沢山の方に読んでいただいてとても嬉しく思っています!
これからも楽しんで頂けるように頑張っていきたいと思います!
カレンとライはアッシュフォード学園からある場所に向かっていた。
トウキョウ祖界中心街から少し離れた所にある治療施設
ここにはある薬物の中毒患者の治療を専門にやっている施設で、ライが出資している施設でもある。
二人はここに居る人物に会いに来た。
「面会は一時間だけです。よろしいですね」
「分かっています」
そう言うと施設の職員が二人を面会室に案内した。
面会室で待っていると、先程の職員と医者らしき人物が車椅子に乗る一人の女性を連れてきた。
その女性は赤毛でかつて学園に通っていた時のカレンに良く似た人物……
カレンの母親だ
「僕は先生達と話があるから」
「分かったわ」
ライはそう言うとカレンの母を連れてきた職員と医者の後について面会室を出ていった
部屋にはカレンと母の二人だけになった
「お母さん……」
「カレン?どうしてここに……」
カレンは母の様子を見て胸を撫で下ろした。
以前の母はカレンが話し掛けても反応を示してはくれなかったが今はちゃんとカレンの事が分かっているようだ
「その格好はどうしたの?それにさっき一緒にいた男性は誰?」
「私、ブリタニア軍で働いているの。彼は私の上司…かな」
ちゃんと会話が出来る。
カレンはそれだけで嬉しかった
以前、カレンは母と暮らしている時は全く会話がなかった……
いや、会話しなかった……
以前のカレンは母の気持ちなど考えないで母を拒絶していた。
それだけが原因と言うわけではないが、カレンの母はその辛さや寂しさから薬物に手を出してしまった……
それに気が付いた時には全てが手遅れだった……
母の心は薬物に完全に蝕まれてしまった……
それからカレンはずっと後悔していた……
だからカレンは嬉しかった。
また母と会話が出来るのがこんなにも早いとは思ってもいなかった。
「そうなの…でも上司っていうのは嘘でしょ。彼氏なの?」
「それは!?その……」
「その反応は当たりみたいね」
無機質な面会室はカレンと母の他愛ない会話で明るい雰囲気になった
「経過は良好です。やはり新薬の効果が大きいようです。アッシュフォード卿」
面会室の外でライとカレンの母の主治医は現状について話していた
「そうですか。例の件はどうです?」
「医者としては了承出来ますが……彼女は一応犯罪者になりますから……」
ライが言っている件とはカレンの母をカレンと一緒にいれるようにするためにカレンの母を施設の外で治療することが出来るかということだ
そして彼が気にしているのはカレンの母の状態ではなく、カレンの母の状況だ。
彼女は薬物使用と所持で実刑判決を受けている。
だが、彼女の場合、中毒症状が酷かったため服役出来る状態ではなかったため施設で治療監察をする事になっていた。
「その辺は大丈夫です。僕が……ラウンズが保護観察するとなれば問題はないはずです」
こういう時に自分の階級は役立つな
ライはそう思った
「ところでアッシュフォード卿。彼女とはどういう関係で?」
するとカレンの母の主治医が彼女について聞いてきた
「あそこまで重症な患者は珍しいので……」
ライとの関係に主治医は気になっているようだ
理由は大体分かる。
ライはナイトオブラウンズだ。
そんな人間が薬物中毒の人間と、しかもナンバーズの女性が知り合いということに何かを感じない人間はいない
だが、ライも言えるわけがない。
「あまり深く関わらないほうがいいですよ……」
「……わかりました」
ライはあえて意味深な解答をした。
それを受けた主治医はそれ以上の事は聞いてはこなくなった
彼も自分の命が一番な人間のようだ
それを確認し、ライは面会室に戻っていった
「あら?彼が戻って来たわよ。カレン」
「分かってるわよ!いちいち報告しなくても……」
ライが戻ってくるとカレンは顔を赤くしてうつむいてしまった。
「はじめまして。ライ・アッシュフォードといいます」
「親切にありがとうございます」
ライはカレンの母親に挨拶をするとカレンの隣に座り、カレンの母親と話はじめた
「カレンとは婚約させてもらっていますから一度お母様に御挨拶をと思っていました」
「そうだったのですね。この子は何も教えてくれなくて」
「別に言わなくても良いでしょ……」
どうやらライが席を空けている間、ずっと聞かれていたのだろう。
