IS―インフィニット・ストラトス―灰色の騎士   作:芦屋戒

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第一話 IS学園
1P目


 

 

「全員揃ってますねー。それじゃあSHRを始めますよー」

 

教卓に手をついて、微笑みながら言う我らが副担任。山田真耶先生。

 

身長はやや低めで、だぼっとした服装と可愛らしい緑色のショートカットのせいで益々小さく、下手すれば同年代ぐらいに見える。

 

かけている黒縁眼鏡もやや大きく、若干ズレている事から、天然な人なのだろうと推測した。

 

「それでは皆さん、一年間よろしくお願いしますね」

 

「…………」

 

にっこりと笑って山田先生が挨拶したが、返事が無い教室内は当然の如く静まり返っていた。

 

山田先生は若干苦笑を漏らしながら、

 

「じゃ、じゃあ自己紹介をお願いします。えっと、出席番号順で」

 

たどたどしく言うと生徒の一人が立ち上がって、教卓の隣で自己紹介を始めるが、盛り上がったりはしない。

 

何故か?

 

それは、”二人”を除いて全員女だからだ。

 

クラス全員の視線が、その二人に注がれており、妙な緊張感が漂う。

 

「……くん、織斑一夏くん!」

 

「は、はい!?」

 

その緊張感の原因とも言える人物、その”一人目”が、緊張でガチガチのまま盛大に立ち上がる。

 

山田先生はそれに脅えたのか、

 

「あっ、あの、大声出しちゃってごめんなさい!お、怒ってる?怒ってるかな?ゴ、ゴメンね?ゴメンね!自己紹介してくれるかな?だ、ダメかな?」

 

涙目でぺこぺこと何度も頭を下げ始めた。その行動に逆に戸惑う生徒。

 

織斑一夏。

 

俺の親友にして、”ISが使える男”の一人。

 

「いや、あの、そんなに謝らなくても……っていうか自己紹介しますから、先生落ち着いて下さい」

 

「ほ、本当?本当ですね?や、約束ですよ?絶対ですよ!」

 

ガバッと顔を上げ、一夏の手をとって熱心に詰め寄る山田先生。それで更なる注目を浴びている事は明確だが、本人は気付いているのだろうか。

 

そして、その横で悠長に欠伸をしている”二人目”の男、御剣彰。

 

つまり、俺だ。

 

緊張によって体を強ばらせながら教卓の前に向かって行く友人を欠伸で見送りつつ、落ちてくる瞼をうっすらと開ける。

 

「えー……えっと、織斑一夏です。よろしくお願いします」

 

儀礼的な一礼。普通の学校ならここで社交辞令の拍手なりがあるのだろうが、待っていたのは痛いほどの沈黙だった。

 

教室内は「それだけじゃないよね?」という期待感溢れる空気が流れ、クラスメート全員の視線が一夏に向けられている。

 

『(そりゃま、男なんて此処では珍獣扱いだから仕方ないがな)』

 

冷や汗をダラダラ流しながら数秒間固まっていた一夏が、大きく息を吸い込んだ。

 

「以上です」

 

ドタタ、と数名の女子が思わずずっこけ、山田先生が涙声に似た声色で一夏に声をかけたところで、パァンッ!と乾いた音が一夏の頭から響き渡る。

 

「いっ――――!?」

 

突然の攻撃に一夏は恐る恐る振り返るが、まるで蛇に睨まれた蛙のように硬直した。

 

一夏の目の前には、黒のスーツにタイトスカート、すらりとした長身に綺麗なボディライン、狼を思わせる鋭い目。

 

「げぇっ、関羽!?」

 

何故だ。

 

パァン!と二度目の平手打ちによる響き渡った音が少なくない数の女子を引かせる。

 

「誰が三国志の英雄か、馬鹿者」

 

トーンの低い声が平淡に言う。

 

織斑千冬。

 

織斑一夏の実姉であり、このIS学園の教師だ。

 

「あ、織斑先生。もう会議は終わられたんですか?」

 

「ああ、山田君。クラスへの挨拶を押しつけてすまなかったな」

 

先程とは違う優しく柔らかい声。

 

だが腕を組んで立つその姿は、まさに歴戦の戦士に見える。

 

「諸君、私が織斑千冬だ。君達新人を一年で使える者になる操縦者に育てるのが仕事だ。私の言うことはよく聴き、よく理解しろ。出来ない者には出来るまで指導してやる。逆らってもいいが、私の言うことは聞け。いいな」

 

なんという暴力宣言だ。

 

しかし、教室には困惑のざわめきとはかけ離れた黄色い声援が充満した。

 

「キャーー!本物の千冬様よ!」

 

「あの千冬様にご指導いただけるなんて嬉しいです!」

 

「私、お姉様のためなら死ねます!」

 

千冬さんがそんな声援を聞きかなりうっとうしそうな顔で眺め、俺とほぼ同じタイミングで呆れ気味に呟く。

 

『…くっだらねぇ……』

 

「…毎年、よくもこれだけ馬鹿者が集まるものだ、感心させられる」

 

オブラートに包まず冷ややかな言葉を吐き捨てたが、女子には効かなかった。

 

「きゃああああっ!もっと叱って!罵って~!」

 

「でも時には優しくして!」

 

「そしてつけあがらないように躾して~!」

 

そんな声援に千冬さんは溜め息をつき、傍らでうずくまる弟に言葉をかける。

 

「で、貴様は満足に挨拶も出来んのか?」

 

「いや、千冬姉、俺は――」

 

パァン!と本日三度目の平手打ち。

 

脳細胞は叩かれると五千個死ぬというが、本当だろうか。

 

 

 

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