セシリアが空中に舞い上がり、フィン状の青い自立起動兵器が四個、背後から現れた。
「踊りなさい!セシリア・オルコットとブルー・ティアーズの奏でるワルツで!!」
四個のビットが開き、銃口が俺に標準を合わせる。そして青い閃光が一斉に放たれた。
さて、どうしたものか。ぶっちゃけバカ正直に撃ってくるライフルの弾なんてハエタタキと同じなんだが…それだとせっかく調整した意味もない。
『………』
とりあえず地上を滑るように飛行し、四発目の攻撃を避け切りつつ、俺は無意味にブースターを吹かしたりしていた。
指先までしっかり意識が伝わってるな、各関節のスラスターも問題はない。あとは空中制御の確認もしとこうか。
「くっ…ちょこまかと…!」
『ん?動き回らないほうがいいのか?』
俺は大空に飛翔し、セシリアと相対する。そして四方八方から飛んでくるレーザーを全て叩き落とし始めた。
しかし、言われた通りにしてやってるのにセシリアは更に怒り狂っている。どうしろってんだよ…
「貰いましたわ!!」
レーザーの一斉掃射と同時、二つのビットが待ってましたと言わんばかりに背後から現れ、銃口を覗かせる。
「私のブルー・ティアーズは全部で六機ありましてよ!」
エネルギーの収束する甲高い音と共にビットが開き、ドンッ!と壮絶な爆発音が轟いた。
『………名前の由来ってそれか。ヒネリがないな』
ハイパーセンサーによると、あの青い六個の自立機動兵器の名前がブルー・ティアーズというらしい。
しかし、そんなことよりも。
『こんのバカ娘…なに勝手に武器出してんだ、一瞬焦ったぞ』
ガシャッ、と右手に感じる慣れた重さ。
握っているのはISを装着した俺とほぼ同じ大きさの赤い大剣だ。片刃のそれは峰の部分にスラスターがついており、鍔の部分はリボルバー式になっており、トリガーとハンマーまでついているコレは、銃と剣を合体させたような形だ。
装飾の施された高貴な赤い剣、パニッシュメント。
そしてガンッと剣を殴る。一応こいつの一部で形成されてるから効くんだよな。あとでまたお仕置きするけど。
『あー…やっぱり爆風は避けられなかったか…シールドエネルギーがちょっと減ってるじゃないか』
最大値から50ほど減ったアトの体力を視界の端で確認し、俺は右腕をならすように左右に切り払った。
「くっ!」
それを合図にセシリアのスターライトmkⅢが放たれる。
迫り来る青い光を、俺は欠伸をしながらパニッシュメントで無造作に薙払う。
ゴミのように払われた自分の攻撃を見て、セシリアの顔が驚愕の色で塗り潰されていくのがわかった。
『ふぁ…もういいよそれは。さぁミサイルなり何なりを出して…』
そこで俺のモニターからアラームが鳴り、聞き慣れた鋭い声が響く。
―御剣、一夏のISが届いた。サッサと片付けろ―
『了解』
声が途絶えると同時に、俺は首を鳴らしてセシリアにパニッシュメントを突きつけた。
『予定変更だ。三十秒で排除する』
このバカ娘がパニッシュメントを展開したと同時に推進翼のロックも外してるのは知ってる。翼もぐぞテメェ、いや俺が困るんだけどね。
「なにをバカな事を…そんな事ができるのなんてブリュンヒルデ級でもない限り不可能ですわ!」
カチン、と無機質な金属音。
続いたのは炎が灯ったような短い炸裂音で、同時にパニッシュメントの峰から赤いエネルギーが四つ、ブーストのように放出された。
そして、
「……っ!?」
俺は残像すら残さず、”消えた”。
『背中ががら空きだぞ。気を付けろよ』
直後。
四個のビットが爆炎と共に炸裂し、轟音が大気を唸らせた。
「そ、そんな!?」
セシリアが防御体勢もとらず、無防備に振り向いてきた。しかし、見慣れない者には当然の反応だ。
俺の機体は”最高加速と瞬間加速・それを持続させる事を目的とした機体”だからな。スポーツカーのような物だが、ISで考えればその特性は爆発的な攻撃力を生み出す。
端的に言えば、こいつは”爆発的なスピードを攻撃力に変える機体”と言ったところか。
『残り二十秒』
告げると、セシリアは残った二つのビットと共に後方へ飛び上がり、青い閃光を嵐のように撃ちながら更なる高みへ逃げるように飛翔していく。
俺はそれを剣で弾きながら、セシリアの後を追う。
射撃タイプの弱点だ。近距離戦に持ち込まれた途端、武器のほとんどが無力化される。
「(舐めてましたわ!まさかここまで強い男がいたなんて!)」
『………オイ、考え事は感心しないぞ』
乱れ飛ぶ光の嵐を真っ向から叩き潰して、俺は最短距離でセシリアに迫る。
行く手を阻むビットを一閃に伏せ、パニッシュメントを振り下ろした。
セシリアの盾に防がれたパニッシュメントからギャリィ!と甲高く耳障りな音と火花が飛び散る。
ガシャッ!と。
「この距離なら外しませんわ!終曲でしてよ!!」
俺の胴体部分に、スターライトmkⅢの巨大な銃口が零距離で照準を合わせた。
セシリアが引き金を引けば形勢は一気に逆転、勝利さえ有り得るだろう。
一か八かの、捨て身の一撃。
セシリアの顔に勝利を確信した笑みが零れるのと、
『あぁ、確かにレクイエムだ』
俺が”引き金を引く”のは、同じタイミングだった。
―シールドエネルギー、急激に減少中!残り20%!10%!―
「そんな!一体何が!?」
セシリアの右目部分のモニターに、赤字でシールドエネルギーの残量が表示されていた。
それは何かに吸われるように、有り得ない速さで減っていく。
そして、セシリアのISは待機形態へと強制移行した。
「きゃっ………」
『おっと』
空中でISが待機形態に戻ったせいでセシリアは宙に放り出されそうになる。その寸前で抱きかかえ、俺はゆっくりと地上へ降りていく。
『お疲れ様。流石はイギリスの代表候補だ、楽しかったぜ』
賞賛を送った俺は笑顔でセシリアを地面に下ろした。
『じゃ、俺は次があるから』
こうして、戦いは呆気なく幕を閉じた。