ライの言葉にカレンの母親は目を輝かせ、カレンは顔を赤くさせていた。
娘に始めて出来た彼氏に母親の方が娘より興味津々になっているようだ
「こんな娘ですが、末長くよろしくお願いしますね」
「はい!」
ライの力強い返事を聞き、カレンの母親は目頭が熱くなった。
この人なら娘を幸せにしてくれると感じた。
そのあともカレンの母とライの会話は続いた。
ライとカレンの母の会話中、カレンはずっとうつむいていた。
自分の母は本当に薬物中毒なのか疑うくらいはっきりとライとの関係を聞き出していた。
ライも正直に答えるため恥ずかしさの余り、顔をあげられなくなった
「ところで……扇君たちは元気?」
「それは……」
ライとの会話の途中、カレンの母親は思い出したように扇の名前を出した。
その名前を聞き、ライとカレンは口を閉ざしてしまった……
「ニュースで見たけれど、彼らは黒の騎士団なのよね……カレン貴女もそうなの?」
最近のニュースはゼロの復活と黒の騎士団事ばかりだ。
その中で恐らく彼らの顔写真を公開していたものがあったのだろう。
別に法に触れることではないが、カレンはその事を母親に知って欲しくなかった。
兄の友達がテロリストとという事実……
そして彼らと一緒に居た自分がどういう事をしてきたかを母には知られなくなかった……
「そうだった……でも今は……ブリタニアに……彼の側に……」
最初はカレンも歯切れが悪い解答をしていたが、カレンは母に全てを話す事にした
自分が黒の騎士団に居たこと……
KMFで戦っていたこと……
自分が多くの人達の命を奪ってきたこと……
ライを愛し、祖国の解放と亡き兄のとの約束より愛する者を選んだこと……
仲間を捨て、彼の居るブリタニア軍を選んだこと……
包み隠さず全てを話した
カレンの母は何も言わず、静かにカレンの言葉に耳を傾けていた。
「そう。貴女がブリタニア軍で働いているのはそういう事なのね……」
カレンがブリタニア軍に居ることにカレンの母は納得したようだ
カレンがブリタニアを憎んでいる事は知っている
そのカレンが大切な扇や仲間を捨て、憎いブリタニアを選ぶ事になっても愛する男性と一緒になりたいという願いを同じ女性として共感できた
彼女はそっとカレンを抱き寄せた
「カレン……私は貴女の味方よ。娘の幸せを一番に考えない母親なんてこの世にいないわ」
「お母さん……」
その言葉にカレンは涙を流した
ブリタニアに来て初めてライ以外の誰かに認められた……
仲間を捨てて、ライを選んだ
この選択を間違えだとは思ってはいない……
だが、心の奥底で本当は自信がなかった……
だからライ以外に、それも自分の母親に理解され認められた事が心から嬉しかった。
カレンの母はカレンを抱き締め頭を撫でながらライに目をやった
「ライさん。娘を守って下さいね」
「はい」
カレンの母から感じる強い想い
ライは必ず守る事をカレンの母に、そして自分自身の心に誓った
面会終了の時間になり、面会室に施設の職員が入ってきたのを確認し、ライとカレンは退室のため身仕度をはじめた。
車椅子を職員に押されながら部屋を出ていくカレンの母の顔は少し淋しそうだった。
それを見たカレンは母に一言「また来るからね」と言葉をかけ、その言葉を聞きカレンの母はライ達に万勉の笑みを見せた。
それはカレンと同じ素敵な笑顔だった
「カレン本当にそれでいいのか……」
「うん……」
マリーカとの問題に決着をつけるために施設をあとにしたライとカレンはブリタニア軍の空軍基地に駐屯している『クラレント』に向かっていた。
その車の中でライはカレンの決着の付け方を聞きたが、その提案に余り納得できなかった。
「僕に無茶をするなって言っていたのに……自分自身は無茶をするんだね……」
カレンのやり方は決して正しいとは思えなかった
普通ならカレンの提案を素直に聞き入れることなど出来ない
先程、カレンの母親に約束した事がまさかすぐに破られる事になる可能性がでるとは思わなかった
「彼女には選ぶ権利があるもの……」
だが、カレンはこの提案を譲る気はないようだ
「だから何があっても手を出さないで……」
「……分かった」
ライはカレンの願いを受け入れる事にした
いや、受け入れるしかなかった……
例えカレンの命が亡くなる可能性があるとしても……
彼女の決意をねじ曲げる事は出来ない……
今ほどギアスを失った事を後悔したことはなかった……
