翌日。まだ身体がIS化に慣れていないせいもあり更に疲労もあるせいか、身体の節々が痛いが今日もいつも通りの日常が始まる。
「えぇ~っと……転入生をご紹介します」
筈だったのだが。山田先生がしどろもどろに告げた事に俺は疑問を覚えたところだった。
この時期に転入生なんてそもそもが有り得ず、そういったイレギュラーはシャルとラウラで終わったと思っていたからだ。教室の中も疑問符が飛び交い、ざわざわと騒がしくなる。
「どうぞ」
「失礼します」
凛と響いたその声は、俺が聞き慣れた声。教室のドアが開き、その先から歩いてきたのはこの学園の女子の制服に身を包んだ俺の幼馴染の姿。
「シャルロット・デュノアです。改めまして、皆さんよろしくお願いします」
深々と頭を下げるシャルに、どういうことだとざわめきが大きくなる教室と、ゴン!と頭を机にぶつける俺。
「デュノア君て女の子だったの?」
「御剣君と同室だったよね?だったら知らないはずは……」
「ていうか昨日男子が大浴場使ったよね!?」
いやいやいや思い切りが良すぎるだろう…!確かに男のままは色々不都合だと話し合いはしたが、まさかこんないきなり編入しなおせるとは思っていなかった…!
「お、オイ彰…いいのかアレ」
『……俺が聞きたいぞ、それ』
一夏の質問を皮切りに一斉に女子達から言葉の嵐を受ける事になってしまった。
『い、いや俺はなにも……「彰ーッ!」』
ドゴォンッ!と容赦なく教室に突っ込んできた隣のクラスにいる中国の代表候補生がISを展開した状態で俺の名前を叫びつつ、まさに鬼のような形相で龍砲を開いていた。
「死ねっ!!!」
『なんでやねん』
思わずツッコミを入れるとその一瞬後には発射されていた。アトを展開しようと瞬時に首に触れて気付いたが…アトはまだ、整備中で預けているんだった。
爆音と共に教室に衝撃が撒き散らされ、覚悟を決めて死に直結しそうな痛みに備えていたが一向にダメージがこない。恐る恐る目を開けると、
「勝手に殺されては困るんでな、手を出させてもらった」
AICで全ての砲弾を受け止め、銀髪をなびかせるかつての好敵手がいた。
『……ラウラ?お前、ISも無事だったのか』
「……コアはかろうじてな。予備パーツで組み直した」
いかにも不機嫌そうに俺を睨んでくるラウラに居心地が悪くなりつい目を逸らすと、
『いや、その、ぶっ壊して悪か、った!?』
突然引っ張られ、唇に柔らかい感触が伝わってきた。視界はラウラの顔で埋まり、数秒してから俺はようやく理解する。
ラウラが、俺とキスをしている。
静まり返る教室が時間の流れを遅く感じさせ、どれほどそうしていたのかわからない。やっと満足したのか、ラウラが俺から顔を離すと、
「お、お前は私の嫁にする!異論は認めん!」
そう頬を赤らめながら告げた。いや待て、それはおかしい。
『……俺は男の娘じゃないぞ?』
ブチィッ!と嫌な音が聞こえてきて、その音源を辿ると鈴がキレていた。取り出した双天我月を思い切り連結させ、
「彰ーー!!!!」
まずい、アトがいない以上鈴を止めることなどできないしAICも今は調整中で使えない…よし、逃げよう。
教室の窓に走り、窓口に手を伸ばした瞬間、ドギュン!と青いレーザーが遮った。
「オホホ……どこに行きますの?」
生気の無い目でスターライトを構えたセシリアに阻まれ、俺は苦笑しながら逃走ルートを再度考える。前もダメ、横もダメ、とすれば残るは後ろ…!
「…彰って女の子の前であんなことしちゃうだ。驚いたよ」
『…待て、落ち着け。俺はなにもしていないんだ、だからそのパイルバンカーを俺に向けるのはやめてくれ』
にっこりと笑うシャル。あ、ダメだ死んだわコレ。
その日のホームルームは、「女の子を怒らせてはいけない」ということを学びました。
……俺、この先大丈夫かな…