勢い良く開かれた教室のドア、そこに一人の少女が立っていた。
茶髪のツインテールをした幼い顔立ち、快活そうな印象を受ける少し焼けた肌の、知り合いの小さい中国人。
『………鈴?』
「そうよ!中国の代表候補生、鳳・鈴音!今日は宣戦布告に来たわ!!」
威張るように顎を上げ、胸を張って高々と告げる鈴。推測が当たったのは良いが、まさか幼馴染とは。
そして中国と言えば忘れてはならないこの人、関羽。音もなく鈴の背後に立ち、ゴンッと鉄槌を下す。
「痛っ!?何すん………」
鈴が振り向くと、殴った相手を視認した瞬間一気に青ざめていく。
そこには、真っ黒な歴戦の戦士関羽が…ぐわぁああぁあ!?出席簿がまるで銃弾のように額にぃぃぃぃぃぃ!!
「ち、千冬さん……」
「SHRは始まっているぞ。それから御剣、出席簿を返せ」
ベストタイミングで角が当たる様に投げといてその言い草はないんじゃないですかね!おかげで額に穴が出来てんですけどね!?
「彰!一夏!また来るからね!逃げんじゃないわよ!?」
そう言い放って、鈴は逃げるように自分のクラスに帰っていった。
『先生…額の血が止まりません…』
「その内止まるだろう」
つまり死ねと言うのか。なんなんだこの人は…ってこれが千冬さんだったな、うん。
昼休み。
血をダラダラ流しながら授業を受けていたら、「保健室に行け」と千冬さんに言われて、手当してたらこんな時間になった。
途中で血が止まりかけて『そろそろ死ぬな』と思ったが、そう簡単にくたばるような人間ではなかったな、俺。
『今日のフランス料理は何にしようかな』
食堂に向かいながら、自分の好物を思い浮かべる。
プロヴァンス、ランスドックとバスク、アルザスにピカルディーと。
色んな地方のフランス料理があるが、その中のバスク料理は無理だ。アレ、唐辛子が大量に入ってる料理が多いから辛くて食えないんだよな。
「お、もう怪我は大丈夫か?」
「心配しましたわ彰さん!」
『大袈裟だな』
「いや、お前の机、真っ赤になっていたぞ」
箒、セシリア、一夏、その他大勢の女子と合流し、一緒に食堂に向かい始めると、
「待ってたわよ!!」
鈴が食堂の前で仁王立ちして、待っていたらしい。
そして何故か、後ろの女子達が凄く冷たい視線を放ち始めた。女の嫉妬は怖いと言うが、確かにこんな視線を向けられたらゾッとするな…
『元気だったか?』
「まぁねー。アンタ達こそ、たまには怪我病気しなさいよ」
「どういう希望だそりゃ…」
昼食を受け取り、俺と一夏は鈴を挟んで席につく。久々の再開とクラスメイトもわかっているようで、遠巻きにこちらを見ている状態だ。
ただ、セシリアと箒からは鋭い視線が飛んできているが…鈴の事を怪しんでいるのだろうか?