『クラレント』の内部にあるKMF格納庫
旗艦の調整と整備のためここに格納されたKMFは全て運び出され、今はもぬけの殻になっていた
作業員達は皆、休憩のため旗艦の外に出ている
だからこそカレンとライはマリーカをここに呼ぶことにした。
今なら誰にも話を聞かれる心配がない
「ライ様、カレンさん。御待たせしました!」
マリーカは何時もと同じ笑顔をむけてきた
今からこの笑顔が二度と見られなくなるかもしれないと思うと胸が苦しくなった……
「こんな所で何をするんですか?」
マリーカは今から起こることに何も感じてはいないようだ
「マリーカ……これを君に見てもらおうと思ってね……」
ライはマリーカにひとつのファイルを渡した
「これは何ですか?」
「明日の会議で皆に見せる物だ。君には先に見てもらわないといけないんだ」
「黒の騎士団のファイルですか?」
ライが渡したファイルはただのファイルではない
コレはナイトオブラウンズになった時にライがまとめたファイル。
将軍クラスの人間しか見る事は出来ないもので本来は持ち出し禁止の代物だ
「この中に貴女の知りたいことが載っているわ……」
それを聞いたマリーカはファイルに手をかけた。
マリーカが知りたい事
それは紅蓮弐式のパイロットの事……つまり兄の仇の相手を知ることが出来る
黒の騎士団の情報はブリタニア軍の中でも機密扱いでマリーカ程度の士官では簡単な概要しか知ることが出来なかった。
それはライの副官になっても変わらなかった
だからマリーカは突如舞い降りたチャンスに胸を踊らせていた
コレで兄の仇が分かる!
そしてついに黒の騎士団の幹部達の個人情報が載るページを開きはじめた
「あれ……この人、カレンさん?」
そこに写っている女性は、間違いなくカレン本人に違いない
だが、そこに書かれているのは自分の知りたい事……
兄の仇ついて……
そして知りたくない事が書かれていた……
『紅月カレン』
黒の騎士団
ゼロ親衛隊……零番隊隊長
専用KMF……紅蓮弐式
「そんな……何で……」
マリーカは状況を理解できなかった……
なぜカレンさんが……
黒の騎士団の人間?
何でブリタニア軍に?
紅月カレン?
カレン・シュタットフェルト?
何で目の前に?
いや、それより……そんなことより……
「カレンさん……貴女が……キューエルを……兄さんを……」
考えるより言葉が先に出てきた……
そしてその言葉にカレンは答えた……
「そう。私が殺した」
その言葉にマリーカは怒りを覚えた
まるで当たり前のように兄を殺した事を認めた
その冷たい態度にマリーカは黙ってはいられなくなった
「何で!?何で兄さんを殺した貴女がここに居るんですか!?貴女のような人間が何でライ様の側に居るんですか!?」
目の前にいる女は兄を殺したくせに平然としている
今までの記憶の中にいるカレンの顔が全て仮面に思えてきた
そしてもう一人の人物の顔も仮面に変わろうとしていた
彼女を隣においている人物……
「……ライ様は知っていたんですか」
その言葉にライは何もこたえない……
それがライの答えだとマリーカは理解した……
「知っていて一緒に居るんですか……」
もう何も分からなくなってしまった……
一番信頼していたライも自分に隠していた……
誰を信じればいいか分からない……
「カレンさん……正直に答えてぐださい……貴女は『紅月カレン』ですか?それとも『カレン・シュタットフェルト』ですか?」
マリーカは素直に聞くことにした
マリーカはもう何も考えられなかった……
「今の私は『カレン・シュタットフェルト』よ」
その答えにマリーカは率直な思いをカレンにぶつけた
「ズルいですね……貴女は全てを手に入れて……私は貴女に全てを奪われたのに……兄も……兄が手に入れた名誉も……何もかも奪われた……」
マリーカは自分の過去を振り返っていた……
マリーカは1年前まで普通の貴族令嬢だった……
ブリタニア軍にいた兄はソレイシィ家、そしてマリーカ自身も誇りに思っていた……
だが、その兄がエリア11で戦死した……
それからのソレイシィ家は散々だった……
あっという間にソレイシィ家は没落していった……
そんな状況を変えたかった……いや、自分が変えるしかなかった……
望んでもいない軍人になるために士官学校に編入した……
そして軍人になり、戦場に身を動じ、そしてミスをした……
これでソレイシィ家は終わったと思った……
