IS―インフィニット・ストラトス―灰色の騎士   作:芦屋戒

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2P目

 

 

 

「遅い!」

 

スパァン!と一夏の頭に出席簿アタックが炸裂した。いつみても凄まじく痛そうだな、アレ。

 

うなだれて列の最後尾に戻っていく一夏に小言を言われたが無視しよう。それよりも遅れた代わりに俺が一番前に立たされるのは納得がいかん。

 

そしてそんな俺の隣には初めての授業ですっかり緊張状態のシャルルがいる。俺と同じデュノア社製のISスーツで、袖口代わりのラインの色がオレンジ色だ。

 

「スーツを着るだけですのに、どうしてこんなに時間がかかるのかしら?」

 

「道が混んでたんだよ」

 

「なに?あんたまたなにかやったの?」

 

オーイ、聞こえてるぞバカトリオ。先頭にいる俺が聞こえているという事はつまり、今眉を跳ね上げた千冬さんにも聞こえているワケで。

 

バシーン!と、いつにも増して強力な音が後ろから響いてくる。そろそろ千冬さんが鬼教官ではなく、芸人のツッコミ役に見えてガコォン!

 

『痛っ………てぇ!?』

 

後ろから出席簿を投げるとか、流石に理不尽すぎるぞ教官!?

 

「私は先生だ。教官でも芸人でもない」

 

俺の心を読んだらしい千冬さんは、出席簿を拾いながら溜め息混じりに言うと、再び俺達の前に立つと授業開始を宣言する。

 

「では、本日から格闘及び射撃を含む実戦訓練を行う」

 

「「「「「はい!」」」」」

 

元気一杯だな。

 

しかし、副担任の山田先生の姿が見えないんだが、どこに行ったのだろうか。

 

「丁度活力溢れんばかりの十代がいることだし、先頭に実演して貰おう。オルコット!鳳!御剣!」

 

『拒否権は…ありませんよね』

 

「何故わたくしまで!?」

 

呼ばれた俺達は渋々列から離れ、他の生徒達から充分に距離を取る。俺はてっきり外されるかと思ったがそうでもないらしい。ダメージは回復しているが疲労が抜けきっていないのだが…

 

「専用機持ちはすぐに始められるからだ。それと御剣はパニッシュメントを使うな」

 

しかも制限つきである。益々やる気が出ないな、と心中で溜め息をついて二人を見ると、セシリアと鈴も一緒のようだ。

 

「お前らもっとやる気を出せ――――」

 

ツカツカと歩み寄った千冬さんが二人に何か呟いている。残念ながら声が小さくて聞こえず、一体何を言ってるのやら。

 

「やはりここはイギリスの代表候補生、セシリア・オルコットの出番ですわ!」

 

「専用機持ちの実力の違いを見せるいい機会よね!」

 

……どんな餌を撒いたんだアンタは。と怪訝な目で見ていると、今度はこちらに寄ってきて耳元で囁かれる。

 

「お前のISに身体データの計測機器を取り付けた。お前の肉体についてこちらで解明してみせる」

 

……純粋な善意による千冬さんの単独行動だろう。余計なお世話だ、なんて言うワケにもいかないな。

 

「ああああーっ!ど、どいて下さい~っ!」

 

突如、空気を裂く飛行機のような音が空から聞こえてきた。

 

首を動かすのすら面倒に感じた俺はハイパーセンサーを展開し、その機能で上空を確認すると。

 

「きゃあーーーー!!!」

 

青空とは程遠い、山田先生の泣き出しそうな顔があった。

 

ドゴォン!!と轟音が響き渡る。

 

『……あー…今日は厄日だな』

 

瞬時にアトを展開した事で怪我はないが、真正面から受けてしまった為に、ハンマーで殴られたような衝撃が胸に叩きつけられ少し息が詰まる。千冬さんのボディブローの方が痛いな、うん。

 

そして馬乗りになった山田先生を起こそうと体を掴んで押し上げると、むにゅっと右手に柔らかい感触がした。

 

「あ、あの、御剣君?こんな場所では…いえ、その、場所だけじゃなくて…」

 

……どうやら、肩と大きすぎる胸を勘違いしたようだ。俺の右手は山田先生の豊満な胸に突き刺さっている。

 

『あー…とりあえずすいませっ、ん!?』

 

突然響いたハイパーセンサーの危険察知アラームに条件反射で飛び退いた俺の前を、ズギュゥン!と青いレーザーが通過していった。

 

「ホホホホホホ…残念です。外してしまいましたわ…」

 

死んだ魚のような目に額にくっきりと血管を浮かび上がらせたセシリアが浅く笑っている。とりあえず銃を下ろしてくれ。

 

「……………」

 

ガション、となにかの連結音がしたのでそちらに視線を投げてみれば、鈴が双天我月をブーメランのように投げてきた。

 

「きゃっ!?」

 

未だに赤くなっている山田先生を俺の体に思い切り引き寄せ、片手に展開したジャッジメントで上空に弾き飛ばす…ってオイ。

 

ブーメランかよ、とツッコミたくなるような軌道で双天我月が戻ってきてしまい、仕方なくジャッジメントをもう一度構え直すと、

 

「はっ!」

 

ダン、ダン!と二回の銃撃音。弾丸は寸分の狂いなく、双天我月の両端に当たって無理矢理軌道を変えた。

 

驚くべきはその射撃姿だ。俺に抱き抱えられているにも関わらず、片腕でライフルをしっかりと固定し、その上で先程の精密射撃である。

 

「ああ見えて山田先生は元日本代表候補生だからな。あれくらいは造作もない」

 

「む、昔の事ですよ!それに候補生止まりでしたし…」

 

言いながら山田先生は肩のケースにライフルをしまい、立ち上がった。

 

 

 

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