IS―インフィニット・ストラトス―灰色の騎士   作:芦屋戒

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―御剣、一夏のデータを収集したい。そのまま戦え―

 

千冬さんから通信が入り、覚束無い様子で一夏がピットから飛んでくる。

 

『了解』

 

一言返事をすると、通信は途切れた。目の前には真っ白なIS、翼を生やした騎士のような装甲を纏った一夏が立っている。

 

あわよくば、俺に一夏のIS訓練も押し付けようという魂胆だろうな。厄介事・面倒事は全部俺っていうスタイルどうにかしてくれないかね全く。

 

―近距離戦闘タイプ”白式”と認識。はぁ…―

 

オイこら、なに溜息ついてやがるバカ娘。

 

「悪いな。付き合わせるような感じで」

 

『別にいいさ。一通り戦ったら千冬さんから通信が入るだろうし。俺の事は気にしないで一夏はISの感覚を掴んでくれ』

 

おう!と一夏は元気よく返事をして、太刀に似た武器を構える。

 

俺達は笑い合い、

 

「行くぞぉぉぉぉぉ!!」

 

『来い』

 

戦いとは言えない、心の底から楽しむ遊びのようなバトルが始まった。

 

ってちょっと待て、その武器ってまさか…!?

 

――――――――――

 

『お疲れ、一夏』

 

「おっ、サンキュー!」

 

俺はスポーツドリンクを投げ渡し、喉へと流し込む一夏の隣に腰を下ろした。

 

くーっ!とどこか爺臭い声をあげて口を拭った一夏に苦笑しながら、俺は自分のドリンクを口に含む。

 

俺達がいる場所はアリーナではない。終わってみれば、すでに夕食の時間だった為に食堂にいる。

 

『にしても驚いたぞ。まさか一次移行すらしていない状態で戦っていたとは。しかも戦闘中にそれを完了させるなんてな』

 

「それでも彰には勝てなかったしな~………」

 

『何言ってんだよ。シールドエネルギーが残ってたら零落白夜で斬られて負けてたさ』

 

俺達のバトルは壮絶だった。

 

刃がぶつかって火花を散らし、互いに真正面から斬り結び続けた。

 

そして一夏のISが一次移行、ファーストシフトを完了させ、自身のシールドエネルギーを消費して相手のシールドエネルギーを消し去る白式の単一能力―ワンオフアビリティ―”零落白夜”が発動した。

 

勘付いていたものの、それに驚いた俺は隙をつかれ、一夏を懐に招いてしまった。

 

防御が一瞬遅れ、負けたと思った瞬間、軍配は俺に上がる。

 

一夏のシールドエネルギーが0になった事で戦いは終了したのだ。

 

「織斑君と御剣君、凄かったね~!」

 

「織斑君も初めてなのに、上手く立ち回ってたし!」

 

「御剣君なんてあのセシリアを倒しちゃったもんね!」

 

見知らぬ女子が騒いでいるように、至る所で俺達は話題となり、学園の中はその話しで持ちきりだった。

 

『(ハァ………これで俺も、色々と面倒な立場になったな。妙な電話は来るし、政府にも顔を出さなきゃいけなくなった)』

 

クラス代表決定戦が終わった後、俺には大量に電話がかかってきた。どうやって観戦したのかはわからないが、九割りは政府と企業からだ。

 

残りの一割りは……まぁ、どっかのウサ耳天才科学者との雑談である。

 

因みに一夏と斬り合いになったのは、このバカ娘が言うことを聞かず、まともに飛べなかったからである。お仕置きしたけど。

 

「箒、どこ行ってたんだ?」

 

一夏が言い、俺がそちらに目を向けると、不機嫌な顔をした箒がトレーを持って一夏の隣に座る。

 

「…………トイレだ…」

 

本当かよ、と思わずツッコミたくなる程の不機嫌さを醸し出しているんだが…どうせ一夏絡みだろう。

 

因みに俺の夕食はフランスの料理。一時期フランスに長期滞在している時期があったが、そこでこれを食べた時は電撃が走ったね、うん、メチャクチャ旨い。

 

料理を飲み込んで、俺は箒と視線を合わせる。

 

『そういや、ちゃんと自己紹介してなかったな。俺は御剣彰。一夏とは中学からの付き合いなんだ。よろしくな、箒』

 

箒は一夏の幼なじみにして、束さんの妹だ。しっかり挨拶をしなければな。

 

「私は篠ノ之箒。一夏が世話になったみたいだな。よろしく頼む、御剣」

 

『彰でいいぞ』

 

「そうか?ではよろしく、彰」

 

箒と握手し、笑い合う。そこで自分でも意地悪い顔をしてると思いつつも箒に耳打ちした。

 

『知ってるか?一夏って実は箒が大会で入賞する度に俺に自慢するんだ』

 

「なっ!?」

 

「おっ、おい!言うなよ!」

 

真っ赤になる二人を見ながら仲良く談笑しつつ、俺達は夕食を進めた。

 

こんな日々も、悪くないかな…

 

 

「(…御剣…彰………)」

 

その頃、セシリア・オルコットはシャワー室にいた。

 

温かい水で汗を流し、蒸気のせいか頬を紅潮させて今日の試合を思い出す。

 

射抜くような鋭い灰色の、強い意志を宿した瞳。

 

孤高とも呼べる、圧倒的なその強さ。

 

自分の、理想の人。

 

「(……負けたのに…悔しくない…)」

 

それどころか、逆に好意に近い興味がある。

 

知りたい。あの人の事を。

 

「………彰…さん……」

 

呟いた名前は、シャワーと共に体を流れ落ちていった。

 

 

 

 

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