だが、ノネットに紹介され出会ったライにマリーカは救われた
そしてライに少なからず恋心を抱いた
だからライに愛されているカレンが羨ましく思っていた
そして憧れを抱いていた
だから分からない……
なぜ彼女は今、私の目の前にいるのか……
なぜ私に全てを打ち明けたのか……
理由はすぐに分かった……
「だからマリーカ……貴女には選ぶ権利がある……」
そう言ってカレンは自分の懐からあるものを取りだし、マリーカに渡した。
マリーカも使いなれている物……
それを見てマリーカはカレンの考えを理解した……
「ズルいです……やっぱりズルいです」
カレンは逃げないという選択肢を選んだのだ……
だからマリーカ渡した……
マリーカに罪が掛からないようにするために……
自分の拳銃を渡してきたのだ……
それを受け取り、考えを理解したマリーカは拳銃を強く握り、カレンの方に向けた……
「……カレンさんこれが答えです」
カレンは静かに目を閉じた……
自分も兄を失っているから分かるマリーカの気持ち……
自分も同じ状況なら同じ事をするだろう……
だからマリーカに委ねることにした……
マリーカはカレンが思っていた通りこちらに銃口を向けてきた……
自分の拳銃を使えばマリーカはカレンが自殺したと主張出来る……
そうすればマリーカも、ソレイシィ家も守れる……
ライもちゃんと擁護してくれる……
だからカレンは覚悟した……
自分の死を……
カレンの頭のなかは母への思いとライへの思いで一杯になっていた……
(お母さん……最後にあえてよかった……ライとお母さんの約束を破っちゃうけど許してあげてね……ライ……あなたともっと一緒に居たかった……あなたと幸せになりたかった……幸せにしてあげられなくてゴメンね……)
カレンは心の中で謝罪した時、格納庫の中で乾いた破裂音が響き渡った……
だが、カレンは死ななかった……
代わりに自分の頬に激しい衝撃と激痛が走り何が起こったか悟った……
マリーカに平手打ちされたのだ
カレンは目を開けて目の前にいるマリーカに目をやった……
マリーカは涙を流していた……
「コレで我慢します。私は今日までの貴女を信じます。それと貴女のライ様への想いを信じます」
マリーカはカレンを許した……
カレンに復讐しても兄は還ってこない……
だが、それよりもマリーカ自身が今というときを大事にしていることに気が付いた
3人で一緒に仕事をしたり、一緒に楽しい時を過ごしたり、そんな些細な出来事の中でマリーカは幸せに包まれていた事を思い出していた
自分の事を実の妹のように大切にしてくれるライ……
優しく姉のように自分の事を包み込んでくれるカレン……
マリーカはこの二人には幸せになってもらいたいと思った
だから許す。
きっと兄のキューエルも許してくれるだろう
だが、全てを許せる訳ではない
だから一回だけカレンを叩いた……
復讐に終わりをつけるために……
そしてもう一度カレンとライを信じたいと思ったのだ
「だから!もう嘘はつかないでください!隠し事もしないでください!」
それはマリーカの本心だった
そしてマリーカは自分の本心を全てさらけ出した
「私はカレンさんとライ様が大好きなんですから」
そこにはいつものマリーカが居た
明るく元気なマリーカがそこに居る
だからライはマリーカに聞きたいことがあった
「……マリーカ。僕達はもしかしたらブリタニアを敵に回すかもしれない……それでも僕達と一緒にいてくれるのか?」
ライはナナリーのために、ルルーシュを助けるためにブリタニアの中でうごいている。
現在の状況を整理するとどう考えてもブリタニア皇帝を敵に回す可能性が高い
だからこそマリーカに確認しなければならない
マリーカを自分達の共犯者に加わるか彼女の意思を知りたかった
「私はライ様が何の意味もなくブリタニアに逆らうとは思いません!きっとそこには確かな信念があると思います!だからその時、私はライ様達の力になります!」
マリーカはライの問いに正直に答えた
その答えからライはマリーカの本心を垣間見た
だからライはマリーカを自分達の共犯者に加える事を決めた
ライはマリーカに向けて手を伸ばした
「これからもよろしく。マリーカ・ソレイシィ」
ライの伸ばした手をマリーカはとった
「よろしくお願いします!ライ・アッシュフォード卿!それとカレン・シュタットフェルトさん!」
ライとカレンに新たな共犯者が出来た