺はマッ缶、天海はカルピスだった。

 

 一応ノックをしてから中に戻る。すると、何やら雪ノ下は額を抑えていた。

 

「話は終わったか?」

 

「……ええ。なんでも、お世話になった人に手作りのクッキーを渡したいそうよ」

 

 ……また料理関係か、壊れるなぁ。




 トマトは実質たけのこの里
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