『よぉ』
「彰!?」
「アンタ一体どうやって…!」
『アリーナのシールドバリアをぶっ壊しただけだ』
そう言いつつ、俺は高速で迫るレーザーを弾き飛ばす。残念だが俺にレーザーライフルは意味を成さない。
そして例の黒い物体―黒で統一された全身装甲のIS―Unknownに目を向けた。
手が異様に長く先端には先程のレーザーを搭載しているであろう砲口が複数、全身で二メートル超のそれは頭部から胴体まで全て装甲であり、満遍なく付いているスラスター口で姿勢制御を行っているようだ。
そもそも、アトに判別できないISが存在するという点でイレギュラー中のイレギュラーだ。今更どんな形のISだろうと大差はない。
『フッ!!』
試しに、俺はパニッシュメントを構えながら突っ込んだ。
Unknownは即座に反応し、腕から大量のレーザーを雨の如く撃ってくる。
『チッ……』
真っ向から叩き潰して最短距離で突っ込む最中、右頬をレーザーが掠めた。この威力、セシリアより圧倒的に高い。
裂けた頬から流れる血を無視して、俺は再びパニッシュメントのブーストを盛大に吹かし、更なる加速を得る。その速度を纏い必殺に近い威力を持つパニッシュメントを耳をつんざく鍔迫り音が答えた。
『こいつ…!』
「このぉ!!」
鈴がUnknownの背後に回り、衝撃砲を放ったと同時に逆の手がその防御に回る。俺の速度と鈴の攻撃が読まれているだと…
『下がれ!』
足のスラスターを限界まで放出し、蹴り飛ばす勢いでUnknownの体を土台代わりにして大きく後ろへ飛び退いた。
あそこまで反応が良いと、今のアトの出力だと全て反撃されてしまうな。加えて一夏の零落白夜も当たらないだろう。
しかも、零落白夜はISのシールドバリアごと斬ってしまうから、対人用に使うには危険過ぎる代物だ。
かと言って、パニッシュメントのブーストがあってもあの装甲を斬れなかったとなると、消耗戦でエネルギーが切れるまで待つしかないワケだが。
『さて…奴を機能停止に追い込むには相当骨が折れるな…』
「できる確率なんて一桁台よね」
「0でないなら充分だ」
簡単に言ってくれる。
鈴と一夏のシールドエネルギーは先程までやっていた戦いで残り少ない。加えて援護に回ったとしてもあの反応速度では下手したら反撃されて終わりだ。
そして残念ながら、俺にできるのは守る事ではなくただ壊すだけの暴力のような攻撃特化だ。
消耗戦は無し、一気にカタをつけなければこちらがやられる。
「なぁ」
一夏が急に切り出した。
「アイツ、何で襲ってこないんだ?さっきから攻撃されたら反撃するだけで、話してる時は襲ってこないよな……」
『そうなのか?』
鈴に聞いてみたが、断定出来る材料がないからか、首を傾げていた。
「動きも機械的って言うか何て言うか…」
「何言ってんのよ。ISは機械なんだから」
ISは機械……言うなれば展開型の強化武装、車や飛行機と同じ類、操縦者は付き物だ。それこそ自我にでも目覚めるかアトのような特例でもない限り…
『そういう事か、なるほどな』
「ちょっと、どういう事なのか説明しなさいよ!」
膨れっ面で問い詰めてくる鈴に、俺は『あくまで推測だが』と一言添えて説明を始める。
『アレは恐らく、特殊なAIかなにかを積んだ無人機だ。今までの奴の行動を思い返してみろ』
真剣な表情で思考を巡らせている鈴と一夏を尻目に、俺はその推測に根拠を上乗せした。
『さっきの俺の攻撃と鈴の攻撃、どちらも防がれたが、”腕が360度回って防御していた”んだぞ』
「……でも有り得ない、”ISは人が乗らないと絶対に動かない。”そういうものだもの」
……どこかのバカ娘に聞かせてやりたい言葉だな?散歩したい、とか言って勝手に推進翼を展開したのまだ怒ってるんだからな。
「仮に、仮にだ。無人機だったらどうだ?」
「なに?無人機なら勝てるっていうの?」
「ああ。”人が乗ってないのなら容赦なく全力で攻撃しても大丈夫だしな”」
一夏の懸念はやはり、零落白夜の高すぎる威力の事だった。更に言ってしまえば十中八九あれはAIを搭載した無人機で間違いないだろう。
俺のアトは正に規格外を実現したと言っていい程の化物じみた機体だ。そのせいで俺が耐えられず、制御機構により出力を半分以下にしている。
だがそれでもセシリア戦のように圧倒的なスペックを持っているのだが、やすやすと反応した事を考えると恐らく、アトのデータを元に作ったのではなかろうか。
「一夏」
「ん?」
「どうしたらいい?」